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アイドルに憧れて  作者: 詩鈴
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                  紹サイド


 ホテルに戻りシャワーを浴びて、着替えるとドアがノックされる、生見さんが対応しているようだ

「斎賀さん、もお来たんですか?」

 生見さんの声がする、なんてタイミングが悪いんだ・・・あの人

「ああ、朝に来て観光してたよ、たまにはいいだろう?それで、撮影は無事終わったの?帰りが早いような気がするけど」

 そう斎賀さんが生見さんに訊ねている、さっさと出かけよう、面倒は後に回そう、僕はそう決めた。

「こんにちは、斎賀さん、お疲れ様です、早く着いたんですね?」

 僕はそう挨拶しながら、部屋に入る

「ああ、紹か撮影お疲れ様、以外に早く終わったんだね」

「ええ、そうですね、2テイクで終わりました」

 そう僕が言うと

「そうなんだ?それは早いね、撮影の話聞かせてよ」

 僕は申し訳なさそうな様子を装い

「すいません、この後エンジェルプライムの社長とお話が有って、出かけないといけないんで、話しは戻ってからでいいですか?」

「え~話しって僕も行ってもいいよねぇ?」

「えっと、こんなに早く来られるとは思っていなかったので、僕と生見さんで、行くことになっているので」

 そう言って断る

「ええ~何とかならないの~」

「もう出ないといけないので、なんともなりませんね、今日は諦めて下さい」

 生見さんもそう言う

「仕方ない・・・明日以降の予定は戻って来てから確認するよ」

「はい、それでは出かけてきますね」

 僕はそう言って部屋を後にする

「はいはい、斎賀さんも自分の部屋に戻って下さい」

「解ってるよ、それじゃ戻ったら部屋に連絡入れてね」

 そう言い残し斎賀さんは自分の部屋に戻った。

 僕達はそのままエレベーターに向かう、駐車場についてから、2人で息を吐き緊張を解く

「ついてきたらどうしようかと思った」

 生見さんがそう言う

「どうなるかと思いましたよ」

 僕もそう答える

「とにかく出よう」

「そうですね」

 そうして僕達はアンジェの自宅に向かうのだった。


 アンジェとハリーさんが出迎えてくれる

「やあ、柏木さん、今日はお疲れ様でした、ジムからかなり良い動画が撮れたと連絡が有りましたよ」

「ハリーさんこんにちは、有難うございます、撮影が本当に早く終わってびっくりしています、ジムさんにはお世話になりました」

「とりあえず、家の中で話しましょう」

 アンジェが隣で支えてくれる、僕達は家の中へと移動する

 居間に入りそれぞれがソファに落ち着く、そう言えばエドさんがいないな

「エドさんは、今日は留守かい?」

「ええ、今日は、会社の売買契約のために出かけているの、戻るのは夜になると思うわ」

「そうなんだね、引退するにしても、息子さんに引き継がないのかい?」

 僕はつい日本の企業を想像してそう聞いた。

「えっと、ノアは投資の才能が有るので、エドとは違う仕事を始めようとしてるの、エドは起業家で、彼は何時も新しいアイデアを持っていて、それを起業するのが楽しい、自分は経営者には向いていないと言ってるわ、ある程度事業が成功すると会社を手離すみたい、部下に任せている所も有るようだけど・・・余り詳しくは知らないのよ」

 アンジェがそう説明する、僕もそちらの知識は詳しく知らないので、そんな仕事も有るんだなとそう思った。

「そうなんだね」

 生見さんが隣から声をかける

「今日は、ハリーさんからお話が有るとの事でしたが、どういったお話でしょうか?紹の仕事のお話しでしたら、事務所の方から斎賀が来ていますので、斎賀も交えてお話を、お伺いしたいのですが」

 ハリーさんが答える

「先日のお話しで、紹さんがこの後、動画が完成すれば、日本に戻られるとお聞きしたのですが、事務所の方抜きで、本音をお聞きしたいのです、エドもその事を聞いて欲しいと言っていたので、どう思っておられますか?」

「そうですか、アンジェ、君にも聞いて欲しいんだ」

 アンジェが頷く、

「僕は日本に戻るつもりにしています、ケガで突然芸能活動を休止する事になり、多くの方々に迷惑をかけました、勿論事務所にもファンの方にもです、自分の都合だけで放り投げて良い訳が有りません。日本に戻っても以前のように自分がいた席に戻れるとは思ってませんが、努力する事が必要だと思っています、なのでこのままこちらに残る可能性は有りません」

 僕は正直に、ハリーさんに告げる

「そうですか、こちらで美和の動画に出演する事がどういう反響が有るかは解りませんが、リオンの時の事を考えると、かなりの反響になると思います。日本に戻られてもかなり影響が出るでしょう、とにかくお気持ちはお聞きしました、今後の事はそちらの事務所の代表の方を交えて相談しましょう」

「はい、宜しくお願いします」

 ハリーさんと生見さんが明日からの予定を話している、僕はアンジェを捕まえて話をするため、別の部屋に移動する

「アンジェごめんね、君には先に伝えたかったんだけど」

「いいの、解っていたわ、ほんの少し悲しいだけなの、以前のようにメールを待つのでは無くて、何時でも話す事ができるから、大丈夫よ、私も色々忙しいから」

 そう言って微笑む彼女は少しだけ寂し気に見える、思わず抱きしめる、彼女に会えないのだと、解ってはいるが、僕の気持ちも沈んでいく

「私のやりたい事をする時間をくれて有難う、本当は傍にいたいけれど、離れててもずっと紹を見ている、何か有ればすぐに飛んでいくわ、だから悲しまないで」

 アンジェに慰められてしまった。

「有難う、ずっと見ていて、そうすれば頑張れるよ、日本に戻るまでの残りの時間を一緒に過ごそう」

「ええ、ええ一緒にいたいわ」

 そう言った彼女の笑顔は何時ものように素敵な笑顔だった、有難うアンジェ



                 アンジェサイド

 

