白痴
あうああぁ…あるぇ?
あ?あー?
私?
今回は意識を獲得するのが困難だった。
私は頻繁に泣いていた。なにかを言いたいのに言えなくて、全部頼っていた。
おしっこもまともにできなくて垂れ流していた。
覚えてないの…。何も覚えてないの。
私が悪いの。全部私が悪いの。ごめんなさい。
迷惑掛けてごめんなさい。お母さんは泣いてた。
障碍者に生んじゃったって…。
分からないよ。なんで泣いてるの?
でもちょっと愉快だった。
お母さんの泣き顔がぐしゃぐしゃだった。
お母さんは私を連れて暗い森に出掛けた。
ロープを私の首に巻き付けた。
やめてお母さん!ってそんな言葉も出てこない。
酷いな…やっぱり、みんな歪んでる。
ほんとくそだね。やめなよ…。親が頭おかしいんだよ。
今回の母親はどうやら父に暴行を受けていた。
今回、私はおかしくなかった。
そりゃ、できないことは多かったけど。私は倫理的にはおかしくなかった。
脳が悪い。
その性質すべてが完璧に足り得ていた時期を思い出そうとするけれど、この脳は本当に駄目だった。そのせいで色々欠落した。
前の脳の方がよかったかもしれない。
でももっと素直に。受け止めなくちゃ…。振る舞って演技して。
そもそも、黒幕を倒す必要はあるのかな?
私はなぜこうなったんだろう。その発端について…。
この世界は何も語らない。
何度も繰り返すほど、理解できなくなる。
もう私は転生したくない。
次があるのかと考えるけれど、私は不幸にしかなれない。
まるで脇役みたいで、浅いんだ。
真実にたどり着くことができない。
魔法のひとつでも手に入ればいいのに…。