上位種と変異種との戦闘
森を監視できる少し離れた野営地で話し合う事に。
まずは依頼の再確認。
討伐対象はデスウルフ。
近くのミリシー村に被害が出ている。
「俺達が倒したやつやマグノリアちゃん達が倒した数を考えると、森の奥にはもっと数がいそうだね」
「そうですね。魔力察知で確認したのですがデスウルフは把握出来るだけでも三十体以上、また上位種と思われる魔力量の多い魔物の反応もありました」
魔力察知でも分かるけど、本当はメニュースキルのマップ機能の方で知ったんだけどね。
流石にメニュースキルは私専用スキルで特殊すぎるから言わない方がいいと思って黙ってる。
その辺の事を話すとなると転生者とか、女神様の事とか話さないといけないし。
「上位種もいたのですね。思った以上にデスウルフ達は村近くの森の方まで移動しているようです。これは、森に何か異変が起きている可能性も考慮しましょう」
「デスウルフの上位種となるとキングデスウルフか?」
「後は変異種などの可能性も考えた方がいい。魔力を多く宿す物を食べたりして変異する事もあるからな」
サージュさんとレルスさんとトレランツさんが話し合っている。
エルンストさんとアビルさんは話を聞きながら、周囲の警戒をしていた。
魔物の生態はまだそこまで解明されていない。
けれど、それでもいくつか分かっている事がある。
その一つが大量の魔力を含む物、例えば高ランクの魔物の死骸や魔晶核、魔石や魔宝石など。
また、強い属性を宿していて大量の魔力を含む物も。
そういった物を食べたり、身体に取り込むと魔物は変異を起こす事がある。
大体は純粋に強くなったり、元は持っていなかった属性を使えるようになるなど。
種族自体が変異種になったり上位種に進化する事もあるらしい。
という事はこの森にデスウルフよりも高ランクの魔物の死骸があって、それが原因で今の状況を引き起こしている可能性もある。
「デスウルフ達を倒したら、もう少し奥まで行って調査する必要がありそうだな」
「そうですね。その方がいいでしょう。依頼を確認したところ周辺の調査も依頼内容に含まれているようですし」
「じゃあ、準備が出来たところで出発だな」
「マグノリアちゃん達はそれで大丈夫?」
「はい」
私達は武器や所持品の確認をしてから出発した。
森の中に入るとあからさまに雰囲気が変わる。
魔物の気配が濃いんだ。
魔物が放つ魔力が多くてそれは上位種がいる事、そして魔物の数が多い事を指していた。
先遣隊のように現れるデスウルフを倒しながら、森の奥へと進んでいく。
「やっぱり数が多い」
「食べ物を求めてこいつらが暴走する前で良かったな」
「このままだとこの森の動物やデスウルフより弱い魔物達を食べ尽くして、標的を村の方へ向ける可能性もありましたね」
「ここで倒せば大丈夫ですよね?」
私が質問するとレルスさん達が全員頷いてくれた。
その答えを聞いて少し安心する。
頑張って倒さないと。
徐々にデスウルフの数が増えて来た。
『ウィンドアロー』
『ウォーターバレット』
私やアーテルも魔法で倒す。
結構、森の奥に来たかな? と思ったところで大きな魔力の魔物がデスウルフを引き連れて目の前にやって来た。
現れたのはデスウルフよりも一回りぐらい大きくて水色っぽい毛並みをした狼型の魔物が何体かと、デスウルフよりも二回りぐらい大きな同じく狼型の魔物が一体だ。
「片方はキングデスウルフだな」
「水色の毛並みの方はなんだ?」
「変異種でしょうね。魔力量がデスウルフの倍はあります」
私は咄嗟にこの二種の魔物に鑑定魔法を掛けた。
《キングデスウルフ》
デスウルフの上位種。
Aランク。
身体はデスウルフよりも数倍強靭で素早い。
毛皮が分厚くの弱い武器では攻撃が通りにくい。
やっぱり、デスウルフより身体が二回りぐらい大きい方はキングデスウルフだった。
それじゃあ、もう片方は?
《アイスグレートデスウルフ》
デスウルフの変異種。
Bランク。
氷属性を持ち、魔法攻撃を得意とする。
知能も高いので他のデスウルフ達と連携する事もある。
分類はBランクではあるがどちらかと言えばAランクよりである。
火と雷に弱い。
「水色っぽい毛並みをしている方はアイスグレートデスウルフです。デスウルフの変異種でAランク。氷属性の魔法攻撃を得意としています」
「マグノリアちゃん鑑定魔法使えたの?」
「はい。色々と隠しててすみません」
「いや、大丈夫だよ。君の事情はだいたい分かってるつもりだからさ」
レルスさん達は話が早くて助かる。
全員で戦闘態勢に入り、キングデスウルフやアイスグレートデスウルフを牽制しながら後々邪魔になりそうなデスウルフを排除していく。
私も全員に結界魔法を張りながら、平行して魔法でデスウルフを倒している。
アーテルの方を見ると師匠であるトレランツさんとアーテルの従魔のトラストと連携しながら、剣と魔法でデスウルフを倒していた。
ネーロとルーセント、リリーも魔法でフォローしてくれている。
大体、五十体ぐらい倒すと残りはキングデスウルフ一体とアイスグレートデスウルフが五体だ。
「キングデスウルフは俺達で倒すから、マグノリアちゃん達はアイスグレートデスウルフの方を倒して欲しい」
「無理はしないでくださいね。マグノリアさん達なら大丈夫だと思いますが、危険を感じたらすぐに教えてください」
「はい。わかりました」
それぞれで決めた方のデスウルフ達の気を引いて離れる。
お互いに距離を取った方が戦いやすいからね。
私はアーテル達と目配せしてアイスグレートデスウルフに攻撃を放つ。
レルスさん達と距離が出来たところで、キングデスウルフとアイスグレートデスウルフの間に結界を張っておく。
これでデスウルフ達は連携が取れなくなったはず。
「私はリリーと一緒に二体を倒すね」
「それじゃあ、私とルーセントで二体受け持つわ」
「じゃあ僕とトラストで一体? もっと倒せるんだけどなぁ」
というふうに割り振って戦い始める。
私はリリーと協力して魔法で倒していく。
火属性と雷属性が効くと書いてあったので、周りが木々に囲まれている事も考慮して雷属性を使う事にした。
リリーは風属性の魔法でアイスグレートデスウルフの気を引いてくれている。
アイスグレートデスウルフが放つ魔法や攻撃を躱しながら、タイミングを窺う。
『うぃんどあろー』
アイスグレートデスウルフはリリーの魔法で少し傷ついた。
『サンダーバレット』
私も雷属性の弾をいくつも放ってアイスグレートデスウルフを傷つけていく。
そして、弱って動きが鈍くなったところでとどめを刺す。
『サンダーエッジ』
雷の刃がアイスグレートデスウルフの首を落とした。
もう一体にも同じ攻撃をして倒す。
私が辺りを見回すとネーロとルーセント、アーテルとトラストの方も戦い終わっていた。
「みんな、大丈夫?」
「大丈夫だよー」
「だよー」
「大丈夫よ」
「ご心配なさらず」
「カァ!」
よし、全員無事だね。
レルスさん達の方も終わったみたい。
流石、私達の師匠! Aランク冒険者!
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