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アイドルに憧れて  作者: 詩鈴
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                アンジェサイド


「やあ、アンジェ」

「ハイ、ハリー今頃に連絡って珍しいわね?」

「そうなんだ、実はジムから連絡が有ってね」

「ジムから?何かしら?今年は、論文も有るから、忙しいわよ?」

「ああ・・・さすがアンジェ、すでに論文か・・・」

「あら、ノアだって大学に入ってすぐ発表したじゃないの、確かに少なくは有るけど、それ程珍しくは無いじゃない?」

「さすがクレイン家だな」

「そうかしら???ところでジムの要件って?」

「ああ、実はね日本での録音の時にアカペラで2曲程歌ったんだって?」

「ああ・・・・ジムのスッタフの人が録音作業に来てくれて、もっと聞きたいって言ってくれたので、何時も顔も見せずお礼も言えなかったので、ついね・・・アンコールもされたので、少し調子にのたかも」

「どうやら、そのまま録音されてたみたいでね」

「え?そうだったのね」

「そうなんだよ、それでこの2曲をカップリングして、CDを出したいとジムが言ってきてね」

「えーっと・・・アメイジンググレイスは問題無いと思うけど日本のアニメソングはどうなんだろう?」

「許可は割と簡単に出るだろうってジム言っているんだけど、どうやら歌手の所属事務所に知り合いがいるらしくって、歌手本人もどうやら美和のファンなんだそうだ」

「え???本当に???私あの方の作る歌大好きなの!日本語で歌ってしまったけど、それも問題無いのかしら?」

 なんだかワクワクしてきた。彼女の作る歌は、言葉の使い方が本当に素敵で、あの憂いの有るビブラートも素敵なのだ。CDも全て持っている。

「ああ・・・アンジェの許可が出たら、日本の事務所と交渉するそうだ、それに今回は動画の撮影は考えて無いそうなので、アンジェは許可だけでいいらしいよ、どうする?」

「素敵・・・・あの人の歌を私が歌う・・・それがCDになる・・・」

 携帯の向こうでは、笑う声が聞こえていた

「その反応はOKだね?」

「うんうんOKよ」

「それじゃジムに連絡入れるよ、詳細が決まったら、また連絡する」

「OK、宜しくね?いつもハリーにばかり仕事をさせてごめんね、本当に感謝してるわ」

「ははは、大丈夫これが僕の仕事だからね、その分の給料もちゃんと貰ってるから気にしないで」

 そう言って携帯は切れる。

 大好きなあの歌手の方の歌が私の声で流れるかもしれない、厚かましいけれど、嬉しい、ドキドキして沈んでいた気持ちが浮上する。早くCDが欲しい。


 季節は少しづつ進む、優しく深まって来た秋の色はそろそろ冬に備えて色あせてきているように見える、ポプラ並木の黄色い葉っぱがハラハラと散っていく。

何気なく景色を見ていた時に携帯が鳴る、ロビンからだ。

「ハイ、どうしたの?つい一昨日に会ったばかりよ?何か有った?」

 少し心配になりそう聞く

「いや、そろそろ紅葉が終わるから、紅葉を見に行かないか?好きだったよね?週末空いてる?」

「ええ、大好きよ、何処に行く予定?」

「ストウを予定しているよ、行くかい?」

「ええ1度は行ってみたかったの、予定も無いもの、是非、他の人は?」

「アンジェだけだよ、勿論護衛の人もね」

「いいわよ」

「じゃあ週末のチケットを護衛の人の分も入れて予約するよ、1泊するけど本当に大丈夫?」

「勿論よ、エドには事後報告でいいと言われてるし、護衛もいるもの」

「そうだね、護衛の人数は?」

「1人よ、何時も来てくれる、カレンよ」

「解った」

「ロビンお願いが有るの」

「なんだい?」

「カレンには、すっごくお世話になっているの、なので出来れば良い機会なので、家族旅行をプレゼントしたいの」

「そうなんだ、とっても良い機会だね、解った家族の数を教えてくれればチケットとホテルの手配は僕の方でやっておく」


「ありがとう!嬉しいわ」

「それじゃあ、土曜の朝に迎えに行くよ」

「ええ待っているわ」

 少し後ろめたく思いながらも、紅葉を見に行くと言う旅行をすごく喜んだ私は、すぐにカレンにも週末の予定を伝える、カレンも喜んでくれた、すぐ家族に連絡を取り、子供達も喜んでいると聞き、とっても嬉しく思った。

 カレンの家族に会うのは何年ぶりだろう?

