魔法勝負は体力勝負? いえいえ、精神力の勝負です!
前回短かったので、今回は少し長めです。
ただ、やはり説明文過多です。
スミマセン。
………。
何だろう、あれ。
サランさんと別れて、お父さんに抱っこ移動を再開されて少し。
只今、目の前に広がる光景に、お姉ちゃん達と絶句中です。
レグルス達は、一切の興味を失い、遠い目をしてます。
お兄さんズは、参加する気ですか? 目がキラキラしてます…。
ぁ、良かった、お父さんは普通だ。
「どっせいっ! ぅおりゃあぁぁぁぁぁ!!」
「負けるか! せいっやあぁぁぁぁぁ!!」
広場中央に人だかりが出来ていて、興味を引かれて覗いて見れば、その中心にはずぶ濡れの男性が2人。
片方は鼻の上に絆創膏を貼った街のガキ大将風、もう一方はメタルフレームの眼鏡をかけた優等生風。
お兄さんズより少し歳上らしい男の人達が、噴水を挟んで怒鳴り合ってました。
どうやら、中央の噴水の水を使って、何かの勝負をしてるらしいです。
声だけ聞けば、喧嘩かな? とも思いましたが、険悪な雰囲気は全くといってありません。
*~*~*~*~*
………。
え~と…どうしてこうなったのかな?
結局、この集まりは、水魔法を用いた勝負事で、始まりはあの二人の男性。
ちょっとした言葉の応酬から、口喧嘩へと発展、終いには勝負事となり、結果面白がった街の人達が煽り、今や賭け事の対象と化しているらしいです。
ぁ、お父さん、下ろしてください。
自由に見学したいです。
お父さんの抱っこから下ろして貰い、お姉ちゃん達と人混みを掻い潜り、一番前へ。
男の人達は、どちらも退かないせいか、微妙に顔色が悪い気がするのは、見間違いではないはず。
2人は、お互いにお互いの魔法を、同属性の魔法を用いて消しています。
それを成すためには、自分が使用する魔法には、相手の込めた魔力を上回る量を込める必要があります。
なので、このやり方だと、魔力の消費がどんどん激しくなるのです。
基礎保有魔力が枯渇すると、回復には途轍も無い痛みを伴う上に、暫くは一切魔法を使用出来なくなります。
そのためか、枯渇間近になると、身体が危険信号を出し、気怠さや関節痛となって表れます。
ぁ、基礎保有魔力が枯渇しても、生命力と魔力は別物なので、生死の危険は、普通ならありません。
実は、あまり周知されてはいませんが、生命力を魔力に変換する事は、可能だったりします。
ただし、法律で禁術指定がされていて、随分昔に変換方法自体は消失しているみたいですが…。
一時期、極秘裏に研究が進められ、魔道具が造られたりしたんだって。
まぁ、魔道具が出来上がる前に、ベル姉様が気付いて、三柱の女神が揃って、顕現してまで天罰を与え、今は完全に消失させたそうです。
魔道具が完成していたら、人体実験にまで進展していたかも知れず、下手をすれば、一気に世界滅亡もあったかも…。
ベル姉様、流石です!
フォルお姉ちゃんもラル姉さんも、止めてくれて有難う!
…天罰の内容は、満面の笑顔なお姉ちゃん達が怖くて、確かめられませんでしたが…。
ぁ、話が逸れた…。
「おにぃしゃんたち、だいじょぶかな? おかおが、うすあおいよ…」
「駄目じゃない?」「駄目っぽいな」「…駄目だと…思う…」
お姉ちゃん達が、確信の言葉を投げ付けてます。
いや、あの。
駄目なら、止めないと……。
「あの程度でへたばるなんて、根性無ぇな」
「根性で魔力量は増えませんよ。
まぁ、魔法の使い方が雑ですから、消費も激しくなるのは、当たり前ですね。
自業自得ってヤツじゃないですか?」
いつの間にか、側に来ていたお兄さんズは、辛辣ですね。
と言うか、エディ兄さんは、根性でどうにか成るの!?
クリスお兄ちゃん……雑って……自業自得って……。
魔法は、基礎保有魔力を火種に、空気中の魔素に干渉して扱います。
なので、魔素への干渉が上手い──または、丁寧な──人程、火種にする基礎保有魔力の量は、少なくなる。
魔力の保有容量の少ない人は、魔素への干渉能力を鍛えるか、大きな魔法を使うのを諦めるかの二択だそう。
『まぁ、自業自得って言われても~、仕方無いよね~♪』
アルタイルが、私の肩で毛繕いをしながら、興味無さそうにクリスお兄ちゃんの言い分を肯定します。
基礎保有魔力の容量的には、ガキ大将風のお兄さんの方が多いみたいですが、優等生風のお兄さんの方が、魔素への干渉が上手です。
ただし、お母さんやお父さん、お姉ちゃん達の魔法が基準だと、優等生風のお兄さんですら、まだまだ雑に思えます。
うちのお兄さんズも、剣術と同時に魔法も、お父さんに師事しているので、以前見せて貰った魔法は、とっても凄かったです!
