86. 約束の夜 X-DAY マイナス1
カザンとカグヤ妃を観月宮に送り届け、ノーマン家に帰ったタイヨウはシンプルな白いワンピースから濃紺のドレスに装いを改めた。
「明るい色で夜の星の邪魔をしないように……」
そんなことを言いながらドレスを選び直した令嬢にメイド達が支度を仕上げている中、太ももの上に手を滑らせたタイヨウは心の中で拳を握った。
(よし、やっぱりこのドレスはポケットが大きい!)
その微妙な表情の変化を見ていたメイドが微笑んで口を開く。
「タイヨウ様、母がバベルタイムスの記事を読んでシナンプリンスの慌ててチケットを買ったと申しておりました。そのすぐ後でソールドアウトになってしまったそうで肝を冷やしたと言っておりましたわ」
彼女はハンナの後を継ぎ筆頭側仕えとなったカレン・バルモアだ。おどけて目を回して見せるカレンにタイヨウと他のメイド達も小さく笑う。
「言ってくだされば数枚なら手配は……」気遣うように長い睫毛を瞬かせたタイヨウにメイド頭は優しく微笑んだ。
「お嬢様のお優しいこと。アカデミアの警備員の奥様にも刺繍入りのハンカチを贈ったのですって?」
「あ、はい。一枚だけですが……どうしてバレちゃったのかな」
気まずそうに視線を落とす令嬢の小さな頭部を見つめてカレンはクスッと笑った。
「それは素晴らしいことをなさいましたね。いえね、ハンカチをもらった奥さんが大層な喜びようで、家宝だ! 額装するんだ! って下町で大騒ぎしたそうなんですよ」
新人メイド2人が下々の者にまで敬愛される令嬢に仕える誇りと喜びを滲ませ、支度の動きに一層の張りが生まれた。一方、当の令嬢は照れ臭さを飲み込んだ曖昧な表情でぎこちない笑みをつくっている。
(まだ慣れてはくれないわねぇ。がんばれ、カレン! 私も“カレン”なんだから!)
伏せられた長い睫毛を見ながら自身を叱咤したこの年嵩のメイドは代々ノーマン家に仕えている一族の者だった。
ハンナがミカド皇国へ発った翌朝、マーレ夫人が仕切る顔合わせの場で履歴書を見ていたフォルクスが微笑んだ。
「俺の姉さんの名前も“カレン”だったな」
「そうでしたわね。そういえば、タイヨウちゃんのお祖母様も“カレン”様なのよね?」
マーレ夫人に覗き込まれたタイヨウは内心飛び上がったが、日本の祖母 鈴木“花連”ではなく、ソーレの父方の祖母カレン・ドゥフトを指していると気づきブンブンと首を振った。
「はい! おばあちゃんも“カレン”でした。……バルモアさんと違って、もっと怖そうな人でしたけど」
「俺の姉さんもだなあ。40になる前に死んじまったが、おっかねぇ女だった。“バベルの鷹”はあっちの方が似合ってたくらいだぞ」
クスクスと笑って聞いていたマーレ夫人は「そうだったの。お二人ともお会いしたかったわ」と言って、少し表情を翳らせた。
人の良さそうな顔をしたメイドは、すかさずふくよかな胸を張った。
「左様でございますか。ノーマン領にはあふれた名前ですが、それがご縁でタイヨウお嬢様にお仕えできるのであれば親に感謝しないといけませんね」
その女性らしい包み込むような笑顔に、ハンナを奪われ、さらに祖母を失ったことを思い出したタイヨウが目を伏せて席を立った。
「母様、父様、後はお任せしてよろしいですか? そろそろシナンプリンスの所に行かなくては……」微笑んではいたが、まるで羽根を傷つけられた天使のような痛々しさが漂っていた。
「いってらっしゃい。気をつけてね」柔らかく抱きしめた母の背をそっと撫でると、タイヨウは幻のようにかき消えた。
動転して目を丸くするカレン・バルモアにマーレ夫人が微笑んだ。
