表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイドルに憧れて  作者: 詩鈴
27/32

27

                紹サイド


先程から隣の部屋で生見さんの興奮した声が響いている、事務所と話しているのだ。

「紹!斎賀さんがこちらに派遣されて来るそうだ!」

 生見さんからそう声がかかる

「はい、了解しました、何時頃になります?」

「とりあえず、他の仕事は任せて今夜の便で飛んで来るので、合流は明日になるそうだ、俺は、部屋を手配する」

「OK」

 そう言ってフロントに連絡を入れている

「やっぱり斎賀さんが来るのか・・・ハア」

「ん?どうした、ため息なんか吐いて」

「いや・・・斎賀さん、アンジェに嫌われてるから、微妙だと思って、それに変に鋭いし、現場に来られるとまずいかなと」

「そうだな、現場は遠慮してもらわないとな!」

 生見さんはそうのたまう、何時も斎賀さんにさんざんいじられてるからなあ・・・可愛がられてるとも言うんだけど。

「ええ、そうですねね、しっかり交渉してくださいね?」

「あ・・・えっと向こうの事務所の人に任せたいかな・・・・ハハハ」

 そう言って乾いた笑いをもらす生見さんだった。


 翌日昼前に斎賀さんがもう1人事務所の人を伴ってやって来た。

「紹、生見久しぶり、紹は元気そうに見えるね」

 斎賀さんがそう言うと後ろの男性もぺこりと頭を下げる

「こいつ、紹が休業したすぐ後の入った新人で暁」

「暁 大悟です、紹さん生見さん宜しくお願いします」

 そう自己紹介する人に、こちらも挨拶を返す

「宜しく暁君」

「紹のマネージャーの生見だ、宜しく」

「こいつ、今回は雑用係りね、一応アメリカの現場見学も兼ねてね」

 斎賀さんがそう言う

「あ~斎賀さん、電話では言って無いんですが、現場には紹と俺以外は立ち入り禁止なんです」

「は?おいおい聞いてないよ、どういう事?」

 いきなりお冠である、言いにくそうに生見さんが伝える

「美和さんって身元も顔もメディアに出て無いですよね?プロデューサーのスタッフでさえ顔を見た事が無いそうなんです、それくらいに注意してきたので、今まで身バレしてないとの事で、関係者はかなり絞られていて、紹の事務所の人間でも遠慮してくれと・・・僕達も当日顔を隠した美和さんと会って動画の撮影をするだけなので、契約の条件がそういう事なので宜しくお願いします!」

「なんてこった、よく契約取れたね?・・・少しだけ条件緩くしてくれるとかは、できなのかな?」

「そうですね、この条件が飲めなければ、契約はできないと・・・」

 生見さんがそう伝えると、仕方が無いと言うように肩をがっくり落とす斎賀さん、実は来るのが斎賀さんだと聞いたアンジェが会いたく無いと伝えて来たのだ・・・・自業自得だよね。

「解った、大きな仕事だ、それくらいの条件は飲まないと、仕方が無い、せっかく美和の顔が見れるかもと思ったのに」

 これだ・・・この人 何で来たのが斎賀さんなんだ?と思った僕だった。

「そういう事で、美和さんの事務所の方との打ち合わせや本契約が明日の昼に有りますので宜しくお願いします」

「解った」

 憮然と答える斎賀さん


 翌日、打ち合わせの時間になった。

「事務所の代表として来ました斎賀です」

 そう言ってエンジェルプライムの社長のハリーさんに挨拶する斎賀さん

「ハリーです、宜しくお願いします」

 握手する2人、事前にエドさんからハリーさんと言うエンジェルプライムの社長が契約に来ると聞いた、美和に関してはこの人が全て取り仕切っているそうだ。

「横にいるのが紹です、今回は動画のお話有難うございます」 

 そう斎賀さんが言うと

「エドから紹さんのお話は伺いました、紹さんどうぞ宜しくお願いします」

 ハリーさんが何処まで話を聞いているのか解らないので、とにかく話を合わせておかないと。

「どうぞ、宜しくお願いします」

『あ~エドさんってクレインさんね、そっちからの紹介なんだ、どうりで』

 斎賀さんが日本語でそうこぼす

「えと、何か?」

 書類を用意しながらハリーさんが訊ねる

「個人的な事なので、気になさらずに」

 生見さんがあわててフォローする、僕は、ハアと息を吐く、この人確かうちの事務所のやり手エージェントのはずなのに・・・頭が痛くなってきた。

「はい、ではこちらが契約の書類になります、内容を確認して頂いて、条件に問題が無ければサインをお願いします」

「はい、条件は確かに承りました、当日は動画に出る紹とマネージャーの生見のみが現場入りすると言う事すね?」

「そうです、マネージャーの方にはご説明しましたが、厳しい条件にしておかないと、何処からモレるか解りませんので、本人の希望で今回も顔出しNGなので」

 僕は心の中で、斎賀さんもNGだけどねと付け加えておく

「はい、生見からはそう聞いています、こちらに異存は有りませんので、サインさせて頂きます、念のための確認ですが、撮影はリハーサルと本番、紹は、ほぼ移動しないと言う事で間違いありませんか?」

