22
アンジェサイド
駐車場で待っていた車に乗り込む、とリオが問いかけてくる。
「話・・・しなくって良かったの?」
「うん、最初見た時かなり辛そうだったから、無理させるとけないと思って」
そう返事をする。
「彼といると辛いの?」
ドッキとする、リオにはどうして色々と解ってしまうのだろうか?
「少しだけ・・・・・でも大丈夫」
そう言う私に
「そう、次はきちんと話をするんだよ」
リオはそう言ったきり黙り込む。
車は家に向かって走りだす、そろそろ夕暮れ時にかかる、太陽はかなり傾いている、空から青色が少しづつ抜けていく、次第に黄色みがかかって、亜麻色から鬱金色 へと変わって行く美しい空をただただ、車窓から眺めていた。
紹サイド
ため息を吐きながら生見さんが部屋に入って来る。
「帰ったね」
「そうだね」
会話が続かない・・・
「お兄さんもいたからね、あまり強引にはできなかったよね」
「そうだね」
生見さんはさっきからそうだねとしか言わない
「かなり、マズい気がするんだ、早々に誤解を解かないと、深みにはまる気がする」
「そうだね」
なんだか様子が変だ。
「生見さん?大丈夫ですか?」
「あ・・・ああ大丈夫だよ?」
いったいどうしたのだろう?と思っていると生見さんが
「お兄さんのリオンさん、すごい美系だね、おまけにあの美和と同じ事務所で、おまけにアンジェちゃんのお兄さんだよ?確かにエドさんってかなりイケメンだけど、あの瞳はお母さん譲りなのか?」
「は?何で?」
思わず僕は聞き返してしまった?
「ああ、普段紹を見てるので、美系にはかなり耐性が有ると思ってたが、あの雰囲気・・・写真では見た事あったんだが、生はインパクトが有るね」
いやいやいや、今はアンジェちゃんの話してるんだよ!心の中でそう叫ぶ僕がいる。
「勿論、アンジェちゃんの事も聞いてたよ、なんだか前と違うように見えたね、治療のために呼んだ時についでに話をするのではなくって話したい事が有ると言って来てもらった方がきちんと話を聞いてもらえるのでは無いかな?」
「そうですね、それがいいかもしれない、明日か明後日にでも連絡をお願いしてもいいですか?」
「はいはい、次はちゃんと携帯の番号を聞いてね?」
アンジェサイド
家に戻った私は余り食欲が無く少しだけお腹に入れると部屋に引き上げる。
紹君、辛そうだったな、説明したい事って何だろう?籠目さんの事だろうか?リオンも言ってたけれど、次はきちんと話を聞かないと。
何時までも避けているわけにはいかなんだから、きんちんと気持ちを整理しなくっちゃ。
ベッドに寝ころんだままそんな事を考えていると携帯が鳴った。ロビンからだ。
「ハイ、アンジェ元気かい?」
「ハイ、ロビン、元気よどうしたの?」
「明日、時間有るかい?」
「ええ、明日は1限目が自習になったので4限までは時間が有るわ」
「なら、買い物に付き合ってくれないかな?」
「いいわよ、私も少し欲しい物が有るから」
気分転換が必要、そう思ってすぐに承諾した。
「それじゃ、明日自宅の方に迎えに行くよ」
「待ってるわ」
そう言って携帯を切る、ロビンとは時々出かけるくらいには仲良くなった、お互い気持ちが解っているので、一緒にいるのが楽なのだ。彼もそう思っているみたいだった。
「それで、どういう感じだったんだ?」
エドが僕に聞いてくる
「あ~あれは両思いだね間違いなく」
「そうなのか?」
「そんな風に見えたね、実際彼はアンジェと話しがしたいと言っていたからね、話しさえすれば、誤解も解けるし、恋人になるのも時間の問題だと思うね、なかなか良い人だねアンジェを大切に思ってるようだったよ」
「リオが言うなら間違いないな」
エドはほっと息を吐くのだった。
「それで、買い物って?」
そうロビンに訪ねる
「洋服とCDだね」
「それじゃ先に音楽店にいきましょうか、近くだし」
「そうだね、モールの駐車場に車を止めて歩こうか」
「OK」
そうして音楽店まで2人で歩く、店に入ると楽器やら楽譜のその向こうにCDのコーナーが見えた、そこそこ大きな店だ。
奥に入って行く、奥の展示スペースを見て私は固まる、そこには大きなポスターと宣伝文句が入った看板が飾られ、所狭しとCDがディスプレイされていた。
「有った、探さなくてもいいから助かったな」
そう言ってロビンは、そのスペースに近づいていく、1枚CDを手に取りこちらを振り返るロビン
「アンジェは彼女の事知ってる?」
首を縦に振る
「そう、彼女の歌、とってもいいよね」
そう言った彼が手に取ったCDは美和のCDだったのだ。
えええええええええーーー一般のお店でも売ってるの???
