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アイドルに憧れて  作者: 詩鈴
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 数日後、プロデューサーに会う場所と時間が設定され、今そこへ向かっている。

 緊張する自分を少し楽しみながら部屋に入る。

 部屋には一人の男性が待っていた、ああこの人見た事あるかも。

「やぁ、君がアンジェさんだね」

 男の人が挨拶をしてくる。

「はじめまして、アンジェリーナ・クレインです、どうぞ宜しく」

「今日は来てくれて有難う、5年前君の歌声を聞いてから君のファンになったんだよ、ずっと探してた」

「事情はお聞きしています、ご希望もすでに叔父から聞いています、直接顔を出さないでいいのなら、あなたのご希望に沿いたいと思います」

「有難う!有難う!感激だ!あの声の主を直接プロデュースできるなんてなんて幸せなんだろう」

 感激のあまり泣き出しそうな勢いだ、ちょっとだけ怖い。

「はい、どのようにするかは、まだお聞きしてませんが」

「そうだね、とりあえず、今僕の頭の中に有るプロデュース方法を聞いてくれるかい?」

 そう言っておじさんはすごい勢いで話はじめた、私はおもわずエドを見つめて苦笑するのだった。


 プロデュース方法や画像の撮影等、詳しい事はエドと直接プロデュサーの方とスタッフで決定されていく、エドはこのために、芸能事務所を部下にまかせて始めさせた後、本来の仕事に戻っていった。

 相変わらずの決断力と行動力だ。

 私には3人の護衛が付く事になった、このうちの女性の護衛カレンさんが護身術の先生だ、同じ女性が良いだろうと選ばれた、他2人はかなりいかつい男性だった・・・イケメンには当たらなかった。

 本来ならもう1人女性の護衛と交代の人が付くのだか、人選の段階で人がおらず現在物色中との事、最終的には交代も含め5人で回すらしい。

 なんだか物々しいが、これも安全のためだ仕方無い。

 護衛に囲まれてなんて良く見かけるよね。

 私は学校に通いつつ、護身術とダンスを習う、ここでも記憶力が仕事をしてくれた、文字を読むみたいにすぐに覚えるって訳にはいかないけれど、体の動かし方がだんだん解ってくると、記憶力が働く、コツを飲み込むのが早いらしい。記憶力って素晴らしい! 

 さんざん筋肉痛には悩まされた、体は普通の人と変わらないんだから! 

 だが、ここで自分の手が活躍、筋肉痛の場所にポチっと手を置くとあ~ら不思議、筋肉痛が和らいでいく、完全に治る訳では無いが、かなり楽になる、私の手って優秀。

 気分がどんどん前向きになる、ああ紹君もこんな風に感じてたのかなぁと思いながら日々を過ごして行く。

 そんなこんなの日々は過ぎるのが早い。

 ついにその日がやってきた、学校は夏休みに入っている、ソフィが付き添いで来てくれている。

 目隠しの布を巻いて口元を覆う布を付ける、アラビアの衣装のような口元を隠す布である、撮影する時点では歌は歌わなくって良いらしい、口ずさむくらいはするけどね。

 歌詞も音楽もばっちり頭に入ってる。

 ダンスの振り付けも覚えた(かなり簡単な物なので)コンセプトは妖精。

 これならば、私だってバレ無いはず。

 身内以外に私の歌声を直接聞いた事の有る人はごく少数でそれも、5年も前なのだ、あの時も後ろ姿だったので顔バレはしていない、髪もかつらにして有る、コンセプトが妖精だから、グリーンの衣装にブリーンのかつら、目隠しと口元を覆う紗の布も衣装と同じ色だ。

 なかなか似合ってると思う。

 目隠しは、透けて見えているので大丈夫。

 準備完了だ、音楽が流れセットで踊る私、歌は軽く口ずさむ、後で音声だけ別に入れるのだ。

 何の支障も無く撮影が終わる、3テイク程撮ったけれど、かなり少ないのだとか、10歳の体力ではそんなに数取れないしね、まぁ運動を始めたので体力はかなり付いたと思う。

 歌の録音に入る、ブースに入って歌う、ガラスの向こうでプロデューサーのジムが親指を立ててる、すごく嬉しそうなのでこちらも気分が上がる、歌の方も3度程で録音が終わる。

 多少歌い方を変えてとの指示が有ったが、こちらもテイク数が少ない方らしい。

「アンジェちゃんお疲れ様でした、明日から編集作業に入るから、1週間後には完成動画が観れるよ!楽しみにしててね」

 ジムが嬉しそうに言う

「はい、楽しみに待ってますね」

 完成が本当に楽しみだ、気持ちよく歌えたし、気持ちよく踊れた。

出来上がりをワクワクしながら待っていよう、ジムさん私を見つけてくれて有難う!



