春夏秋冬
地面が固くて冷たく、しっとりとしていた。
そして、形容しがたい生臭さ…。
ここはどこでしょうか?
私はただ、贅沢に生きたかったんだ。
過去を食らう化け物にでもなったのだろうか。
私は前の世界では呪術を用いてヤクザをしていた。
金を貸して、予知をして、人を操り、金にしていた。
根っからの悪だったんだ。私は今、反省をしてるのに、神様は許してくれない。どうしてこんな世界に転移されたんだろう…。
ほんと最悪だ。神様を憎みそうだ。でもそれは反省?私は反省できてる?今更、反省しても神様はなにもしない。今頃、嘲笑ってるのだろうか。
思い出すのはそればかり…今、私には現実が受け止められないのだ。
目の前には体の一部が壊死したような臭いの化け物の様な髭のおじさんがニヤけながら私の顔を触っていた…。
段ボールでできた汚い小屋に連れられて私は震えながら力に圧されていた。
でもなんだろう…抵抗が出来ずにおじさんの為されるがままにされている…。
その気持ち悪さに思わず涙を流していた…。
知らない感覚…。
こんなはずじゃなかった…。
私はそんなことに興味もなかったけれど、はじめてのそういう事が知らないおじさんに好き勝手されている事が、受け止められなかった…。
転移されて一日目からこんな気分を味わうなんてもう私はこの世界を生きられるのか分からない。
私が、私という尊厳を凌辱されていた。
冬のような春だった。
はじめての春は知らない誰かに奪われた。
売ることもなく、喜びを知ることもなく、
どの感覚もこの気持ち悪さを凌駕することは無いだろう。
ただ、冷たく吐き気が喉の奥に詰まり、頭の中で処理が追い付かない…。
私はストックホルム症候群になっていた。
そのおじさんに尽くしていた。何故だろう。意識ができない。
この世に来てから、私は私で無くなったのだろうか?
そしてある日、そのおじさんは死んだ。
病気だったらしい。そして私も病気になっていた。
感染されていた。
おじさんはゴミから広い集めた飯を与え続けてくれた…。
私にとってはかけがえの無い存在だった。
思えばそのおじさんは優しかった…。
私はおじさんが死んで、はじめておじさんの存在の大切さに気付いた…。私の初恋だった。私を気持ちよくさせてくれていたんだ。
もっと気持ちよくなりたかった…もっと苦しい気持ちが更新されていく…。
涙を溢しながら喋ることもできない口から嗚咽を貪っていた。
そして私は弱る体で必死におじさんの死体を抱き締めながら、
"二度目の死"を味わった。
どうか、来世もおじさんと一緒になれますように…。