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アイドルに憧れて  作者: 詩鈴
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               アンジェサイド


 私の時間がゆっくり過ぎて行く、紹君とは相変わらず、メールのやり取りが続いている、最近の動画を見ると少しオーラの色が変化している気がする、疲れているみたいだ、30を過ぎても人気は衰えず、最近は俳優の仕事が増えたせいだろうか?

 メールでもスケジュールが結構詰まっているみたいな事が書かれてたので、少し心配だった。

 あまり深くは聞けない、一応友達ではあるけれど、つい遠慮してしまうのだ。

 無理しないでねとは伝えて有る。

 もうすぐシニアを迎える高校生活も残り1年だ、まだ成人では無いけれど大人の仲間入りである。

 去年、エドに日本への旅行をおねだりしたのだが、すげなく却下された。

 暫く口を聞いてあげなかったエドはかなりしょげていた。

 40代を超えたエドはなかなか渋いおじさまになっている。

 長兄はエドの仕事を手伝っている、おっとり見えるノアだが、エドの息子だ、かなりのやり手らしい。

 可愛らしい恋人もいてそろそろ結婚を考えてるみたいだ。

 エドも長兄に仕事をまかせて、引退を考えてるみたいだ。

 こちらの資産家は、引退が早い人が多い、壮年以降は悠々自適な生活を送りながら余生を過ごすのが、基本になっているらしい。

 理想だよね~憧れるわ。

 ある時ノアにそう話をすると。

「何言ってるの?アンジェはもぉ仕事しなくても悠々自適に暮らせるだけの資産持ちでしょ?」

 と言われた。

「は?何故?」

「あ~未成年だしダディから聞いてないのか・・・しまったな」

 そう言いながら渋々教えてくれる

「美和の稼ぎがねすごいんだよ、それをダディが運用してるので、君の資産はかなりの額になってるんだよ」

 初耳である、考えた事も無かった、自分の収入がそんな事になっていたなんて・・・資産運用?何それ・・・そんなの聞いて無いよ、聞いて無い。

 軽いパニックである。

「アンジェ?大丈夫かい?これはダディに怒られるな・・・まいった」

「はっ!、ノア今のは聞かなかった事にする、私は知らない、知らないったら知らない」 

 そう言うと、ほっとしたようにノアが笑う

「そうかい、助かるよ、何かあったら僕に相談するといいよ」

「うん、うん、有難う」

 私は、理数系が苦手だ、もちろんお金の計算にも経済学にも弱い、なのでお金の事は考えたことも無かった、現在進行形で結構良い暮らしをしてる自覚は有るし、エドが資産家だからなのだと思っている。

 周りも似たような子が多いし友達もほとんどが裕福な家庭の子供達だ、通っている学校が学校なだけに資産家家庭の子達が多いから麻痺してるのだ。お金の事は放置しておこう、エドが引退してもノアが管理してくれるだろう、生活に困らなければそれでいいんだ。

 苦手な事はポイっと投げる私はすぐに思考を切り替えるのだった。

 そうしてジュニアが終わった、長い夏休みが始まる、今度こそはエドを落とすのだ、はりきっていこ~~!

 そう思っていた有る日、ネットのニュースで紹君の悲報を見る。

 『柏木 紹さん、映画の撮影中に崖から滑り落ちて、大けがで入院中!今後の撮影は一旦中止になり、期待された映画は延期される事に』 

 この文字が目に入り、動画が流れる、崖を上るシーンだった、何かのきっかけで足が滑るとそのまま滑り落ちてしまった。救命ロープが利かなかったみたいだ。

 私は震えが止まらなくなる、どうしよう、どうしたらいいの?頭が真っ白になる、子供の頃の事故を思い出す・・・涙が溢れて止まらない。

 意識が飛んでいたのか、ノックの音でふっと気が付く、返事が無いのでエドがドアを開けて入ってきた

「アンジェ?ニュースを見たかい?見たようだね、大丈夫かい?」

 優しくそう聞いてくれる。

 私は言葉が出なくて、溢れる涙を止める事ができずにいる、かすかに首を横に振る。

「大丈夫では、なさそうだね」

 エドはそう言って優しく抱きしめてくれる。エドに抱きしめられると少し思考が戻ってくる、涙はまだ止まらないが少し楽になった気がする。

「子供の頃の事故を思い出したの、怖いよ」

 震える声でエドにそう告げる

「そうか、大丈夫だよ、紹は、生きてる、命に別状は無いけれど、骨折や傷があって暫くは入院が必要らしい」

 そう伝えてくれる

「ああ・・・ああ」

 言葉が出ない、震えは少しましになったようだ、エドに抱きしめられて少しづつ気分が落ち着いてくる。

 震えが止まったのに気づいてエドが話を続ける

「私と一緒に日本に行こう」

 少し驚いた、去年はあんなに反対していたに・・・

「紹が心配だろう?きちんと会ってその目で大丈夫だと確認するといい、関係者への根回はしておく、とりあえず家族が心配しているから居間に移動して話をしよう、できるね?」

