管理倉庫の番人と空気な彼女。今更ながらの職員紹介。
100話達成~♪
………。
100話も投稿しておいて、未だ物語内の時間経過は、1ヶ月……。
展開遅くて、スミマセン。
「ブワッハハハッ! そぉかそぉか! 物々交換か!
のぉ、銀雷。この嬢ちゃん儂にくれ。
度胸の良さが気に入った!」
私がウキウキした興奮を抑えきれずに宣言したら、お爺ちゃんに爆笑されました。
何故に?
………。
って、私、また貰われちゃうですか!?
前の時は、モル兄に「ちょーだい」って、言われました。
え、ええっ!?
お姉ちゃん達やお父さん、お兄さんズとバイバイですか!?
「……トリスティン? 今すぐ死にますか?」
お爺ちゃんの言葉に、一人で焦っていたら、お父さんから低~い声が。
辺りの空気が、ピシピシと音を起てて凍りつきます。
───ヒュンッ。トスッ。
直ぐ傍から、風切り音がしたと同時に、お爺ちゃんが頭を左に倒し、お爺ちゃんの右側──顔の真横…──に、壁に突き刺さった短剣が出現しました。
………。
へ!?
短剣!? なんで短剣!?
え? しかも、柄の部分しか見えないって、どういう事ですか!?
軽い衝撃音しかしなかったのに、室温のバターに刺さるナイフ並みに、深々と刺さってませんか!?
「どわっ!? 何すんじゃい、お嬢っ!? のわっ!? なんのぉっ!」
咄嗟に避けたとはいえ、何が起こったかを理解すると、お爺ちゃんはラメル姉さんの方を向き、叫んで踏み出しかけ………つんのめった。
私が助けようと手を伸ばす直前、リュニベール姉様に後ろから抱き抱えられました。
お爺ちゃんは、体勢を気合いで建て直したみたいです。
それと同時に、パリンッと澄んだ音がしたかと思えば、銀色の魔法がキラキラと散りました。
「チッ! 外したか…」
「…ぁ…解除された…」
ラル姉さんは、避けたお爺ちゃんに対して、舌打ちして悔しがり、ベル姉様は、ぼそりと低く呟きます。
銀色の魔法は、ベル姉様ですか?
もしかして……闇魔法で、お爺ちゃんの足を、拘束してましたか?
「ていっ!」
体勢を建て直した直後に、背後に移動していたフォーレお姉ちゃんが、お爺ちゃんに膝カックンを実行しました。
フォルお姉ちゃん……いつの間に…。
後ろに重心を置いて立て直した直後に、膝カックン。
それは見事に極り、お爺ちゃんが“ぺしゃん”──ベシャ?──と潰れました。
「ギャッ! 痛ぇ。酷ぇな、お嬢達…。儂ゃぁ、非戦闘員じゃぞ?」
「知るか!」「…知らない…」「知りません!」
強かに後頭部を強打して、お爺ちゃんが涙目です。
お姉ちゃん達は、普通なら回避不可の攻撃を仕掛けた事を、当然だと胸を張ってます。
いや、いやいやいや。
駄目でしょう!?
いえ、貰われるのを阻止してくれたのは、嬉しいですよ?
けど、問答無用の手加減無しって…。
「うんうん。うちの娘達は、妹思いの良い子達ですね♪」
お父さんが、冷気を引っ込めて、粛々と頷いています。
お父さぁぁぁんっ。
止めて! そこは、親として止めようよ!?
