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アイドルに憧れて  作者: 詩鈴
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              アンジェサイド


 紹君と別れ自宅に戻る、ああ・・・秒読み段階に入ってしまった、そう思うと涙が勝手に溢れてくる、大丈夫、大丈夫、何度も心の中でそう言い聞かせる

 彼の邪魔をしてはいけない、それに私もまだ、やる事が沢山あるんだ、頑張らないと、紹君を動画で確認しながら、頑張ろうと自分を励ますのだった。



紹サイド


 ホテルの部屋で動画の確認が行われている、

 静かに始まるイントロ、少しづつ2人の距離が近づく、階段下から登って来る美和、そうして座り込んでいる男と視線が絡まる、歌はサビに入る、すぐ間近ですれ違う刹那に頬に落とされるキス、そしてそのまま離れる2人彼女の行く先を視線だけで追いかける男、消える彼女を見つめ涙する男、そして静かに終わりを告げる音楽、CGと動画の処理がすごい、

 僕はただ動画を見て感嘆する、音楽と景色とに溶け込むような2人の男女、プロデューサーのジムの力量がすごいとしか僕には言えない。

 動画が終わると皆、ため息を吐く、切ない気持が後を引く

「いや、素晴らしいね、感動したよ」

 そう斎賀さんが思わず口にする

「俺、撮影現場見てたけど、こんな風になるとは、思わなかった」

 生見さんがそう言う

「毎回、毎回、ジムの作る動画には感動するよ、明後日からの動画の配信が楽しみだね」

 ハリーさんがそう言う

「そうですね、とりあえず、対策会議の通り一旦エンジェルプライムで対応をお願いして、こちらに回して頂く案件につきましては、相談通りに宜しくお願いします、紹のリハビリも、もう少し残っていますので、とりあえず配信後の様子を見て日本に帰国します」

 斎賀さんがハリーさんにそう言う

「はい、打ち合わせ通りで、では明後日の配信後に1度ご連絡します」

 それを最後に僕達はハリーさんを見送る、斎賀さんは日本に連絡を入れるため自室に戻って行った。

「紹、とりあえず昨日の夜に話した通りだから、明日1日は時間が空くようにしてある、明後日の動画配信の影響次第ではすぐにでも日本に帰る事になるから、アンジェちゃんとは、明日お別れを」

 そう生見さんに言われた

「はい、解ってます、その事については、彼女と沢山話し合いをしているのでお互いに大丈夫です、明日は朝から出かけてきますね」

「了解だ、とりあえず連絡だけは取れるようにね」

「OKです、それじゃ僕はそろそろ部屋に戻ります」

 そう告げて部屋に引き上げアンジェに連絡を入れる

「やあ、動画の確認が終わったよ」

「ハイ、こちらも家族で少し前に確認したわ、相変わらずジムの仕事は凄いわ、今回も素敵だった」

「そうだね、ずっと動画を見て来てすごいなとは思ってたけど、実際体験すると本当にジムさんの凄さが解るね」

「そうでしょ、ジムは本当にすごいのよ」

 そう言って自分の事のように喜ぶアンジェ

「ところで、明日なんだけど、予定通りでいいかな?」

「はい、大丈夫です」

 予定と時間を確認したその後は何時ものように他愛もないお喋りをして連絡を終わる、帰国の事は今まで本当に沢山の時間を割いて話した、お互い気持ちの整理はできている、その事でこれ以上時間を無駄にするのはもったいない、お互いの認識が一致したので、その事はもお話さない。

 残りは多分明日の1日だけ、帰国が延期になってもおそらくお互い会う時間は取れない、というか美和の事は極秘なので、アンジェも僕には近づく事ができない。

 明日を大事に過ごそう。

 翌日は朝から恋人同士としてずっと一緒に散歩やショッピングを楽しんだ、2人で思い出になるように写真も沢山撮った。

 そして最後の1日は終わりを迎えた。


 いよいよ配信日を迎えた午後配信スタートだ。

ホテルで動画を見る、じりじりと時間が過ぎて行く、1時間過ぎる頃にはすごい勢いで再生回数が延びだす、やはり美和の動画を皆待ってるんだな、そう思った。

 最初、伸びが悪かったのは、前回から1年空いてないせいだと思われた。

 ネットでは、何故動画がこのタイミングで配信されたのか、出演している俳優は誰なのか?初めての恋歌、軽くとはいえ頬にキスしたのは何故か恋歌ならではの演出なのか?俳優との関係は?等々色々な憶測が飛んでいる、美和の話題にネットの話題の上位が書き換わっていく。