「はい、紹さんの足の事はお伺いしています」

「有難うございます」

 そうして、契約は無事終了した。

「それでは6日後に、ホテルの方にこちらからお迎えを送ります」

 ハリーさんがそう言う

「宜しくお願いします」

 斎賀さんが挨拶をして、終了だ、僕達も挨拶をしてホテルに戻る。

「無事終わりましたね」

 生見さんがそう言う、斎賀さんが何かやらかすかもと心配していたらしい

「衣装などもあちらで用意してくれるらしいので、ただ撮影するだけでいいらしい、一応コンテはプロデューサーから届いてるんだな?」

「はい、事前に確認しましたが、ほぼ移動は有りません、今はCG技術が発達しているので、体の位置や顔の向きを変えるだけだそうです、すごく配慮して頂いて有難いです」

 僕がそう言うと

「そうか、復帰最初の動画だ、頑張れよ」

 そう言って斎賀さんは励ましてくれた。


 ホテルに戻る

「斎賀さん、今後の予定は?」

 生見さんが聞く

「一応撮影した動画の確認と出来上がった動画の確認、くらいか・・・なので、明日一旦暁を連れて日本に戻る、見学が無い以上こちらにいても仕方無いからな、撮影の前日にまた来るよ」

「了解しました、お疲れ様でした」

 そう言って僕達は、それぞれの部屋に引き上げるのだった。


 ドアがノックされる、生見さんが確認してドアを開ける、入って来たのは斎賀さんだ。

「どうしたんですか?」

 僕はそう訊ねる、少しお酒が入っているようだ。

「今回の仕事、エドさんからの紹介だったよな?美和とエドさんどういう関係だ?」

 その質問に

「僕達は知りませんが、息子さんのリオンさんの関係じゃないですか?生見さんがこちらで、僕の仕事を探している話は、アンジェちゃんからエドさんに伝わったらしいとは聞きましたが」

 僕はそう言ってごまかす

「そうか・・・アンジェちゃんとは、うまくいってるのか?」

「ええ、お陰様で」

「帰国が伸びて良かったな、それじゃ部屋に戻る」

「はい、おやすみなさい」

 ドアを閉めた生見さんが

「あの人、本当に鋭いよな」

「ええ、ドキッとしました」

 2人でほっと息を吐き、顔を見合わせて笑う、とりあえず、動画がネットに上がるまでは、滞在期間が延びたのだった。


 撮影当日、迎えの車に乗り、撮影の有るスタジオに向かった、アンジェとの連絡で、すでに彼女の方は歌もダンスもばっちりだと聞いていた、1日は2人一緒に過ごす時間もあった。

 スタッフがすでにスタンバイしている

「こんにちは、柏木 紹です、今日は宜しくお願いします」

 僕は久々の撮影に少しだけ緊張しながら、挨拶をする、横で生見さんも同じように挨拶をする

「宜しくお願いします」

 撮影スタッフからも挨拶が返る

「宜しくお願いします!」

 このあたりの熱量は何処であってもも変わらないなと思い、久しぶりの撮影にあたり役作りに入る。

 リハーサルが終わり、衣装へ着替える、杖を使いながら移動する、着替えと化粧はこちらのスッタッフが担当してくれる、久しぶりの衣装に気が引き締まる。

 いよいよ本番だ、撮影場所に向かう、用意された、台の上へと登る。

 決められたポーズを確認していると別のドアから彼女が現れた、無言でぺこりとお辞儀する。

 僕も彼女の方を向き同じくお辞儀する、スタートの位置に付く、現場に緊張感が漂う。

「スタンバイ」

 声がかかる、

「スタート」

 静かに音楽が流れ、彼女が踊り出す、僕はポーズを取ったまま彼女とは違う方向を向く、音楽が流れ彼女がゆるく踊る、だんだん僕に近づいてくる、僕は彼女に気づきそちらにゆるく首を回す、彼女も僕に気づく、音楽がサビに入る、彼女が階段を登ってくる、僕は彼女の動きを追う、そして2人が対面する、彼女がどんどん近づく、そして見つめ合う、そのまま2人はすれ違って行く、彼女が台の上から消える、そして僕は彼女をそのまま目で追いながら静かに涙を流す、そして静かに曲が終わる。

「カット」

 僕はほっと息を吐く、プロデュサーのジムさんから声がかかる

「2人供とっても良かったよ!紹、君とっても絵になるね!」

「有難うございます」

「出会いとすれ違いの角度を少し変えて、もう1度、階段の下から宜しくね、美和さんも宜しく」

 美和は階段下に移動し、説明をジムさんから受けている、僕もスタッフの方に体の向きを説明される

「はい、了解です」

 僕はそう答え何度か頭の中でトレースする

「では、お願いします」

 2テイク目に入る

 音楽がサビに入り階段下の場面からスタートする、少し角度を変えて見つめ合う2人、彼女が近づく、少し近いのでは?と思っていると、布越しに彼女が頬にキスを落とす、そして去って行く彼女、僕は同じく彼女を見つめ涙を流す

