19
アンジェサイド
気が付けばベッドで横になっていた。
あれ?何時の間に眠ったんだろう・・・覚えが無いな、色々考えて、疲れたのだろうか?そう思った。
何時ものようにタブレットで最近のニュースを確認していると、紹という文字が目に入る、気になったのでニュースを見る、紹君の入院している病院が写っていた。メディアにバレたようで、相当な数のレポーターが集まっている様子が映し出されている。
ああ・・・大変な事になった、そう思って画面を見ていると、紹君の事務所の副社長のインタビューが始まる。
「こちらの病院に柏木 紹さんが入院されているとの事ですが、間違い無いでしょうか?」
「はい」
「彼の容体はどうなんですか?最初の頃の報道では、重症と報道されたのですが、1月程たった現在は?」
あちこちからレポーターの質問が飛ぶ
「はい、容体は順調に回復しています、皆様にはご心配おかけして、大変申し訳無く思っていますが、紹自身これ程のケガをしたのが初めてなので、事務所としてはなるべく安静にしてもらうため、今まで正式な発表は控えさせていただいていました」
伊丹さんが説明している、質問は次々と飛んでいる。
ニュースを見ていると、携帯が鳴る、生見さんだった。
「アンジェちゃん、ニュース見たかな?」
「はい、今見てました」
「これから、事務所でどういう対応をするか決めるので、暫くはこちらに来てもらう事ができないんだ。ごめんね」
「いいえ、解っています」
「こちらの状況が落ち着いたら、また連絡を入れるよ」
「はい、紹さんのケガもかなり良くなったみたいですし、ご連絡を待っています」
そう言って連絡を終える
話し声を聞きつけたのか、部屋のドアがノックされる
「どうぞ」
そう返すとノアが入ってくる。
「アンジェ、気分はどうかな?」
「ん?何とも無いよ」
そう返事をするとノアは、ほっとしたように息を吐く。
「どうかした?」
「どうかしたじゃないよ、ノックに返事が無いからドアを開けたら、君が倒れていてびっくりしたんだよ」
「え?私倒れたの?」
「覚えて無いんだね」
「ええ、憶えて無い・・・・」
記憶をたどっていくが、全く思いだせない。
「そんなにショックを受けていたんだね、もっと注意しておくべきだったな」
「ショック?ああ?今日何かあったので一生懸命考えた事は憶えてるんだけれど、そういえば、何だか嫌な事があった気がするんだけれど、なんだか霧がかかているみたい」
そうして思い出そうとすると、頭の中から黒い塊が湧いて来て、私はその塊の中へ引きずり込まれるのだった。
「アンジェ!」
なんだか遠くでノアの声がする、そこで私の意識は途切れる。
「エド!エド、アンジェが」
「どうしたノア」
「また、倒れたんだ」
「すぐ病院に連れていかなくては、知り合いに紹介してもらう、連絡を取るから、とりあえず車を手配して、アンジェを車に」
「解った」
気が付くと見知らぬ天井だった、あれ?何処かで聞いた事がある台詞だ・・・そう思い私は周りを見回す。
白い壁にカーテン、白いシーツどうやら病院らしい、ん~また倒れたのかな?ノアが私は倒れたと言っていたな。
そんな風に考えていると病室のドアが開きエドとノア、ソフィもいる、皆が入ってくる、ベッドに起き上がった私を見て皆がほっとしてる、かなり心配させたようだ。
「皆、心配させてごめんなさい」
そう言うと後ろにいたお医者さんが聞いて来る。
「倒れる前の記憶はあるかい?」
「えっと、ノアと話していて・・・何だか思考に靄がかかったようで、その先を覗こうとすると、黒い塊に・・・・」
そう言うとまた靄がかかったように思考が止まる。
「また、頭の中に靄が出てきた?」
「はい、思い出せないの」
「無理に思い出さないでね」
お医者様がそう言う。
「はい、私病気になったのかしら?」
「そうだね、本来は君を守るための働きなんだけれど、少し働き過ぎて過剰反応が出ているだけなんだよ、そのうちだんだん思いだすから、無理して思いだしちゃダメだよ?」
お医者様はそう言った。
「解りました、あまり考えないようにします」
そう言うとお医者様はエドを呼んで廊下に出ていく、エドと話をするようだ。
