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アイドルに憧れて  作者: 詩鈴
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              アンジェサイド


 秋はゆっくりと過ぎて行く、自分の嫉妬心が巻き起こした事案については、日々反省している、紹君からのメールも、もぉ届かないかもしれない、せっかく友達と言う素晴らしい縁をもらったのに。未だに涙が止まらないけれど、早くこの気持ちに決着をつけなければ、家族を心配させる。

 そう思う中、毎日がゆっくりと本当にゆっくりと過ぎていく、ふいに携帯が鳴る、ドッキとして相手の名前を見ると、ロビンからだった、ほっとしたような残念なような気持ちで携帯に出る

「ハイ、アンジェ元気だった?」

「ハイ、ロビン会ったのは少し前だったわよね?」

 軽い口調で答える。

「それで、今日は何の御用かしら?」

「連絡先を交換した時にも伝えたけど、1度会って話がしたいんだ」

 そうストレートに言うロビン、私は少し考え、気持ちを切り替えるためにもそういう時間が必要だと判断して

「いいわ、お話するだけね」

「有難うアンジェ、それじゃ明日の予定を聞いていいかい?」

 私は、明日の予定を彼に伝え携帯を切る



 学校の駐車場に車が止まる、降りて来たのは先日のパーティーの時とは違い、なかなかに紳士的な服をまとったロビンだった。彼は私を見つけ手を上げる。

「ハイ、アンジェこっちだ」

 周りの生徒がこちらを注目する、ロビンの容姿を目ざとく認めた女子から黄色い声が上がる

「ハイ、ロビン」

 そう言って彼がドアを開けてくれた車に乗り込む。

「お昼は済んだ?」

「いえ、まだよ、さっきまで講義を受けていたので」

「そう、なら少し遠いけど素敵なレストランが有るからそこへ行こう」

 そう言って車を出すロビン、連れていかれたのは、森の中にある静かなレストランである、鳥の声が聞こえてくる、柔らかな午後の光の中に佇む木々が美しく見える。

「素敵なレストランね」

 そう言って窓の外の景色に見入る私

「そうだろう?友人に以前聞いて、1度は来てみたかったんだ」

「そうなの?、ロビンの人脈はなかなか素敵な人が多そうね?」

「そうかもね、仕事で知り合う人が多いけど、結構交際は広い方だと思うよ、本当に仲の良い友人は、そんなに多くは無いけどね」

「そうなのね、お仕事してるって言ってたものね」

「そお、仲の良い友人達とね会社を立ち上げたんだ、PC関係だよ」

「そうだったのね、素敵ね、自分の才能を発揮して充実しているように見えるわ」

「有難う、アンジェならそう言ってくれると思ってたよ」

 その後は近況やたわいも無い話で食事が終わる

「とりあえず、初日なんで、今日はこのまま送るよ」

「ご馳走様でした、有難う、ロビン・・・以前にも言ったように、私には好きな人がいるの、その人の事を忘れる事はできないの・・・・」

「いいんだ、僕もずっと君が好きだった、再会できた事が嬉しい、忘れる事ができない思いは、良く解っている、それでも友人としてでも傍にいたい。君とはこれからもずっと付き合っていきたい、僕の我儘だけれど、許してくれないかい?」

 真摯にそう言われた、良いのだろうか?でも忘れられない気持ちが有るのは良く解る、すっぱり断ち切るのが相手のためだとは解っているが、今の私にはそれが出来そうにも無い。

「友人でいいのなら、貴方が辛く無いのなら、何時か本当の友人になりましょう」

 そう言ってそっと手を差し出す

「有難う、アンジェ」

 ロビンはそう言って眩しい笑顔で手を握り返してくれたのだった。


 その後、ロビンとは、時々会って食事をしたり、遊んだりしている、学校では、変わり者のアンジェに、ついに恋人が出来たらしいと噂になっていたが、気にしない事にした、他人は関係無い。  

 勉強やボランティア、友人達との付き合いに忙しくしているうちに、いつの間にか涙は少しづつ零れる回数が減っていった。

 今日は、診察の日だ、今日は珍しくエドが付き添いで有る。

 担当の医師にはきちんと報告しないと、もうすぐ18で成人だが今はまだ未成年で、エドの保護下にいるのだから。

「先生、実は記憶の事なのですが」

「思い出したのかな?」

「はい、多分すっかり思い出したと思います」

「以前言っていた靄は無いんだね?」

「はい、思い出して以来、靄も無いですし、黒い塊も現れません」

「そうか、思っていたより早かったね、投薬はもお必要無いだろう、完治と言っていいよ、ただ、少しでも異変が起こったり、自分でおかしいと思ったらすぐに受診する事、いいね?」

