1本目「剣道はしたい気分じゃないんだ」
春・・・桜の花びらが舞う。 校庭には忙しそうに花びらを掃き集める教師の横で着慣れない新品のブレザーを着用した生徒が次々に学校へ入っていく。
胸には桜を模したブローチがつけられていた。 そんな中、地毛の茶髪と、切りすぎた前髪を気にした生徒が入ってきた。
彼の名は進藤廉十郎。 ここ、邦連高校の入学者である。
邦連高校は神奈川内の私立高校。 偏差値はさほど高くない。 そのためか、この高校には多くの非行生徒がいる。
俗に言う不良である。 そしてこの高校の男子剣道部が不良の温床になっていた。
そのため、男子剣道部を廃部にするという案が出され、入学式の日に職員会議が行われていた。
「今年は・・・男子剣道部を廃部にしよう・・・」
「これ以上不良の居場所を作ってはなりませぬ・・・」
「で、ですが・・・彼らにも居場所ってモノが必要だと思うんです。 社会や学校、家庭からものけ者にされる彼らの居場所が・・・」
「それは彼らが不良だからだろう。 だが君の熱意は汲み取った。 いいだろう。 入部希望者が5人集まったら部を存続させてもいいぞ。」
「あ・・・ありがとうございます!」
「その代わり、我々は無干渉だ。 この問題は教師の熱意次第ではなく、生徒の熱意次第だ。」
「・・・剣道部あるのか・・・」
廉十郎は出し慣れない掠れる声でそう呟いた。
「剣道部・・・興味あるんですか??」
ちょっと高めの声・・声優のような声がした。 廉十郎は声の主の方を向く。
「剣道部・・・興味あるんですか?」
再び聞きなおした少女に対して廉十郎は口ごもるようにしてうだうだ言ってそそくさと去っていった。
「あ・・・あの・・・ワタシ、竹下有乃っていいます! 剣道部入るなら、1年3組に来てくださいね!」
「あ、はい・・・ダイジョブです・・・」
今廉十郎に話しかけた少女、竹下有乃は中学校のときに剣道をやっており、県大会でも上位に入るほどの実力者だったため推薦でこの学校に入学してきたのである。
そして、廉十郎自身も、剣道の強豪中学校、西寺中剣道部出身である。 また、祖父が剣道の道場の師範。 父がその師範代と言った剣道一家に生まれた少年である。
「剣道か・・・ハァ・・・」
なぜ廉十郎がこんな憂鬱な気分になっているかというと、その剣道の才能を受け継いだのは双子の兄貴の凛十郎であり、弟であった廉十郎は剣道の才能を引き継がなかったのである。
(俺はもう・・・剣道をしたい気分じゃないんだ。)
廉十郎は机の隅に一人でずっと座っていたのだった。入学式が始まるまで。 続く
初めての投稿ですが、温かい目で見ていただけるとありがたいです。