残念ながらあなたでは認められない(無自覚悪女ver)
前作の続きの様なものです。
しかもどちらかと言うとIF設定が先にできてしまいました。
前作
残念ながらあなたでは難しい
https://ncode.syosetu.com/n0856lr/
スパダリに生家から助けてもらったヒロイン。
でもスパダリはスパダリじゃなかったし、実はドアマットヒロインも…みたいな感じです。
本当はヒロインはそのままドアマットヒロインで最初は書いてたのですが、途中からこちらになってしまいました。
無自覚悪女と書いてますけど、悪女って程でもなくて、ただ見たいものだけ見ていた人って感じですね。
前作と同じくスパダリの妹の独白です。
ごきげんよう、デイジー様。
本日はお招きありがとうございます。
今回のお茶会の目的は…あぁ、最近参加されたお茶会と夜会についてですか。
現実を目の当たりにしたとは?
そうですか、お気づきになられましたか。
風当たりの強さに。
それも貴女様よりも兄に対して。
以前は貴女様の資質についてご説明致しました。
そしてその上でまだデイジー様の今後を決めかねていらっしゃったので、今回は試しに一度お茶会と夜会に出席された。
もちろん存じ上げております。
私は夜会には年齢的に出席しておりませんでしたし、お茶会には用事でご一緒できませんでしたが、それでも聞き及んでおります。
夜会には様々な方々がいらっしゃるのは当たり前ですが、お茶会には人数を絞っていてもそれでもいらっしゃいますのよ、兄が無碍にしたお相手の家族、親族が、寄子、寄親などの女性貴族が。
お相手ご本人は流石に外されていたでしょう。
ですがそのお姉様や、かの方が今度嫁がれる予定の家の義母や義妹に当たる方はいらっしゃったと思います。
他にも別の方と兄との縁を取り持とうとされた兄のご友人のご親族なども。
他にも何かしらで因縁がある方に近しい方々がいらっしゃったでしょう。
派閥や様々な事情でデイジー様に考慮できないお茶会や夜会などこれからもごまんとあるでしょう。
貴女様にお優しい方々ばかりの社交の場とないに等しいのです。
その優しさも表面上のものでしょうし。
しかも頼りにしている兄がそもそも嫌われている。
そう、致命的に社交ができない次期侯爵夫妻を誰が認められるでしょうか。
そして兄の家族である私共、親族、寄子貴族は皆、“お二人の婚姻”には誰も反対しておりません。
これがどう言う意味かデイジー様にはわかりますでしょうか?
えぇ、つまりはお二人は既に、いえずっと前から次期侯爵夫妻ではないのです。
対外的には兄はまだ嫡男です。そして貴女様はその伴侶(今はまだ婚約者)と看做されています。
ですが、聡い方は既にお気づきです。
お茶会の席次を見ても一目瞭然でした。
いつから?…ですか。
それはそうですね、2年前に兄が貴女様と再会されて自分の伴侶として考えた時点が決定的でしたが、その前から兄は徐々に落第の方に向かっておりました。
私は4年ほど前から次期侯爵としての教育を受けていましたから。つまりはそう言う事です。
デイジー様は初めから次期侯爵夫人ではないのです。
兄は幼少期の淡い思い出を秘めずに育てた結果、デイジー様を見つけ出して救い出し、デイジー様のご実家を潰しました。
デイジー様はそれで救われたでしょうが、兄はそのために自分の家や周囲に多大な迷惑をかけておりました。
同じ様にデイジー様を救うなら、兄がやるべきことはデイジー様のご実家への婿入りでした。
ですが、それすら考えもしなかった。
それに兄は貴女様の話だけで判断しましたが、詳しい情報を掴んでおりますのよ?
ふふふ、えぇ、貴女様が虐げられていたと言う内容が本当に正しいのか…と言う是非を問うために。
結果、ご家族は別にデイジー様を虐げてはおりませんでした。
あら?何故…ですか。
貴女様から見たらそうだったのかもしれませんが内情が違います。
デイジー様の子爵家はこう言っては失礼ですが裕福ではありませんでした。
ご両親は堅実な領地経営をされておりましたが、災害など様々な理由で…
そこで、デイジー様の妹様を裕福な家に嫁がせて資金提供を得ようとお考えになりました。
デイジー様より妹様が着飾っていたのはそのためです。
だからと言ってデイジー様を蔑ろにしていたわけではありませんでしたが、貴女様は曲解しました。
お父様がデイジー様を次期当主としてお考えになったのは、妹様は要領が良く人のあしらいもお上手なので、どこに嫁に出してもやっていけるとお考えだったからです。
それに妹様は爵位にも拘っておられなかった。
逆に非社交的で内向的な貴女様は、社交的なお相手の婿入りを求めた方がすんなり行くのではとのことでした。
それと貴女様のその細さはご自分のせいではないですか?