 完成した動画はちょっとすごかった・・・これが自分?と思うほどバックのCGや歌が素敵だったのだ、おうおう、すごすぎて言葉が出ない。

「私じゃないみたい」

 周りのスタッフが笑い出す。

「本当に素敵だね、これはネットでの再生数が楽しみだ」

 ジムも満面の笑顔だ。

「動画は、明日から配信予定だから、家で家族と一緒に観てね」

「はい、絶対家族と一緒に観ます、こんな素敵な動画を作ってくれて有りがとうジム!」

 私はジムに抱きついてほっぺにキスをした。

 ジムはニコニコが止まらないようで、本当に楽しそうだ、それに釣られてスタッフも全員楽しそうに踊りだす。

 一大決心で臨んだ動画は、想像以上に素晴らしかった、有難うジム、スタッフの皆さんそして、背中を押してくれた、エド本当に有難う!

 動画が配信された、最初はゆるやかに上がっていた再生数が10万回を超えた頃から急に上がり出しあっという間に3000万回を突破しまだまだ上がり続けている。

 顔も年齢も解らない、所属事務所がエンジェルプライムという無名の事務所という事と名前が美和という漢字である事から日系か日本人だろうという事になっているが、もちろん歌は英語の歌詞である。

 そうなのだ芸名を日本語にした、美しい和が広がる、という思いを込めて付けた。

 和とは素晴らしい言葉である、平和、調和、和解、等数え上げると切りが無い。 

 この世界の事は結構好きだけれど、未だに戦争が絶えない、暴力も勿論無くならない、それらが少しでも減っていけば良いとの思いだ。

 傷ついた人を癒したい、色々な人の力になりたい、歌手の多くの人が目指す事と一緒だね。ありきたりだけれど、とっても大切な事だと思う。


 事務所への問い合わせは続いている、けれど美和はメディアには一切出ない、CDとDVD、ネットでの販売と動画から切り取ったポスターでの宣伝のみだ。

 顔出しNGになっているので、事務所にも出入りしない、ジムから次を打診されているけれど、少し時間を空けて欲しいとお願いした。

 ちょっとしたミスで身バレする可能性が有るためためだ、暫くはこういう方針で行く事になっている。

 せめて15歳になるまでだ、もうすぐ11歳を迎えるので4年程である、ハイスクールに上がれば自由時間ももっと増えるからとりあえずそれまでは待って欲しいとジムにお願いしたら、すっごく残念そうにしていたけれど解ってくれた、良い人だ。



                  紹サイド



「やあ紹」

「あ、正則先輩こんにちは、お久しぶりです」

僕も先輩もお互い忙しいので事務所で顔を合わす事が少なくなった。

「ねぇねぇ前にさ動画観たの覚えてる?」

 先輩がそう聞いてきた、動画?少し考えた後に思いだす

「ええ覚えてますよ、奇跡的に観る事が出来た動画ですよね?」

「そうそう、それがさどうやら、あの女の子らしい子が歌ってる動画がね、出たんだよ」

 少し嬉しそうに携帯を取り出す先輩

「やっぱり出て来ましたか」

 あれだけの歌声だ周りがほっておくはずが無いと僕は思っていた。

「彼女だと確定された訳じゃ無いけど、あれだけの声を持ってる子が何人もいるとは思えないから、多分間違い無いと思うんだ、見て見て」

 携帯を差し出す先輩、僕は画面を覗き込む

 動画は美しい風景の中1人の多分まだ少女だろうと思われる女の子が踊りだす所から始まる、音楽が流れだす、動画に合わせた少し幻想的な曲だ、踊る彼女は目隠しに口元を覆う紗の布、かすかに口が動いているのが解る。

 歌声はやはり以前に聞いた事のある声に似ている、彼女が成長すれば、この声になるのだろうなと思わせる声だった。

「すごいな・・癒されている気がする」

 魂がが震えた気がしたのだ、思わずそう声が漏れる。

「そうだよね、本当にすごいよね、彼女」

 先輩がうっとり動画に見入ってる、そして動画は終了する。画像自体もかなり素晴らしくて幻想的だった。

「何で顔をかくしてるんですかね?」

 僕は先輩にそう尋ねる

「そうだね、多分芸能活動を大々的にやる気が無いのか、話題作りなのか、どちらかだろうね」

「ああ、そういう事か」

 すんなり納得する

「うん、間違って無いと思う、名前がなんと美和なんだ、年齢も顔もメディアには情報が一切出て来て無いから。」

 え?日系か日本人なのかな?

「ちょっとびっくりですね、どう考えてもネイティブな英語に聞こえるけど、肌の色とか顔の雰囲気からして白人かなと思ったんですけど」

 そう言うと先輩は

「歌だからねぇ、ちょっと解らないけれど、そうだねぇ白人に見えるね、CDが発売されるらしいから、買うぞ~!僕美和ちゃんのファンになっちゃった、あ!いけない打ち合わせに遅れる~」

 先輩はそう言って楽しそうに去って行く、相変わらずだなあの人、そう思いながら、そうだなぁ僕も彼女のファンになったかな。CDを予約するか。

 そうして先輩の予想通り、美和は消えた。

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