76.ピヨちゃんのイタズラとゲート
5月11日6時、アキトとピヨちゃんは食堂に向かっていた。途中1階ロビー階段にアカリがいた。
「おはよう!きのうは、ごめんね」
「気にしなくていい。元気は出たみたいだな? 」
アカリは一晩泣いていたのだろう、目元が少し腫れていたがどうやら吹っ切れたような顔になっている。
「うん!きょうからも、がんばる!でもかえるしゅだん、わかったら、おしえてね? 」
「わかったよ」
アキトたち2人+1羽で並んで食堂に向かった。すでに全員そろっていたようだ。アキトたちが席に着くと同時にダスカーが配膳を行い、ダスカーが給仕を行いつつ朝食を食べ始める。本日のメニューはパン、目玉焼き、ハムステーキ、フルーツ盛り合わせ、ミルクだ。
「今日はどうしようか?Lv5ダンジョンかLv6ダンジョンどちらかかな? 」
「昨日行ってた大精霊探しの旅はしなくていいの? 」
「あー、場所が厳しすぎるから今はいいかって思ってさ」
「どこだったの? 」
「獣人国家ドレイクのラム山と魔物領中央部にある名もなき渓谷、一番ひどいのは聖国家デスビアの王家の噴水だってさ。どう考えても現時点では無理」
「たしかに王家の噴水に住んでる大精霊襲うとか無理すぎるね・・・努力で何とかなる問題じゃないよ。最悪戦争になっちゃう」
「だから今のところはそれは無視して今までどおり戦力強化しつつダンジョンで魔物駆除作業かなーと」
「なるほどね! 」
そんな話をしているとレン、ヨン、アカリがミルクを同時に口に含んだ。このタイミングを待っていたのだろう、アキトにはピヨちゃんの目が一瞬光ったように感じた。皆から目立つ場所にわざわざ移動していたピヨちゃんが
「拙者、Lv5ダンジョンがいいと思うでござるよ。ニンニン」
「「「ブフォッ」」」
いきなり会話に入ってきた。しかもシュリケン投げるポーズまでつけてニンニン言っている。ピヨちゃんはノリノリだった。女性3人組が鼻からミルクを噴出しゲホゲホと激しくむせこんでいるのを見て、アキトとピヨちゃんはハイタッチをしている。どうやらイタズラは成功したようだ。ダスカーはわずかに目が開いただけだった。
「拙者、実は話せるでござるよ。今まで黙っていてごめんでござる」
アカリは鼻から出たミルクをダスカーから素早く渡されたタオルで拭いながら
「なんで、ござるくちょうなの!? 」
と突っ込んだ。レンとヨンはござる口調の意味がよくわからないみたいだ。
「拙者、これでも女神様の使徒でござる。このしゃべり方は女神様の趣味として強制されているでござる」
「そうなの。めがみさまって、なんかしたしみもてそう?なかんじがする」
「いや、結構などSだと思うよ。人間の命なんて数でしか考えてないような」
「拙者への嫌がらせも入っていると思うでござる」
「そうなんだ。それでも、いちど、あってみたいな」
アカリはやはり完全には帰還を諦め切れていないのだろう、女神様への期待がまだ残っているように見える。
「とりあえず今日はピヨちゃんの意見通りLv5ダンジョンに行くってことでいいかな? 」
「「「うん」」」
「畏まりました、旦那様」
アキトたちは朝食を終え、準備を始め全員がロビーにそろった。
「出発前に昨日取れた特殊ジョブの空間使いの魔法ゲートを試してみたいんだけどいいかな? 」
「どんな魔法? 」
「あらかじめゲート1を作っておく、別の場所でゲート2を作ればそこからゲート1に一瞬で移動できる魔法。とりあえず試してみよう。ゲートオープン! 」
アキトはロビーでゲートを唱えた。扉でも出来るのかと思ったらロビーに魔方陣が出来たようだ。
「庭でもう1回ゲートを作成するから、ノルン!こっち来て」
「なんだよ、朝から一体」
「ゲート作るからそこから潜ってくれよ。もし失敗してもお前なら死なないだろ」
「実験に使うために呼んだのかよ!いいけどさ・・どうせ俺なんて・・」
アキトは庭にゲートを作り、ぶつぶつ言ってるノルンを魔方陣に放り込んだ。ロビーに待機していた皆が無事にノルンがワープしてきたことを確認できたと叫んでいる。
「無事に出来たみたいだな、ゲートデリート!庭のゲートは解除と」
アキトはロビーに戻ってみんなに合流した。
「こんな感じで帰る時は楽に屋敷まで帰れそうだよ」
「便利!このゲートって何個も作れるの? 」
「作れるけど作ってる間1個当たりMEN値20も下がったままっぽいんだよね、MEN値が回復しない。だから展開しておくのは必要最小限かな」
アキトの現時点でのMEN値81では最大でゲート4個までしか同時展開できない。4個同時展開したら残量は1なので魔法が使用できなくなってしまう。
「でもこれでダンジョンの中にもゲート作れば往復がとても便利になったね!ゲート展開はアキトのMEN値負担が大きいかもだけど毎日屋敷に帰れるのは凄い助かるよ」
「ねー、お風呂入れない生活から解放されるならその分私たちが頑張るよ」
「うん、まほうは、わたしたちにまかせて」
アキトたちは乗り合い馬車に乗り、Lv5ダンジョンに向かうのだった。