 私は頷いてエドに連れられて居間に行く

 心配そうな家族が、ソファから立ち上がる、ドアの空く音がする、リオが戻って来たのだ、仕事だったはずなのに。

「アンジェ大丈夫かい?」

 居間に入って来たリオの第一声がこれである。皆に心配をかけた。

「うん、大丈夫、日本に行って直接確かめてくるから、だから大丈夫」

 泣きながらにっこり笑う。

「皆心配してくれて有難う、エドもソフィもノアもリオも大好き!」

 そう言うと家族はほっとした顔で微笑むのだった。


 さすがに仕事の早いエドである、翌々日には、私たちは、日本に飛ぶ飛行機の中だ。

 今回は、エドとソフィとの3人での旅である、ノアは現在進行中のプロジェクトからはずれる事ができなくて、スケジュールが空いたら合流する事になっている、リオは、映画の撮影が押しているので、どうしても抜けられない、あの日は相当無理をして家に帰って来てくれたらしい、次兄よ、そんなだから恋人ができないのだ・・・・何時までたっても、猫かわいがりが止まらない、そう思いつつ感謝の気持ちが溢れそうになる。

 紹君が心配でここ数日眠れなかった、いつの間にか眠っていたのだろう気が付くと飛行機は、もうすぐ日本に到着する、かなり長い間眠っていたみたいだ。エドとソフィもこちらを見て微笑む、眠れないらしい私の事を2人供心配してくれていたようだ。

 あちこちが強張っているが手を持って行くと楽になる、かなり眠ったので気分はすっきりしている。

 早く紹君の様子を確かめたいけれど、私だけではどうしようも無いので、エドに従って入国手続きを済ませる。

 日本だ!日本に戻って来た、ああ心が震える、このじっとりした夏の空気、日本にいるとはっきり解る、あちこちから聞こえる日本語、嬉しいと心が騒ぐ、長かった、本当に長かった。

 感慨にふけっていると入国手続きが進んだようで、私の順番になる

『入国の理由と滞在期間はどれくらいですか?』

 そう聞かれる

「観光です、滞在期間はまだ決めていません」 そう日本語で返すと、入国管の人がびっくりしている。

 まっさらなパスポート、どう見ても白人にしか見えない外見と名前、驚くよね普通、でも私は日本に帰って来たのだ、日本語を使う!!!

相手の人はびっくりしているが、日本語で返してくれた

「そうですか、良い旅を」

「ありがとうございます」

 にっこり笑ってそう答える

 先に手続きが済んだエドとソフィがこちらを振り返り笑っている、こうなったらおそらく日本語しか使わないのだと解っているのだ。

 もちろんエドとソフィとの会話は英語だよ!エドは日本語解るけどソフィが解らないからね!

 私が子供の頃から日本に行きたがってると知ってたエドはこっそり日本語を勉強していたらしい。やっぱりエドはすごい!できる男である。

 そうして私達は手配しておいたホテルに向かう、部屋に収まり荷物を整理していると来客があった。

 『どなた?』

 誰何する声がする、私の護衛で有り、師匠であるカレンだ、彼女は長い間私の護衛を務めてくれている、師匠ありがとう!

