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アンジェ&紹
「遠い所からわざわざ来てくれて有難う」
僕は少し無理をして元気な声で挨拶する。
紹君の元気そうな声が聞こえる、この人ずいぶん無理している、でも心配させまいとしている心使いが嬉しい。
「しんぱ・・・」
言葉を発したとたん涙が溢れた、声がつまる。
私は涙を抑えつつ紹君に近づく、一番つらそうな場所にそっと手を乗せる。
ああ・・・泣かせてしまったな・・・申し訳ない、彼女の顔を見ながら思う。
昨夜、彼女の処から戻った生見さんから、話が有った。彼女には少し変わった力が有るそうだ。
調子が悪い所に手を当てるとその部分が少し回復して楽になるのだそうだ。
そう言えば以前会った時に肩を治してもらった事を思い出した。
本当に不思議な子だ、動けない体が少しづつ楽になる。
紹君の顔から緊張が取れていく、どうか元気になってそう思いながら、次々に手を乗せて行く。
僕は黙ったまま彼女の顔を見る、以前は美少女だった彼女はすっかり大人になって、美しい瞳を持つ美しい人になった、彼女の瞳は変わっている。
ブルーに濃いグリーンが縁取りをする、海に島が浮かぶようにところどころ濃い緑の飛び地ができていて、外側を同じく濃い緑が縁取っている、彼女の目はいったい何を見ているのだろう?
以前は、薄い金色もあったように思う。不思議で魅力的な瞳だ、彼女にぴったりだ。この目から涙が流れているのは嫌だな、ふとそう思う。
けれど今は体が動かない、涙をぬぐってあげる事もできない。残念だ、泣き顔を見ながらそんな事を考えていると、体の奥にあった痛みが少しづつましになって来る、有難い。
紹君は黙ったまま私の泣き顔を見ている。
少し恥ずかしくなって顔を背ける、痛々しかったオーラはかなりましになって見える、最後に足に手を乗せる。
さすがにすぐに完治とは行かない、奇跡の力では無いのだから、足のオーラも少し落ち着くのを見て、私はほっと息を吐き手をどける、何時の間にか涙は止まっていた。
「生見さんから聞いてはいたけれど、すごいな、かなり痛みが取れて本当に楽になったよ、ありがとう」
本当に奇跡のような力だ、でもこれも彼女にぴったりな力だと思う、彼女を見ていると何故か癒されるのだ。
そんな彼女にぴったりな力だ、彼女は人を癒す人なんだな、おもわず顔が緩む。
笑顔でそう言った紹君、今度は無理してないね、そう思うと自然と顔がほころぶ、その顔を見た紹君が言う。
ああ、この笑顔は反則だ心臓に悪い
「君の笑顔はパワーが有るね」
そう言う僕を不思議そうに見ながらアンジェが答える
「ん?パワーですか?」
?マークが頭をよぎる、パワーって何だろう?
「そうだよ、見てる人を笑顔にできる、そんな力が有るよ」
僕は、あわててそれらしい答えをひねり出す。
褒められた、紹君に褒められた!すぐ有頂天になる私、踊り出しそうな気持ちを抑える
「そういえば、久しぶり、ますます綺麗になったね」
僕は正直に彼女に伝える。
おう・・・・返事ができない程私の心臓がドクドクいってる・・・顔が赤くなるのが解る、ああ幸せだ。
「大丈夫かい?テレてるの顔が赤いね」
彼女の顔が赤くなっていく、照れたのかな?そう思って手を伸ばす。
そう言ってほほに触れる紹君の手を感じる、手が手が・・・頭が真っ白になる、ぐるぐるとハートと?が頭の中を回る。
その時横から生見マネージャーの声が聞こえる
「おいおい、女の子に気安く触るんじゃ無いよ」
おっと、無意識のうちに触れてしまったな・・・失敗失敗
「あ・・・・ごめん」
そう言うと慌てて手を放す、体が勝手に動いたのだ。かなり楽になった証拠だな。
どうやら無意識でやっていたらしい、このイケメンめ、破壊力がありすぎる、私の心臓、頑張るのよ、そう思いつつ深呼吸をする私
ああ・・・彼女がまた深呼吸をしている、時々やってるけど、落ち着くためなのかな?それを見るとどうしても笑ってしまう、可愛い
「くすくす・・・」
紹君から失笑をもらった・・・何で?何で?
「何時も、深呼吸をするんだね?落ち着くの?」
僕はそう尋ねる。
「あ・・・・はい・・・落ち着きます!」
「そうかい?」
返事の仕方が可笑しかった、なんだか僕もちょっと可笑しいなと思いながらまた失笑してしまう。
そう言ってまたくすくすと笑う紹君、さっきよりだいぶ元気そうだ、良かった。と胸を撫でおろす私。
「楽になったみたいですね、まだまだ傷は治らないので、この後はしっかりと休んで下さいね」
そう言った私を見て少し残念そうに紹君が言う。
彼女からの言葉に少し残念に思いながら答える。
「有難う、お言葉に甘えて休ませてもらうよ、早く元気になるためにね」
かなり楽になった事を伝えるため元気な笑顔で微笑む事にした。
この笑顔、貴方の方が破壊力が有るよ!