 日本でしか見た事が無かったので、予想の上を行くアメリカでの美和の人気に少し気後れする。

 午後3時を回る頃には、ポツポツと僕の名前がネットに上がり出す。

 それを見ていた斎賀さんが

「早いな」

 そう呟く、僕もたかだか3時間程で名前が出てくるとは思わなかった。

「そうですね、予想より早かったですね」

 生見さんが斎賀さんの呟きにそう答える、半年近く休業していた、それも日本の芸能人なのだ。斎賀さんの携帯が鳴る

「ハリーさんからだ、連絡も早いな」

 話し込む斎賀さん、僕はそれを見ながらじっと待つ

「え?はっ?ええ、お待ちしています」

「どうしたんですか?」

 生見さんが斎賀さんに訊ねる

「それが、ハリーさんが・・・こちらのホテルに来るそうだ」

「あれ?またどうして?」

 打ち合わせに無かった事だろう、生見さんが訊ねている。

「事務所の電話がパンクしそうで、事務所にいると身動きが取れなくなりそうなので、こちらのホテルへ移動するそうだ」

「え?こんな短時間で何故そこまで・・・・・」

 生見さんも不思議そうに尋ねるが、

「俺もまだ聞いてない、とにかくハリーさんを待とう」

「はい」

 僕はジリジリしながらただ待っていた。

 1時間程でハリーさんが到着する、さすがに尾行等は無かったとの事、事務所の場所は秘密でも何でも無いので、メディアに出張られると動きが取れなくなる、ハリーさんは、姿を隠す事はリオンの時にもあったらしいのでホテルへの移動も視野に入れていたが、初日というのは今回が初めてなので慌ててこちらへ移動したらしい、話しが済んで1泊したら、別のホテルへ移るそうだ。

「さて、打ち合わせしていた通り、そちらへの連絡は厳選した物を纏めてかわ渡すように事務所のスタッフに申し伝えて有るので、そちらは打ち合わせ通りだ、紹くんの事については、ネットの方が早かったね、斎賀さん日本の事務所に連絡は?」

「ええ、そちらは既に済んでいます、紹の身元がすでに出回ってる事も合わせて」

「そうですか、とにかく一番多いのは、今後の美和の動画の配信回数に変化が有るのかという事と、他の俳優との共演は考えているのかと言う事ですね、そちらについては、打ち合わせ通り『聞いていない』そお通して下さい」

「了解です、紹への出演依頼については?有りましたか?」

 斎賀さんがそう訊ねる

「数件、おそらく美和とのパイプラインだと思われるので、打ち合わせ通り信用できそうな所のみこちらから回します、直接日本の事務所に連絡が入る場合が有りますが、こちらも打ち合わせ通り『エンジェル・プライムを通して』と」

 そう答えたハリーさん

「何から何まで、お世話になります」

 そう頭を下げる斎賀さんと生見さん

「エドからの指示ですので気にしないで下さい、ただしこれだけは心しておいて下さい、美和の事はかなりしつこく聞かれるはずですが、そちらも打ち合わせ通りでお願いしますが、今回は特にしつこいと思われますので覚悟して下さいね、こちらのホテルの事は今の所バレていないので、騒ぎが少し収まるまでは、ホテルからなるべく出ないようにお願いします」

「了解です、リハビリの方は出張を頼むことにします」

 斎賀さんがそう言うとハリーさんが

「ええ、宜しくお願いします、それでは僕達は部屋へ移動します」

ハリーさん達が自分の部屋に移動していく

「色々有難うございました」

 斎賀さんと生見さんが頭を下げる

 とにかく、予想の斜め上を行く勢いだ、暫くはホテルに缶詰状態になる、こればかりは、早くはあってもある程度予定していた事だ、暫くは帰国もできないだろう。

 「事態の進展が早すぎて、ちょっと追いつかないな、さすがアメリカと言うべきか?それとも美和さんの力と言うべきかな?」

 斎賀さんがそう呟く

「今までに無かった事態(動画)なので話題性抜群なんでしょうね」

 そう生見さんが答える

「とりあえず、暫くは待機だよね?僕は自分の部屋に戻るよ」

 そう言って僕は部屋に戻った、アンジェとの連絡も暫くは控える事になっているので、ネットでも見ようかと思ったが、あまり気が乗らないので先日から始めた作詞と作曲の勉強をする事にしたのだった。




                 アンジェサイド


 授業が終わるのを待って、ネットの検索をする、再生回数は初日なのにすごい回数になっている、話題も色々と憶測が飛んでいた、紹君の身元もすでに知れ渡っているようだ。

 紹君大変なのでは無いだろうか?そう思う物の、ハリーや紹君には連絡できない・・・もどかしいけれど、帰国が決まったなら、生見さんから連絡が入るはず、連絡が無いという事はまだ決まっていないのだ。

 とりあえず、今日は早々に自宅に戻ろう、そう思っているとロビンから連絡が入った。

「やあ、アンジェ元気にしてたかい?今日の予定は入っている?」

「こんにちは、ロビン今日、この後は特に予定は無いわ」

 そう答える

「なら少しお茶でもしない?」

 一瞬断ろうかと思ったけれど、特にする事が有る訳でも無いので、お茶のお誘いに乗る事にした。

「いいわ、帰りは送ってね?」

「OK、すぐ迎えに行くのよ」

 そういって携帯が切れる、私は駐車場でロビンを待つ事にする。今日の護衛のジェレミアには、ロビンとお茶に行くので、今日の護衛はここまででいいと伝える、ジェレミアはロビンの車を確認してから戻るとの事、少しの間待つと、ロビンの車が迎えに来る。少し前からロビンと会って自宅に送ってもらう時は護衛を戻している、それくらい彼は信用されている。