「アンジェ、先生も言っていたけれど、無理して思い出してはダメよ」
ソフィがそう言う。
「はい、皆に心配かけないようにします」
「そうだね、とりあえず、体は心配無いそうだから、君が大丈夫ならホテルに戻ろうか」
「うん」
そうして私達は、ホテルに戻る。
TVのニュースで紹君の入院している病院の事が流れている。
「暫くは会えないんだね?」
「うん、生見さんから、落ち着いたら連絡するって聞いた」
「そうか、そう言う事なら、そろそろ家に戻ろうか」
エドがそう言った。
「え?」
「アンジェの状態が心配なんだ、向こうの病院でもう1度見てもらって、治療したほうがいい」
「そうね、暫くは会うこ事もできないだろうし、戻った方が安心できるわ」
エドとソフィがそう言う
ああ・・・紹君ともぉ会えなくなる、悲しい・・・でも皆に迷惑かけちゃいけない、ちゃんと治療して、元気にならないと、他の人にも心配をかける。
「はい、解りました」
そう言うと皆安心したようにほっとしている、良かった、最初から何時かはアメリカに戻るのは決まっていた事だ。ほんの少し早くなっただけなのだから、また元の生活に戻るだけなんだ、そう思って、自分を納得させる。
「アンジェは大丈夫だろうか?私達に何が出来るだろうか」
エドがそう呟く。
「今日の先生は自然に記憶は戻ると言っていたから、とにかく騒がないで静かに見守るのがいいんじゃないかな?」
ノアは言う。
「そうね、ノアに賛成よ、とにかく戻って専門のお医者さんにもう1度見てもらいましょう」
ソフィアが言う。
「そうだな、やはりそれが1番良いように思う、紹のマネージャーから何か連絡が有れば、その時に説明しよう、丁度良いタイミングかもしれない」
そうやって私達家族はアメリカに戻るのだった。
アメリカに戻り専門家の先生の診察を受ける、その先生の説明もほぼ日本で受けた説明と同じような物だった。
暫くは、薬を服用するように勧められたので、了承する。
心を落ち着ける薬らしい、最初の1か月は続けて飲むように言われた、その後診察して薬の量を調節するのだそうだ。
アメリカに帰ってからは、何事も無く日々が過ぎて行った、新学期が近づき準備に忙しくしている、最近はあまり物事を深く考えないようにしている。
もうすぐ日本から戻って2週間がたつが生見さんからの連絡は無い。
何だかこちらからは、連絡してはいけない気がして紹君にもメールを出していない、彼からもメールは届かない、どうしているのだろう、元気になったかな?そう思うと、会えない事が悲しくなって来るので、あまり考えないようにしている。
もうすぐ新学期だ、新しい授業、新しい生活、とにかくそれを考えるようにしている、思考に靄がかかり出すと、考える事を止めるようになった、何時になったら、靄は無くなるのだろう?
新学期になってハイスクール最終学年が始まった。
時を同じくして例の動画が配信された、再生数は今までで1番になった。
着物の柄が美しい風景と混じりなんとも言えない雰囲気が素敵だ。
以前いきなりホテルの前でパパラッチされた写真はジムを狙った物だったのだ、今回風景が日本の物で音楽や衣装もそちら寄りなので、どうやら日本で撮影があったらしいと言う話が囁かれている、ジムを日本で見かけたと言う証拠の情報として写真はネットに流れたが、美和を見たという情報は何処にも上がらなかった。
景色だけ撮影に行ったのではないか?と言うのが今一番信憑性が有るとされている。
最終学年という事でそれぞれの進路を考えなくてはいけない、友人達とも良く話し合う、さすがに大学に関しては、皆同じ大学とはいかない、それぞれの目標に向かって専攻する学科に特に力を入れている大学を選ぶ、ほとんどの友人とは、離れる事になる。
そんなある日前々からの友人も交えて会わないか?と提案があった、勿論参加である、離れてはいるが、何度かこのような席は有った、私はほぼ参加している、今回は過去最大の参加人数である、世話好きの友人が会場から全ての手配をしてくれる。
パーティ当日、あまり派手では無い服装を選び会場のホテルに入る。
そこそこ人が来ている、人数がそこまで多くないので、会場もそこそこの部屋だ、立食形式で、壁側にイスが並んでいる、普通の立食パーティ形式だ。
