【幕間】最後の自分と最後の貴女
アムールは悩んでいた…
ロヴィーナの言葉が本心なのかそれともロヴィーナが思い出せない記憶による混乱なのか
好きな人に大好きだと言って貰えてそれはそれは嬉しかった反面やはりフェリチタのことが頭をよぎる
自分はフェリチタがいなくなった椅子に座っているだけ
そんな卑怯な自分にロヴィーナから大好きなどと言って貰う資格があるものなのか
ただただ考えていた
「フェリチタ様も立場は違えど悩んでいましたね」
思い出すのはあの日
フェリチタから正妻を渡すと言われた日
あの日のフェリチタの顔は今も頭から離れていない
「ロヴィーナ様…いつか…私は必ず」
静かに眠っているロヴィーナをお姫様抱っこしている状態で夜空で輝いている月の光が差し出しているなか、
アムールはそっとロヴィーナの髪に唇を落とした
朝、それはロヴィーナに取っ手の天敵の一つである
朝自分から目覚めることなど無くなったロヴィーナだったが今日は何故か自分から目覚めることができた
「…世界でも亡ぶのかな?」
まさか私が朝自分から目を覚まして起きるなんて…
思わずテンプレなセリフ言っちゃった…いや、テンプレは槍か
ここはどこ?私の部屋は私が寝ちゃったから入れないし…ってわ〜綺麗な朝焼け〜いつぶりだろ〜
「ん?医務室か、久しぶりだな〜昔はしょっちゅう怪我してたからよく通ったな」
昔は今と違って弱かったから無茶してたな、なんて思い出していくうちに少しづつ落ち着いてきた
ふむ、目は見えないままね…左目を閉じて右目を開いて…使えないか
どうしよう?オッドアイはかっこいいとは思うけどバレると厄介
仕方ないこうなったらカラコンだな!
金色のカラコン持ってないから頼まないと…申し訳ないけどお急ぎで
「ロヴィーナ様起き…て…る…?」
「うん、今日は何故か起きれた」
「今日わ槍ですね」
「む、失礼…じゃないか私も思ったし」
それにしてもアムールの服が昨日と同じだ
さてはアムールのことだか私が寝衣で寝てないから自分もなんて思ったな
私はそんなこと気にしないと言うのに全く
「それでいつもより早いけどどうしたの?」
「そうでした、昨晩は入浴が出来なかったのとその…右目が見えないと仰られたので…その…御一緒…しようかと思いまして」
確かに片目だと視界が悪い
ん〜ならアムールの言う通りにしようかな
それに一人で行くよりもアムールと一緒にいた方が右目がバレるリスクも下がりそうだし
…アムールには頑張ってもらわないといけないけど
「じゃあお願いしようかな」
「かしこまりました」
「なんだかメイドみ…たい…ッ!」
「ど、どうしました!?」
自分の体のようで自分の体じゃないような感覚
まるで作りかえられたようなそんな感覚
やばい…お昼から教会行かないといけないのにこれじゃダメだ
ただ少しづつだけど動けてるような気が…しなくもない
「…力が入らない」
「ッ!だ、大丈夫ですか!?い、今すぐ医者を!!」
「大丈夫大丈夫!なんとなくだけど治ってきてるから!…タブン」
「そ、それなら…」
うん、嘘はついてない。ちゃんと後にたぶんってつけたからもしもの時私は悪くない
あれ?てなると私どうやって浴室まで行こう?
「となるとロヴィーナ様はどうやって浴室まで行きましょう?」
「じゃあ私をここまで連れてきたように連れて行ってもらおうかな」
「…わ、分かり…ました」
え?なんで頬を赤らめて戸惑ってるの?
私どうやって連れられてこられたの!?