 そうして私は週末を楽しみに待つのだった。

 私はさっそくエドに報告する

「ロビンとは最近時々一緒に出掛ける、小学校の時の同級生だね?かなり親しくなったのかい?」

「そうね、男の子では一番親しいかも」

「そうか1泊旅行だが、カレンの家族も一緒なら問題無いだろう、気を付けて行っておいで」

「はい、何時も有難う」

 報告を終えた私は部屋に引き上げる


「アンジェは、この週末も柏木さんの所には行かないのね」

 後ろからソフィの声がする、私はソフィを振り返り苦笑いをもらす

「リオの見た所、彼らは両想いに見えるそうだが、アンジェがどうやら誤解したままらしい」

「そうなのね」

「そうなんだ柏木君からは、話したいとの希望が有ったそうだ、彼が何を話すのかは解らないけれど、きちんと話をすれば、おそらく2人の関係に進展が見られるだろう。柏木君は大人だ、きちんと対処してくれる、アンジェを大切に思っているらしいとリオも言っていたしね、リオの目から見てそうなら、大丈夫だよ」

「そうね、昔からアンジェの事になるとびっくりするぐらいよく見ているものね」

「ああ・・・・そうだね」


 土曜日がやって来た、ワクワクしすぎて、早くに目が覚めた私は何時もの運動に加え前回の動画のダンスも一通り踊った。

 汗を流し着替えて迎えを待つ、そうしているうちにカレン一家が到着する。子供達も大きくなっている。

「アンジェ~~」

 末っ子のニナが抱き着いて来る

「ニナ!大きくなったわね」

 すっかり重くなったニナを抱き上げる、これ以上大きくなったら抱き上げられないな、などと思っていると他の2人からも声がかかる

「アンジェ!」

 長女のスミレだ何故日本名か?私が付けたのである。

「アンジェ姉さん、お久しぶりです」

 長男のウォルターだ、背が伸びた、もお子供には見えない

「スミレ!ウォル久しぶり元気にしていた?」

「うんうん、元気だった!私ねボイストレーニングを始めたのよ!」

 スミレが報告すると、それぞれが一斉に近況報告を始める。

「おい!そんなに一度に話すとアンジェが混乱するから1人づつにしなさい、2日も一緒に旅行するんだから、話す時間はたっぷりあるぞ、アンジェすまないね」

 そう言って注意する男性、カレンの旦那さんのロバートだ、エドより年下のはずなのに、同年代に見える、凄みの有る人だ。

 カレンの会社の社長さんだったりする、そうなのだ実はカレンは社長夫人なのである、びっくりだよね?

 社長に見染められて、猛アッタクされて結婚した。

 ロバートはやっと最近現役を引退したが、カレンは現場が大好きという、少し変わった人だ、おかげで私は助かっている。10年以上護衛として働いてくれている、すでに家族だ、師匠でもあるしね!

