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86.想定外の準備

アキトたち総勢95名+1羽は東門からミスリル鉱山に向かって進軍している。


陣形はアキトたち+トマス副団長を中心とし、その周りに魔法兵60名、そのさらに外側、前方に17名、左右後ろに各4名ずつ騎士が配置されている。ゲートを当てにしているのだろう、荷物がほとんどないので進軍速度はかなり速い。アキトはトマスと話しながら進んでいく。


「相手の戦力はどの程度かはわかっているのですか? 」

「斥候を出しているからある程度はわかっているが正確な数値はわかっていない。ゴブリンやコボルト、オーク等で5000匹以上の規模で軍勢が出来ているらしい。さらに周囲の森から魔物が集結していると聞いている」


アキトは[知識の書]で調べながら聞いている。トマスから今聞いた情報だけで領主軍の見通しが甘すぎることがわかってしまった。アキトの嫌な予感は止まらない。


アキトが[知識の書]から得た情報ではこうなっている。

コボルト系はノーマルからハイコボルト級まで6000匹

ゴブリン系はノーマルからノーブル級まで8000匹

オーク系はノーマルからハイオーク級まで4000匹

オーガ系はノーマルからジェネラル級まで1000匹


アキトはこのままだとまずいと思ったので情報提供をすることに決めた。


「私の特殊スキルでは魔物勢力の大体の数がわかりますが、お知りになりたいですか? 」

「本当かね!?是非教えてくれ」

「正直に言わせてもらいます。領主様の見通しは甘すぎます。この話を聞きましたら急いで早馬を飛ばしてください」

「そ、そうか。とりあえず聞いてみないと判断できない。まずは教えてくれ」


アキトはハァとため息をついてから話し始める。


「まず、魔物の総数は現時点で1万9000匹、しかもゴブリンやオーク、コボルトは上位種まで含まれ、さらにオーガもジェネラル級含み1000匹規模でいますよ。魔物の内訳はゴブリン系が6000、コボルト系が8000、オーク系が4000、オーガ系が1000です」


アキトの話を聞いているうちにトマスの眉間にどんどん皺がよっていく。


「その話の信憑性はどの程度なのかね? 」

「ほぼ100%です。ほぼがついているのは私の特殊スキルでは人間がカウントされないためです」

「おい!ディビス! 」


トマスはアキトの話が事実かどうか確認するよりもまず事実だった場合の軍の被害を考えたため、すぐ動くことを決意する。トマスは伝令兵なのだろうディビスを呼び出し、その間に今の話をメモに書いていく。


「領主様に急いでこれを届けろ。今のままの進軍計画では全滅する可能性が高い。大至急だ! 」

「はっ。行って参ります! 」


まだ東門からはあまり進んでいない。すぐにアルバートに話が伝わるだろう。アキトは少しでも兵力を増やしてくれればいいがと不安なまま進軍を続けることになった。


「戦闘開始の1日前でも知ることが出来たのは助かった。明日の進軍予定では前線基地を築いた後は全軍でミスリル鉱山に進軍し、魔物を駆逐予定だったのだよ。相手の規模がわかれば魔物を少人数で釣りだし、砦で防衛戦を行う等やりようもあるからな」


確かに防衛戦という形にすればこちらの被害は減るだろう。うまく魔物の軍勢を少数ずつ引き寄せられれば時間はかかるが安全だ。


「なるほど、1つ疑問があるのですが聞いてもいいでしょうか? 」

「ああ、話せることなら答えよう」

「今回のように魔物の混成軍と言うのは良くあることなのでしょうか?以前ゴブリンとオークの戦争を見たことがありましてそれが不思議に思ったのですよ」


アキトは以前ランド村近くの森でオークとゴブリンが争っているのを見ている。今回のように混成軍と言う形でまとまっているのが不思議だった。


「ふむ、魔物が混成軍を作る時には1匹だけ強力な個体がいることがあるんだ。今回の場合はおそらくアキト君が言ったジェネラルオーガだろう。私たちの予想ではゴブリンキングやコボルトキングが存在しているのではないかと考えていたのだ。だから今回はAAランクの冒険者パーティーにボス討伐の指名依頼を出してあるんだよ」