「はい」

「エドさん、今聞いた通りだ、ぶり返す事は全く無いとは言わないが、彼女しっかりしているから、大丈夫だと思う、思っていたより早く完治して良かったですね」

「先生、有難うございました、お世話になりました」

 エドが医師にお礼を言う。

「いいえ、患者さんが元気になって来なくなるのは、嬉しい事だ、それが私の仕事なのでね」

 そう医師は言って優しく微笑むのだった。


「アンジェ、突然聞いたのでびっくりしたよ、何故話してくれなかった?」

「ごめんなさいエド、記憶が記憶だったので、また心配かけたくなかったの」

「そうか、気を使わせて悪かったね、それで気持ちは落ち着いているのかい?」

「うん、大丈夫」

「そうか、安心したよ、落ち着いているなら良いんだ、とにかく家に戻ろう、話が有る」


 居間のソファにエドが座る、リオも隣に来て話を聞く事にしたらしい、ソフィはエドの横の定位置だ。

「皆、今日定期の診察が終わった、アンジェは、自分の力で病気を乗り越えた、今後は多少の注意は必要だが、完治と言っていいらしい」

「まあ、良かったわアンジェ」

 とソフィ

「頑張ったね、えらいぞアンジェ」

 とリオ、皆喜んでくれる、

「夕食の時間にお祝いをしよう、ノアも夕食までには戻れるだろう」

 家族が病気からの回復を祝ってくれる、素直に嬉しい、心配をかけた、今後はあまり心配させないようにしなければ。

「有難う皆、本当に心配をおかけしました、今後はなるべく心配をかけないようにするわ」

「いいんだよ、家族なんだから、でもやっぱり心配は無い方がいいね、元気なアンジェが一番だよ」

 エドがそう言う、ソフィもリオも頷いている、大好きな家族だ。

「それからもう1つ、これは皆にも言っていなかった、アンジェにも先に謝っておく、新学期が始まる頃柏木君のマネージャーから連絡が有った」

「え?」

「アンジェの容体が悪かったので、連絡は遠慮してもらうように私の独断でお願いしたんだ、病気が完治したのなら、連絡を取る事にまったく問題は無いと思う、アンジェはどうしたい?」

 エドを見る、言葉に少し詰まるが、はっきり返事をする。

「あちらの方達が希望されるので有れば、お力になりたいと思います」

 受け答えを聞いて少しエドの顔が曇る、反対なのだろうか?それでも少しでも協力したいと思う気持ちに偽りは無い、1ファンとして、そうファンとして、望まれるのならば・・・・

「解った、どうやら柏木君はこちらの病院に入院しているらしい、車で2時間程の病院だ、私から連絡を入れて様子を聞いておこう、訪ねるかどうかや日程等は、その時にマネージャーの方と話して決めるが、アンジェいいんだね?」

「はい、早く元気になってほしいと思っています」

 そう返事をする

「そうか、私からの話は以上だ、それでは、夕食の時に会おう」

 そう言って一旦それぞれの部屋に引き上げるのだった。



「ダッド、多分アンジェの誤解なんだと、話を聞いた時に僕はそう思ったしアンジェにもそう伝えたんだよ」

 そうノアが言う

「そうだな、私も多分そうだと思う、だが、アンジェはあんなに聡明なのに、紹という彼の事についてはポンコツになるんだ」

『は?ポンコツ???何だそれ』

 2人がはもる

「名の通りだね、なんて言うのか思考が停滞すると言えばいいのか、考え方が幼稚になると言えばいいのか・・・なので壊れかけた車のようにポンコツになるんだよ」

 エドが苦い顔で答える

「聞いてないぞ・・・かなり熱心なファンだとは思ってたけど」

 ノアがそう呟く

「と言うか誤解させたまま、説明も無いのがいけない、説明が有ればあんな事にはなってないはず」

 リオは憤懣やるかた無いと言った様子で怒っている

「ところで、今日のアンジェの様子は少しおかしかったよね?」

 ノアがエドに訪ねる

「誤解からあんな事になったが、記憶を思い出した事で、自分の気持ちに折り合いをつけようとしているように見える、アンジェは本当に小さな頃から、彼のファンだったんだよ、うちに来る前からだからかなりな長さになるね、彼に直接会うようになったアンジェの様子を見た私が指摘するまでは、自分の気持ちにも気づいていなかった、その矢先に起こった事だったんだ、多分彼に拒否されるのが怖くて気づかないようにしていたんだろう、だからこそあれ程のショックを受けたのだろうと思う、それ程彼の事を好き・・・だったのだろう、誤解が解けて彼がアンジェの事を好きになってくれるよう祈るしか無いな」

