お休み前のお楽しみ♪ 夜更かしは、3歳児の敵でした…。
洗面所の洗濯機前の籠に、洗濯物を置いて、パステル調の私室にやって来ました。
………階段って、3歳児には、過酷な試練の場だよね………。
フフフフフッ。
思えば、お家探検の時も、大変だったよ。
手摺を使って、よじ登ること3段めで、息切れした私を心配して、シリウスが元の姿に戻って、背中に乗せて運んでくれたんだよね……。
今回は、レグルスだったけど…。
「みんなは、どこでねるの?」
『今夜は此処で寝てやろう』
『そうですね。初めての夜くらいは、皆で一緒に寝ましょうか』
『ほ~い。僕も此処でいいよ~♪』
「いいの? やったぁ~♪ みんないっしょ♪」
えへへ~。
良かったぁ。
お母さんが沢山気にかけて、安全で安心できる【巣】を用意してくれたことは分かってる。
だけど此処は……。
私にとっては未知の世界。
たとえ、お母さんが創った世界だとしても、怖いものは怖い。
危険な所じゃないことが分かっていても、多少の不安は勿論あって、夜が近付く程に、小さな恐怖を煽りはじめる。
だから、3匹が一緒に寝てくれることが、凄く嬉しかった。
「あ、おかあさんの“ぞう”をせっちしなきゃ…」
3匹がそれぞれの寝床に落ち着こうと、クッションを慣らしはじめた辺りで、大事なことを思い出した。
夕方に1度ダイニングで取り出した【女神像】を、今度は私室に設置しないと。
じゃないと、お母さんとお話が出来ないもんね。
*~*~*~*~*
出来た~♪
今回もまたシリウスが、元の姿に戻って、手伝ってくれました♪
揺り椅子の側にあるサイドテーブル。
その上に、【女神像】を無事に設置出来ました!
ではでは、早速お母さんに連絡しましょう!
『お母さ~ん。聞こえる?』
『結愛♪ 聞こえてるわよ~♪』
『お母さん♪ 良かったぁ。防御結界も起動出来たよ!』
『ええ。これで、外敵対策は万全ね♪ 【お気に入りの庭】は、魔法も物理も無効化するから。害意のあるものは、内側に入れないもの』
『凄いねぇ。【女神像】も、お部屋に設置したよ~。これで、朝と夜にお話出来るね♪』
『そうね♪ ………そういえば、【女神像】ってどっちを使ってるの?』
『へ? どっちって、何?』
『ぁ、まだ【無限収納】の確認が出来てないのね。【女神像】は2種類ある筈よ? 両方とも、雪輝石っていう真っ白な石で出来てるけど、大きさが違うの。1つは、結愛の半分くらいで、もう1つは、大人の掌くらい』
『……ちっちゃいのもあるの!?』
『ええ。その感じだと、大きい方を使ってるのね? 設置って言ってたから、もしかしたらと思ったんだけど』
夕方とさっきの苦労って……。
いや、大変だったのは、シリウスだけどね?
『大きい方はね、【私のお城シリーズ】の【丘の上の領主館】か、【森の奥の素敵な洋館】を使う時に、祭壇に設置される【女神像】なの。小さい方は、外でも緊急でお話出来る様に、用意した【女神像(小)】ね。結愛が小さいから、持ち歩けた方がいいかなって、用意したんだけど、大きい方を先に見付けちゃったのね…』
『…ちっちゃいのも探してみる。折角シリウスが設置してくれたから、大きい方もこのまま使うね。まだ使わない【私のお城シリーズ】を【無限収納】に片して、【女神像(小)】を魔導鞄に入れておくね♪』
『ふふっ。そうね♪ 小さい方は、そんなに重くないから、結愛でもちゃんと持てると思うわ』
*~*~*~*~*
今日あったことを、1つずつ報告する。
目が覚めて最初にクラウディアの自然に感動したこと。
3匹が近くにいてくれて嬉しかったこと。
お母さんが用意してくれた魔道具に驚いたこと。
お家探検にシリウスだけが最後まで付き合ってくれたこと。
柵の設置は3匹と協力して頑張ったこと。
食材の新鮮さと、以前の世界との共通点。
お風呂場でのみんなとのやり取り。
楽しかったことや、初めてのことでいっぱいだった半日を、一生懸命に話した。
お母さんが楽しそうに聞いてくれることに、嬉しさが募って、言葉が次々に溢れてきた。
『ふふっ。クラウディアを気に入ってくれたみたいで、良かったわ。結愛が楽しそうで安心したもの』
『うん。凄く楽しかった♪ ぁ、そうだ! お母さんに聞こうと思ってたんだ』
ふと、ステータスのことを思い出した。
『なぁに?』
『ステータスの称号にね、【世界の愛し子】っていうのが増えてたの…。お母さん知ってた?』
『あらあら…。クラウディアで生きることが、結愛にとって少しでも幸せであるように願ったからかしら…』
