71.物件探し2とピヨちゃんの進化
5月10日8時、アキトたちは準備をすませ不動産屋へ向かっている。
「最初は例の気になる元男爵屋敷から行ってみよう。ダスカー、不動産屋まで案内してくれ」
「畏まりました、旦那様」
「どんないわくつき物件なんだろうねー!逆にワクワクするよね! 」
「お姉ちゃんはしゃぎすぎ、ちゃんと前見て歩かないと転ぶよ」
「きっと、ゆうれいがいっぱいいる」
「ファンタジー世界なのに幽霊まだ見たことないな。レイスとかゾンビとかいるんだろうなー」
「時々アキトの言うことの意味がよくわからないよ!ファンタジー? 」
「あー、流してくれ。俺の国の言葉だ」
「そっか!了解ー」
アキトたちはくだらない話をしながら不動産屋へ到着した。
「すいませんー、物件探しに来たんですけど」
「いらっしゃいませ、賃貸でしょうか?購入でしょうか? 」
「購入で考えてます」
「ではどのような内容でお探しでしょうか? 」
「最低で7LDKで考えているのですが、元男爵屋敷で8000万って物件ありましたよね?まずそこを見たいのですが」
「それではこちら購入書類になります。ここにサインをお願いします」
「っていきなりサインは早すぎですよ!まずは見せてくださいよ」
「・・・」
明らかに販売員の様子がおかしい。いきなりサインを求めるとか常軌を逸している。
「あのー、どうかされました? 」
「いえ、何でもありませんよ、元男爵屋敷ですね。そちらは少し訳ありの物件でしてそれでもよろしいですか? 」
「ええ。明らかに値段の桁が1つ違いますしね。訳ありだとは思ったので気になっていたんですよ。タチの悪い悪霊でもいたりするんですか? 」
「そういうわけではございません」
「では欠陥住宅で住むことができないから土地代としてとか」
「いえ、とても綺麗なお屋敷ですよ。掃除も毎日のようにされているようです」
アキトは何が問題なのだろうと唸った。
「では何が訳ありなんですか? 」
「精霊様が住み着いてしまったのですよ」
「はあ。住んでると何かイタズラでもするんですか? 」
販売員の目がくわっと開いて急に饒舌に話しはじめた。
「イタズラなんてかわいいものじゃないですよ!元々住んでいた男爵一家もいきなりやってきた精霊様に寝ているところを2階から落とされて大怪我させられ、その後屋敷に入ることもできなくなりました。精霊様が言うには気に入った人以外ダメだそうで、今までこの物件に興味を持った人を案内しても毎回「この人ダメ、この人顔が嫌い、この人匂いがヤダ、ハゲはNG」とか精霊様が言い出して無理に住もうとすると魔法で叩き出されるんですよ。かわいい顔してるだけのヤクザですよあれは!そもそもあの家は今も男爵の持ち物であって精霊様の物じゃないんですよ!持っているだけで税金取られるから男爵からは早く売れってせっつかれるしこんな事故物件売れるわけないじゃないですかあああ!今まで100回以上ですよ。100回以上!案内しても売れないんですから! 」
販売員はものすごいストレスが溜まっていたようだ。一気に言い切ってハァハァ言っている。顔が超真っ赤だ、酸欠で倒れそうだ。
「ではその精霊を討伐してしまえばいいのでは? 」
「そんなことできませんよ!女神教では精霊様は女神の使徒として扱われているんです。ギルドに討伐依頼なんて出したら女神教徒に襲われますよ!そもそも倒せる冒険者がいるのかどうか・・・」
「はあ、なるほど。女神の使徒か」
アキトは女神の使徒なら自分にも女神の加護があるし、ピヨちゃんも使徒だしなんとかなるんじゃないかと軽く考えた。
「では解決できたらさらに値引き、してもらえますよね?具体的には半額とか」
