〇〇の世界-2
受験が終わるまでは、できたところまで一日一更新ペースで更新したいと思います。
放課後になった。僕はパソコン部に所属しているので、PC室に移動することにする。
咲は、ダンス部なので、ここからは別行動で、6時に校門前で待ち合わせをすることになっている。
……ん? なんで待ち合わせなんてするのかって? ……………………。そのときになってから説明するので、今は追及してこないでほしい。よろしくお願いしますッ!
僕は、PC室のドアを開ける。ドアを開けると、数人がパソコンをカタカタといじっている姿が確認できた。パソコン部顧問の教師は見当たらない。いつもいないので、別にいいんだけどね。でも部長の姿が見えないのには、少し驚いた。風邪か何かで休んでいるのかな。
空いているところを探して、てきとーに座る。そこで、パソコンの電源を入れた。
パソコン自体は学校が去年、一新したらしく、比較的新しいパソコンで、スペックもそこそこだ。
とりあえず、僕はすることもなく暇なので、2chを徘徊することにした。
しばらくパソコンをいじって、ふと腕時計を見てみる。
5時50分。
パソコンに夢中になっていると時間がたつのって早いよね。恐るべしパソコン。
僕はパソコンをシャットダウンして、一言、部員に声をかけてから、PC室から出た。
校門まで、急ぎ足になる。
窓の外を見ると、きれいな夕焼けが見えた。なので、ケータイを取り出して、パシャッと一枚とっておく。
「しんちゃん~!」
校門まで行くと、僕が来たことに気がついた咲がうれしそうに手を振って寄ってきた。
「それじゃ、帰ろうか」
「うん! しんちゃんちに帰ろー!」
その先の声を聞いた瞬間、僕の周りにいた数人がバババッとこっちを振り向く。
僕は思わず咲の口を手でふさいだ。
「ばか! 何言ってんだお前!」
「むぐぅぅううぅう!」
何か言いたげなので、とりあえず、手をどかした。
「っぷはあぁ! しんちゃんひどい! 本当のこと言っただけなのに~!」
再び、咲の口をふさいだ。
「むぐぐぐううぅぅうううううう!」
「もう言わないでね☆」
咲が笑顔でうんうんとうなずいたので、そこで、釈放。
「でも、何で言っちゃいけないの?」
「そりゃ、周りから痛い目で見られるからだッ」
「痛い目ー? 目が痛いの? 周りの人?」
「……」
ここはスルーしよう。
それから、家に向かって歩みを進める。
…………。これでわかっただろうけど、実は咲は僕の家に泊まりこんでいる。
いや、別に咲とは血縁関係でも何でもないのだけど、あいつは……両親を2年前になくして、一人になってしまったのだ。普通なら咲は親戚さんとかそこらへんに行くことになるだろう。
だけれど、その親戚さんが。
その親戚さんが。
咲にはいなかった。
一人ぼっちになっちゃってたんだ。
あ、ごめん。別にここはシリアスなところじゃない。咲の両親は駆け落ちしたらしく、それで、咲は親戚さんを知らないのだ。ただそれだけ。
そんな感じで、しばらくしてある日突然、咲が僕の家に乗り込んできて、「しんちゃんの家に住みたい!」って大声で叫んだときは、さすがの僕も呼吸を忘れるぐらい驚いたよ。しかも僕の両親は快く承認したんだ。僕の両親は、咲の家の事情を知っていたので、快く承認したことに関しては、僕は何も言えない。だって、咲が困っているのに、助けを求めて手を差し伸べているのに、普通、その手を振り払う勇気を持ち合わせている人なんてほとんどいないだろ?
「今日の晩御飯はなーにー?」
咲が笑顔をこちらに向けて、楽しそうに聞いてくる。
僕は思考するのをやめて、少し考えて「カレー」と一言だけ言葉を発した。
咲は「やったぁー!」と子供っぽい声を上げた。それぐらい嬉しいんだろうね。
――こんな日常がずっと続くってのも悪くはない。むしろ続いてほしいって、僕は思った。
咲:しんちゃんの性癖はー!
周りの人:バババッ(振り返る音)
僕:こらっ
咲:むぐぅぅぅうう!!
僕:もう言わないよね? ね?
咲:コクコクっ
僕:よろしい
咲:しんちゃんの性癖はー!!
僕:おいこらおい!