優等生風のお兄さんは、魔法を使う時、火種にする基礎保有魔力を、大人の握り拳2つ分程必要としてる。
お母さんやお父さん、お姉ちゃん達は、私の小指の爪程度しか使いません。
勿論、私も同じくらいの量で、魔法が使えます。
お兄さんズも、大人の親指の先──先から第一関節まで──くらいの量の基礎保有魔力で大丈夫でした。
本来、魔法を使える様になるのは、5歳から。
幼い内に、暴走を引き起こす事が無い様に、基礎保有魔力を体外へと放出する術は、生まれてから5年程、封印されています。
5歳に成って行う“祝福の儀”で、初めて解放され、魔法が使える様になるわけです。
が、そこはそれ。
お母さんの眷族としての能力故か、使えちゃうんですよね…私…。
シリウスに言われて、あまり使わない様にはしていますが、お姉ちゃん達が凄いので、バレても「あの子達の妹なら、出来ても可笑しくない」で済みそうな気がしてる今日この頃です。
と、またもや逸れた。
「とめなくて、い~の?」
お姉ちゃん達を伺い見れば、呆れた様に溜め息をついたり、軽く頭を横に振ったりと、止める気は無さそう。
「倒れるまでやらないと、気がすまないんじゃない?」
「好きにやらせとけ。良い教訓になるだろ」
「…自分の限界…知っておくべき…」
あ~。
完全に呆れてますね。
ベル姉様に至っては、教える側のスパルタ意見です。
「まぁ、一度痛い目をみれば、嫌でも理解するでしょうね」
「だな。放っとけ、ユナ」
クリスお兄ちゃんも、エディ兄さんも同意ですか。
『『『あっ!』』』
後ろにいた、お姉ちゃん達やお兄さんズを、振り返って話していた私の耳に、レグルス達の驚きの声が聞こえた途端。
横側と頭上から重い衝撃が……。
───バシャンッ。ボタボタボタッ。
「ふえっ!?」
衝撃の強さと、いきなり全身から滴り落ちる水に、驚いて変な声が出ましたよ。
咄嗟に出てくる声が変なのは、仕方無いですよね?
私が阿保だからじゃ、無いですよね!?
驚きのあまり、思考がどうでもよい様な方向へと、逃避して行きます。
「「「─っ、ユナ!?」」」
衝撃の強さに押され、真横に倒れかけましたが、お姉ちゃん達が3人がかりで支えてくれました。
ただ、そのせいで、お姉ちゃん達まで、びしょ濡れです。
「なっ!?」「ユナ!?」
お兄さんズも、私との話に気を取られていたのか、突然の状況に動けず、固まってます。
次の瞬間、広場一帯に、とんでもない冷気が充たされました。
寒い寒い寒い!
濡れ鼠状態に、極寒の冷気は無理です!
凍えながらも、周りを見渡せば、広場にいる人達の足下が、例外無く凍り付いてます。
ぁ、いや、私やお姉ちゃん達は無事だ…。
寒さに凍えてはいるけど…。
勝負に使われていた噴水の水も凍っているので、当事者達も困惑してますね。
「私の娘達に、害を成すのは、何処の何方ですか」
低ぅ~い声が聞こえて、この状況を作り上げた原因に思い至ります。
お父さんがお怒りですよ~!?
凍える様な寒さに、ガタガタ震え、お姉ちゃん達を見上げれば。
お姉ちゃん達にも、この冷気は堪えるのか、やっぱり震えてます。
取り敢えず、この冷気を治めて貰わなくては、話すら出来ません。
「おと…しゃ…ん。……しゃ…むぃ……」
か細い声しか出せず、お父さんに届くか心配でしたが、ちゃんと聞こえたらしく、足下の氷は溶けずとも、冷気は成りを潜めます。
「大丈夫かい!? ユナ! フォル! ラル! ベル!」
「だ、大丈夫じゃありません~」
「濡れた直後に冷気とか…何を考えてるのさ父上」
「…寒い…寝ても…い?」
「わぁあっ!? 駄目、駄目、駄目、駄目ぇっ!?」
冷気に体力を奪われ、お姉ちゃん達も力無く、お父さんへの抗議を伝えます。
お姉ちゃん達の中で、一番体力が無いベル姉様は、既に半分眠りかけてます。
かくいう私も、このまま寝ちゃいたいです。
お父さんの焦る声が、少しずつ遠退いて…ます…ねぇ…。
眠りに落ちかけたところで、フワッと暖かな風に包まれます。
心地好いです♪
状況が気になって、睡魔と戦い、勝利しました。
なんとか目を開けた私が見たのは、淡い緑の光と小さなレグルスの姿。
『もう大丈夫だ。後は俺が請け負う。体力を回復するためにも、暫し眠っておけ』
レグルスの言葉と、包み込む様な暖かな魔法に、私は安心して眠りの海に沈みます。
レグルスは、やっぱり…もう一人の…お父さん…みたい…です…ねぇ………。
前回の宣言通り、ストック補充のお休みを貰います。
次回の投稿は、12月14日。
そこからの投稿が、今年最後の投稿分になりそうです。
では、ストック作りに、行って来ます!
(`◇´)ゞ