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80.新しい住人

5月15日8時、アキトたちがロビーに集まっているところに屋敷の扉をノックする音が響いている。この屋敷に来客があったようだ。


アキトは外の様子を知覚拡張で探ると女性1人に子供が1人、それだけで相手が誰かがわかったので全員に指示を出すことにする。


「皆、今日のダンジョン行きは休みにする。各自思い思いに過ごしてくれ。ダスカーも今来ている客の相手が終わったら休みにしていい」


アキトの様子に全員相手が誰かわかったようで、全員がダスカーを見ている。もしこれでアキトの勘違いだったらものすごい気まずい雰囲気が流れるだろう。


「「「了解!」」」

「ありがとうございます。旦那様」


ダスカーは少し涙ぐみながらアキトにお礼を言う。その間にアキトとダスカー以外の全員が部屋に向かっていく。早速ダスカーが扉を開けるとそこには満面の笑顔の青髪ロングで龍眼すっきりとした顔立ちの身長170センチほどの長身30代女性とダスカーに向かってくる青髪セミロング美幼女がいた。


「パパ! 」

「ミリー! 」


ダスカー父娘の感動の再開である。ダスカーのしゃがむタイミングがずれたせいで幼女がダスカーの足に抱きついているだけに見えても感動の再会だ。ダスカーのズボンが幼女の鼻水と涙でグショグショに濡れて汚く見えても感動の再会だ。アキトも自分の親のことは心底どうでもいい存在と思っているが、こういう感動の場面は嫌いではない。入り口にいた30代の女性がアキトの存在に気づいたようだ、アキトに話しかけてきた。


「お嬢様、あなた様のお父上には私たち一同感謝にたえません」


30代女性はダスカー父娘の感動の再会を見て少し涙ぐみながらアキトにお礼を言ったが、その瞬間アキトの顔が引き攣った。


「お、おい姉さん。その方が旦那様だ」


ダスカーの言葉に空気が凍った。過去最大級の気まずい空気が流れている。幼女は首を傾げて状況が理解できていないようだが感動の場面が台無しだ。アキトもそれに気づいたのだろう。内心どう思っているかはともかく明るい笑顔で話しかける。


「はは、俺は良く女性に間違われるんです、いつものことなので気にしないでくださいよ」

「も、申し訳ございません! 」


土下座せんばかりに頭を下げる30代女性の肩に手を置き、アキトは頭を上げるように言う。


「頭を上げてください。今後の話もしたいので少し2人で話をしませんか? 」

「はい、わかりました」

「ダスカー、お前の姉さんを少し借りる。今日は今から休みにしてくれて構わない。娘さんとの時間大切にしろよ」

「ありがとうございます。旦那様」

「ではこちらへお出でください。俺の名前はアキト、お名前を伺っても? 」

「これは名乗りもせず申し訳ございません。私の名前はクロエと申します。あちらにいるダスカーの姉にございます」

「ええ、わかってますよ。ささ、どうぞこちらへ」


アキトの案内でクロエを1階の応接間に案内する。


「こちらへ座ってください。今お茶を持ってきますので」

「ご丁寧にありがとうございます」


アキトはクロエにお茶を出し、テーブルを挟んで対面に座る。そこで本題を切り出した。


「こちらにご案内したのは、クロエさんの今後について考えたいと思ったからなのですよ。ダスカーの話ではヤクトの街に引越しをされるとか。お仕事の方はもう見つけたのですか? 」

「昨日の夕方こちらの街につきまして、白熊亭に滞在して今朝すぐにこちらのお屋敷に向かいました。そのため、お恥ずかしながらまだ住む場所も仕事も探してもいない状況です」

「なるほど。クロエさんは料理や接客応対、掃除などは得意とされてますか? 」

「料理はダスカーと同程度かと思います。接客応対、掃除は一般家庭レベルには出来るかと思います」


アキトはクロエをメイドとして雇うかどうか考える。話してみた感じマトモな人のようだし、ダスカーの保障もある。ダスカーを幸せにしてやりたいとも思っている。ここで姉を放り出すより雇った方がいいだろう。


「それではこちらでメイドとして雇用されませんか?仕事内容はあまりきついものではないと思います。住み込みで3食付、給金は月15万ポロンではいかがですか? 」


この世界の一般市民の給料平均は月20万ポロン前後、住み込み3食付なら平均より好条件だろう。クロエは目を大きく見開いている、驚いているのだろう。


「本当によろしいのですか?ダスカーやミリルまでお世話になっているのに私まで・・・」

「ええ。ダスカーを購入した時、幸せにしてやりたいと思いましてね。それならダスカーのお姉さんの幸せも考えるべきだと考えます。ただ、これだけは言っておきます。多少の仕事のミスは許しますが、信用を傷つける行為だけはお控えください。その場合容赦なく首を切りますので」

「ありがとうございます。そのお話お受けすることにします。信用を傷つける行為だけはしないと心に深く留め置きます。アキト様」


アキトは念のため釘だけをさしておいた。アキトたちの秘密が漏れる可能性を少しでも減らすためには必要な措置だろう。


「それでは簡単に仕事内容のご説明を致します。やって頂くことは来客対応、掃除、屋敷に住んでいるものへの3食分の食事の用意、昼と夜に風呂の用意。後は思いついたら指示しますので。暇な時は屋敷内で出来るご自分の趣味を見つけるといいでしょう」

「畏まりました、アキト様」

「あとはわからないことはダスカーに聞いてください。住み込み部屋は1階ロビー横にある部屋を使ってください」

「畏まりました、アキト様。あの、よろしければ敬語はおやめください。メイドとして雇われましたので」

「あ、ああ。そうだな。よろしくクロエ」

「よろしくお願いいたします。アキト様」


アキトはクロエをロビー横にある部屋まで案内し、その後はクロエに宿まで荷物を取りに行く等準備をしてこいと言い、自室に戻った。


「そういえばメイドなのにメイド服がないな。服飾の仕事をしていたって言うしクロエに自作させればいいか」



アキトはぼそっと呟きながら昼まで寝ることにするのだった。

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