〇〇の世界-3
さてさて、僕と咲は家に帰り、僕は夕食の準備をして、咲はテレビをみることになった。
咲……少しは手伝ってくれ。というような願望を僕は必死に押さえながらも、インスタントカレーを作り、リビングにあるテーブルに咲の分と僕の分の計2つを対になるように配置していく。
ちなみに、僕の両親は現在『新婚旅行パート21』を満喫中なので家にいない。うっほ! 女子と二人きりじゃん! おまっ、なんもしねえのかよ!! とか言う輩はちょっと黙ってほしい。僕は咲にそんな感情を抱くようなことはまずない。断じてない。100%ない。いや、200%ないッ! はず!
「くぅーん……いいにおーい……」
匂いに釣られて、咲がテレビから離れてテーブルに寄ってきた。目が線になっている。
そんなのお構いなしに、僕は仕上げにスプーンを並べて、コップを配置する。これで、完成。作業時間10分。
僕は、徒労の息を少しはいた。
「よし、食べるか」
「うん! しんちゃん、いっただきまぁーす!」
「いただきます」
今の会話だけを聞いてると咲が変態発言をしたようにも捉えられるが、まあ普通に考えて違う。
咲は、スプーンを早速装備して、カレーをすくい、
僕の口元へ持ってきた。
「はい、あーん」
「まて」
スプーンを僕の口に持ってきたまま、咲は首をかしげる。
「おかしいと思う。うん、おかしい」
「ん、なにがー?」
「なんで、僕はハイアーンなんてことされなきゃ、いけないのでしょうか」
「だって、昼間牛丼の牛肉の部分だけ食べちゃったから」
「それは、あとで学食で何かをおごるという条約で締結したはずだ……!」
「そうだっけ~?」
「そうです」
僕は、咲のスプーンを押し返して、自分のカレーの咀嚼運動に勤しんだ。
「むぅ……もう2年も同棲生活してるのにぃー」
「その日本語は非常に不適切な気がするなぁッ!」
「えー? 間違ってはないじゃん」
「間違ってないけどね! せめて、居候しているとかにしてほしかったかな!」
咲は首をかしげる。
「いそーろーってー?」
「ぐ……居候が分からないとは……予想外だ」
「で、いそーろーってー?」
「……もういいよ。ほら、カレーを食べよう」
しょぼーんとした咲は上目遣いでこっちをちらちらと見ている。まあいつものスルースキルを発動しておく。
そうこうしていると、咲もあきらめたようで、仕方がなくといった感じでカレーを食べ始めた。
食事が終われば、次は風呂だ。一番風呂は僕が入る! と言いたいところだけど、咲がいるので咲に先に入らせている。僕は、その次。別に深い意味はない。ないから。
ちなみに僕の家の風呂は、大浴場というわけでもなく、源泉がわき出るんですというわけでもなく、ふつうのどこの家でもありそうな本当に普通の風呂。特に爆発するとかそんな恐ろしい機能は付いていないから安心だ。
パジャマ姿の咲が髪をドライヤーで乾かしながら風呂場から出てきて、それを確認した僕は、風呂場に向かった。ここで発生するお決まりのイベントは発生しなかった。期待はしていない。もちろん、咲のパジャマ姿を見てももう見慣れているので、特に驚いたりはしない。
僕も風呂に入って、数十分で出た。
歯を磨きながら、大きくあくびをする。突然眠気が襲ってきた。
家の時計で時間を確認すると、PM9時。
まだ寝るには早いけれど、特にすることもないので、テレビを見ている咲に一言「もうねる」とだけ言って、自室へ向かうことにする。
歯磨きを終えて、リビングへ移動。そこで、テレビを見ている咲を発見した。
「僕はもう寝るから、テレビ消してから自室にいってね」
咲はテレビから視線を離さずに、
「もう寝ちゃうのー?」
「することないしね」
僕らの通っている輝き高校では、特に宿題なんか出さないので、本当にすることがないのだ。何か趣味を持つべきか……。
「それじゃあおやすみ」
「うん、おやすみぃー」
僕はリターンし、
と。ここで、テレビの音が消えた。僕はもう一度振り返る。
咲が目をこすりながら、ついてきていた。
「咲ももう寝るのか?」
「うん、私も何か眠くなって来ちゃった」
「そっか」
何となく嫌な予感を抱きつつも、僕はなんとか黙って、自室への歩みを早める。僕のすぐ後ろで足音が聞こえた。
な、何で咲がついてくるのだろう。振り返ってみたい。めちゃくちゃ振り返ってみたい。さてどうするべきか。
「……」
やっぱり振り返ってみる。ゴツンと咲のおでこが僕の鼻に直撃した。
眠気は一気に冷める。
「いってぇ! ……咲、なんでついてくるんだよ」
「ふぇえ? そりゃ、寝るからー……」
咲はおでこをさすりながら、眠そうにしている。
「どこで」
「しんちゃんのへやー」
「まて」
本日二度目のマテきましたー。
咲はまたもや可愛らしげに首をかしげている。
「なーにー?」
「いつから、咲は僕の部屋で寝るようになったんでしょうか」
「前はいつも一緒に寝てたじゃん~。たまには一緒に寝ようよー」
「だが断る」
「え?! なんでー??」
「いや、よくよく考えてみたら、一緒に寝たこともないよね?!」
不思議がる咲を僕は少々強引に無言で咲の部屋へ誘導する。
「あぅー! たまには一緒に寝ようよ! 一緒に寝たほうが絶対楽しいってー!」
わけが分からないよって名台詞を大声で叫んでみたい衝動に駆られるけれど、僕は耐えた。
僕は電光石火の如く、自室へ避難し、鍵を何重にも掛けた。こうでもしてないと、咲にいつ侵入されるかわかんないしね。
それから、大きく深呼吸。気分を落ち着かせる。
今日の出来事を一通り知った読者さんにはもうお分かりかもだけど、咲は昔からこう。僕を男だと意識していない。……一応言っておくけど、僕は男の娘じゃないからね。こほん。こらそこ驚かない。
話を元に戻すけれど、咲はここに居候してきた当初からずっと僕に対する態度を変えてこない。家の中だけでなら別にいい。でも、外でも同じ態度で接してくるとなると、周りからの爆発しろエールが絶えないから、困る。僕と咲は特別な関係でもないのに、周りから勘違いされまくり……。
でも、そんな毎日が居心地が悪いといったらそれは嘘になる。
…………。
僕は。
僕は、咲のことをどう思ってるんだろうな。僕自身のことだけれど、分からない。
よく分からないという感情が体中を駆け巡る。
その感情を振り払うように、僕はベッドにダイブして、布団をかぶって、目を閉じた。
いい夢でも見て、忘れよう……。
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次回がががががgggg