AAランクと言えばアキトたちの100倍以上、魔物との戦闘経験がある歴戦のパーティーだろう。戦闘能力も現在のアキト並かそれ以上あるかもしれない。アキトは少しだけ安心できた。


「それなら安心ですね。魔物を減らすことは出来てもボス級を倒せないのでは逃げるしかないですからね」

「ハハッ、そうだな。だがAAランクパーティーだけで全ての敵は倒せない。今回は想像以上に魔物の数も質も高いようだ。砦を利用した長期戦を考えなければならないかもしれないな、アキト君の力のお陰でそれができる。助かるよ」


アキトたちは雑談しながら渓谷を進んでいく。アキトは[知識の書]で魔物の動きを探りながら移動している。渓谷の半ばほどについた時だろうか。魔物軍に動きがあった。


「トマスさん、まずいです。魔物が街に向かって進軍を開始しました!このまま進んだら轢き殺されますよ! 」

「なんだって!?急いで後退するべきかどうするべきか・・」


トマスはここでアキトが嘘をつくメリットが全くないことも、アキトの目を見て嘘がないこともわかっている。だが、信じきるにはまだ一歩足りないようだ。だがアキトはここでトマスに迷いが生じると全滅の可能性が出てくることは理解している。


「トマスさんが俺の言うことが信じきれないことはわかっています。でも今だけでいいので信じてください」


アキトはトマスの目をジッと見つめる。トマスはアキトのあまりの迫力に気おされている。


「今から急いでここに砦を築きましょう。ここは幅がそこまで広くない。両脇まで70メートルってところです、1時間もあれば壁が築けます。ここにゲートを開くので急いで伝令を!魔法兵を増員してできるだけ早く砦を築かないと! 」


トマスは唸りながらアキトの指示に従うことに決めた。


「そ、そうだな。アキト君頼む」


アキトはゲートを開いた。その間にトマスは伝令兵に渡すメモを書き、伝令をゲートから送り出した。


「アカリ、ヨン急いで砦構築を始めてくれ」

「「了解!」」

「レン、ダスカーその間の護衛をしてくれ」

「了解!」

「畏まりました、旦那様」


トマスも魔法兵と騎士に素早く指示を出し、砦構築作業を進める。


「アキト君、どれくらいで魔物の軍勢はここまで来るかな? 」

「3時間ってところでしょうか、砦の形を作るには時間がかるかもしれませんが、今いる魔法兵だけでも分厚い防壁を築くのは1時間もかからないでしょう。破られても構わない防壁を100メートルごとに2枚、最終防衛用の防壁を1枚急いで作ってください」

「そうだな、時間を稼ぐのがまず大事だ。アキト君の指示通りに動こう」


アキトは魔物側に一番近い防壁のさらに魔物側に行き、大槌スキルの山砕で地面を砕きはじめた。威力が高すぎて縦横幅5メートル深さ6メートルほどの堀が出来ている。防壁作りにアースを堀作りに山砕きを交互に使用し、MENやSPPが少なくなればゲートから運ばれてくる物資の中からMENポーションやSPPポーションをもらい、さらに防壁と堀を広げていく。2時間ほどで渓谷70メートルに渡る堀が完成した。


その頃にはゲートからどんどん流入する人員や物資により、厚さ3メートル高さ6メートルほどの防壁が3重に出来ており、防壁にははしごがかかり、上部には弓兵や砲兵、魔法兵が配置されている。現在は最終防衛としての砦を建設している。兵数も1000名ほどが集まっていた。だがさすがに明日進軍予定となっていただけあり、なかなか人員補充はすぐには終わらないようだ。



アキトは後は他の人にまかせ、徐々に大きくなってくる魔物軍の足音である地鳴りの音を聞きながら休憩するのだった。

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