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上位種とAランク冒険者、思わぬ縁(アーテルsideあり)

 私達は草原を進み森へと近づく。

 早々に複数の魔物の気配を感じ、マップを確認すると予想よりも多くのデスウルフの反応があった。

 その上、デスウルフよりも魔力量の多い反応まである。

 これは確実に上位種か変異種がいるね。

 正直、私達ならデスウルフの上位種や変異種がいたとしても倒せると思う。

 もし敵わなくても時空間魔法で転移して逃げる事も出来るし、そんな事になる可能性はすごく低い。

 けれど、ここはヴァルメリオ辺境領じゃないし、ランクに見合わない実力を発揮して不審に思われたら面倒だな。

 そう考えた私は森の手前で止まり、そこでアーテルとネーロ、ルーセントに伝言を頼む事にした。


「やっぱり上位種がいるみたいだから、アーテルとネーロとルーセントでミリシー村とギルドへ伝えに行ってもらえないかな?」

「いいよー!」

「分かったわ」

「かしこまりました」


 私とリリーはデスウルフが森から出てきた場合に備えてここに残っている。

 ちなみにトラストはアーテル達と一緒だ。

 二人で軽く野営の準備を済ませ、アーテル達が帰ってくるまで周囲を見て回る事にした。

 マップを確認すると思った以上にデスウルフとその上位種か変異種の反応が多い。


「やっぱり人を呼んで正解だったな」


 私達だけで倒したら確実に不審に思われる案件だよ。

 アーメッドさんがギルドマスターをしているヴァルメリオ辺境領の領都ならまだしも、ここでやり過ぎると面倒そうだし。

 私達は慎重に森と草原の境目を歩いて見て回る。

 いつの間にか何体かのデスウルフが来ていたので仲間を呼ばれる前に倒しておいた。


『アイスエッジ』


 うん、やっぱり数が多いな。

 依頼を受けた時についででデスウルフの事を調べたんだけど、本来はもっと森の奥に住んでいるらしい。

 普段も草原にいる草食系の魔物や家畜を狙って森から出る事はあるみたいだけど、ここまでの数が森の浅い所にいるのは変だよね。

 これは森の奥の方で何かしらの異常があった可能性も考えた方が良さそうだ。

 なんて考えながらリリーと見回りをしていた私は、アーテル達の方で予想外の事態が起きているなんて知る由もなかった。





 アーテルside


 姉さまに頼まれてネーロとルーセントと一緒に村へ戻って、村長さん達に上位種がいるかもしれないって事を伝える。

 ぼくが話そうと思ってたんだけど、ネーロがこういう事は子どもより大人が話す方がいいからってルーセントから話す事になっちゃった。

 むぅ、せっかく姉さまに頼まれたから頑張りたかったのに……。

 その代わり冒険者ギルドの方はぼくから伝えてもいいって事になったから頑張るよ!

 村の方は伝え終わったのでミルキュアの冒険者ギルドへ向かう。

 身体強化を使って走ればあっという間にミルキュアに着いた。

 ギルドカードを見せて街の中に入って、冒険者ギルドに入り受付でまたギルドカードを見せながら依頼の話をする。


「今日受けたデスウルフの依頼で上位種らしき姿を確認しました。どうすればいいですか?」

「分かりました。直ぐに付近で手の空いているAランク冒険者を手配します。その方達と依頼の場所へ向かってください」

「はい! それまでここで待っていればいいですか?」

「ええ、お願いします」


 Bランク冒険者って身分は冒険者ギルドなら子ども有効みたい。ギルドカードを見せた時に少し驚かれたけど、子ども扱いしないでちゃんとお話して貰えたよ。

 ふふっ、嬉しいなぁ。

 ぼくも一端の冒険者って事だよね!

 それにしても、Aランク冒険者の人達ってどんな人が来るんだろう?

 レルスさん達みたいな優しくて強い人達だったらいいなぁ!

 ぼくがそわそわしながら待っているとギルドの職員さんに呼ばれて、奥の部屋へ案内された。


「失礼します」


 ぼく達が部屋に入るとそこにはよく知っている五人の冒険者と、知らないおじさんが一人居た。

 その内の一人と目が合って思わず声が出る。


「あっ」

「えっ、アーテルくん!?」


 そう、そのよく知っている五人の冒険者はさっき思い浮かべていたレルスさん達だったんだ。

 ぼく達が動揺していると知らないおじさんが話し始めた。


「ほう、レルス殿はこの子と知り合いなのですかな?」

「え、ええ。よく知っている子です」

「しかし、彼の名前はアールのはずでしたが?」


 んんー、どうしよう……。

 ぼくはレルスさんに念話をしてみる事にした。


〈えっと、レルスさん、聞こえますか? 聞こえていたら話を合わせて欲しいです〉


 ぼくが念話でそう伝えると微かに頷いてくれた。

 よし、頑張るぞ!


「ぼくが昔そう呼んで欲しいってお願いしていたからなんです」

「本当ですか?」

「ええ、それでその呼び方で呼んでしまったんです。ここで会えるとは思っていなかったもので」

「それならば納得いたしました。では、本題に入りましょうか?」


 知らないおじさんはこのミルキュアの冒険者ギルドのギルドマスターだった。

 ぼくはさっき受付で話した通りに、普通のデスウルフ以外に上位種や変異種がいる可能性が高い事。

 それを報告して他の高ランク冒険者の方に手伝って貰いに来たことを伝えた。


「という状況なのですがレルス殿、手伝って頂けますかな?」

「ええ、もちろん。私達がよく知っている子達が依頼を受けたみたいですし、引き受けますよ」

「では、よろしくお願いいたしますね」


 ギルドマスターとの話が終わり、諸々の手続きをレルスさん達が済ませてミルキュアの街を出たところで思いっきりレルスさんに抱きしめられた。


「……本当に、無事でよかった」

「心配かけてごめんなさい」

「いや、アーテルくんが悪い訳じゃないよ。マグノリアちゃんの事だから何かしらの理由があって、こういう状況になっているんだろうって事は分かってたんだ。二人のことだからあれは偽装で無事だと思っていたけど、それでも元気な姿を見るまでは不安で心配だった」

「ええ、本当に無事で安心しました」

「そうだな」

「アーテルが元気ってことは、マグノリアも元気なんだよな?」

「そうじゃないと困るっス」


 姉さまもぼくもレルスさん達の事が大好きだけど、レルスさん達もぼく達の事を大好きでいてくれて嬉しい。


「もちろん、姉さまも元気だよ!」

「そうか! それなら良かったぜ! じゃあ、とっととマグノリアのいる所へ行くか!」


 そう言ったエルンストさんにぼくは抱き上げられる。

 それを見てどうしようって感じで動揺しているルーセント。

 ネーロはぼくが落ち着いているからか、見えない状態のまま見守っている。


「ルーセント、大丈夫だよ! エルンストさんはぼくを落としたりしないから!」

「か、かしこまりました」

「おう、当たり前だ! アーテル、道案内は頼んだぜ!」

「はーい!」


 こうしてぼくは予想外のAランク冒険者達を連れて、姉さまの元へ戻る事に。

 きっと、姉さま驚くだろうなぁ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 凄い面白くて、悲しかったけど、素敵なストーリーなのに更新がストップしてて残念です。 でも続きが気になるのでしばらくブックマークつけときます!
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