『じゃあ、やっぱりお母さんがくれた称号?』
『いいえ。【世界の愛し子】は、結愛の姉さん達が与えた称号だわ』
『お姉ちゃん?』
『ええ。結愛は、私の眷族となったでしょ? 本来、眷族と呼ばれるのは、世界の理を統べる女神のことなの。だから、眷族を子供と考えるなら、私には結愛の他に、3人の娘がいることになるわ』
『3人…女神…。【大地の女神様】と【海の女神様】。それから、【宇宙の女神様】のこと?』
『ええ。豊穣と繁栄を司る大地の“フォーレ”、生命と審判を司る海の“ラメル”、安寧と運命を司る宇宙の“リュニベール”の三柱の女神よ。彼女達が、私の願いを聞き入れてくれたのだと思うわ。きっと、“新しい妹”への祝福も兼ねているんじゃないかしら』
『……お礼、言いたいな……。いつか、会えるかな…』
『ふふっ。大丈夫。何時になるかは、断言出来ないけど、必ず会えるわ♪ それにお話だけなら、街の教会にある、それぞれの女神像に祈れば、【神託】が働く筈よ?』
『! 本当!? なら、明日は街に行ってみる!!』
『…貴女の幸せを、皆が祈っているわ。命を大切に、精一杯“生きること”を楽しんで。もう少し大きくなったら、クラウディアを見て回っても面白いかも。“幸せの欠片”は、何処にでもある筈だから、いっぱい集めて私に教えてね♪ 何時でも気にかけているわ。貴女は、私の“愛しい末娘”なんだから』
『…っ、うん! 頑張って、沢山たくさん“幸せの欠片”を集めるね♪ 勿論、お母さんやお姉ちゃん達がくれた“欠片”も、ずっと大事にするから!』
『ふふっ。さあ、そろそろお休みなさい。明日街に出るなら、きちんと休まなきゃ駄目よ?』
睡魔に襲われ始めた私に気が付いたのか、お母さんが話を切り上げる。
これ以上は寝落ちしかねないから、良い子でお返事しますよ?
『は~い。えへへ。また明日ね♪ おやすみなさい、お母さん♪』
『おやすみなさい、結愛。良い夢を…』
*~*~*~*~*
お祈りの姿勢を解いて、嬉しさに高揚しながら、ベッドへと向かう。
睡魔に襲われつつ、昇降台を使ってよじ登ったベッドはふかふか。
天蓋から下がる薄布だけを閉じて、布団に潜り込む。
月明かりを感じながら、静かに目を閉じれば、抗いがたい睡魔によって、意識がゆっくり遠退きはじめる。
明日からの“小さな冒険”に、心を踊らせながら、私は眠りに落ちた。
───おやすみなさい。
★☆★☆★☆★☆★
─レグルス視点─
───やっと寝たか…。
人族の幼児の身体では、夜更かしなど毒にしかならん。
フェリシア様とのお喋りが嬉しいのは分かるが、夜はもう少し早く切り上げるよう、注意すべきか?
俺達【聖獣】は、本来食事も睡眠も必要としない。
味わうことは出来るし、身体を休める体勢をとることも出来る。
それでも、食事や睡眠は、嗜好の1つでしかない。
俺達の在り方は、【主の魔力を受け、主の望みを叶える】というもの。
主によって、【望み】の形は変わる。
力を求める者もいれば、情報を欲する者もいる。
誰かの死を望む者や、永遠の命を望んだ者もいた。
だが、まさか、“家族として暮らすこと”を望む者がいるとは思わなかった。
俺達を【家族】と呼ぶことに躊躇いが無く、どんなことでも、自分で1度やってみる。
命令ではなく、お願いをする主など、見たことどころか、聞いたことすら無かったぞ?
それでも、主がそれを望むなら、【家族】であることを、共に楽しむことにする。
勿論、フェリシア様に頼まれた“戦う力”を持たない主の、“守りの力”となることを、止めるつもりも更々無い。
俺達の主は、小さく弱々しい。
然し、その心は強く美しい“しなやかさ”を持つ。
結局俺は、この小さく愛らしい主を、最初から好ましく感じているようだ。
シリウスやアルタイルと名付けられた2匹も、多分同じ思いなのだろうな。
主の心地好い魔力を受け入れながら、微睡む様に朝を待つ。
明日、主が目覚めたら、一応注意はしておこう…。
寝不足は、幼児の敵だろう…。
★☆★☆★☆★☆★
翌朝の寝坊は“お約束”なのかも知れない…。
ユナちゃんの半日…。
長かったですね。
これからも、こんな日常がゆっくりまったり続きます。
誰かの暇潰しになれたら、作者的には嬉しい限りです!
ですが、とうとう、ストックが無くなりました。
投稿間隔が不規則になるかもしれません。
出来るだけ偶数日投稿で頑張るつもりです!
気長に覗いてやってください。
今後ともヨロシク♪
※ 最終話ではありません。