周りを見回す、見知らぬ人がいる、なかなかの高身長でイケメンである。
リオの方が美形だなとか思って眺めていると、その彼が近づいて来た
「やあ!アンジェ久しぶり」
そう言った、あれ?知り合い???誰だ?記憶力には自身が有るが思い当たらない。
「えっと、どちらさま?」
「ずいぶんと久しぶりだから、忘れられたようだ」
肩を落とす彼。
「ごめんなさい、知り合いよね?誰かしら?」
「そう、小学校の時と随分変わったかも、解らない?ロビン・サンプレイトだよ」
目の前の彼が名乗る・・・・・ロビン?え?小学校の・・・面影が無い
「変わりすぎだよ、全く判らなかった」
びっくりして私はそう言った、小学校の時のロビンを思い出す、あまり背は高く無かった、顔もそばかすが一杯あって・・・良く見るとまだソバカスはかすかに残っている、細身というより、ガリガリだった。
目の前の彼は、背が高く、ソバカスは少し残っている物の、端正な顔立ちの、なかなかのイケメンに育っていた、そしてなかなかにパンクなファッションであった・・・・人ってこんなに変わるんだと思ってしまった。
「そうだよね、誰も気がつかないんだよ」
そう言って笑う彼はなかなか素敵だった。
「今日は誰と来たの?」
私がそう尋ねると
「今日は、スティーブと、最近会ってね、パーティが有ると聞いて参加させてもらったんだ」
「そうだったのね、久しぶりに会えてよかったわ?小学校以来ね、PCの専門の学校に行ったと聞いたわ、その後順調?」
「ああ、君のおかげで、順調に進んだよ」
「え?」
「君がボビー達から守ってくれたおかげでPCを諦める事無く、今では、学校に通いながらPC関係の仕事もしている」
「そう、あなたには才能が有ったもの、好きな道で活躍しているのね、良かった」
私がそう言うと
「やはりアンジェは変わらないね、思った通りの人になっている、素敵だ」
いきなりの言葉にちょっと戸惑う、ロビンってこんなタイプじゃなかったよね?本当に人って変わるんだなぁと感心した、他の女子から声がかかる。
「ロビン、こっちに来て、今ドロシーが到着したの、挨拶したいって!」
「行って」
そう言って彼を送りだす。
「彼すごく変わったよね」
後ろから声がかかる、スティーブだ。
「ハイ!元気にしてた?」
ハイスクールで他の学校に行った2人のうちの1人のスティーブだった
「ああ、相変わらずだよ、アンジェはどうだい?」
半年くらい前に会っている
「色々あったわ・・・色々ね・・・」
そう言った私にスティーブは
「アンジェにしては珍しいね、どうしたんだい?」
「聞かないで」
俯いてそう言った私にスティーブが
「解った、ごめんね」
そう言って謝ってくれた、考えちゃダメよアンジェ今は考えちゃダメ。
「できれば気にしないで、半年ぶりなんだから、楽しまなくちゃね」
「そうだね」
そうやってほほ笑み合うのだった。
パーティは惜しまれつつ終わりを迎えた
私達は再会を約束してそれぞれに別れていく。
何だか今日は疲れた、早く家に戻ろう、そう思って迎えを待つ
「アンジェ」
後ろから声がかかる、この声はロビンね、振り返らず返事をする
「ハイ、ロビンどうかした?」
「相変わらず耳がいいね、実はお願いがあるんだ」
「何かしら?」
「連絡先を交換して欲しいんだ」
そう言われて返事に詰まる
「だめかな?」
「何故?」
そう問いかける
「えっと、君ともう少し話がしたくて、嫌かい?」
知り合いなので断わりにくい
「解ったわ、でも私好きな人がいるの、この意味は解るわよね?」
そう言って携帯の連絡先を交換する
「ああ、そうなんだ、付き合ってるの?」
そうロビンに問われた時、1人の女性の顔が頭にうかぶ、息が苦しくなる、 あわててバッグの中の薬を取り出して飲み込む。
様子がおかしくなり、薬を飲む私を見てロビンが心配する。
「アンジェ大丈夫かい?送っていこうか?」
「いいえ、もうすぐ迎えが来るの、だから大丈夫よ」
「そうか、なら迎えが来るまで一緒にいるよ」
「有難う」
そして迎えの車に乗り込む私に
「連絡するよ」
とロビンが伝えて来た、私は、返事をせずそのまま車に乗り込むのだった。