 そうエドが言う

「そんなにか・・・・」

 ノアが呟く、 リオはただ沈黙している。

「とにかく、静かに見守ろう、どうなるかは、神のみぞ知るだ」

 エドがそう言うと、ノアとリオは、それぞれに頷く

 ソフィの声で夕食の準備が整ったむね告げられる、アンジェに声をかけ皆でお祝いの夕食を取る、静かにクレイン家の夜は更けていく。




                  サイド紹


 治療はなかなか捗らない、抗生物質を変えては試していく。

 じりじりとした焦燥が胸を焦がす、アンジェとも連絡が取れない。

 彼女はどうしているのだろう?元気にしているのだろうか?

 僕の事を思い出してくれているんだろうか?それとも誤解したまま、その記憶を封印してしまってるのだろうか?

 進まない物事が多すぎて神経がトゲトゲする、そう思った僕は、久しぶりにネットを繋ぐ、ランダムにページをめくっていると美和の動画を見つけた、新しい動画だ、じっくり見入る、背景が日本のように見える、衣装も着物のような柄だ。

 不思議に思った僕は検索をかけてみる、どうやら、背景は日本んで撮影されたらしい、彼女のプロデューサーが日本に入国していたのは確かなようだ、ホテルの前で撮られた写真も上がっていた、ただ美和を見たと言う報告が無いため、バックの撮影のみ日本で行われたらしいと言うのが一番信憑性の有る説になっている。

 日本の楽器が入る事によって、東洋の音楽のような雰囲気を持った曲になっている、相変わらずの声、プロにしか解らないぐらいのテンポのずれ、それが耳に心地よく響く、彼女の優しく癒される声にマッチングしてますます心に残る歌になっていた。

 こんな歌い方もできるようになっているのか、技術もどんどん上がっているようだ、そして再生回数も今までで1番を記録し、それ以上に伸びている。

 ああ、癒される、トゲトゲしていた心がゆっくりと癒されていく。やはり美和の歌は素晴らしい。

 やはり1年か、この数年は1年ごとに曲がリリースされているな。そう思いながら購入画面をタッチするのだった。


「紹!」

 何度目かの動画を見ていると生見さんから声がかかる。

 動画を止めた僕は、生見さんを見る

「エドさんから連絡が入った」

「え?聞き間違いじゃないよね?」

 思わずそう聞いてしまった、それ程待ちに待った連絡だった。

「ああ、間違い無いよ、アンジェの病気も良くなったようで、彼女の希望も有って、治療の手助けをしてくれるそうだ。」

 ああ、良かった、元気になったんだ、でもあの日の事を思い出したのか・・・・そう思うと心が痛む。

「すぐにでも来て欲しいけど、あちらの都合も有るので、それを聞いて日にちを決めてくれますか?」

 そう生見さんにお願いする

「ああ解った折り返し連絡を入れると言ってあるので、こちらから連絡して決めるよ、良かったな紹」

「ええ」

 彼女の顔がまた、見れる、そう思うと僕の心臓は微かに踊り出す、まるで10代の少年のようだ、なんだか恥ずかしいな、それでも彼女に会えると思うだけで嬉しくなってくるのだ。恋の病とは、よく言ったものだ。



             

               アンジェサイド&紹


 紹君に会う日がやって来た

 病室のドアをレオがノックする、暇だと言っていたレオはついて行くと言い張って引かなかった、心配してくれているのだ。

「自分の目でどんな男か確かめなくちゃね!」

 そう言っていた。

 ドアをノックする、生見さんの声がしてドアが開く

「いらっしゃい」

『こんにちは』

 ドアの前に立っていたレオがそう言って病室に入っていく

「こんにちは、お久しぶりです、兄が失礼しました」

 びっくり顔の生見さんにそう言って私は頭を下げる

「ええとお兄さん?綺麗な人だね」

「はい、どうしてもついて来ると言ってきかなくって、レオも日本語専攻しているので、会話は日本語で大丈夫だと思います」

「あ・・・ああ、それは助かるよ、どうぞ入って」

 病室に入ってすぐの所でレオが待っていた、さっきは無作法だったが、さすがに案内も無く中には入っていない。生見さんに案内されて私たちは入口の近くのソファに腰掛ける。

「紹、アンジェさんがいらっしゃったよ」

 生見さんが奥の部屋に声をかける

「はい」

 そう返事があって奥から車椅子に乗った紹君が顔を出した。

 私はすぐにオーラに気づく足首から少し上に濁ったオーラが見える、以前に見た時よりも大きくなっている、かなり調子が悪いのではないだろうか?