「初めて見ると驚くわよねぇ。あれがウチの黒天使なの。あなたの主人よ」
マーレ夫人はカレンに期待していることは一般的な令嬢の世話ではなく、天使の羽根を癒すことだと言った。
類稀な美貌と慈悲の心、そして天賦の才を持つタイヨウは聖誕祭に向けて多数のプロジェクトの中心になっていると言う。スケジュールも流動的に動くため、聖誕祭が終わるまで家には寝に帰るだけになるかもしれない。そのため必要に応じてサポートしてあげてほしいと。
「それはあまりにも……令嬢のなさることとはかけ離れておりますね」
肝心なことなので、と、カレンは真剣な目で尋ねた。タイヨウの動きは四貴家令嬢というより、当主に近い。当主を継ぐのはタイヨウなのか?と。
「あの子が心から望めば別にそれでもいいんだがな」
「ね、本当に。でも望まないわね。何しろ天使だから」
「すぐに飛んでっちまう。俗世の柵は小さすぎるんだよなあ」
ノーマン夫妻は顔を見合わせて笑った。そこに誤魔化しなどの気配は一切なかった。
生家ドゥフト領から飛び立って半年余りで、既に黒天使の慈悲は広く遍くバベル王国にもたらされているのだと言う。彼女には四貴家当主という肩書きすら小さいのだ。
いくつかのエピソードを聞いたが、硬く凍りついていた第二王妃の心をも溶かし、王国最後の秘境と言われた観月宮解放へと漕ぎ着けたというくだりは感動で思わず涙が溢れた。
「今でもいい子すぎるくらいだもの。もう何も頑張らなくていいの。時間がかかってもいいから、あなたにはこの家に“帰る場所”を作ってあげてほしい。天使の止まり木ね。少し型破りな子だけど、令嬢という型に押し込めなくていい。私たちは誰と会うか、何をするかということすらも任せてるのよ」
「破格なあの子に欠けてるのは、なんでもない人間としての生活なんだ。能力に男も女もない。そっちは俺と、あとは言いたくないがカザン殿下も指導できる。ミカド皇国とも縁ができつつある中、今後タイヨウちゃんは能力開発の中心となっていくだろう。これからバベルに起きる革命的進化の最先鋒になっていくあの子を“化け物”扱いしないこと。それが我が家の仕事だ」
まとめれば普通の子と変わらず、“お帰りなさい”と迎えることだと理解したカレン・バルモアは自信に溢れた顔で笑った。
やんちゃな息子を3人育て上げてきたのだ。先達の“カレン”さん達には及ばないだろうが、子が家に戻るまでは身を案じ、無事を祈っていたことも飲み込んで、お帰りなさいと笑った夜は少なくない。
「かしこまりました」と筆頭側仕えは深々と腰を折った。
カレンは再び意識をタイヨウに戻す。
静かな夜の帳が降りる頃、豪華な館の一室では、タイヨウが出発する準備が続いていた。高い天井から垂れ下がるシャンデリアの柔らかな光が部屋全体を優雅に照らしている。
カレンはしっかりとした手際で着付けたドレスを広げ、タイヨウの背中に丁寧にフィットさせている。夜のゲヘナに行くというので丈は短め、足元は編み上げブーツだ。カレンの落ち着いた表情からは、長年の経験と熟練した技が感じられた。
「タイヨウ様、このドレスは今夜の催しにぴったりでございますね。少々お待ちください、お背中のリボンを調整いたします」とカレンは微笑みながら言う。
一方、新人メイドのエマとリリアンは、少し緊張した様子でカレンの指示を待っている。カレンは彼女たちに優しい目を向け、手際よく次の指示を出す。
「エマ、ヘアピンをお願いします。リリアン、メイク道具を準備してください」
エマはすばやく美しい銀色のヘアピンを取り出し、カレンに手渡す。カレンはそれを使って、タイヨウの髪を丁寧にまとめ上げる。リリアンは、メイクボックスを開け、慎重に一つ一つの道具を並べている。