だって偏食で食事に興味がなく、その上に自分の興味のある分野に没頭しては皆が集まる食堂には来ない。
没頭する分野も領地経営に関わることならまだ良いですが全く異なる分野で、でも研究者になるほどでもない。
そう、自己中心的な行いが今のデイジー様を作っているのです。
しかもデイジー様は学園の試験等では記憶力が試される分野はできても、論文形式は苦手であまりできない。
一通り覚えても基礎がきちんと身に付かず応用も然程きかない。
あら?図星を真正面から突かれてようやくお気づきになられました?
全ては貴女様の思い込みだったと言うことが。
デイジー様にとっての真実が、客観的な事実になり得なかった。
ただそれだけですわ。
本当にご家族は貴女様の幸福を願って色々仰っていたと言うのに。
聞きたいことだけ聞いて、見たいものだけ見ていた貴女様にはそれが酷い仕打ちに変換されていたのでしょうね。
とても残念なことです。
更に残念なのが、そんな貴女様の言葉をそのまま盲目に真面目に真に受けた間抜けが私の兄です。
初恋のお相手で優秀な貴女様を娶れれば、両親は自分の結婚についてあれこれ言ってこないと踏んだのでしょうけど、蓋を開けてみればこの程度。
ですから無爵の立場になるのです。兄は。
そしてその兄の伴侶である貴女もまた。
詐欺だ?ですか。
兄に選ばれたと言っても、まだ爵位も継いでないただの令息にすぎませんのよ?兄は。
貴女様との将来の約束など兄が勝手に言ってる口約束にすぎませんでした。
誰も認めておりませんわ。
お二人の婚姻以外は。
つまりは誰も貴女と兄を次期侯爵夫妻に見てなどおりません。
それにデイジー様を次期侯爵夫人にするには様々な根回しなども必要でしたのに、それを怠ったのは兄です。
貴女様も自分が次期子爵として教育を受けてきたのならば色々と気づくべきでしたね。
更に申し上げますと、ご実家である子爵家が没落すればデイジー様は元令嬢の平民になります。
高位貴族においてこの国では貴賤結婚は原則認められておりません。
特に当主となる者との婚姻は。
つまりは貴女様のご実家が爵位を手放した段階で、もっと言えば兄が子爵家を潰そうとした段階で貴女様との婚姻が兄が嫡子ではできない。
だからそう言った意味でも兄が降りるしかなかったのです。
兄はもしかしたら親族や寄子貴族のどこかに養女にしてもらうことを簡単に考えていたかもしれませんが、誰も賛同しなかった。
そもそも根回しもしていなかったので仕方ない事ですが。
兄の中での絵空ごとでしかなかったのです。
それに貴女様が兄に涙ながらに語った“強要されていた“と言っていたものは、領地経営に関わる重要なものだったそうですね。
それをそんな風に訴えているあたり、とてもではないですが侯爵家の当主夫人など熟せるわけがありませんわ。
デイジー様は政治や統治に興味がなかった。
なのに爵位は継ぐおつもりだった、貴族として生きるおつもりだった。
残念なすれ違いですね。
デイジー様のことをご両親も妹様も思っておられたのに、それに気づかずご自分の好きに生きてきた。
貴女様の罪の一つですね。
ようやく今更になって気づかれたのですか?
でももう遅いのです。
全ては終わったことです。
前回のご説明でかなりは真綿で包んだ形でお伝え致しました。
その時点で貴女様はきちんと判断してお決めにならなければならなかった。
それが自分から見て家族から虐げられていた人間であっても、ご実家で次期子爵として教育を受けてきた人間の責任と義務でした。
ですが、貴女様はそれを怠った。
安易にお考えだったのか、ただただ優柔不断だったのかはわかりかねますけど。
ですから今回お茶会や夜会に出られるくらいには回復している貴女様へ厳しい現実を見せたのです。
それでもまだギリギリ未成年と言うことと、内情とは異なりますが、対外的にご実家のことで多少同情されておりましたので、貴女様相手ではかなりお優しいものでした。
本格的な社交界はもっと苛烈だそうですから。
ちょっとしたことで足元を掬われる、そんなところらしいですからね。
あの日から幾許か経ちました。
兄は自分に対する周りの評価にようやく気づきました。ずっと前から知らされていましたけど、きちんと認識できたのが最近のことです。
今度ようやく伴侶を得る次期侯爵であろう自分に、繋がりを求める人間が圧倒的に少ないのですから。
自分の人望のなさを突きつけられた上に、親族からの評価も低いことを知り、嫡男から降りることをようやく、ようやく、承諾しました。
その前から少しずつ周りが説得していった結果ですね。
嫡男としてのご自分に誇りを持っていましたから、聞く耳をなかなか持ちませんでしたけどね。
今までも嫌われていましたけど、見たいものだけ見ていた周りの方々のお気持ちに気づかない愚鈍な人です。
まぁもしかしたら気づかない振りもしていたのかもしれません。
元々兄は自分の伴侶の座を狙う方を避けるために、敢えて社交場に積極的に出てませんでしたから、なかなか客観的にご自分の立場を把握していなかったのでしょう。
まぁでも今でも兄の伴侶を狙う様な方いるのかしら?