「ええ、どうせ無理でしょうがもし解決できるなら半額でいいです。と言いたいところですが男爵に相談しないとそこまでの値引きは無理ですよ。私の一存でできるのは6000万が限度ですね」
「そうですか、では解決できたら元男爵屋敷を6000万以下で販売すると言う書類を作りますのでサインをしてください」
「わかりました。ですがあなたが解決できたらですよ?あなた以外が解決した場合には本契約は無効ですと書いておいてください」
「はい」
アキトは男爵まで話を通すと面倒なことになりそうだと思ったので値切りは6000万までで我慢した。早速販売員の案内で中央地区の高級住宅地にある元男爵屋敷に向かった。
「こちらが元男爵屋敷です」
庭も屋敷の外観もとても綺麗になっている。洋館風で雰囲気も悪くない。
「綺麗ー!花壇に花がいっぱいだ! 」
「ホントお貴族様のお屋敷って感じだねー。こういうお屋敷に住めたらいいなぁ」
「隅々まで手が行き届いてますね。庭の管理や掃除はされているんですか? 」
「精霊様が使役している下級の精霊様にやらせているようですよ」
「なるほど」
アキトたちは販売員を先頭にし屋敷に入っていった。2階まで吹き抜けになっている広いロビーは高級感タップリだ。すぐ入り口にはアキトたちが来たことがわかっていたのだろう、精霊様らしき土色の小さな男の子がふわふわと浮いて待っていた。
「また来たのか、人間。ここは俺たちの物だ。怪我をする前にさっさと帰れ! 」
「精霊様が気に入った人間ならここに住んでもいいと仰ったのですよ。まずはご確認ください」
そう言って販売員は屋敷から出て行った。巻き込まれたらたまらないとでも思っているのだろう。
「こんにちは、精霊様、あなたは土の大精霊様ですか? 」
「そうだ、人間。お前は女か?いや、違うな男だ。オカマってやつか? 」
ピキッ、空気が凍った。アキトの額には青筋が浮いている。
「いえ、違います。言ってはいけないことを言う悪い子にはオシオキをしないといけませんねぇ」
アキトは土の大精霊様の頭にグリグリを開始した。
「え?痛い、いたいいたいいたいいたい。何でお前精霊の俺に触れるんだ!?やめろ!やめろってば!やめて!やめてください!お願いします!ぐすっ」
アキトのお仕置きに土の大精霊様はエグエグと泣き出した。
「俺は、ぐすっ、人間なんがと違っで、うぅ、えらい、ひっく、んだぞお。女神ざまが、天罰、おどずんだぞお」
土の大精霊は女神の名前まで出し始めた。泣いてるところを見るとただの子供にしか見えない。
「俺は女神様にこの世界に連れてこられた人間だしそれくらいじゃ天罰落ちないから。ステータス見れるか?俺の加護と称号の確認してみろガキ」
すでにアキトの中での大精霊への敬意はマイナスに突入した。5分ほどしてなんとか子供は泣き止んだ。
「うぅ、加護?称号?何でお前なんかがそんなもの持ってるんだよ! 」
「女神様にこの世界の人類圏を拡大しろって言われてるんだよ。お前も使徒なら協力しろよ」
「知るか!これでも喰らいやがれ! 」
巨大な岩弾が高速でアキトに襲い掛かる。さすがに至近距離ではアキトも何もできず屋敷の外まで吹き飛んだ。
「アキト!」
「お姉ちゃん、アキトの回復!ダスカーさん時間稼ぎして!アカリ、屋敷は壊せないから下がって!」
「畏まりました」
「わかった」
いきなり大精霊の攻撃があったがヨンの指示で動き出す。
「へー、俺に逆らうんだ。お前らも大怪我したいみたいだね」
大精霊はニヤニヤしながら弱いものをいたぶる嗜虐心たっぷりな目でダスカーたちを眺める。その間もダスカーの攻撃は大精霊をすり抜けてしまい、ダメージが入らない。
「ダメージが入りません。撤退を」