「リリアン、アイシャドウを少し淡いピンクにしてみてください。それが今宵のドレスにぴったり合いますよ」とカレンが指示を出すと、リリアンは慎重にブラシを手に取り、令嬢の目元に優しく色をのせた。
「エマ、口紅を準備して。こちらも控えめなピンクにしましょう」とカレンは続ける。エマは素早く動き、指定された色の口紅を手に取り、カレンに手渡す。
カレンは最後の仕上げとして、令嬢の唇に慎重に口紅を塗り、満足げに微笑んだ。
「完璧です、タイヨウ様。今夜は楽しんできてくださいませ」
第一王子もお忍びでいらっしゃるというゲヘナナイトツアーのプレ開催ということで、品位と華やかさを保ちながら実用性も諦めないスタイルが完成した。
タイヨウは鏡を見つめ、その姿に少し驚き、そして満足げに頷いた。
おしゃれのことはよくわからないが、ツインテールも丈の短いポケットの大きな服も動きやすくてよい。唇の仕上げがグロスでないところもよい。あれは砂がつきやすく、夜の魔界には向いていない。
「ありがとうございます、カレンさん。エマさん、リリアンさんも。今夜は楽しんできますね。帰りは観月宮に寄るので、また明日の朝に!」
「はい、明日は忙しいですからね。最終日に備えてゆっくりしてらっしゃいませ」
筆頭側仕えとしての責任を放棄したような発言だったが、ホッとしたような顔を残してタイヨウの姿は消えた。
カレンと新人メイドたちは、無事に準備が整ったことに安堵の息をついた。そしてこの短い接触時間にそれぞれが課題を感じ、次なる挑戦に備えていくのだった。
◆◆◆
エリア3の荒野に立ったタイヨウは、頭上に広がる星空にただ圧倒されていた。
ビル灯りやネオンの方が眩い大都会新宿に生まれ育ち、ドゥフト領では星を見る余裕もなく、ノーマン家に来てから見上げた星にもこれほど心揺さぶられることはなかった。
ゲヘナ、エリア3。
日中は赤茶けた色をしていた奇岩群が、夜になるとまるで別世界のように姿を変えた。月の光と星の輝きが岩の表面を照らし出し、岩は銀色に輝き、不思議な影を作り出していた。
タイヨウはその光景に言葉を失い、ただ立ち尽くしていた。
夜風が頬を撫で、それに吹き上げられるように黒天使は浮かび上がった。海面に浮かぶように中空に寝て、夜空を見つめる。
目の前に広がる無数の星々は漆黒のキャンバスに無数の宝石を散りばめたように美しかった。静寂の中で、少女は宇宙の壮大さと自分の小ささを同時に感じ取った。驚くほど冷たい風に包まれながら、タイヨウはこの瞬間を永遠に刻みこもうとしていた。
「……来てよかった」
バベル王国に。
この世界に。
心を開いて壮大な美しさを受け止めながら、言い尽くせない感動に浸るタイヨウの耳元で低く響く父の声がした。
「――本当にいい企画だろ?」
娘の隣に飛んできたフォルクスは白銀の髪を靡かせて笑っていた。
「ええ、父様。ナイトツアー組んでよかったですね! ゲヘナの夜がこんなに綺麗だと思いませんでした」
「だな。来年は初日からナイトツアーをやろう。さあ、降りるぞ。レイ王子が大騒ぎしてる」
宙に床があるかのように起き上がりながら振り向いた娘の腕を取ると、フォルクスは眼下を指し示した。
エリア3に佇むガラスでできた巨大なドーム。満天の星々が輝く空を背景に上から見下ろせば、それもかつてないほどに幻想的な光景となっていた。