 


「こんにちはアンジェちゃん来てくれて嬉しいよ、有難う」

 僕はそう言って隣に座る男性に目をやる、誰だろう?そう思っていると、生見さんが

「アンジェさんのお兄さんだそうだ、今日は付き添いだね、日本語での会話で問題無いそうだ」

「助かります、こんにちは、柏木 紹です、妹さんには以前もお世話になりました、また協力して頂ける事、感謝しています」

 そう言ってお兄さんに挨拶する、美系だな、整った顔立ちとグリーンの目がとっても印象的だ。

「こんにちは、兄のリオン・クレインです、今日は付き添いで来ました」

「ん・・・?リオンさん?聞き覚えが・・・」

 そう言って記憶をたどるとすぐに思い出した。

「モデルで俳優のリオンさん?」

「ええ、そうです」

 生見さんから声がかかる

「どおりで、お見かけした事が有ると思いました、確か、あの美和さんと同じ事務所ですよね?」

「ええ、そうですね、会った事は無いですが」


 ドッキと心臓が跳ねる、リオンはしれっと嘘を吐いている、落ち着け私。

 それよりやっぱり、紹君の具合が悪そうに見える、全体的にオーラが薄いのだ。彼が私の方を見て、にっこり微笑んでくれた。

「紹さん具合が悪そうに見えます、さっそく治癒を始めましょう、ベッドに横になった方が楽ですよね?」

 そう私が提案する

「有難う、少し痛みが続いていてね、このままでも大丈夫だよ」

「ベッドでお願いします」

 生見さんが奥の部屋に紹君を連れていく、

「こちらで願いします」

「はい」

 リオンを見ると頷いている、一緒に奥の部屋に入るとベッドに紹君が横になっていた、私は、そのまま足元へ歩く、そして何も言わず手をそっと載せる。


 彼らが部屋に入って来る気配がする、昨日の夜から、足の痛みが強くなっている、ベッドに横になるとほっと息を吐く、なんとか取り繕っていたはずなのに、相変わらず、アンジェには通用しないなと思いう。

 横にいる生見さんを見る、少し怖い顔だ、具合が悪い事を伝えていなかっのだ、申し訳ない、そう思っていると足の痛みが引いていく、何度も癒してもらっているが、これは・・・彼女の手当を受けた人にしか解らないだろうと思う。

 本当に不思議で素晴らしい力だ。軽い痛みならほぼ治してしまう、今日の僕のように結構強い痛みでも軽減してくれる、本当にありがたい。

 そして痛みが引いた頃、彼女の手の温もりがふっと無くなる。

「楽になったよ、有難う」

 ベッドに起き上がる、彼女の顔を見る、微笑んでくれる、何時もと少し違う微笑みに僕は、ふっと気がついてしまう、そうだった、彼女は今だに、逸美さんとの事を誤解したままなのだ。

 体調が悪くって見逃す所だった、今日こそフォローを入れておかないと、大変な事になりそうだ、僕の感がそう訴える。

「あの・・・・何時も有難う、かなり楽になったよ、日本にいる時から大変な迷惑をかけたね、色々説明したい事もあるんだ、今日はこの後に時間を取ってもらう事はできるかな?」

 そう聞いた。


 オーラの色がましになった、足も色が変わらなくなったので、手を離す

 紹君から何時ものお礼の言葉をもらう、私は何時ものように微笑んで返す、でも・・・気持ちはどんどん沈んで行く、彼の顔を見ているのが辛いのだ、自分なりに気持ちに折り合いをつけたはず、そう思っていた。

 でも、直接紹君を見ると、気持ちがついていかないのだ、そういえば彼女もこちらに来ているのだろうか?そんな事を考えていると、紹君から声がかかる。

説明したい事が有るらしい、どうしようか迷っていると、リオが横から声を掛けて来る。

「アンジェ大丈夫?」

 私の事に敏感な兄はそう聞いてくる

「うん、大丈夫」

「なら彼の話を聞くかい?」

 私は首を横に振る

「紹さん、今日は、体調が悪いようにお見受けしました、なので今日はできるだけ休んで下さい、私達はお暇します」

 そう紹君に答える、それが精一杯だった。



「あ・・・体調はかなり良くなったよ、気を使わせて悪いね、出来れば話したかったんだが、君がそう言うなら、素直に休むとするよ、ありがとう」

 僕はすごくマズいんじゃないだろうかと思いながらも彼女の提案を受け入れるのだった。

 生見さんが2人を見送ってくれる、部屋を出て行く彼の兄がこちらを振り返る、僕は頭を下げ彼を見送る、どうすべきだったのだろう・・・・・

 少しの不安と焦燥が胸を焦がす。



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