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転生DKの帰還〜男子高校生ですがお嬢様やってたらチートな天使様になって、ついでに世界も救っちゃいました〜  作者: 森戸ハッカ
第二章 王位継承バトルロワイヤル開幕

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32.レイ王子の授業〈2〉

「母上は一妃一子の不文律を破って必死に弟ゲオルグを産んだにはいいけど、同じ年に産まれたカザンの方が出来がいい。開国の祖、竜王の再来と呼ばれる程だ。ゲラン公一派以外は国民全員がカザンが王になって欲しいと思っている。ここまでが前提だ。長い話だったけど、ついてきてるかい? ノーマン君、オータム君?」

「聞いてるだけでお腹いっぱいだけど、わかってるよ。戦争とかってさ、大人が大人にしかわかんない理由でやってるって思ってきたけど、子供の喧嘩と変わんないんじゃないかってとこまで」


 リリガルドの言葉に、タイヨウははっとした。

 いつの間にかリリガルドはソファの上で胡座をかき、頬杖をついている。形のいい眼を細めるその横顔は、お金持ちの家で飼われている美しい猫みたいだった。


(こんな素敵な子とお友達になれたなんて、今更だけど嬉しくなっちゃうな!)


「いいぞ! 驚くほど頭の回転が早いね! オータム君」

「爺も驚きましたぞ殿下。女装癖のあるパッパラパーな末息子という調べしか上げてこなかった分家の力不足が恥ずかしい限り」


 ハッハッハと笑い合う主従に、ハンナが再び「ン゛ン゛ッ!」と容赦のない咳払いをぶつけた。

 空気が一段、冷える。


「ああ、すまないね。ここまで腹を割って話せる相手もいないものだから、つい昂ってしまったよ。さあ、君たちに問題を出そう。ノーマン家は長い歴史の中で一度も王妃が誕生してないにも関わらず、その権力は四貴家から落ちたことがないのはなぜか?」


 途端に教授然としはじめるレイ王子に、リリガルドは呆れ顔。

 だがタイヨウは目を輝かせた。


 本人は気づいていないが、貧困家庭ゆえ最低限の出席日数で義務教育を終えたタイヨウは、純粋に「学び」の場に飢えていたのだ。


「はい! 原住民を多く移住させたノーマン領では、血統が色濃く現れることが多く優秀な能力者を多く輩出し、長年国防の要となってきたからと聞いています」


 ソーレの予習ノートで勉強したところだ、と胸を張る。


「正解! さて次の問題だ! 無能力者の第一王子は成人を機に継承者から降りると宣言。ところが国民の希望第三王子カザンも護国に専念すると言い王位に興味を示さない。色々と問題がある第ニ王子ゲオルグが王位を諦めないのはそのためだ。ゲラン公一派は隙あらばカザンを追い落とそうと暗躍しており内紛の一歩手前。それでも『カザンを王にする』と王命が下りなかった理由は何か?」


(王様は命令できるんだ! カザンさんは火属性だし、属性問題もないよね。うーー! わからない)


 教授室に沈黙が満ちた。

 校舎の外は学生で賑わっていたのに、この部屋だけが異様に静かだ。防音だけではない。――薄い膜のような、気配を削ぐ魔法がかかっている気がする。


 ハンナに認識阻害を習ったことのあるタイヨウは、思わず部屋を見回した。


「その質問はアタシが答えるよ。タイヨウは苦手な分野だし。『カザン王子は特級能力者だから、嫁も特級能力者じゃないと子供ができない』からでしょ」

「えっ! そうなんですか? けけけ、結婚すればできるんじゃなくて?」


 顔を真っ赤にするタイヨウを見て、リリガルドがハンナを呆れ顔で振り返る。


「ここまでおぼこいなんて……アンタも、この子もう15なんだから教えときなさいよ。側仕えでしょ! ああ、もうザックリ言うけど洗礼式で等級がわかるでしょ……」


 全国民が受ける16歳の洗礼式では属性の判別、及び暫定的な等級判断が行われる。火、風、水、土、闇。その派生属性も判別される。能力者は五級から特級まで。平民のほぼ100%が無能力者、すなわち無級である。ちなみに闇属性はバベル王国のみのものだ。これはゲヘナの魔力の恩恵とされている。