ガラスは透明でありながら、星の光を反射し、きらめく宝石のように輝いている。細かな防御陣が装飾のように走るドーム全体が星明かりを受けて柔らかな光を放ち、その反射が温室の内部をほんのりと照らし出していた。ガラスの表面には、夜露がうっすらと付いており、それが星の光をさらに柔らかく、拡散するように見せている。温室の内部からは微かな灯りが漏れ、まるで小さな星が内部で輝いているかのようだ。
タイヨウはポケットから録画玉を出し、その景色を記録した。身体を捻って満点の星空も。
「レイ王子にはこれでご勘弁いただきましょう!」
ドームの中に転移したタイヨウが目にしたのは、ガラスに顔をへばり付かせているレイ王子と、それを必死に剥がそうとしているセバスであった。
「フォルクス〜〜!!! 頼む〜〜!!! 僕も外に連れ出してくれーーー!!」
「なりません! 殿下! 外は魔界! 立ち所に死んでしまいますぞ!!」
「本望だ!! ゲヘナ死! 本望である!!」
「ぬわーーーーーーー!」
ゲヘナは夜に瘴気が濃くなる。
それをまさに体験したばかりのタイヨウがトコトコと歩み寄り、首をコテンと傾げた。
「そ、外は流石に危ないですよ?レイ王子」
タイヨウに気づいたレイ王子がツカツカと猛スピードで歩み寄り、その二の腕を掴んだ。3度見ても顔を覚えられないと言われる程の地味な第一王子らしからぬ挙動であった。
「タイヨウ君!! 君の力でなんとかならないか!? 君が考えたんだろう? このドームは素晴らしいよ! 夢のようだ! 聖誕祭総選挙の僕の一票はゲヘナツアーに捧げる! 頼むよ、僕は風を感じたいんだ!」
せっかくセットしてもらった髪がボサボサになったタイヨウが父に頷いた。
「――父様、風ですって」
扇風機の弱程度の風を無表情で手から吹かせたフォルクスの前でレイ王子が眼を閉じた。
「ああーッ! これがゲヘナの風……って違うよ! ドーム内の空気は王都のものじゃないか! ドアと、あの通気孔! あれでノーマン通りに設えた通気孔からファー!って来てるやつじゃないか!」
目敏く設備の隅々まで見聞したらしいレイ王子がキーキーと叫ぶ。
「レオンさん、あの通気孔はどこに繋がってるんですか?」
髪の乱れ具合がさらに悪化したタイヨウがレオンに尋ねると、よく訓練された弟は上品に頷いた。
「殿下、あの通気孔はゲヘナと繋がっております」
「本当に……?」
「左様でございます」
「微かに焼肉の匂いするけど……?」
「気のせいでございます」
「違うもん! 見たもん! ゴーン達がノーマン通りでBBQしてたもん!」
キイエエエッ!と猿叫を発して地に膝をついたレイ王子の背後からクスクスと大人の笑い声がした。
「あまり臣下を困らせるものではないよ、レイ」
2mの長身、浅黒い肌、金に近い茶色い髪、生ける彫刻のような顔立ち。転移陣から現れたのはアグニ・シナン・バベル王であった。
「父上……」
ノロノロと立ち上がったレイと違い、ノーマン親子は素早く拝礼の姿勢を取った。セバスは立位のままレイの側で黙礼する。
「久しいね、レイ。成人式以来だ」
細めた眼に愛を湛えて王は微笑んだ。王の背後から現れたジョルジュ・アボットが先代当主に黙礼する。
「叔父上、お知らせいただきありがとうございました」
聖誕祭は王の誕生日を祝うものだ。だが聖誕祭中は一般市民が多く出入りするため、催し物は事前に王の閲覧機会を設けることになっている。
ゲラン座はゲネプロで、ゲヘナツアーも本番開始前の早朝に王を招いていた。シナンプリンスとシュリ姫は本番まで調整に手間取ったため閲覧機会がつくれず、最終日に王城にてライブで観ることになっていた。ナイトゲヘナツアーは案内がなければ王が来るものではない。セバスは軽く頭を振って、微かに笑いながらタイヨウの頭をチラリと見た。