「お話は後で、そろそろお迎えが来るわよ」

 私は皆にそう告げる、車が到着した

「ハイ、アンジェ皆さん揃っているようだね」

「ハイ、ロビン宜しくね」

「ロビンさんお世話になります」

 そう挨拶するロバート

「カレンの旦那さんのロバートよ、こちらは子供達大きい方からウォルター・スミレ・ニナよ」

 紹介すると子供達はそろって挨拶する

『宜しくお願いします』

きちんと教育された、良い子達だ。

「ロビンだ、どうぞ宜しくね」

 そう言ってロビンは微笑む、うむなかなかにイケメンだ。

「ロビンお兄ちゃんは、アンジェの恋人なの?」

 ニナが突然そう聞いた

「違うよ、アンジェと仲が良いお友達だよ」

 そうロビンが答える、私の胸がチクっと痛む

「な~んだ」

「こら、ニナ失礼だぞ謝りなさい」

 カレンがそう言ってニナの頭にゲンコツを落とす

「ママ!暴力反対!」

「おう!おませさんだね」

 ロビンがそう言って笑う。

 良かった、あまり気にしていない様子を見てほっとする、そして私の胸はまたチクンと痛んだ。


 空港で少し大型の家族向けのレンタカーを借りる。

 わいわいがやがや子供達の声でにぎやかだ、車は走る、ロバートが運転手である。

 先にホテルにチェックインして昼食を済ます。

 ストウは周辺も美しい、丘や街並み自体も美しいのだが、ドライブもかなりお勧めだと以前ネットで見た。

 ロビンも事前に情報を入手しているようで、午後はドライブとなった、ホテルの周辺やストウの街は、明日の午前に周り、午後には帰宅の途に着くのだ。

 美しい街道が続く、カエデが多く赤色が美しい、ウォータベリーに続く街道である。

 ウォーターベリーはこじんまりした町で、小さな個人店が多いストウもそうだった、車を止め、小さな店を回って行く、ロバートとカレンは地ビールの店を見つけて飲みに行く。

 さすがにこの町なら護衛はいらないと思わせる程にのどかな町だった。

 小物やお土産を見て回るここからもあちこちで紅葉した景色が見える。

 子供達を連れ思い思いに買い物をしてロバート達の所に戻る、帰りはロビンの運転だ。


 ストウに到着してホテルに戻る、夕食前に私はふらりとストウの町を見て回る。

 ここも個人の店が立ち並ぶ美しい街並みがあってすぐ近くには紅葉が美しい丘もある。

 ふらりと丘の方へ足が向くまま歩いて行く、夕焼けと紅葉が溶け合って幻想的な景色に見える・・・

 頭の中にふっとある映像が浮かぶ・・・久しぶりに前世の記憶が浮かんで来たのか、それともネットで見た背景だったか・・・思い出せない。

 切ない気持ちと供に思い出したのだ、前世の記憶だろう。

 必死で思い出そうとする、美しく切ない紅葉、日本の景色だ、何処だろう?そうだこれは京都だ、旅行で京都に行った、観光地を避けてあまり人がいない場所を選びあちこち回ったんだった。

 病気を宣告され、治療を始めた頃だったはず。

 ああ・・・だんだん思い出して来た、治らない病気・・・根治が難しい難病だった・・・投薬治療と検査が続いた後、少し落ち着いたので旅行に出たのだ、体力も気力も有るうちにと思い出かけた。

 この景色に触発されたのかな?あの頃を思い出すと、今はなんて幸せなんだろう、そう思う。

 健康で、家族に愛され、友人に恵まれ、紹君にも会う事が出来た、そうだ、私は幸せなのだ、だから頑張れる、後ろ向きになっちゃいけない、前を向こう、頭の中の景色を見ながら、つい口ずさむ。

 紅葉にぴったりな歌、もみじ・・・もちろん日本語である、周りには誰もいない・・・ああ本当に歌って素晴らしい、『心の栄養』昔だれかが言っていた、本当にその通りだ。

 前向きに!前向きに。


 歌が聞こえる、日本語の歌だ・・・・美和の声に聞こえる、やはり、彼女が美和だ!

 雰囲気が似ていた、体つきが似ていた、間違い無い、こんな近くにいたなんて、でも・・・・彼女が美和なのが納得できた。

 彼女は人を癒す波動?波長?そおいう物を持っていた。

 公平さ人を思いやる気持ち、人の気持ちに寄り添う事ができる人だ。

 歌を聞いた事は無かったけれど、やはり癒しの声なのだ、『納得』という言葉が、すとんと僕の中に落ちてきた。

 なんだかとても嬉しくなった。そして僕はホテルの部屋に引き返すのだった。


 翌日ストウの町を見て回る、ウォーターベリーより少し大きな町だ、紅葉のシーズンで日曜日なので、少し人出が多い、それでも何件かのお店を見て回る事ができた、昼食前には空港へ向かう。