 三級以上が有能とされ、要職に就ける可能性が上がるため養子縁組も盛んに行われている。稀に現れる平民の能力者であっても有力貴族家に歓迎されるのはそのためだ。武のみで国を拓いたバベル一族の実力至上主義が、良くも悪くも残っている。


 生殖において属性の違いは問題となることはないが、夫婦に能力差があると子供ができることはない。五級から一級までは相手が上下一階級までは若干不妊傾向は高まるものの子は成せるとされている。


 だが闇属性以外の特級だけはその理から外れる。大半の特級は特級のみとしか子を成せない。


「子供はできなくても……恋はしないんですか?」


 タイヨウの声に、言葉以上のものが滲む。

 現代日本の価値観が染みついた十五歳の少年には、子の有無が即ち結婚の価値になる、という結びつきが飲み込みづらいのだ。


「例外はもちろんいるけど、そもそも等級が離れるとそういう気も起きないらしいよ。犬が魚に発情するか?って感じ」

「犬……魚……」

「なんなの? 子供の有無にひっかかってんの? 同性でも結婚はできるし、周辺国より結婚はぶっちぎりでフリーよ。王族だけが特別なの。子孫第一なのよ。確か昔も同性愛者であることを理由に王位継承を辞退した王子がいたはず。話を戻すけど、カザン王子は火属性の特級でしょ。今妊娠できる年齢でフリーの特級女性はいないから、王になっても王家断絶の危機……アーーーーー! そういうことか!」


 一足先に答えへ辿り着いたリリガルドが頭をかきむしる。

 レイ王子の眼鏡が、きらりと光った。


「……バベル固有の血統因子を最も色濃く受け継ぐノーマン家は、闇属性の能力者も度々登場している。そのため王妃の輩出を固辞してきた。そんな王位継承問題と最も縁遠いはずのノーマン公爵が姪を養女とした。その姪は闇属性である。そして奇蹟と呼ばれる数々の偉業を半年足らずで成し遂げている。半年後の洗礼式を前に、特級能力者と目されるほどにね。これはゲオルグ一派にはどう映ると思う?」

「はわわわ! もしかして僕がカザン王子と……結婚したがってる? とかですか?」


 真っ赤な顔で、涙まで浮かべて照れるタイヨウが、ふいに言葉を止めた。


「でも僕、闇属性です。王家には入れませんよね? やっぱり継承問題とは関係ないんじゃ……」


 はあ……と長い溜息が、ハンナから漏れた。

 それは呆れというより、諦めに近い重さだった。


「初勅……ッッ」


 ショチョク?と首をかしげるタイヨウの前で、セバスが見事な達筆で描かれた『初勅』と書かれた紙を掲げた。


「王に着任したものは、独断で一つ改制ができる。それが『初勅』です。現王の初勅は『王の外遊を最長一年とする』でございました。初勅には王の為人が表れるもの。現王は旅好きな方でしてな。流石に一度きりという制限はつけられましたが、一年の外遊を実現され、その期間にミカド皇国と縁付いたのです」


 セバスの説明は淡々としているのに、背筋だけを冷やす。


 レイ王子がタイヨウを見つめた。

 声は柔らかい。だが、内容は刃物のように真っ直ぐだ。


「特級の本能かな? 君以外目に入っていないカザンが王命によって王とされた場合、どの法を改制しようとするかわかるよね? 現行の非闇三原則が闇属性能力者の差別に繋がっているという声もある。無理無体な改正でもないんだよ」

「はわわわわ……」


 タイヨウが青くなったり赤くなったりしている背後で、ハンナが額に手を当て、野太いため息を吐いた。


「ノーマン公爵が魔属大継承を恐れて他国に君を縁付かせようとしていることくらい、ゲオルグ一派は情報を手に入れている。だが四貴家とはいえ、王命にノーマン公は背くことはできない。カザンも王命により君との結婚を許されるならば王になることもを受け入れるのでは、と愚かなゲオルグでも思うはずだよ。そしてね、ここからが重要なんだ」


 レイ王子が立ち上がり、窓辺へ寄りかかった。

 逆光で表情が読めない。だが声音だけが、これまでにない硬さを帯びていく。


「――全ての加害者はね、自分は被害者であるという思い込みから生まれるんだ。ゲオルグたちはこう考えているのさ。“なんてひどい! 自分達がもうすぐ手に入れようとしていた王座が黒天使によって奪われる。その前に黒天使を堕天させるしかない!”……そんな風にね」

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