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二兎が追う物───

〜登場人物紹介〜


・ぽん太郎(仮)

 記憶を失った、異世界からの来訪者。色々あって、“イーター”狩り専門グループ「チームレイン」に加入することとなった。これから行われるBBQをとても楽しみにしている。好きな具材は肉ととうもろこし。


・リエド

 『チームレイン』のリーダー。男性。優しいお兄さんに見えるがそこそこ腹黒い。BBQでは他人が大切に面倒を見ていた肉をかっさらうゲス野郎と化す。


・ルーノ

 『チームレイン』の一員。女性。自称インテリ枠。口数は多いが感情の起伏は控えめで大人しい。料理の知識はあるが不器用なため意外と苦手。野菜を切らせると大変なことになる。


・イェリー

 『チームレイン』の一員。女性。元気で大雑把な性格の持ち主。過激派な一面を持つ。BBQでフランベをしようとして特大火柱を発生させ、火事になりかけたことがある。


・イトミズ

 『チームレイン』の一員。男性。大抵は無言で不干渉、根暗な印象を持つ生粋のスケベ。目にも止まらぬ速さで盗撮を行う。肉の焼き加減よりも女の子に目を光らせている。あまりにも露骨すぎるとイェリーに箸で目を潰される。


・ヒーテ

 『チームレイン』の一員。男性。容姿端麗、頭脳明晰で何でもそつなくこなす超絶クールイケメンであり、事実上のアイドル枠。後片付けは率先して行うタイプ。やはりイケメン。


・ラックバーン

 『チームレイン』の一員。男性。横暴ですぐキレる単細胞。頭はとっても悪い。BBQ会場でよく迷子になる。最悪の場合、イーターを引き連れて戻ってくるトンデモ迷惑お兄さん。






 巨大ムカデ退治が終わり、BBQ会場21番テーブルにて──



「………よし!肉焼けたぞ!!!」



「うおおー!美味しそうだねー!」

「胡椒の香りが素晴らしいです。やはり奮発しただけありますね」


 リエドが豪快に焼き上げた肉や野菜が皆の食欲を刺激する。


「……アイ・アム・乾杯」


 普段あまり積極的ではないイトミズも待ちきれない様子。グラスを掲げてアピールしている。


「おー、乗り気じゃないかイトミズ!早く肉食いたいし、乾杯しちゃうか!」

「そうですね。お肉が焦げては勿体ないです」


 そして、各々がグラスを天に掲げ……


「うーし、それじゃ……ぽん太郎、これからもよろしくな!乾杯!」




「「「かんぱーい!!!」」」




 リエドの音頭と同時に、グラスのぶつかる心地よい音が鳴り響く。


「くっ、くっ……かァーッ、うめぇ!」

「……アイ・アム・俺……クァ」

「イェリー、ルーノの分のお肉を取って欲しいです」

「あいよー!お任せあれ!」


 宴は始まった。バーベキューグリルの網上がダンスパーティーのように入り乱れ、騒がしくなっていく。ここからみんなのボルテージは上がっていくばかりだ。



 だが、そんな中1人だけ複雑な表情を浮かべている者が……



「……あれ?ヒーテどうしたの?お肉食べないの?」

「……いや、お前ら……」

「なんだよ、言いたいことあるのかー?」




「………主役のぽん太郎、まだ到着してねぇだろ」




「「「……………あっ」」」


「……何で誰も気づかねぇんだよ。リエドに至っては音頭の時名前言ってただろうがよ」

「いや〜……てへ☆」

「てへ☆じゃねぇんだよリエド。お前ワザとだな……早く肉食いたかっただけだろ」

ほうへふよりへど(そうですよリエド)待っへあへた方は(まってあげた方が)いいとルーノは思っていはひは(思っていました)