 そうして私達は自宅に戻ったのだ。

「ロビン誘ってくれて本当にありがとう、素晴らしい思い出が出来たわ」

 素直にそう伝える。

「僕も最高の旅行になったよ、ありがとうアンジェ」

 そうロビンが言う、嬉しい

「また、行きましょうね」

 そういって、私たちの小旅行は終わったのだった。



                紹サイド


 治療は続いている、アンジェのおかげか以前ほど痛まない。

「だんだん、やる事が無くって退屈になって来たましたよ」

「そうかい?暇ならネットを見るなりすれば?ああ、この際だから、歌とか作ってみればどう?歌詞を書くとか」

「ん~考えた事無かったですけど、暇だからやってみてもいいかもしれませんね」

「そうだな、自作の歌で復帰とか、結構いいかもな」

 そう言って生見さんが笑う、とりあえずネットでも見て・・・・歌詞か・・・少し勉強してみるか。

「タブレット用意できますか?」

「お!その気になった?すぐ手配するよ」

 そう言って何処かへ出かけてしまう、行動早いな、まぁ生見さんも退屈してるんだろうな、そう思った。

 暫くすると生見さんがタブレットを調達して戻る、それを受け取った僕は使い方に慣れるためになんとなくネットに上がった動画を見ていた。

【超美人とイケメンのカップル、空港にて】

 そういうタイトルで投稿されていた動画、アンジェが写る、え?何だこれ思わず、通り過ぎた動画に戻ってよく見てみると、タイトル通り空港の中らしい風景で、荷物を持った仲の良さそうなカップルが歩いて来る、画面にアンジェが写るそしてツーショット、同じ年か少し上くらいの男性が写る、仲が良さそうに楽し気に話しながら通りすぎた。気が付いて無いんだな、盗撮か。。。。以前そういえば、生見さんもモールで男性と買い物をしてたのを見たと言ってたいた。彼なのか?

「生見さんちょっとこの動画見てもらえませんか」

「良い動画があったのかい?」

 そう言って隣の部屋からやって来る

「これなんですけど」

 画面を覗き込む生見さん

「アンジェちゃん?」

「どうも盗撮らしいんですが本人達は気が付いて無いようで」

「この隣の彼、以前モールで見た子だね、どう見ても旅行に行くか帰って来たところに見える、用事って彼との旅行だったんだな・・・」

「やっぱりですか・・・・2人で旅行に行くほどの仲なんですね・・・・」

 心臓がズキズキと痛みだす、初めての感覚に思わず胸を押さえ前のめりになる、だんだん苦しくなる・・・息が・・・

「紹・・・大丈夫か、紹?」

 胸を押さえ、前のめりになる僕に生見さんから声がかかる

「ああ・・・何だか胸が痛いです、おかしいな・・・心臓に問題は無いはずなんだけど」

「は?・・・もしかして胸がズキズキする?心臓を掴まれたみたいに?そして息が苦しくなる?」

「ああ・・・・看護師さんを呼んだ方がいいでしょうか?」

「あ・・・いや呼ばない方がいいと思う、多分」

「え?どういう事ですか?変な病気だったら困る」

 少し落ち着いて来た僕は生見さんにそう訪ねる

「えっと・・・その感覚は初めて?」

「そうですね、新しい病気だったら、どうしたらいいのか」

 そう問いかける僕に困ったような顔をして生見さんが言う

「病気・・・そう病気なんだと思う、でも初めてか・・・ちょっと予想外だな」

「心あたりが?どんな病気ですか?僕も知ってる病気ですか?」

「ああ・・・・その症状なら世間で言う恋の病ってやつだと思うよ」

「は?何だって?こいの・・・やまい?」

 予想の斜め上の答えを聞いた僕は唖然としてタメ口になる、胸の痛みはもうすっかり治っていた、何だって、これが?「胸が痛むんだ」とか言うセリフにはあったし何度も口にした、これがその痛み?本当に?いったい僕はどうなってしまったんだ?

「まさか、ドラマではそういうシーンも沢山有ったはずなのに、実際経験した事が無いとは・・・・予想外すぎて反応に困ったよ」

 生見さんが言う

「僕はどうなったんだろう?子供じゃあるまいし、胸の痛みとか・・・この焦燥、とか焦りとか、頭の中が白くなったり・・・いったい・・・」

「それが、本当に恋してるって事なんだよ紹、彼女を深く愛しているんだね?本当の恋は、結構辛いんだよ」

「ドラマでは、何度も何度も経験したし、それらしく演技もしたけれど、本物は・・・結構きついね・・・」

 そう伝える、彼女を深く愛している、この感覚がそうなのか・・・

「きつい時も有るけど、愛してる人と過ごす時間って、凄く幸せなんだよ、世間では恋愛脳とか呼ぶけれど、本当の幸せって経験しないと解らない物なんだ」

 生見さんがそう言った。

「経験した事があるんだね、生見さんは?」

「そうだね、僕はその人とは縁が無かったけれど、紹の縁は繋がるといいね」

 切なそうにそう話す生見さんはドラマの主人公のように見えた。



               アンジェサイド


 週末を前にジムさんから思いがけず連絡が入った

「ハイ、アンジェ、許可を出してくれて有難う」

「どういたしまして、所で今日はどうしたの?」

「ハリーが説明のために連絡するって聞いてね、色々聞いて欲しいから僕が直接連絡する事にしたんだよ!」

 嬉しそうにジムがそう言う

「有難うジム、それでどうなったの?