「えっと・・・それじゃお邪魔したした、また来ます!」
かんだ!!!恥ずかしい、慌てて私は病室を後にするのだった。
生見さんが、慌てて彼女を追いかける、ホテルまで送っていくんだな。
彼女が帰ってしまった。もう少し顔を見ていたかったな。最後かんでたな、思い出して思わず笑う。
どうも今日の僕は少しおかしい、体が弱っているので、思考が少しづつずれるんだろうか?そう考える、彼女の顔を思い出しながら意識が薄れていくのを感じる。
ああ僕も彼女に癒されたんだな、そう思うと弱っている心がほっこり暖かくなった気がした。
アンジェサイド
病院を出ると、生見さんが追いかけて来た。
「アンジェさん、まって送っていくよ」
そうだった帰る足が無かったんだった。ロビーで待っていたカレンと合流する。
「ああ・・・すいません、宜しくお願いします」
ホテルまで送ってもらいながら、話をする。
「今日の紹は少し何時もと違った、色々ごめんよ?」
生見さんがそう言う。
「いえいえ、弱ってる時は、そういう事だって有ります!全然気にしていないので大丈夫です!」
そう伝える。
「そうか、有難う」
そして少しの沈黙の後に生見さんが言った
「紹は、かなり楽になったように見えた、厚かましいお願いだけれど、また来てくれるかな?」
「はい、私で力になれるのなら、何度でも」
勢いよく返事をした
「良かった、宜しくお願いするよ」
「はい!」
その後は、学校の事や色々な事を聞かれた。
私も紹君の事を色々聞いた。
「これはシークレットだからね」
そう言いながら、紹君の失敗談や、事務所の楽しい先輩の話等をしてくれた。
楽しい帰り道だった。
ホテルに戻る。
エドとソフィが少し心配そうに待っていた。
「ただいま」
「おかえり」
「おかえりなさい」
「それでどうたったんだい?」
エドに聞かれた
「うん、ベッドから起き上がれないような状態だった」
そう言って詳しい事を2人に話す。
2人はうんうんと話を聞いてくれた。子供の頃の事がまた、フラッシュバックしないかと心配してくれたみたいだ。
「大丈夫だったよ、紹君もねだいぶ楽になったと言ってくれたので、安心して戻って来たの、それでも重症には違いは無いから、また行って力になりたいの、いいでしょ?」
そう聞くとエドは
「ああ、そのために来たんだから、何度でも通えばいいよ」
「ありがとう」
「いいんだよ、気のすむようにしなさい」
エドがそう言ってくれたので、ほっと胸をなでおろす。
以前は日本に行く事をすごく反対していたので、少し心配だったのだ。
やはり来年シニアに上がる年齢になったからなのか、私の事を本当に心配してくれているからなのか、多分両方だと思う、有難い、私の気持ちを優先的に考えてくれる。
そんな事を考えているとふっと思い出した、何時もこの時期は動画の撮影が有る、多分エドの事だから事前にジムに連絡が入ってるだろうけど、私の方からも一応連絡を入れておかなければ。
そう思って携帯を手に取る、そうするとテレパシーでも通じたように、ハリーから連絡が入る。
「やあ、アンジェ、そちらの様子はどうだい?」
「ハイ、ハリーとりあえずは、柏木さんは大丈夫みたい、治るのに少し時間はかかるだろうけど、元気になりそうよ」
やはりエドから連絡が入ったのだろう、そう聞いてきたハリーに今日の様子を伝える
「それでね、柏木さんが元気になるまで、日本に滞在してお手伝いをする事にしたの、なので動画の撮影が出来ない事を、ジムに伝えて欲しいの」
「ああ、一応連絡は入れたんだが、ジムが実はそっちにスタッフを連れて乗り込むと・・・・そう言って聞かないんだ」
困ったようにハリーが言う
「え?何かの聞き間違いかしら???」
「いや、日本で動画を撮影するのだと言ってはりきってるんだよ」
ハリーの苦笑いが目に見えるようだ。
「えっと・・・・ああ・・・どうしよう」
張り切っているジムが目に浮かぶ、こうなってはジムは止まらない
「仕方ないので諦めてくれないかな?アンジェ」
「解ったわ、仕方無いわね・・・本当に困った人ね」
「すまないね何時も」
ハリーの苦笑ぎみの声が聞こえる
「日程等はそちらに支障のないようにエドと相談して決めるので、宜しく頼んだよ」
「了解よ」
そう言うと携帯は切れる、ああ・・・本当に困った人だ、それでもジムの事は大好きなのだ、仕方ない、頑張ろう。
そうやって色々な事が一度にやって来た。
翌日生見さんから連絡が入る、紹の体調は、すこし回復に向かったらしい、明日また迎えに行くので来て欲しいとの事、断る理由は無い紹君の治癒のインターバルの合間を縫って撮影の手配をしてもらう事になるだろう。よし!明日顔を見て力をもらおう!彼に合うと心が元気になるのだ。