「煽るな馬鹿親父! そこは、叱るべきとこじゃろが!」
私が絶句している間に、復活したお爺ちゃんが、元気に突っ込みを入れてます。
「知りませんよ。自己紹介どころか、挨拶すら無しで絡んでおいて、一方的に“家族を渡せ”などと宣う阿呆な老人には、当たり前の対処です。
フォル、ラル、ベル、良くやりました。
もし、次があったら、今と同じ対処法でいいですよ。
問答無用。手加減も、遠慮もいりません。
被害を受ける前に、速やかに原因を排除です!」
「「「了解っ!」」」
お爺ちゃんの突っ込みを、正論混じりの暴論で切り捨て、お父さんがお姉ちゃん達を誉めてます。
………。
お父さん推奨の対処法は、攻撃こそ最大の防御らしいです。
お姉ちゃん達も、右手を高々と上げ、声を揃えて了承を宣言してますねぇ。
お腹に回されたままの、ベル姉様の左腕にも力がこもり、ほんのちょっと“グエッ”ってなったので、ギブアップのてしてしをして、現実逃避させてもらいます。
お父さんも、お姉ちゃん達も、過っ激~ぃ♪
……私も、参加すべきですか?
*~*~*~*~*
「じゃ、買い取り査定も、お決まりの一騒動も、粗方終わったし、ちゃんと紹介するわね」
私が遠い目をしていたら、モル兄がパンッと手を打ち、注目を集めます。
ぁ、漸く紹介して貰えるんですね。
………。
今更感が半端じゃ無いけど、ちゃんと聞きますよ~。
…大丈夫。ちょっと疲れてるだけですよ…。
「この奇抜な爺様は、トリスティン・ジグ。
非戦闘員を自称する、元AAランクの冒険者で、今は【素材管理倉庫の番人】て呼ばれてる、冒険者組合で一番の【鑑定士】よ。
口も悪けりゃ、お腹も真っ黒な、とんでも爺さんだけど、普段は倉庫から出てこないから、爺さんの暴言は流すか、放置でお願いね?
イラッとするだけ、無駄よムダ。
まぁ、あんまり酷ければ、制裁は自己判断で、好きにして♪」
モル兄が、お爺ちゃんの頭に手を置いて、ぽすぽす軽く叩きます。
力は入れてない様なのに、お爺ちゃんの頭が小刻みに上下に揺れてます。
…ボール?
………。
モル兄……お爺ちゃん、キライなのかな…。
紹介の台詞が、悪意満載デスヨ?
「で、そっちで隠密スキルを駆使して、存在感を極力消してるのが、【素材管理課の総合責任者】のレミィ・マディソン女史。
瓶底眼鏡がトレードマークの、神出鬼没エルフで、人物鑑定に特化した変わり者。
普段は、存在感を消した状態で、素材買い取りの受付に常駐してるわね。
他の冒険者達の観察が趣味らしいわ。
二人とも、ちょ~っとクセはあるけど、仕事に関しては信頼出来る相手よ~♪」
あれ?
お姉さん……何時からそこに?
倉庫の扉の横に、壁に同化するかの様に、女の人が佇んでます。
蜂蜜色の金髪を左右に三つ編みにして、瓶底眼鏡をかけた、真面目そうな印象のお姉さんで、落ち着いた柔らかな緑のパンツスーツ姿です。
『ユナが目覚める前から、そこに居たぞ?』
ん?
ずっと居た?
レグルスが言うには、受付カウンターに立ち寄った際に合流し、解体作業場にも、管理倉庫にも、一緒に移動して来たらしいです。
隠密スキル…凄い。
全然気付きませんでした。
「………変人ばっかじゃねぇか。ラディオールのギルドに、クセの無い人間なんているのか? 」
「………まぁ、面白いので、良いのでは? エディ。その問いへの返答は、黙秘します。
こういう場では、口は災いの元になりかねませんから…」
お兄さんズが小声で何か言ってます。
街には、色んな人が居るんですねぇ。
今日もまた、色んな人と知り合えました♪
ユナちゃん、順調に誤解中。
ラディオールの街は、変人の溜まり場では、ありません。
………ホントか?
作者にも、断言出来ない、変人大集合疑惑。
オネェ? いや、紳士か? に、ギルマス至上主義の愛妻家、ファンキー爺さんに、隠密エルフ。
変なのばっかな冒険者組合【アヴァロン】は、これからも舞台になるのかなぁ…。
続きも、頑張って投稿しますね。