橘
まだ心が生きていた頃に見ていた
日のあたる壺庭に
生える果実の横顔が
光に彩られ錆びていく
モノクロの冬を重ねる度に
格子窓に積もった
不毛な自問自答と風塵には
微風すら高を括っている
いつか正しく生きようと夢見ていた
否を唱えることすら悪だった
芽生えた逆心と目的が
光に遮られ堕ちてった
有彩色の記憶の破片は
砕けることなく朽ちていく
不甲斐なさも飽かした暗い日々は
朝焼けすら苦言を呈している
雨に刺されて
落ちた実はもう死んでいる
刃を刺して
下した切っ先はもう死なせている
粒が弾けて
広がった香りと後味は
罪を被って
辛酸を舐める私によく似ている
春の最中、黒南風を待つ
くだらない虜囚の私によく似ている