「肉ほおばりながら言っても説得力ねーぞルーノ」

「……時・既・遅し」

「どこ行ってるんだろうね〜、ぽん太郎。迷子かな?」

「ウサギ跳びしてたからな、アイツ……」

「えぇ、なんでウサギ跳びなの!?」

「肉のために腹減らしたかったらしいぞ」

「ぽん太郎もバカだねぇー……」





 その頃、2匹の雄兎はというと───




「迷った」

「ここどこだゴラァ!」




 ──見事に迷子になっていた。




「どこだよ、ここ。BBQ会場ですらなさそうなんだけど」


 無我夢中でウサギ跳びしてたせいで道から大きく外れてしまったようだ。気づけば森の中にいた。


「腹減ったゴラァァ!」


 ……というか、なんでこの人もいるんだよ。ラックバーンさん。


「おいゴラァぽん太郎……帰り道分かってんだろうな?」

「いや知らないっす」

「あぁ!?じゃあどうすんだよゴラァ肉無くなっちまうだろうが!!!とっとと35番テーブルに案内しろゴラァ!」

「いや知らないって言ってるでしょうが!!!」


 この人声も態度もデカい。そんでもって頭も良くない。俺達のテーブル21番だし。


「なんでよりによってこの人と迷子に……」

「聞こえてんぞゴラァ!」

「うぇ!?」


 とにかく、さっさと戻らないと。みんな心配してるかもしれないし、ラックバーンさんがもっと面倒くさくなる。


「どっちに行けばいいかな……とりあえず木登りするか」


 とにかく進むべき方向を決めないと。ラックバーンさんは頼りにならないから自分がしっかりしないと。


「この木、他の木よりも高いな……よし、こいつに決めた」


 俺は辺りを見回して、推定十数メートル程の立派で頑丈そうな木を選び、木登りを開始する。。


「何やってんだぽん太郎!遊んでる暇ねぇんだぞゴラァ!」

「遊んでねーわ!BBQ会場上から探すんだよ!」

「なんだ先言えやゴラァ1人になっちまうところだったじゃねぇか!」


 寂しがり屋かよ。なんか意外。


「よいしょっ……ちょっとごめんよ、木」


 俺は邪魔な枝を排除しながら上へ上へと進む。


「痛ってぇ!何だこれ……枝か!おいゴラァ気をつけろぽん太郎!空から枝が降ってくんぞ!当たったら痛ぇぞ!」

「……はーい」


 下からラックバーンさんが忠告してくれる。その枝俺が落としてるやつなんだけどな。


「ぐっ……ぬおぉ……」


 最初の方は順調に上へと登れていたが、上に進むにつれて疲労が溜まっていく。ウサギ跳びでの消耗もあって、進みが悪くなっている。


「ここからじゃ……まだ見えないか」


 現在地は、半分を少し超えたところ。この高さでは他の木の葉っぱが邪魔になって見回すことができない。BBQ会場を探すにはもっと高い所へ行かないと。


「くそっ……枝が細くなってきたっ」


 自分の体重を支えられそうな枝が減ってきた。


「おいゴラァ65番テーブル見つけたのか!!!」

「まだ見えないですー」


 でも、あとは頭1つ分だけでも登れば、森を上から見渡すことが出来るはず。あと少しだ……!



 と、新たな枝に足を掛けた次の瞬間!





 バゴォォォォォォォォォォオン………………!!!





「うおぁ!?」

「ンだゴラァ!?」


 森の奥の方から聞こえてくる凄まじい爆発音、そして衝撃波が俺達に直撃する……!


「うおおおおおおおおっ」


 木の先端付近にしがみついているせいか、物凄く揺れる……!やべぇしっかり掴まってないと落ちる……!


「な、なんですか今のラックバーンさん!?」

「どう考えてもイーターだろがゴラァ!」

「えぇ!?」


 ここは未開地で、イーターがいつ現れてもおかしくないエリアだ。ルーノさんがそう言っていた。

 でも、こんなタイミングで……それは無いだろぉ!冗談だろ!?


「おいゴラァぽん太郎!“夕暮”のイーターだ!」

「“夕暮”……!!」


 “夕暮”……確か、イーターのレベルの中でも最弱クラスに分類されているやつだな。だが、それでも森を簡単に破壊し尽くせられる程の力を持っている。それだけイーターは危険ってことだ。

 そんな暴走列車みたいな化け物、まともに戦うことができない俺にはどうすることもできない。ムカデ戦の時のようなマグレはもう二度と起きないだろう。


 逃げようにもこの高さだ。足を滑らせて落下すれば動けなくなる気しかしない!


 地響きと轟音が近づいてくる。もうこうなったら全ての望みをラックバーンさんに託すしかない!


「ラックバーンさん!」


 バカはバカでも、ラックバーンさんは戦えるバカだ!チームレインに所属するくらいだし、“夕暮”レベルなのであれば1人でも撃退できるかも……!


