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王妃殿下と思わぬ出会い

 さて、ついに王宮に行く日です。王宮へは、毎日仕事で通っているお父様と一緒の馬車で連れて行ってもらうことにしました。

 あー、緊張する。馬車の中でそう考えていたらそれが表情に出ていたのか、お父様に心配された。


「マグノリア、大丈夫かい?」

「えっ、うん、大丈夫だよ」

「いや、さっきからこう落ち着きが無いというか、緊張しているようだから気になってね」

「あのね、ミルフォイル様とは仲良くさせていただいているからそこは平気なの。でも、王妃様とは初めてお会いするから緊張してしまって」


 私がそう答えるとお父様は少し笑ってから、大丈夫だよと言ってくれた。


「なぜ大丈夫って断言できるの?」

「それは、マグノリアがトゥイーディアの娘だからだよ」


 えっ、それが理由? いつものお父様の口癖じゃなくて?

 私が不思議そうにお父様を見ているのに気がついたのか詳しく説明をしてくれた。


「実はね、トゥイーディアと王妃様はソッレルティア魔法学院の同級生で親友なんだよ。ネフライト王国の王女だった王妃様が高等部に留学していらしてね。その時に仲良くなったと聞いているから、そのトゥイーディアの娘であるマグノリアに多少の事で厳しくなさったりはしないさ」

「知らなかった。お父様、教えてくれてありがとう」


 初めて聞いたよ。王妃様とお母様って仲が良いんだね。それなら少し安心してもいいのかな。でももちろん礼儀正しくするのは忘れずに。

 王宮に着くとお父様と別れ、私を迎えに来てくれていたミルフォイル様の従者の方に連れられてミルフォイル様のお部屋に向かった。

 従者の方がノックをすると扉が開かれ中に案内される。


「おはよう、マグノリア。よく来てくれたね」

「おはようございます。ミルフォイル様、お邪魔させていただきます」

「もう少ししたら、アルディートも来ると思うからソファに座ってゆっくりしていて」

「はい。あっ、あのクッキーを持ってきたのでもしよろしければお召し上がりください」


 そう言って私はお母様と一緒に作ったクッキーを従者の方に渡す。

 多分毒味とかするだろうし、ミルフォイル様に直接渡すよりこの方がいいよね。


「ありがとう! マグノリアが作るクッキーはとても美味しいからすごく嬉しい。

 母上はまだ来ないと思うからもう少しリラックスして大丈夫だよ」

「喜んでいただけて良かったです。あと、お気遣いありがとうございます。おかげで少し緊張が解けました」


 そんな会話の後、二人で魔法関連の本を一緒に読みながら楽しく話していた。

 すると、扉がノックされ従者の方から声がかかる。


「殿下、アルディート様がいらっしゃいました」

「分かった。案内してあげて」

「かしこまりました」


 アルディート君も来たみたい。話すのはほぼ初めてだから、これはこれでちょっと緊張するな。

 すぐに、扉が開かれてアルディート君が部屋に入ってきた。


「ミルフォイル様、おはようございます。本日はお招き頂きありがとうございます」

「アル、おはよう。君らしくないそのかしこまった喋り方はその辺でやめて欲しいな」

「せっかくきちんとしたのに、ミル様は相変わらずだな。

 あっ、マグノリア様、おはようございます。しっかりとお話するのはほぼ初めてですよね?」


 あれ、二人とも仲良いな。なんだか最近知り合ったっぽくない。もしかして元々知り合いだった?


「アルディート様、おはようございます。そうですね、ご挨拶ぐらいはさせて頂いたことがありますが、しっかりとお話するのは今回が初めてです。

 それにしても、お二人はとても仲が良いのですね」

「ああ、アルとは学院に入る前から知り合いだからね。元々、僕の遊び相手として王宮に同世代の子達が呼ばれていたんだけれど、その中の一人にアルがいたんだ」


 そういうことなんだ。何人か呼ばれていたみたいだけど、いま親しいって聞くのはアルディート君ぐらいなのは何でだろ?


「なぜかそこでミル様は俺に懐いてくれてそこからの縁ですね」

「三年前ぐらいだから僕は四歳だったんだけれど、アルは今の僕ぐらいであの中で一番話が合って楽しかったからね。他の子は萎縮していたり、その歳特有のわがままだったりであまり楽しくなかったんだ」


 そういえば、アルディート君は私たちより三歳上の今年十歳か。

 同世代が集められたって事は元から頭が良くて機転の利くミルフォイル様に、その歳でついていける子は少ないから仲良くなれる子はまずいないよね。

 その点、アルディート君は歳が少し上なのもあるだろうし、また頭の回転も速いみたいだから仲良くなれたんだろうな。

 何より、少し話しただけでいい人だなって思ったし。


「だから、マグノリアとアルディートぐらいだよ。ここまで話していて楽しいと感じるのは」

「身に余る光栄です。王子殿下」


 唐突にとっても嬉しい事をミルフォイル様が言ってくださったので、照れ隠しも込めて悪ノリをした。

 すると、アルディート君も乗ってくれて。


「本当にありがたき幸せです。王子殿下」


 と言ってくれた。流石、ノリがいい。やっぱりアルディート君と話すのも楽しいな。


「二人ともどうしてわざわざそちらで呼ぶのかな? そんな示し合わせたみたいにしなくていいから」


 そう言いつつミルフォイル様も笑っているからいいお茶目だったよね。


「それにしても、マグノリア様とは話していてとても楽しいのでもっと仲良くなりたいですね。なのでよければ俺の事はもう少しくだけて呼んで頂けませんか?」

「分かりました。ではアル君と呼ばせて頂きますね。私の事もくだけた感じで呼んでくださると嬉しいです」

「では、マグノリアか、またはマグノリア嬢と呼びますね。で、なぜミル様は頬を膨らませているんですかね?」


 あー、色々考えて他の人がいる場は嬢をつけた方がいいって判断したんだね。そりゃ仕方ない。私も場合によっては様ってつけるもんな。

 そして、アルディート君と同じように私もそちらの方を向くと可愛らしく頬を膨らませているミルフォイル様がいた。

 そういえば、最近もこの可愛い不満顔を見たよね。前も思ったけどミルフォイル様のこの不満の表し方は可愛すぎでは?