「カット」

 現場は少しザワザワとしているがジムさんの1声で静かになる

「良かったよ~撮影はこれで終了」

「美和さんお疲れ様でした」

 そう声がかかり、ドアの前でこちらにペコリとお辞儀をして美和が出て行く、何時もこんな感じだと聞いてはいたが、すごいな、普通の撮影現場しか知らない僕には少し驚きの光景だった。

 とにかく美和の露出を最小限に抑えるため、撮影時間が短い、それ以上に彼女の記憶力がすごい、振りを間違える事は、無いそうだ、空間認識力も高くダンスの移動ルートや移動パターンもほぼ1回で憶えるそうだ、ジムさんも最初はびっくりしたと聞いた、10歳の頃から記憶力抜群だったらしい、僕も記憶力は良い方だと思っていたが、実際彼女を見ると違いがはっきり解る、彼女には本当に出会った時から驚かされてばかりだ。

 そんな事を考えていると生見さんが台の上に登ってくる、

「立てるかい?」

 じっと座ったままなので、心配して来てくれたらしい、階段を降りるのがまだ不安なので、助かる。

「いや、彼女のすごさに驚いてたんですよ」

 苦笑しながらそう伝える

「そうだね、すごい才能だよ、彼女ならどんな役でもできるし、台詞だってすぐ憶えられるだろうに・・・・・」

 そう言った生見さんに僕は

「ダメですよ、芸能界には入れませんから」

 そう言って怒ったふりをする

「ハイハイ、解ってるよ」

 そう笑われる、誰がなんと言おうと絶対に無理だから。


                

               アンジェサイド


 ついに撮影の日がやってきた、紹君と動画を撮る、そう思うと緊張する。

 何時ものように準備が終わる、そして撮影スタジオへ、ドアを開けて何時ものようにぺこりとお辞儀して皆さんに挨拶をする、高台の上に座る紹君が見える、彼もお辞儀してくれた、おもわず手を振りそうになるが、ぐっと我慢、我慢、スタート位置につく

「スタンバイ」

 声がかかる

「スタート」

 音楽が流れる

 何時ものように踊る、音楽に合わせ滑るように、そして階段下、サビとともに、階段を登る、出会う、見つめ合い、すれ違い、別れる、今回は初の恋歌だ、そして高台から消える

「カット」

 何時ものように終わった。

「2人供とっても良かったよ!紹、君とっても絵になるね!」

 ジムから声がかかる、そうでしょ、そうでしょ彼は絵になるのよ!心の中で自慢する、ジムから2テイク目を支持される

「出会いとすれ違いの角度を少し変えて、もう1度、階段の下から宜しくね、美和さんも宜しく」

 階段下に移動した私にジムは説明を始める

「今回は初めての恋歌だ、さっきのも良かったんだけど、見つめ合った後に、なるべく顔を近づけてほしいんだ、恋人同士のように、出来るかな?」

 私はすこし驚いたが、黙って頷く

「宜しくね」

 2テイク目が始まる

 そして近づく、紹君の顔を見つめる、思わず布越しに頬にキスを落とす

さすがだ、ほんの少し目を見開いた彼はそのまま演技を続ける、そして私は画面から消える

「カット」

周りがざわざわしている、けれどジムの一言で静かになる

「良かったよ~撮影はこれで終了」

「美和さんお疲れ様でした」

 そして何時ものように部屋を後にする

 着替えていると部屋のドアがノックされる、ジムが部屋に入ってくる

「お疲れ様でした、美和さん」

 念のためスタジオでは名前は呼ばない

「有難うございました、ジムごめんね」

「いやいや、あれ、良かったよ!画面で確認してきたけど、すっごく良かったよ!」

 そう言ってジムは喜んでくれる

「彼、日本の芸能人で人気が有るって聞いたけど、画面を通すと本当に絵になるね!彼も最高だった、また彼と2人で動画作らない?」

「ええ、考えてみるわ」

「うんうん、宜しくね、それじゃお疲れ様でした、動画出来たら何時ものように連絡入れるからね、それじゃ次は歌入れでね」

 そう言ってジムは帰っていった。

 車に乗り込むと紹君から連絡が入った

「お疲れ様でした、今日は有難う、足の調子はどう?」

「お疲れ様、動くシーンが無かったから大丈夫だよ、聞いてたけれどすごい撮影だったよ」

「そう?他の撮影を知らないから、時間は短いとは聞いていたけれど、それより体調が良いようなら、自宅へ来てくれないかな?」

「ああ、かまわないよ、一旦ホテルに送ってもらってからになるから、少し遅くなるよ、いいのかい?」

「ハリーが会いたいそうよ、なので待っているから」

「解った、それじゃあ後で」

 そう言って連絡は切れた、自宅に戻り、紹君を待つ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