「……クソがァァ!腹減ったしうぜぇなァゴラァァ!」


 と、下の方にいるラックバーンさんの手元が光った。どうやら錬成を行ったらしい。戦う気満々だ。ありがたい。


「よし、今のうちにBBQ会場の場所を……!」


 もしイーターが接近しても、ラックバーンさんが相手をしてくれるはず。俺は俺にできることをやるだけだ!


「よいしょ……よっこいしょ……!」


 最後の力を振り絞って、何とか目的の高さまで到達することができた!BBQ会場は……あっちか!見えたぞ!


「ラックバーンさん!見えましたよ!」


 と、下を向くとほぼ同じタイミングで、ついに……!




「ゲゴオオオオオオオオ!!!」




 問題のイーターが木々をなぎ倒しながら姿を現した!



「カエル!?」



 ヌルヌルっとした表面に特徴的なあのフォルム……間違いない、カエルだ!カエルのイーターだ!

 そんでもってやっぱサイズ感がバグってやがる!ムカデ程じゃないけれど、デカい!!ラックバーンさんが一口でペロッと丸飲みされそうなくらいデカい!!!



「来やがったなゴラァ肉にして食ってやんぞゴラァ!!!」



 だが、ラックバーンさんも態度と声のデカさなら負けてない。強気な姿勢で距離を詰めていく。


「うおおおおおらああああああ!」


 ラックバーンさんの錬成は、殴れば大爆発を引き起こす金属バットだったはず。さすがに俺の場所までは爆発は来ないだろう……けど、一応警戒しよっと。吹き飛ばされないように幹にしがみついておこう。




「オラァァ!」




 そして、ラックバーンさんは漢らしく真正面から突っ込んでいく……!


「行った……!」



 しかし……




「ゲゴォォォ」




「……あ?どこいった俺のバット」


 接近する前に、ラックバーンさんの金属バットはカエルの腹の中に吸収されてしまった。


「おいぽん太郎!俺のバットどこいったんだゴラァ!」


 物凄いスピードだった。あの様子だと、ラックバーンさんはバットを食われたことに気づいていないようだ。

 何せ、傍観者の俺でもほぼ目で捉えることは出来なかったんだから。それだけ凄まじい速度でバットをかっさらっていったのだ。

 あれだけ速いなら、虫が逃げられないのも納得だな。さすが自然界、恐るべし……って、そうじゃない!


「ラックバーンさーん逃げてぇぇー!」


 カエルはもうすでにバットの咀嚼を終えている。今にもラックバーンさんに舌を伸ばしそうだ……!


「……チッ!オラァ!」


 もう錬成をしている暇は無いと判断したのか、ラックバーンさんは素手で殴りにいった……!


「あ、拳が若干光ってる……!」


 あれは……ルーノさんが言ってた『身体強化』ってやつかな……?イトミズさんが得意なやつ!なんだか強そう!



「オォォォォラァァァァ!!!」



 カエルは油断なのか、それとも余裕なのか、接近するラックバーンさんに対して微動だにしない。これなら拳がクリーンヒットしそうだ!


「いける……!」




 だが、しかし。





「ゲゴォ」





 次の瞬間、カエルの口がありえないくらいに大きく開いた。




「……あぁ?」




 結構な勢いで突っ込んだからか、ブレーキを踏むことが出来ず、そのまま口の中へと吸い込まれていった……!


「あぁー!ラックバーンさぁぁん!?」


 まるで罠にかかったネズミの如く、綺麗に飲み込まれてしまった。


「ゲゴガゲゴ」


 カエルに苦しむ様子はなく、美味しそうにラックバーンさんを味わっているようにも見えた。


「…………」


 しばらく経っても、ラックバーンさんは出てこない。口の中で抵抗している感じもない。もしかして、これやばい……?



「……ゲゴッ」



 と、咀嚼が終わったのか、カエルは俺の方に目を向ける。


「……ヒイッ」


 やっぱり俺の存在気づかれてた……!


 やばいやばい絶対に食われたくないでもどうしよう戦い方とか知らねぇしそもそもここから落下したら衝撃で死ぬしうがああああああああああ万事休す!



「……はっ」



 いや、ちょっと待て、俺にはチートみたいな能力があるじゃないか。“深夜”レベルのイーターを一刀両断したあの能力が……!


「アレさえ出せれば……!」


 でもどうやって出せばいいんだ、アレは。あんなのたまたま上手くいっただけのマグレだ!うあああ錬成についてもっとルーノさんに聞いておけば良かった……!


