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領都観光?

 私とアーテルがアンビティオ魔法学院に編入してから数日が経った。

 アーテルは楽しく通えているみたいだし、私も研究室に行くのが楽しい。

 私が入った三つの研究室の先生と先輩方は優しい方ばかりだったので、とても過ごしやすかった。

 魔法薬研究室の方では、約束通りピアンタ先生と一緒に薬師ギルドでレシピを登録した。

 レシピ使用料は一番下のランクにしようと思ったんだけど、カツ丼の時と同じく今回はピアンタ先生にせめて下から二番目のランクにした方が良いと言われてそのランクを選ぶ事に。

 毎回、レシピ使用料で止められる。

 あまり安すぎると微妙らしい。

 まぁ、二番目のランクもそこまで高い訳じゃないので沢山の人に使って貰えるはず。


「姉さまー! 行ってきます!」

「行ってらっしゃい。気をつけてね!」

「はーい!」


 私が朝食の後片付けとマジックドロワーに入れておく料理を作ったりしていると、元気よくアーテルが学院へ向かった。

 うん、うちの弟は可愛い!

 アーテルの後ろに姿を消したネーロもいて、私に手を振ってくれた。

 うん、うちの子は全員可愛い!

 ネーロはクールだけど私やアーテルなどの身内には結構デレてくれる。

 その姿がめちゃくちゃ可愛い。

 いや、クールなネーロも可愛いしかっこいいんだけどね!

 時々、私達をからかったりもするから常にクールって訳でもないんだけど。

 ちなみにこの別邸からアンビティオ魔法学院へは徒歩で行けるんだ。

 貴族であればこの距離でも馬車を使うんだけど、今の私達はただの冒険者で平民なので徒歩で通学している。

 それはさておき昨日、アーテルとバルツさんがコソコソ二人で話してたけどあれはなんだったんだろう?

 そんな疑問を持ちつつ今日の予定をこなす。

 研究室は自分の好きな時に行けばいいので、今日は冒険者として活動する日にした。

 自分でワールドワープが使えるから転移陣を使う必要は無いんだけど、転移陣の調子の確認も兼ねてヴァルメリオ辺境伯領の領都にある辺境伯邸の別館へは転移陣で向かう。

 転移陣の上に立ってキーアイテムに魔力を注げば数秒で転移。

 ワールドワープより少しだけ発動に時間がかかるんだよね。

 この数秒でそこまで変わる事はないと思うけど少しだけ気になる。

 まぁ、ちゃんと使えてるし確認出来て良かった。

 私はそのまま別館の地下室からワールドワープを使ってウーアシュプルング大樹海の中層にある家へ転移する。


『ワールドワープ』


 瞬時に景色が変わって目の前に可愛らしい家と精霊樹が現れた。

 家の中に入って変わりないかの点検を済ませたら、ウーアシュプルング大樹海の中層で薬草の採取を始める。

 辺境伯領はウーアシュプルング大樹海に面している事もあって、薬草関連の依頼が常時あるんだ。

 領内にはダンジョンもあるのでポーションに使われる薬草の需要は常に高い。

 薬草を採取しつつ襲いかかってくる魔物を倒す。

 解体は後でする事にしてマジックドロワーにしまった。

 取りすぎないように気をつけて、ある程度の量の薬草が集まったところで領都の入り口近くに転移した。

 今日はリリーもルーセントも公爵領の別邸に残っているので、私一人だ。

 なんだか久しぶりに一人の時間だな、なんて思いながら冒険者ギルドへ向かう。

 常時出ている薬草関連の依頼と、今日倒した魔物の部位を欲している依頼を受けて直ぐに達成する。

 冒険者ギルドを出た後は領都のお店を見て回って、ジャーダ商会にも寄った。

 美味しそうな果物といくつかの調味料などを買う。

 するといつも対応してくれる店員さんに話しかけられた。


「もしかしてリアさんですか?」

「はい。そうです」

「やっぱり貴方だったんですね! 最近、雪月亭のおかげでうちで取り扱っている調味料の売れ行きが良いんですよ。話を聞いたら商人ギルドに登録されたレシピのおかげだって聞いて、登録者のお名前を聞いた時にお客様の事では? って思ったので一言お礼を申し上げたくて」


 まさか私だと気づかれるなんて思わなかった。

 お礼を言われてむしろこっちの方が助かっていると伝える。

 ジャーダ商会が翡翠国の調味料を取り扱っていてくれたおかげで、日本食を作って食べる事が出来ているんだから。

 みたいな一幕もありつつヴァルメリオ公爵領の領都にある別邸に戻る。

 すると、別邸にバルツさんが来ていた。


「よっ! 調子はどうだ?」

「元気ですよ。というか昨日会ってるじゃないですか」

「そういえばそうだったな。ところで今暇か?」

「はい。特に予定はないですね」


 そう答えるとバルツさんは私に公爵領の領都を観光しないか? と誘ってくれた。

 一応、こちらに来てから見て回ってはいるけど私より絶対に詳しいバルツさんの案内で回るのは楽しそうだ。

 そう思って一も二もなく頷く。


「よし、それじゃあ行くか」

「はい!」


 私はバルツさんと一緒に領都のお店を見て回る。

 元々、このヴァルメリオ公爵家の子息だっただけあって領都に詳しくて色々な情報を交えて案内してくれた。

 それにしても突然の提案だったから、どうして急に誘ってくれたのか気になって質問すると。


「いやぁ、まぁ、元々いつか案内しようと思ってたんだよ。今日がちょうどその時だったってだけだぞ」

「ありがとうございます。それにしてもなんだか歯切れが悪いですね」

「ん? んー? いや、そんな事ないだろ」


 少しだけバルツさんの態度に違和感を感じつつ楽しく領都を見て回った。

 思ったより時間が経って夕暮れに差し掛かったので、そろそろ別邸に帰ることに。

 別邸の中に入った瞬間、部屋の明かりが一斉に灯されて私の周りに花びらが舞い散った。

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