「くふふ。あいつにやられた分お前たちにもやり返す。逃がさないよ」
「ピピピィー! 」
ダスカーの指示で撤退を始めようとしたとき、ピヨちゃんが大精霊に突っ込んでいく。バクッ、ピヨちゃんが大精霊に噛み付いた。
「え?いたいいたいいたいたい、食べられてる?力が抜けていくなんだこれはあああ! 」
ピヨちゃんが大精霊を食べているようだ。徐々に大精霊は小さくなっていく、10センチサイズになった時やっとピヨちゃんが食べるのをやめた。
ピヨちゃんは【大精霊巨大ヒヨコ】に進化した。
精霊化を覚えた。
精霊魔法土を覚えた。
ステータスが変化した。
ATK95→128
DEF832→849
VIT668→712
DEX82→131
INT730→842
MEN1→157
SPP15→85
SPD254→378
HIT40→101
アキトが戻ってきた時にはピヨちゃんが進化していた。見た目が土色のヒヨコに変化、体長も2メートルまで大きくなった。精霊化の影響だろうか、薄っすらと後ろが透けて見える。
《精霊使い》特殊ジョブを入手しました。
アキトたち全員がピヨちゃんの進化に絶句する中、10センチ大になった大精霊は気絶していた。
《名前》 アキト・ホウジョウ ギルドランク:C
《称号》天才の異世界人(成長速度100倍)
《ステータス》
ATK 12 +15 +11 +10 +11 +130% +100% +100% +100% = 312
DEF 10 +12 +15 +12 +110% +130% +110% = 220
VIT 10 +15 +130% = 57
DEX 12 +15 +130% = 62
INT 13 +12 +15 +110% + 130% = 136
MEN 12 +12 +110% +130% = 81
SPP 10 +10 +100% = 40
SPD 12 +12 +15 +100% +130% = 128
HIT 11
《加護》女神の加護(仲間の成長速度10倍)
《ジョブ》《拳将》Lv0《上忍》Lv2《剣王》Lv0《白魔法》Lv2
《黒魔法》Lv2《槍王》Lv0《斧王》Lv0《大剣将》Lv1
《槌将》Lv0《防将》Lv2《大槌将》Lv1《盾王》Lv0
《棒王》Lv0《大盾将》Lv2《司書長》Lv0
《特殊ジョブ》《魔物使い》《ダンジョンマスター》《鑑定士》
《精霊使い》
《熟練度》《格闘》Lv10《短剣》Lv10《剣》Lv13《杖》Lv11
《槍》Lv13《斧》Lv13《大剣》Lv10《槌》Lv10
《小盾》Lv11《大槌》Lv10《盾》Lv13《棒》Lv13
《大盾》Lv11《本》Lv13
《スキル》《豪拳》Lv5《投げナイフ》Lv5《隠蔽》Lv5《速斬》Lv5
《強斬》Lv5《上級回復魔法》Lv2《上級攻撃魔法》Lv2
《速突》Lv5《強突》Lv5《強撃》Lv5《爆撃》Lv5
《重斬》Lv5《爆斬》Lv5《強打》Lv5《爆打》Lv5
《堅固》Lv2《遮断》Lv2《豪蹴》Lv5《岩砕》Lv5
《受流》Lv5《庇う》Lv5《連撃》Lv5《三連撃》Lv5
《壁砕》Lv5《城砕》Lv1《防砦》Lv2《四連撃》Lv5
《弾飛》Lv5《十字斬》Lv5《薙払》Lv5《地響》Lv5
《執筆》Lv5《鑑定》Lv5《速読》Lv5《滅斬》Lv1
《特殊スキル》《アタックオーラ》Lv1《自動回復量アップ》Lv1
《大型殺し》Lv1《中型殺し》Lv1《魔防》Lv1《致命》Lv1
《格闘マスター》Lv1《防御無視》Lv1《物防》Lv1
《スピードオーラ》Lv1《物攻》Lv1《ガードオーラ》Lv1
《器用》Lv1《マジックオーラ》Lv1
 