連れてくるだけで頬を赤く染める必要は…ありそう…
アムールは貴族だからお姫様抱っことかは恥ずかしかってそう
「だ、大丈夫?」
「は、はい!大丈夫です!お、お姫様抱っこで連れてきましたので…し、失礼します」
しかしロヴィーナの予想と裏腹にアムールは全く違うことを考えていた
昨日はロヴィーナ様をお姫様抱っこで連れてきたので今日…も…
そういえばロヴィーナ様の脚…柔らかかった
必要ない筋肉をつけていなとはいえそれなりに付いているはずのトレーニングをしている
なのにあのやわらかさは異常!
…っは!わ、私はなんということを!ま、まるで変態…
まさか私ロヴィーナ様に欲情…は無い!あってはならない!絶対に!
というより私らしくない!
人知れずアムールは葛藤していた
「だ、大丈夫ですか?痛くないでしょうか?」
「いや、アムールの方こそ大丈夫?重くない?」
「大丈夫です。とても軽いですよ」
「ム、それは私の成長が遅いってこと?」
少々意地悪したくなってしまった
頬を膨らませアムールの首に腕を回す
うん、やっといてなんだが恥ずかしいなこれ
私の方の頬も熱い
まさか私がアムールの恥ずかしがる顔を見るためにしたのに私まで恥ずかしくなるなんて
顔が近い…あと少し近づけば口と口が触れる距離
「つ、着きました」
「う、うん…」
や、やりすぎた…
あの状態が続いてたら触れてたかもしれない
そして服を脱がされちょくで体を触れられる
アムールと一緒にお風呂入ることが初めてだからなんだか慣れない
いよいよ体を洗うとなった時アムールは硬直した
「どうしたの?」
「その…ロヴィーナ様の綺麗な黒髪が改めてお綺麗だと見てれておりました」
「そっか…フェリチタも綺麗って言ってくれたな。伸ばした理由もフェリチタなんだよ」
私の言葉を聞きアムールは私の髪に伸ばそうとして手を戻す
今言うことじゃないなってわかっているけど口に出たものは仕方ない
これは完全に私のミスだな
「私の髪も体も好きな人にしか基本触れさせてないんだから誇りに思って」
「そ、それは…」
「さ、早く洗って」
「…かしこまりました」
まだ空気が悪いな
あー本当にやらかした
ん〜こうなったらとことんからかいに行く
「ん、ア、アムール…ハァ…ハァ…そこ、ダメぇ」
「髪を洗っているだけなのにそんな声出さないでください!」
「え〜仕方ないな〜」
「私はロヴィーナ様が思っているほど弱くないと思っています」
「…そっか」
杞憂がったなー私が思ってるほど弱くない…か…
そりゃそうだな
じゃないとずっと私のそばにいてくれなかっただろうし
私はまだ引っ張っているのかな
「ロヴィーナ様」
「ん?なぁに?」
「今は私とロヴィーナ様二人の時間です」
「うん」
「なので今は私とのことだけ考えて貰えるとその…嬉しいです」
…それもそっか
今は私とアムール二人だけの時間
今はそれだけを考えよう
「ん〜気持ちいい〜生き返る〜」
「分かります、お湯に浸かるのはとても心地いいですね」
「…アムール」
「はい」
「勝手に居なくなったりしないでね。勝手に死ぬことなんて許さないから」
今までの軽いような雰囲気からガラリと変わる
しかしロヴィーナは頭をアムールの肩に乗せてまるで別れを惜しむ恋人のような雰囲気
それに対してアムールも真剣な表情で答える
「もちろんです」
するとアムールは立ち上がった
私も少しお風呂から上がり腰を下ろして足を伸ばしてお湯から出す
その足に顔を近づけてすね、足の甲、足の裏、足の指先と唇を落としていく
少し恥ずかしかったりはするがアムールの気持ちは心底嬉しい
最初に言い出された時は戸惑ったりしたが今はある程度慣れた
「さて、お風呂にゆっくり浸かろ」
「はい」
アムールの顔は幸せの一文字だったら
それを見て私もとても嬉しかった
また幸せを手離したくない
今まで抑えられてきた感情が抑えられない
とても久しい感覚だった