「――陛下と殿下は同じ目標の元に動かれているのに、それがお互いわかっておられないようだという声があってな」
直径は100メートルほど。高さは8〜9階建てのビル程度ある巨大ドームをぐるりと見上げて王は嘆息した。天井高がある分、防御陣の仕掛けが目に入りにくく、実際に満天の星空の下にいるように見える。
「朝のゲヘナもよかったが、夜は一層素晴らしいな。呼んでくれてうれしいよ、ノーマン」
フォルクスは胸を張りながら立ち上がり、子供達にも立つように指示した。
「もったいないお言葉。ナイトツアーの準備がありますので、我々はここで失礼します。30分後に戻りますので、それまでごゆっくりとお過ごしください」
レイ王子としっかり話せ、と言葉の裏に匂わせたフォルクスに王は苦笑いした。
「何から何まで申し訳ない」
「とんでもない。我々は王の剣。その刃は、王の希望のためにのみ振るわれるもの。我々の役目は、王の意志を遂行し、王国の未来を切り拓くことにありますので。――ジョルジュ、俺は離れるが問題ないな? ワイバーンが出ても、防御陣に力を流し込めばなんとかなる。やばくなったら呼んでくれ」
「問題ございません」
答えたジョルジュはセバスと同じく、不動の立位をとり気配を消して影となった。それを見たレイは顔を輝かせて父の元に駆け寄った。
「父上! 朝のゲヘナはどのような様子でしたか? 写真では見ましたが、音は!?」
不遇の長男の肩に腕を周して、語らい合いながら父王はゆっくりとドームを歩き出した。茶色い髪をしたレイ王子と王は、身長に差があるものの後ろ姿がよく似ており、紛れもなく親子であるとわかった。
王都へ通じる中央のドアからフォルクスとレオンがタイヨウに手を振って出ていく。笑顔で見送った黒天使が転移をしようとした瞬間、脳内にジョルジュの声が響いた。
『――“西瓜”は出荷できるのですか?』
ソーレを帰還させるための闇エネルギーを詰めた闇Suicaのことだと気づいたタイヨウはニッと笑い、ポケットをポンと叩いた。過労が続き、思うようにストック作業が出来なかったが、ゲヘナの夜の瘴気のおかげで先程10枚全てのチャージを終えることができた。
一級以上のアボット家が得意とするテレパスをまだ使いこなせないタイヨウは、辿々しく思念を送りかえした。
『闇属性は ゲヘナに 愛されている』
笑顔を残して消えたタイヨウを表情を変えずに見送った2人のアボットは脳内で会話を始めた。
『――愛されている、か。あの子は毎回、嬉しいことを言ってくれる』
セバスにも通信が届いていたことにジョルジュは苦笑いした。
『それにしても肝心の闇系能力が下手すぎます。転移以外を疎かにしすぎだ』
王の守護者となるまでの兄弟との軋轢に重ねて、観月宮事件で子を失う王の追体験をしたジョルジュは子供を作っていない。婚姻経験もゼロというのは多妻多子のアボット家では異例のケースだ。その強情な男が、粗が目に入るほどに1人の子供を注視しているのが面白く、セバスはテレパスを断ち切って刹那の笑みを浮かべた。
『ならば、お前がゆっくり教えてやればいい。向こう5年はハンナがおらぬからな』
再び繋げたテレパスは今度はジョルジュから切られ、その夜はもう繋がることはなかった。しかしセバスは甥が黒天使育成を人生に組み込んだと確信した。ギリギリの特級、と自身の力量はわかっているが、それでも一族が執着をし始める気配くらいはわかる。
懐中時計を確認しながら父子を見れば、2人はベンチで寄り添って語らい合っていた。
セバスは天を仰いで呟いた。
「全く、いい夜だ」