聞いて無いし!!!思わず私は深呼吸していた。
平常心だ平常心・・・
「そ・・・そうだね」
「ずっと前からの、そう最初からのファンなんだ!」
君!最初のCD出たのって・・・10歳の時だぞ、君も10歳だったはず!
「そ・・・そうなんだ、最初のCDってだいぶ前だよね?」
「そうなんだ、その時は、動画でしか見れなくってね、CDを買ったのはだいぶ後になってからだったなぁ懐かしいな・・・」
懐かしいって年か?
「アンジェも美和のファン?」
顔を覗き込むんじゃない!
「動画を見た事有るくらいかな・・・」
「そうなんだ残念、彼女の話は結構共通の話題になるんだよ?ファンクラブとかも結構有ってね、勿論僕も幾つか有るファンクラブの一つに入ってるよ、アンジェとも美和の話しがしたかったな」
ohmayGod・・・こんな近くに熱烈なファンがいた、びっくりだ、こんなに熱烈なファンは初めて目にした、おまけに友人である。
「そろそろ、服を見にいかないと・・・服の方が時間がかかるよね?」
そう言って私は美和の話から逃げ出す。
「そうだね、行こうか」
そう言ってロビンはお会計を済ませて、洋服屋の有るモールの方へ向かった。
「洋服はオーダーしないの?」
ロビンに聞く
「スーツとかパーティー用の服は時々オーダーするけど、普段着は店に有る服かなぁ」
「いいね、私はサイズが合わないから」
「ああ・・・アンジェは細身でちっこいからね」
「あら、失礼ね、日本だと普通に洋服が買えるんだから!」
「そう言えば日本、行ってたんだって?」
「うん、夏休みに家族とね」
「そうか・・・そういえば丁度夏休みくらいに美和も日本にいたんじゃないかって話題になってた、このCDの撮影をどうやら日本でやったらしいんだ」
うへ・・・藪蛇だった。
「どれが好み?どういう服を選びに来たの?」
話をはぐらかす、ふっと笑ったロビンが
「そうだね、さっきも言ったけど、普段着でなるべくラフな物が良いよ、色は黒か白が好みかな・・・・」
そう言ってロビンは服を選びだす、私も違う列を見て回る。
私は良さそうな服を何着か選び試着室にいるロビンに渡す。
出て来たロビンは自分で選んだ服を棚に戻し、私が選んだ服だけを持って、会計に行った。
「私が選んだ服ばっかりだけど?」
「どうやら、君の方がセンスが有るから気に入ったんだ、僕は余り洋服のセンスはなさそう」
そう言ってロビンは笑う。
「そうそう、君の買い物は?」
「装飾品なの、先日作った服に合わせて小さなブローチが欲しいと思ったので、装飾品店に行きたいわ」
「OK僕の買い物は終わったから、移動して買い物したら食事にしよう」
「そうしましょう」
そう言って2人で装飾品店に移動する、洋服に合いそうなブローチが有ったのでそれを購入する
会計を済ませて待っているロビンに声をかける。
「それじゃあ食事をして学校まで送っていくよ」
「ありがとう、何が食べたい?」
そんな話をしながら、モールを後にするのだった。
車が学校に到着する、降りようとした私にロビンが声を掛けて来る。
「アンジェ、これそろそろ誕生日だろ?誕生日プレゼントだ」
そう言って小さな袋を渡して来る
「そうねもうすぐ誕生日だわ、有難うロビン」
「どういたしまして、それじゃあまあまたね」
素直にプレゼントを受け取った私は車を降りた。
紹サイド
「ただいま、戻ったよ」
そう言って生見さんが部屋に入ってくる、今日は生見さんに買い物と荷物の受け取りを頼んだ、美和のCDが届いたのだ。
少し遠くの街まで買い物に行っていた生見さんは疲れているように見える。
「お疲れ様でした、有難うございます」
そう言ってお礼を言う
「大丈夫、実はね・・・」
言い淀む生見さん
「どうしました?何か有りましたか?」
「実は・・・今日行った街のモールでアンジェちゃんを見かけたんだ、装飾品店で買い物をしていた」
「そうなんですね、学校か自宅が近いのかな?」
「連れがいてね」
「お友達かな」
「同じ年くらいの青年といっしょだった・・・・」
ああ、言い淀んだのはこれか
「そうですか、そう言う事も有るでしょう?」
「それが・・・彼もネックレスを購入したように見えた、店の外から見ただけだが」
「アンジェのために選んでいたとは限らないから、気にしません」
少し胸が痛む、でも僕は大人だ、少年に嫉妬なんかしてどうする。
「とにかく、アンジェちゃんに会って話をします、全てはそれからです」
「そうだね、アンジェちゃんにこちらに来れそうな日を確認して、約束を取りつけよう」
「はい、その際に話しがしたいと必ず伝えて下さいね」
「解ったよ」
「何時もお手間をかけてすいません」
僕は深く頭を下げるのだった。
サイドアンジェ