「日本の事務所からはOKが出たよ、例の歌手がね、アンジェのファンだそうで、向こうも乗り気でね、録音を聞かせると、とっても喜んでくれた、日本語が完璧だって言ってたよ。」

「え?本当?彼女の歌がとっても好きなの、嬉しいわ」

「彼女にもその事は伝えておいたよ、アメイジンググレイスはアカペラで、アニメの曲は音を付ける事にしたよ、音はこちらでアレンジして付ける事に決まったから、後DVDも一緒に出す事にしたんだよ」

「え?撮影が無いのに?」

「うん、日本のアニメの制作会社も乗り気でね、オリジナルのアニメを作ってくれる事になったんだ、アメイジンググレイスのアニメの制作も喜んで引き受けてくれたよ!DVDの画像を動画に上げるから楽しみに待っててね」

「素敵!すごくすごく嬉しいわ、有難うジム」

「アンジェが歌うカバー曲とか撮りたいな・・・」

「今は論文で忙しいから、ごめんなさい、せめて大学に入るまで待って」

「うん解ってる、それでも次から次にアイデアが浮かんで、止まらないんだよ・・・」

 そう悲しそうにジムが言う。

「本当に有難う、そう言ってもらえると嬉しいわ、でも何時まで続けるかは解らないから、あまりメディアで騒がれるのは嫌なの」

 さすがに顔がバレて子供の時のように攫われたりは心配無いけれど、自衛もできるから。

 ただ他にやりたい事が有るのだ。

 大学はそちらに進むつもりだし、その先どうなるか、私も決めていない、ジムには申し訳ないけれど。

「そうか・・・今までのように、年に1度だけでもいいんだ、続ける方向で考えてくれると嬉しい」

「了解、卒業するまでに良く考えてみるわね」

「有難う、それじゃあ」

 そう言ってジムが携帯を切る、将来を考える時期なんだ、ジムとの約束通り、どうするかをしっかり考えて、決めなくては。

 明日は誕生日だ、週末に紹に会う時は成人している。

 大丈夫もう大丈夫だ、窓から見える秋の澄んだ青空を見ながらそう思うのだった。



                  紹サイド


「紹!情報をもらった」

「どうしたんだい?何の情報?」

「それが明日がアンジェの誕生日なんだそうだ」

「そうなんですね、お礼も兼ねて何かプレゼントを考えないと」

「そうだね、週末までに用意しなくちゃ」

「とりあえず紹はメールでお祝いのメッセージを送るように」

「解かりましたよ、プレゼントは、何がいいかな?あの年頃の女の子は何を喜ぶだんろう?」

「思い切って、指輪をプレゼントしてみるとか?」

「それは・・・・ボーイフレンドのいる女の子にどうかと思うんですけど」

「贈ってみないと解らないし、恋人と決まった訳じゃない、こちらの誤解も解かないといけないし、指輪は、話をするきっかけには、もってこいじゃないかな?彼女を誰かに譲りたい?」

「ああ・・・・それは嫌です、今はそんな事は考えられない、それでも、僕は大人なんだから、やっちゃいけない事も有ると思んです」

「ダメだよ、貪欲にならないと、彼女を攫われてしまうぞ、あれだけの容姿に性格も良いと来てる、狙ってるヤツは多いと思わないと、おまけにハイスクールの最終学年だ、大学はバラバラになるんだから、同学年の生徒に狙われてるかも・・・大学に入った後には、可愛くて美人なアンジェちゃんは皆の憧れの的になるはず、それに君は大人だが、彼女は若いんだ、将来の事考えたら、紹の方が年齢制限が来るぞ!遠慮なんかしてちゃダメだ!」

 生見さんの勢いに思わず、引いてしまう僕、そうだな、僕も今年34だ、年齢制限が有るよな・・・・・・こんなおじさんでいいんだろうか、おっと・・・気持ちが後ろ向きになってるな、いけないいけない、やはりなりふり構ってる場合じゃないよな、よし明後日は頑張ろう、そう思いなおす。