 子供も旦那もいるのに私を優先してくれる、仕事だと言ってしまえばそれまでだが、彼女には一生頭が上がらないと常々思っている。

「こんにちは、紹の事務所のスタッフの生見です」 日本語で返事が有る

『師匠、紹のマネージャーです、入ってもらって下さい』

 そう告げるとドアを開けてくれた。

 わざわざマネージャーさんが尋ねて来てくれた。

「こんにちは、生見さん、わざわざ来てくださって、有難うございます」

「アンジェさん久しぶりです、何年ぶりでしょうか?会ったのはかなり前になりますね」

「はい、お元気でいらっしゃいましたか?」

「おかげ様で」

 日本人らしい挨拶だ、

『エド!ソフィ、紹のマネージャーの方がわざわざ尋ねて来てくださったの』

 奥に向かってそう声をかける

「すっかり大人になったねぇ、かなりの美人さんだ」

「有難うございます、ほめ過ぎです」

 エド達が奥の部屋から出てくる

『こんにちは、アンジェの父のエドワード・クレインです』

 そう言って生見さんに手を差し出すエド

『こんにちは、以前1度お会いしましたね?あの時はご挨拶もせず、失礼しまた、紹のマネージャーの生見です』

 手を握りながら生見さんが言う

『気にしないで下さい、あの時はアンジェのために行ったのですから』

『そう言っていただけると安心します、有難うございます』

『隣にいるのは家内のソフィア・クレインです』

『初めまして、紹のマネージャーの生見です』

 そう言ってソフィに手を差し出す。

『こんにちは、ソフィア・クレインです』

 そう返事して手を握る、ソフィは日本語は、話せないけれど、聞き取りはまぁまぁできるのだ。

『どうぞ宜しく、お願いします』

 英語で答える生見さん、生見さんは英語もできるんだ、そう言えばオウルさんと話してたな、以前の事を思い出す。会話は、問題なさそうだ

『さっそくですが、柏木さんの容体はどうなんですか?』

 エドが尋ねる

『ああ、そうだね。アンジェさんが来ると聞いた紹が、心配してるだろうと、僕をよこしたんだよ、足を複雑骨折してね、手術は済んだが、今は動けないんだ。幸い滑り落ちた時に頭は打って無いのでそちらは心配無いようだ、救命ロープがしっかり働かなかったせいで滑り落ちただけで、下まで落ちる前に止まったんだよ、後はあちこち傷ができていて胸を打ったせいで肋骨にも少しひびが入ってるみたいだ。』

『かなりの重症ですね、でも命にかかわるケガじゃなくって幸いでした』

 少し安心した私はほっと息を吐き、エドとソフィを見て頷く

『面会はできそうなのか?』

 エドが生見さんに尋ねる

『そうですね、もう少ししたら多分、今、痛み止めが入ってるのですが、まだあちこち痛むらしくて。なので少し待っていただけますか?』

 エドが私を見る、私は頷いて生見さんを見ると日本語でこう切り出す

「生見さん、私は人をほんの少しだけ癒せるみたいなんです」

「は?」

「少しだけ特殊な能力というか、東洋で言う気のような物が有って、手を当てるとその部分を少し楽にする事ができるんです、なので、なるべく早く紹さんに会って、手当したいんです」

 生見さんは少し考え込んだ。

「そういえば以前紹の肩を治していたね?」

「はい、そうです以前見ていた生見さんになら話してもいいかと、エドと相談して、お話しする事にしました、少しでも紹さんの力になりたいのです」

「解ったよ、当然秘密だよね?」


「はい、宜しくお願いします」

 頭を下げる私を見てエドが話に入って来る

「紹のマネージャーは話が分かるね、話が早くて助かるよ」

「いえいえ、秘密を教えてくださって、有難うございます、仕事柄口は堅いので心配無いです」

「はは、お願いするよ」

 どうやら話はまとまったようだ。

「手配が有るので、明日の昼過ぎには迎えに来ます」

 そう言って生見さんは帰っていった。


 見送りをしていたエドが振り返って言う

「良かったなアンジェ」

「うんエド有難う、ソフィに後で説明しておいてね」

「もちろんだ、病院には、カレンと行きなさい」

「はい、頑張って来るね」

 そう言った私を見てエドが笑う

 笑ってる2人を見てソフィも笑った

 ああ、心からこの人達の家族になれた事を感謝したい。

 今だけはこう言おう『神様有難う』と


 翌日迎えの車で病院に向かう、もちろん正面からでは無く、夜間救急の入口から入る。有名人ご用達な病院なのでこういう心配りには余念が無い。もちろん、病院の中にメディアの関係者はいない。

 紹君の病室に向かう、生見さんがドアをノックして声をかける

「紹、俺だ入っていいか?」

「どうぞ」

 と返事が返って来る、ドアを開けて生見さんが中に入ると私を招き入れてくれる。病室には、カーテンのが引かれている、生見さんがカーテンの奥に入っていく

「アンジェさんこちらに来てくれるかい?」

 声を掛けてもらった私は、カーテンの奥に入っていく。

 紹君がベッドに横になっている、オーラが痛々しい、足は天井から釣られ固定されている。



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