「ゲゴォォゲゴォォ」

「ぎゃー!揺らすなコラー!」


 カエルが俺を振り落とそうと木に体当たりを繰り返している。あの野郎、やろうと思えば舌伸ばして一瞬で俺を食えるっていうのに……遊んでやがる!!!


「おま……やめろォ……おぇ」


 と、揺さぶられて酔いかけている時に、ポケットから違和感を感じとった。


「な、何かポケットに入ってる……?」


 揺られながらも右手をポケットに突っ込むことに成功した。そして、ポケットから出てきたものは……


「これは……瓶だ」


 中身が空の、なんのラベルも貼られていない、透明な瓶だ。


 だが、俺は知っている。これはただの瓶じゃない!シャインが大量に詰められている「S瓶」だ!!!


「ぐっ……こいつに賭けるしかない!」


 シャインには無限の可能性があり何でもできる、その力で錬成ができる、とルーノさんは言っていた。それなら……俺にだって錬成はできるはずだ!

 もちろん、錬成のやり方なんて知らない。でももう、これ以上に期待できるものがない!絶対にここから逃げてBBQを堪能するんだ……!!!


「だらぁ!」


 そして、俺はS瓶を握り潰して、シャインの力を解放する……!


「…………うん?」



 S瓶を割った。しかし、何かが光り輝いたり、音がしたりなどはなく、ただ瓶を割っただけのように思えた。

 でも、感じる、この手のひらに何かを感じる。何も見えない、何も無いはずなのに、なんだこの感触は。


「……これは」


 まるで、初めて粘土を触った幼稚園児になった気分だ。何でも作れそうな気がするし、好奇心、創造力がこの手のひらから溢れかえっている。

 身体中が熱い。沸騰した心がエネルギーの捌け口を探して暴れまくっている。早く好き放題したい、早く解き放ちたい、そんな今までに体感したことのない欲求が心と体を支配していく……!



「これが、『シャイン』……これが、『無限の可能性』の力……!」



 体感して1発で理解した。この感覚は、言葉だけでは到底説明できるものじゃない。


「これを……こうして、こう」


 自分の置かれた状況などすっかり忘れ、ただなんとなく、心に引っ張られるままに両手を動かす。


 すると──



「……えっ」



 何も無かったはずの目の前の空間に、突如としてナイフが現れた。



 このデザイン、この大きさ……間違いない、ムカデ退治の時にルーノさんが渡してくれたものだ。俺がイメージしていたものがそのまま現れたのだ。


「俺が、錬成したのか……?」


 恐る恐る手を伸ばして掴み取る……手のひらにしっかりと質量を感じた。間違いない、ルーノさんのナイフそのものだ。

 錬成する時、何も難しいことは考えていない。むしろなにも考えていなかった。なのに、成功した。


「シャインって、すげぇ……!」


 俺ははしゃがずにはいられなかった。それはもう、狂ったように。それはもう、新しい自分を見つけたみたいに。




「ゲゴォォー……ゲゴン」




 それはもう、カエルのイーターに飲み込まれたことにも気がつかない程に。







 その頃、BBQ場では──



「ぷはぁー!食った食った!」

「……アイ・アム・激怒」

「イトミズが、自分の肉がリエドに食べられすぎていると怒っています」

「へっ、他のテーブルの女の子にうつつを抜かすイトミズが悪ぃんだよ」

「確かに見すぎだよイトミズ!油断したらすぐカメラ出すんだから!」

「……条件・反射」

「……素晴らしく変態な言い訳ですね。ルーノをもってしても擁護できません」



「なあ……お前ら、大事なこと忘れてない?」



「あ?何をだよヒーテ」

「なになにー?お肉まだ残ってたの?」

「……いや、もういい。とっとと片付けをして帰ろう。もしかするとアイツらの方が先に帰ってるかもしれねぇし」

「なんだよー、よく聞こえねぇぞ。ボソボソと1人で何言ってんだ?」

「…………」

 こんにちは。そしてやらかしですね。またプロローグ終わりませんでした。もうこれ詐欺ってるんじゃないかって思いますね。すみません。

 一気に書いても良かったんですけど、どうしても長くなりそうだったので、やはり分けることにしました。次の話では、主人公ぽん太郎の錬成にフォーカスを当て、プロローグを締める予定です。本っ当に長引いちゃってごめんなさい!!!場合によっては今までのあとがきを少しいじるかもしれません!


 それでは、ここまで読んでくださった読者の皆様、ありがとうございます!これからもよろしくお願い致します!

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