「生見さん、明日外出できないか、担当の先生に聞いてくもらえませんか?」

「ん?そうか、プレゼントを自分で選びに行くんだな?」

「ええ、最近足の具合も良いみたいなので、お願いして欲しい」

「解った、確かめてくるよ、許可が出たら、選びに行こう、というか許可をもぎ取って来る」

 そう言って生見さんは、胸をたたくのだった、まかせておけって事だね

そう思うとおかしくなってつい失笑を漏らしてしまう僕だった。


 翌日生見さんと一緒に近くのモールへ出かけた、僕はもちろん車椅子だ、装飾品店を探す、昨夜さんざん迷って、指輪を購入する事にした。

『すいませんリングを見せて頂けますか?』

 店員さんにそう言うと展示コーナーの一角を指し

『リングはあちらになります、どんな物をお探しですか?』

『まだ決めて無いのですが、18歳の女性に贈る物です、色々見せてもらえますか?』

『畏まりましたこちらへどうぞ』

 案内されたテーブルに移動する

『若い方に人気なリングと今流行ってるリングを幾つかお持ちしました』

 僕は次々見ていくが、気に入る物が無い

『どういった雰囲気の方ですか?』

『そうですね、可愛くって、細身で少し小柄です』

『お好きな物は有りますか?お花とか、蝶が好きだとか、色でも良いのですが』

 僕は少し考える、ふっと頭に浮かんだのが桜の花だった、季節が違うから無いかな・・・そう思いながらお店の人に訪ねる

『えっと、桜の花のデザインの物は有ります?』

『ああ、少数ですがディスプレイには無いのでお待ちくださいね』

 そう言って店員さんは奥に入っていく

「どう?何か気に入った物は見つかった?」

 ディスプレイを色々見ていた生見さんが訪ねる

「うん、日本が好きだと言っていたから、桜の花のデザインの物を見せてもらう事にしました」

「ああ、それはいいね、桜の色は彼女に似合いそうだ」

 そんな話をしていると店員さんが戻って来る

「俺はもう少し見てくるよ」

 そう言って生見さんが立ち去る

『お待たせしました、こちらの5点になります』

 指輪を見てある1点に目がいく、平たいリングにはめ込む形で桜の花びらの石が並び3個の花を作っている、真ん中に小さな黄色い石そして花と花の隙間には小さな透明や薄い色の石が並ぶはめ込んだ所以外は透かしになっていて花の形のレース模倣になっていた、かなり細かい細工だ、繊細だけど可愛いデザイン、これだ!そう思って

『これにします!』

『はい、こちらは有るデザイナーの物で少しお値段がしますが宜しいですか?』

 そう言えば予算を聞かれていなかった

『値段はかまわない、サイズは他に有る?』

 明日なので直している暇は無い

『はい、他に2サイズ有ります』

『このサイズより下は有るかな?』

 アンジェはかなり小柄だ、今見てる物では大きいはず

『2サイズ下の物が有ります』

『それを見せて、それとサイズが会わなかった時のために、ネックレスとして使えるように、この指輪に合うチェーンもお願い』

『畏まりました、暫くお待ちください』

 そう言って店員は席を離れる、暫くして戻って来た店員は、それぞれに化粧箱に入ったリングとチェーンを見せてくれる、チェーンも指輪に合わせて、少しデザインの有る細目の物だった。

『有難う、その2点をプレゼント用に包装をお願いできるかな?それと、同じデザイナーで似た感じのデザインの男性用の指輪が有ったりする?』

『はい、ございます、お持ちしますか?』

『うん、お願い』

 僕は思い切って、お揃いのリングを購入する事にする、このデザイナーって日本人かもしれない、そんな事を考えながら待つ

『こちらでございます』

 店員がリングを持って戻る、そこには先程見たリングより少しだけ太いリングで、花の石ではなく模様が正面にだけ彫られている、桜の花と花びらだ、燻したような色で、柄の割にはなかなか渋いデザインである、気に入ったので購入を決める、サイズが2種類しかなかったが、そのうちの1個が僕のサイズに合ったので、そのまま使用するむね、伝えて支払を終える。

「生見さんおまたせしました、終わりました」

 そう声をかけると、生見さんも支払いを終えてこちらに来る

「何か購入したのですか?」

「俺も、アンジェちゃんにお礼を兼ねてプレゼントしようと思ってね」

「そうですか、それもいいですね」

 そうして明日のための買い物が済んだ僕達は病院へと戻った。



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