兄はだいぶ前からご自分で株を下落されておりましたから。
いくら侯爵家の嫡男とはいえね。
泥舟だと判断されていても仕方ないことでしょう。
ねぇ?そんな人に誰が付いていくでしょうか?
目端の効かない兄は、側近や侍従にそう言った自分に足りない能力を持つ人を抜擢できれば良かったですが、他人の能力の上澄みしか見ておらず、兄と差して変わらない方々ばかり。
まぁ本当に優秀な方はこちらがこっそり引き抜いていましたけど。
もちろん両親からの許可も得て。
この事からも兄の立場が如何に脆弱だったかわかるでしょう。
幼少期にデイジー様、貴女様と出会わなければ兄はまだ嫡男のままでしたでしょうか?
貴女様に心を奪われてなければ、貴女様とさえ出会わなければ良かったのかと家族で思い悩んだことは…数え切れません。
どんなに教育を施しても、両親から言われても兄は根本的には変わりませんでしたから。
それでも両親は最後の最後まで兄に心を砕いていましたけどね。
でもそれは“兄の気持ちに対しては”罪のない貴女様への八つ当たりの様なものですね。
それに多分、融通の効かない兄はどこかで折れてた様にも思いますわ。
ただ貴女様がきっかけになったと言うことなのでしょう。
貴女様は侯爵家の次期当主夫人としては認められません。
兄も次期当主には認められない。
これは家族・親族諸々の総意です。
ですがそれはデイジー様に関して言えば、ご自身の意思とは別に連れてこられたところが、貴女様には合わないもしくは貴女様には適さないところだった。
ただそれだけなのです。
貴女様が全て悪い悪い訳ではない。
ですがもうどうしようもないのです。
ただ、以前から述べている様に、こちらとしても兄も貴女様も見捨てるつもりはありません。
残念な兄ですが、貴女様にとっては今も英雄でしょうか?
そしてそんな兄を支えようと思ってくださっているのは間違いありませんか?
デイジー様が兄を思う気持ちは吊り橋効果というものとは違いますか?
今なら逃して差し上げることは可能です。
もちろん生活の保証は致します。
それは放り出すと言う意味ではありません。
こちらが勝手に連れてきたのですから、きちんと責任は取りますし、デイジー様を嫌っている訳ではありませんし。
ただ安寧を得た時に相手が兄しかいないと言うのは一つの制約になってしまいます。
正直言って兄以外の選択肢があった方がいいと、私などは愚考してしまうのです。
私どもは全員何かあった時のために最低限自分のことができる様には躾けられています。
ですが、無爵の立場で使用人や侍従などの数が今より大幅に減った場合の生活に対する躾はされておりません。
つまりは兄はかなり足手纏いになる可能性が大きいのです。
そんな兄を抱えて生活するのは並大抵ではないでしょう。
私や両親が兄をその立場に追いやったと言う恨みの気持ちも出てくるやもしれません。
そもそも兄は貴女様を救って連れて来なくとも従属爵位もしくは無爵の立場になる予定でした。
平民として放り出すのは無責任ですので、悪くいえば家での飼い殺しが決まっておりました。
それくらいには周りに敵を作り、それをもっと助長する可能性があったので表に出すのが難しい立場でした。
本当に無駄に敵を作っていましたから。
それを全くもって理解していませんでしたし。
なので、これらを踏まえてこれからデイジー様には兄か兄以外かを選んで頂きます。
どちらを選んでも同じくらいの生活の保証は致します。
それは貴女様亡くなるくらいまでは。
ただ勢いのまま流されて来たデイジー様には酷かもしれませんが、それが貴女様の選んだ道だと理解してくださいませ。
もちろん、すぐには難しいでしょう。
しばらくの猶予を与えますので、ぜひご自分の立場やご家族のことも振り返って、先々のことをよくよく吟味してください。
では。
ちなみにこの話のデイジーの家族はまともですが、自分達の能力では立て直すのは難しいかもしれないと、元々爵位返上も視野には入れてたので、侯爵家のフォローももらって妹の婚約者の国へ移動しました。
領地などは一度王家に返して隣接する他領に引き継ぐことになっています。
デイジーには最後の手紙で色々と説明していましたが、スパダリが中身も見ずに握り潰していたので、ここでもすれ違いが起こっています。
兄の側近は監視も兼ねていたので、泳がせておいて廃嫡に持っていく様には仕向けられていたところがあります。(多分仕掛けているのは妹の婚約者の王子。でも妹も両親も仕方ないと思っていそう。)
身分が高い人間がポンコツだと困るので、スパダリは何かしらの理由で穏便にフェードアウトさせるつもりが勝手に暴走した感じです。多分。
あとやっぱり身分差ってかなり壁だと思うんです。
シンデレラストーリーが悪い訳ではないですけど、ずば抜けて優秀と言う程でもない子爵令嬢が侯爵家の当主夫人になるには並大抵ではないと思うので。
何となく書きたいところを書いているので、設定が甘いところはご了承ください。