 紹達がホテルに戻って行く、それを見送り家に戻る

「アンジェ、少し聞いてもいいかな?」

 ハリーから問いかけが有った、多分紹との事を聞かれると思っていた、ハリーは事務所の社長で私達家族にも近い存在だ、紹君にはさっき話してもいいと言われたので、きちんと説明しよと思う

「はい、何かしら?」

「紹とはどういう関係?」

「恋人よ、婚約もしているわ」

「え?婚約まで?何の報告も無かったよね?」

「ごめんなさい、ハリー、紹の事務所の方針で家族以外には公にできない事になっているの、今日、紹に確認したらハリーには伝えてもいいと言われたの、報告が遅くなってごめんなさい」

「そうだったんだね、ジムやスタッフは?」

「いいえ伝えて無いわ、何時ものように無言で通したから」

「そうか、解ったよ、紹の事務所の人は知ってるんだね?」

「上部の人とこちらに来てる斎賀さんとマネージャーの生見さんしか知らないわ」

 そう伝える

「そうか解った、しかしあの小さかったアンジェが婚約とは・・・、今後の事は考えているのかい?」

「大学に行くわ、それは決まってる、それ以外はまだ、紹とも相談して決める事にしているの」

「そうか、彼若く見えるけど30過ぎてるよね?」

「彼は待ってくれると言っている、私がやりたい事を邪魔したく無いと言ってくれているの、大切にされているのが解るから、今後の事を良く考えないと、そう思ってる」

 私は、素直にハリーに気持ちを伝える、彼も私が子供の頃から支えてくれた人だ、本当に私の事を心配してくれている、何時ものように声をかける

「宜しくね、ハリー」

「ああ、まかせろ」

 ふふっと2人で笑う。


 あの日からリハビリの有る日以外は紹君と過ごしている、今日は歌入れの日なので、スタジオだ。

 ジムやスタッフがいるので、紹君と来る事はできない『そのうち僕だけのために歌ってくれればいいよ』と言われた、多分そのうち紹の専属歌手になるだろうと思いながら頷いておいた。

 紹の方が照れていたのが可笑しかった。

「美和ちゃん、準備はいいかな?」

 ジムの声が尋ねる

「はい、宜しくお願いします」

「スタート」

 その声と同時に曲が流れる、初めての恋歌だ、紹君と恋人になって、歌詞の意味が解るようになっている、気持ちを込めて歌い上げる、サビの部分では、撮影の時を思いだし少し恥ずかしくなったが、その後の別れは、日本に帰る紹君を思う・・・気持ちが切り替わる、切なさが声を震わせるそしてサビを歌い切り、歌は静かに終わる

「OK、今日も最高だよ!」

 そう言って絶賛してくれるジム

「有難うジム」

「お疲れ様、美和さん、出来上がりを楽しみにしていてね」

 録音が終わった、後少しで動画が出来上がる、紹との別れの日が近づく、大丈夫、大丈夫、

 私は深呼吸をした。




                   紹サイド


 ハリーさんとの打ち合わせが続く、動画の反響と影響、予想できる事への対応、そしてポートレートの撮影(事後対策のためだそうだ)どんどん決まっていく。

 そしてアンジェと一緒にいられる時間もどんどん少なくなっていく、最近はあまり人目を気にしないで済む郊外でのデート(護衛付き)が増えた、さすがに僕もこの状態には慣れてきた、こういう場所では、彼らもなるべくこちらの視界に入らないように気を使ってくれる。

「生見さんと斎賀さんは今日も対策会議だ、美和と関わるのはなかなかに大変なんだなと、改めて思ったよ」

 僕がそう言うと彼女は

「そうらしいの、リオンの時はずっと付きまとわれたり、他の俳優やモデルの友達に色々聞かれて暫くはすっごく大変だったそうよ、事務所も移籍したからその事も併せてね、さんざん文句言われたわ、自分が出たいって言ったのに」

 アンジェがそう答える

「リオンさんには感謝しなくちゃね、その経験が有ったから、今対策会議が出来るんだから」

 僕は少し笑いを含みながらそう言う

「そうね、リオにはお礼を言わなくちゃね」

 そう言って彼女もおちゃめに微笑む、昼間に見る彼女の瞳は一段と不思議な色に見える、瞳孔の周りを薄いオレンジが彩る

 虹彩の色合いが室内で見るより色鮮やかでさらに美しい、彼女の瞳に見とれていると、彼女の顔が赤らんできた、未だにすぐ赤くなる彼女を見ると本当に愛おしく感じる、そっと手を添えて口づけする。

 びっくりしたように動きを止める彼女、相変わらず可愛い。

 携帯が鳴った、彼女が慌てて離れていく、タイミングが悪いなと思わず携帯に文句を言いたくなった。

「紹、動画が出来上がったと連絡が入ったわ、明日受け取る事に・・・」

 そう言って言葉を濁すアンジェ

「そうか、こちらの方にも連絡が入るかな・・・対策会議中だと思うから、夜になるかも、とりあえずホテルに戻るよ」

 僕はそう伝える

「そうね、そろそろ戻りましょう、帰国の日が決まったら、すぐに教えてね」

 彼女が少し辛そうにそう言う

「解ったよ、すぐ連絡するから」

 僕もそう答えるが、それ以上は何も言えなかった。

 そうして僕達はそれぞれの場所に帰っていった


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