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閑話:ダスカー

今回はダスカーが主役です。

ダスカーは28年前、獣人国家ドレイク北西部の山間部にある500人ほどしかいない小さく名前もない龍人族の集落に産まれる。ダスカーの家族は両親と姉の3人で、家族に見守られながら幸せな幼年期を過ごした。


龍人族は普通の人間に比べ、非常に高い戦闘能力を持っている。龍人族の集落では農耕はせずたまに来る行商人を除けば、山の中で採取する山菜、森の中で採る果物、狩猟で狩る獣や魔物、川で捕る川魚など、自然と共存する生活を続けている。そのため、ダスカーが5歳になった時には両親や姉と共に生活の糧を得るための狩猟にも参加していた。


ダスカーが12歳、姉のクロエが14歳になった頃にはすでに2人は立派な戦士とも言える戦闘技能を取得しており、大人がいなくとも姉弟に13歳の青髪セミロングに八重歯が目立つ女の幼馴染のニアを含めた3人だけで狩猟を行えるほどに成長していた。今も3人で東の森に入り、肉を得るために獲物を探している。


「姉さん、ニア、このままここでずっと生きてくつもりか? 」

「ダスカー、それはどういう意味? 」


ニアがダスカーに真意を問う。


「俺たちは皆この集落から出たことがないよな。でもこの前アリのオヤジさんが山をおりて東の方にしばらく行くとでっかい街があるって言ってたんだ。俺たちの集落の何倍、何十倍の大きさらしい」

「へ~、人が一杯いるからそこに行ってみたいってこと? 」

「そこにはこの集落では食べられないめちゃくちゃ旨いものがあるんだってさ。それが食べてみたい! 」


ダスカーは食い意地が張っていた。


「確かにおいしいものあるなら食べてみたいなー。一回行ってみる? 」

「皆で行こうか! 」


ダスカーだけでなく3人とも食い意地が張っていた。その日から3人は家族に黙って旅に出るための保存食をこっそり集め始めた。計画開始から1週間、ダスカーたちは家族に置手紙を残し、東に向かって旅を始めた。


ダスカーたち子供3人旅をはいえ、すでに下手な冒険者より強い3人である。途中盗賊に襲われていた商人を助けたことで護衛も兼ねて街までつれていってもらえることになった。


3人は街に到着するや否や、商人にもらったお金で食堂に入っていく。初めての注文を済ませ、ドキドキしながら出てくる料理を待ち、運ばれてきた料理に手を出す。あまりのうまさに3人とも目を大きく開いた。龍人族の集落では塩で少しだけ味をつけただけのほぼ素材の味で食事していたのだ。香辛料をタップリ使った料理に感動するのは当たり前だった。


「もっともっと色々なものが食べたい! 」


ダスカーたちはこの街に住んでおいしい物を毎日食べたいと思ったので、すぐに行動に移す。宿を取り、商人にお金を稼ぐなら今は傭兵団がいいと言われたので紹介された傭兵団に入ってしまう。ダスカーたちは人を疑うことを知らなかった。


傭兵団に入ってからは地獄の日々が待っていた。この時獣人国家ドレイクとゴルディアス王国は戦争をしていた。いや、この時だけではない、獣人国家ドレイクとゴルディアス王国はほぼ毎年のように戦争を続けている。そのため、ダスカーたちは傭兵団との契約に縛られ、獣人国家ドレイク側の戦力としてすぐに最前線に配備され戦いに駆り出されたのだ。


それまで人を殺したこともなかった3人の精神は戦争が続くにつれ擦り切れていった。お互いしか信用できない、油断していれば味方の男がニアやクロエを犯そうと襲い掛かってくることも度々あった。


そんな状況である、ニアとダスカーが強い絆で結ばれるのは必然だったのだろう。ダスカー19歳ニア20歳の時ニアの妊娠が発覚した。2人の間に子供が出来たのだ。ダスカーは傭兵団から抜けることを決意する。


ダスカーは傭兵団長を殺し、契約書を破り捨てニアとクロエを連れてゴルディアス王国方面へ逃亡を開始した。すぐに傭兵団から追っ手がかかり、何度も戦い退け必死にダスカーたちは逃げた。傭兵団の追っ手は執拗だった。裏切り者は絶対に許さぬと言わんばかりにゴルディアス王国に入ってからも追ってくる。しかし、疲れに疲れ果て終わりが見えない逃避行を行っていた時、救いの手があったのだ。


ゴルディアス王国子爵、カイル・ヴィリアとの出会いである。カイルは追われているダスカーたち3人を見て盗賊に追われていると勘違いし、自分の手勢の騎士と共に追っ手を壊滅させた。


ダスカーはカイルに事情を正直に話した。カイルは自分の勘違いで傭兵団を壊滅させてしまい渋い顔をしたものの、どちらにせよ敵国の傭兵団だったのでむしろ良かったのだと思いなおした。そしてダスカーたちが使える手駒になりえると判断した。


「ダスカー、クロエ、ニアよ。俺に忠誠を誓え。そうすればお前たちに安息をくれてやろう」

「何言ってんだ。爺さん」


ダスカーはこの時まだ馬鹿だった、安息の意味がよくわからなかったようだ。カイルはダスカーには教育がまず必要だと判断する。


「お前の家族、子供が安心して暮らせる生活をくれてやるっていってるんだよ、この馬鹿が! 」

「それならそういってくれよ。そんな生活送れるなら俺の忠誠なんてくれてやるよ」


こうしてカイルの庇護化でダスカーたちの生活が始まった。ダスカーたちはカイルの護衛としての仕事と様々な教育を与えられ、幸せな生活を送っていた。この時すでにクロエはカイルから独立し、服飾の仕事を始めている。しかしその幸せは長く続かなかった。


「ダスカー、ごめ・・ん。後は・・・まか・・せるね・・。この子だけ・・は・・しあわ・・せに・・して・・・ね・・・」


最後に娘の幸せを願い、ニアは出産と同時に息を引き取ってしまう。ダスカーは号泣し3日間酒浸りになった。だがクロエとカイルの説得とニアの最後の言葉を思い出し、この娘だけは絶対に幸せにすると心に誓い立ち上がることができた。


娘を幸せにするためには金が必要だと思ったダスカーはカイルに相談した。カイルに給料を上げて欲しければ執事になれと言われたダスカーは与えられる教育をひたすら吸収し、護衛兼執事としてカイルに認められるようになる。


だがさらに数年後、ダスカー25歳の時娘が難病にかかってしまった。この時もダスカーはカイルに相談し、利息なしでの借金として高額な薬を用立てて貰った。


さらに数年後、ダスカー28歳の時、カイル・ヴィリアが急逝してしまったのだ。現代医学の力があれば脳卒中だと診断されただろう。息子のレガード・ヴィリアが跡を継ぎ、借金を返せなかったダスカーは娘の代わりに奴隷となる。



そして現在の物語に至る――――――――――

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