「ハイ、ロビン」

 私はそう言って車に乗り込む

「ハイ、アンジェ」

 挨拶を返してくれた後、車を出す

「何処でお茶にするの?」

「少し郊外の方へ移動した所に先日できた、なかなか素敵なお店だよ」

「初耳ね、楽しみだわ」

 そう言って短いドライブを楽しむ。

 目的のお店はそれ程遠く無い場所に有った、本当に出来たばかりなのだろう、真新しいオシャレなカフェで、若い人達で賑わっていた。

「いらっしゃいませ」

「予約していたサンプレイトだ」

「少々お待ちください、個室をご予約ですね、こちらへどうぞ」

 そう言って案内されたのは奥の方にある小さな部屋で裏庭の景色が見える場所だった。季節によっては素敵な景色が楽しめるだろう、今はクリスマスの飾りが見える

「お茶とコーヒーそれと軽くつまめる物を」

 注文を受けた案内の人が戻っていく、ロビンがバッグから小さな機械を出す、壁や監視カメラを置物の近くを回る

「えっと、何してるの?」

「ああ、初めての所は盗聴器や隠しカメラなんかを調べる事にしている、僕が作った小型の探知機だよ」

 そう言って悪い顔で微笑む

「用心深いのね、でもその大きさだと持ち運びに便利ね」

「今改良型にとりかかっているから、そちらが出来たらプレゼントしよう、君にも秘密が多いだろう?」

 そう言ってにっこり微笑む、少しだけ背中に寒気がしたような気がする

「あ・・・有難う、えっと何か怒ってる?気に入らない事をしたかしら?」

「今日、新しい動画が配信されたよね?」

「あ・・・えっと、色々と守秘義務が・・・・・・」

「ふ~んそうなんだ、守秘義務ねぇ・・・・・」

「ご・・・・ごめんなさい」

 とにかくここは謝らなければ、ロビンの事をすっかり忘れていた。

「ごめんなさい、家にちゃんとロビン用にDVDとCDを置いて有るから後で渡すわ」

 ドアがノックされた、給仕の係りの人が下がっていくまで黙る、物音がしなくなるまで待ってロビンが

「とりあえず、盗聴や盗撮は心配無い、まぁ僕の事忘れてなかったようで、それは有難う、所で、動画の彼、アンジェがずっとファンだった日本のアイドルだよね?」

 憶えてたんだーちょっとびっくり、そしてドキドキ

「え・・・ええ、たまたまこちらで仕事を探してるって知って、ハリーから連絡が入ったの、家族や近い人は私が彼のファンだって知ってるから、暫くケガのために休業しているのは知っていたけれどそれ以上の情報は出回って無かったから、驚いたけれど、このチャンスは逃せないと思って、それで今回動画を一緒に撮る事になったのよ」

「成程ね、復帰のためにこちらで話題になる仕事を探してたって事かな」

「そのようね、何時ものようにハリーとジムが全て取り仕切ってくれたので、私も何時ものように無言で動画を撮影して終わったわ・・・でも彼を間近で見る事ができて嬉しかったわ・・・この動画は宝物になるかも」

 嘘は言って無い、紹君との事は秘密だ、ロビンには本当に申し訳ない、彼の中で気持ちが整理できたのではないかと、私から聞くことはできない、そうならばいいなと思うだけだし、そんな風に見える、でも本当の所は解らないのだ。

「相変わらずだね」

 笑われたが仕方ない

「その後の事は何時ものようにハリーに任せて有るけど、会いたいかな」

「それはそうだろうね、ずっとファンなんだし、それであのキス?」

 ドキっと心臓が跳ねる

「恋歌だったしね、役得ってやつかな?アハハ」

 乾いた笑いしか漏れてこない、そうなのだジムがせっかくだから恋歌をと言い出して聞かなかったのだ。

「恋歌か、初だね?」

「そうね、ジムがそろそろいいんじゃない?って事でね、今後はそっちへシフトするかもね・・・・次はまだ決まって無いけど」

「そうなんだ、次回も早いのかなと思ったけど、まだ決まって無いんだね、ちょっと残念だな、ファンとしてはどんどん曲を出して欲しい所だね」

 そう言ってにやりと笑うロビン

 それから暫くお互いの近況等を話し、家に送ってもらった。

「CDを持ってくるから待ってて」

「OK」

 渡す荷物を持って来ると、車の外でロビンが待っていた。

「有難う」

 そう言って手を出したロビンが近づく、荷物を手渡すと

「またね」

 そう言って彼は帰って行った、このまま良い友人でいて欲しいと願う私は祈りながら彼を見送ったのだった。



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