生見さんから連絡が入った。
「こんにちは、先日は有難う」
「いえ、少しでもお力になれたのなら(ファンとして)嬉しいです」
自分に言い聞かせるように話す。
「それで、次なんだけれど、実は紹からアンジェちゃんに話したい事が有るそうなんだ、時間取れるかな?」
話し・・・・ああ・・・きちんと聞けるだろうか?まだ自信が無い
「えっと・・・授業が少し詰まってるんです、それに今週の週末は友人と約束が有って・・・」
「そうなんだ、来週はどうかな?開いてる日は有る?」
「来週の週末で良ければ」
ああ・・・・避けてしまった。
「解った、何時もすまないね、それじゃあ来週の週末に待っているよ」
少し間が開く
「はい、それでは」
そう言って早々に携帯を切る、まだ話しが有りそうな雰囲気だったが後ろめたくって切ってしまった。
お手伝いするって決めたのに、本当に情けない、来週の週末までにはちゃんと気持ちを切り替えるんだ。
強くそう思って決意をする、話しってなんだろう?やっぱり籠目さんの事だろうか?2人の関係を黙っていていて欲しいとかだろうか?胸がドクンと鳴って痛み出す、ダメだ考えちゃいけない、何も考えないで話を聞くんだ。
そう、考えるな・・・・1ファンに戻るのだ、前世からファンだったのだ、だてに、ファン歴長くないぞ!そう思うと少し楽になるのだった。
「そういえば、アンジェは出かけないね」
「そうだな、学校も忙しそうだし、病院まで、時間がかかるから、平日はなかなか難しいんじゃないだろうか?週末には出かけると思うが、またお前が運転手で行くのか?」
「いや、来週開け早々から新しいドラマがクランクインするからその準備で無理かな」
「そうか」
サイド紹
「紹、アンジェちゃんに連絡を入れたよ」
「有難うございます、それで何時来られると言ってましたか?」
「それが、学校も忙しくて、週末は友人と約束が有るそうで、来週の週末になるそうだ、自宅から2時間程かかるらしいから、平日は無理なのかもしれない、学生さんだからね」
そう告げられて僕はがっかりする、時間が開けば開くほど、彼女が遠くに行ってしまう気がする、思った以上にがっかりしている
「それは・・・・仕方が無いですね」
「そうだね、来てもらう以上は、相手の都合に合わせなくては、がっかりするのは解るけど、余り落ち込むなよ」
生見さんに掛けられた言葉に驚いて聞き返す
「え?そんなに顔に出ててました?」
「そうだね、どうやら日本を離れて仕事を離れて素になってるように見えるよ最近の紹は解りやすいよ」
生見さんはそう言って苦笑する、なんて事だ、日本にいて仕事をしていた頃はずっと演技をしていた、柏木 紹という芸能人を演じていた、何時の間にかそれが当たり前になっていて、僕自身も周りの人もそれが当たり前だと思い、僕自信もほぼ本来の自分を忘れていたようだ。
「最初の頃の少年だった紹を思い出したんだ、だから良く解ったよ」
「そうですか・・・自分でも忘れていました」
「随分と自分を追い込んで大変だったんだね、でも思い出してくれて良かったと思っている、日本を出た事とアンジェちゃんのおかげだな」
「そうですね・・・・」
ふっと自然に口元が緩む、本当の自分か・・・・正直日本では少し・・・ほんの少しだけ、柏木 紹という芸能人でいる事に疲れていたのかもしれない、自分を見直すいいチャンスかも、焦らず無理せず、自分を再発見するのもいいのかも知れない、そして彼女と恋人になれればもっといいかな、それにはまずきちんと誤解を解かないと、来週の週末が待ち遠しいな。
「何だか、良い顔になって来たな?」
生見さんが僕を見て言う
「ええ、色々・・・本当に色々考えるのに良い機会をもらったのかもしれません」
「何か見つかるといいね」
「そうですね」
そう言って生見さんを見上げる、窓からは優しい秋の光が入り、部屋を照らすのだった。
紹の事務所
「紹の治療の進み具合はどうなんだ?」
「生見からは、何度か連絡が入りましたが、一進一退と言った所らしいです」
「そうか、余りに長くなると今後に響くな・・・」
「そうですね、紹はかなり人気が高いです、日本に戻れば、あのルックスなので、俳優業の方は問題無いかと思いますが、ブランドとの契約の方が問題かと」
「そうだね、世界には幾らでも人材がいるからね」
「ですね・・・せめてコマーシャルの撮影だけでも向こうで出来れば、かなり違って来ると思うのですが、どうなんでしょう?」
「休業宣言を出してしまっているので難しいだろうね、何件かの継続契約は見合わせる事になるだろう」
「そうですか、非常に残念です」
「紹ならまた、上がっていけるさ、大丈夫」
その言葉を最後に会議は終わった。




