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編入当日(アーテルside)

 アーテルside


 ぼくの名前はアーテル・アウイナイト。

 セレスタイト王国にあるアウイナイト公爵家の長男。

 でも今は、ただのアールで冒険者。

 ある日、ぼくと姉さまは命を狙われて誘拐されたんだ。

 だけど、途中で魔物に襲われて誘拐犯達は逃げ出し、かっこよくてつよーい姉さまが魔物を倒してくれた。

 その後、ウーアシュプルング大樹海の中層に生えていた精霊樹の近くに、魔道具のお家を出してそこで暮らすことになったんだー。

 それから、辺境伯で冒険者のバルツさんと仲間のアスティさんやクラルテさんに会ったり、リリーっていう大切な仲間が出来たりした。

 バルツさん達とオーアっていうダンジョンに行って、冒険したりもしたんだよ!

 そこで、見つけた武器をぼくと姉さまは使ってるし、魔物の卵ってアイテムも貰ったから大切な弟のヴァイスにもプレゼントしたんだ。

 他には、闇ギルドっていう悪い人達を捕まえて、ネーロっていう僕と同じ精霊の女の子を助けて、仲間に加わってくれたりって事もあった。

 ネーロは、とっても優しくて可愛いんだよ!

 そう言ったら「私の方がすごく歳上なのに生意気よ」って笑いながら言われたけど、本当のことなんだから別にいいよね?


「アール、どうしたの? 考えごと? 今日は初めて学院に行く日でしょ。準備をした方がいいんじゃないの?」

「あっ、うん!」


 ネーロに心配されちゃった。

 じゅんび、準備……。

 マジックバッグに筆記用具とか授業で使う物は入れたし、おやつとかも色々入ってるから準備は済んでる。

 学院で新しいお友達が出来たら嬉しいなぁ!

 リリーやネーロみたいな仲間やバルツさん達みたいな歳上のお友達はいるけど、同世代の友達はほとんどいないから。

 ぼくは期待に胸を膨らませながら、ネーロを連れて姉さまと一緒にアンビティオ魔法学院へ向かう馬車に乗った。

 学院に着いたら姉さまとは別れてぼくが編入するクラスの担任、バッタリン先生に案内されて教室へ向かう。


「緊張しているの?」

「ううん。楽しみなんだ」

「それなら良かったわ」


 バッタリン先生はぼくとネーロの会話を微笑ましそうに見てた。

 そして、いくつかのアドバイスをくれた。


「この学院では、同じ学び舎で学ぶ生徒の身分は平等です。しかし、貴族の子息も多いのでトラブルが起きる事もあります。

 なので、もし何か起きた時は直ぐに教員を呼んでくださいね」

「はい」

「アール君は精霊を連れている編入生ですから、良くも悪くも目立ってしまうでしょう。いくら辺境伯の後ろ盾があっても、やんちゃな子はいますから、言い方は悪いですが絡まれても相手の挑発に乗らないように」

「気をつけます」


 先生の言葉を聞いて頷くネーロ。

 うん、気をつけないとね。

 姉さまに心配かけたくないし!

 何かあったら先生に相談しよう。

 ただ、あんまり酷い事を言われたり、何かされたらぼくなりのお話をするかもしれないけど。

 ふふ、ぼくね、そんなにいい子じゃないんだ。


「アール、危ない事をしちゃダメよ」

「う、うん、大丈夫。分かってるよ!」

「なんだか悪い事を考えている顔をしていた気がしたのだけれど……」


 ありゃりゃ、ネーロにバレてる。

 大丈夫! お話は悪い事でも怖い事でもないから!

 教室に着くと中から騒がしい声が聞こえた。

 よし、頑張るぞ。


「静かに。今日からこのクラスに編入する生徒を紹介するよ。入っておいで」

「はい!」


 教室の中に入り魔法書板の前に立ってお辞儀する。


「今日からこのクラスに編入するアールです。姉と一緒に冒険者をしています。皆さんと一緒に沢山のことを学び、友達になれたら嬉しいなと思っているのでよろしくお願いします」


 自己紹介を言い終わったところでもう一度頭を下げる。

 全員から拍手で迎えられた。

 見た感じ貴族の子が多そうだな。

 学院指定の制服は形さえ一緒なら生地は自由だった。

 だから、見た時に生地の善し悪しで大体の家柄が分かっちゃうんだよね。

 ぼくはこれでも公爵家の子息だったし姉さまや家庭教師、後はレルスさん達に教えて貰ってたからそれなりに見る目はあると思う。

 姉さまは学院長先生に聞いて、ちょうど中間ぐらいで目立たない生地をぼくの制服用に選んだって言ってた。

 冒険者って言った時に何人かが見下した目をしたけど、その冒険者が日々の生活の一部を支えているって知らないのかな?

 高い地位も大切だけど、その地位は支えてくれている人達のおかげもあるって事を貴族は知ってないとダメなのに。

 まぁ、どの子がそういう目をしたかは覚えたし、ぼくから関わるつもりはないからスルーしておこう。

 それにしても、このクラスは服装とか後ろに控えている護衛の雰囲気からして伯爵家以上の貴族が多い気がする。

 後は、感じる魔力の量的に成績上位者も多いのかな?

 少しだけ厄介事が起きそうな予感がするなぁ……。

 ネーロは最初から自分がいると目立つからと言って、今はぼくにしか姿が見えないようにしている。

 どちらにしても知られれば目立つと思うんだけど、いつ紹介すればいいんだろうね?

 なんて思いながら先生に指示された空いている席に着く。

 隣を見ると、この前会ったヴァルメリオ公爵家の子息ユリアンがいた。

 ユリアンとは、初めてあったあの日に少しだけ二人っきりで話す時間があって仲良くなったんだ。

 フィリップ様の事は正直苦手というかちょっと嫌いだけど、ユリアンの事は好きだよ。

 話も合うし姉さまの事を悪く言ったりしないからね。

 むしろユリアンは、姉さまの料理を褒めてくれたから良い子だと思う。


「ユリアンが同じクラスで嬉しいよ」

「僕もだよ。アール、これからよろしく」

「うん! よろしくね」


 この後、ぼくは自分が受ける科目を選んでその中で今日授業があるものを受けて帰った。

 ユリアンのおかげで何人かのクラスメイトと話せたし、友達は出来そうだね!

 授業も楽しかったしこれから頑張ろう。

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