「いや、二人ばかり楽しそうに話していて僕の事を忘れているんじゃないかと」

「ふふ、ミルフォイル様のおかげでアル君と仲良くなれているんですから、忘れるなんて事ありませんよ」

「そうですよ。ミル様が呼んでくれなかったらマグノリアとは会えていないんですから」


 そんな会話をしていると扉がノックされた後、従者の方が入ってきてお茶の用意をしてくれた。


「準備も出来たようだし、マグノリアのクッキーもあるからティータイムにしよう」

「そうですね」

「あと、もうじき母上がこちらに来るみたいだ。心の準備が必要だって言っていたから伝えておくね。それまではマグノリア、アルに結界魔法の事を聞くといい。好きな話をしてたら緊張も少し忘れる事が出来るんじゃないかい?」

「ミルフォイル様、教えてくださってありがとうございます。では、緊張を忘れ去るためにもミルフォイル様の案に乗らせて頂きたいので、アル君結界魔法について教えて頂けますか?」

「別に教えるのは構わないけど、緊張を忘れ去ってもいいのか?」

「いいんです」


 よし、魔法の話をして緊張を忘れ去ろう。ついでに結界魔法スキルも取得してやる。

 こうして王妃様がいらっしゃるまでアルディート君から結界魔法の話を聞くことにした。

 結界魔法スキルがなくてもごく簡単なものなら、無属性などで使えるらしくそれを繰り返し練習して適性があればスキル取得も出来るみたい。


「うーん、まずはバリアが無難かな。後はマジックバリアもあるな。ただどちらも無属性だけで発動すると結界魔法スキルを使って発動したものと比べてすごく弱いって事を覚えておいて。あと、結界魔法スキルの取得は難しいから出来なくても気にしなくていい」


 思ったよりも簡単に無属性での発動は出来そうだ。ただ、スキルを取得するのは難しいっぽいのかな。でも今までも頑張って練習してきたし、何事もチャレンジだよね。取得出来たらラッキーってことで。


「はい、分かりました。引き続き家で練習してみますね。アル君、教えてくれてありがとう」


 引き続きコツとかを教えてもらっているとまたノックされて、従者の方が王妃様がお見えになりましたと教えてくれた。


「ミルフォイル、入りますね」

「はい、母上」

「アルディート、こんにちは」

「王妃殿下、こんにちは。王妃殿下がお元気そうで安心致しました」

「ふふ、ありがとう」


 ミルフォイル様とアルディート君が王妃様と挨拶を交わしている間、私は王妃様からお声がけ頂くまで黙って待っていた。

 すると、すぐこちらに気がついて声をかけてくださる。


「ふふ、貴女は初めましてよね」

「はい、お初にお目にかかります。アウイナイト公爵家第一子、マグノリア・アウイナイトと申します。王妃殿下にお会い出来て本当に光栄です」


 そして挨拶にあわせて目上の方への礼をする。

 この挨拶で大丈夫だよね? 横目でミルフォイル様やアルディート君を窺うとしっかりと頷いてくれた。


「マグノリアさん、はじめまして。私も会えて嬉しいわ。トゥイーディアは元気にしている?」

「はい。お母様は妊娠しているので時折体調を崩す事もありますが、その事を除けば元気です」


 やはり妊娠中だからかお母様は体調を崩す時がある。けれど、寝込んではないしお父様やマーサ達が動揺していたりはしないから大丈夫だと思っている。


「そう、良かった。ふふ、貴女のその瞳はトゥイーディアに似たのね。貴女がミルフォイルのお友達になってくれてとっても嬉しいの。ありがとう」

「いえ、こちらこそミルフォイル様とお友達になれてとても嬉しいです」


 お父様が言っていた通り王妃様はとても優しい。そして本当にお母様と仲が良いんだね。すごくお母様の事を気にしてくださってるのが伝わってきた。

 この後は、王妃様にミルフォイル様の学院の様子を聞かれそれに答えたりした。そして、少し経つと王妃様がそれではまたねとおっしゃってから退室した。

 そして昼食をミルフォイル様やアルディート君と共に頂いた後、また三人で魔法の話をしていると思った以上に時間が経っていたらしい。

 時計を見るとお父様と約束していた時間が近づいていたのでミルフォイル様にその事を伝える。


「楽しい時間はあっという間ですね。さて、お父様と約束した時間が近いので、私はそろそろ帰ります」

「そうだね。また二人に手紙を送るから、ぜひ遊びに来て欲しい」

「はい。楽しみにしています!」


 緊張はしたけど本当にすごく楽しい時間だったな。またこの三人で集まりたいね。


「ええ、もちろん。俺はまだいるのでもう少し魔法の話でもします?」

「そうだね。じゃあ、マグノリアまた今度」

「マグノリア、またね」

「はい、また今度」


 別れの挨拶をして従者の方の見送りを辞退した後、ミルフォイル様のお部屋を出てお父様と約束した待ち合わせ場所に向かう。


「待ち合わせはたしか中庭だったよね。ふふ、ちょっと探検気分だな〜」


 王宮の中は家とはまた違うきらびやかさで見ているだけで楽しい。そんなふうに楽しみながら歩いているとすぐに中庭に着いた。

 きょろきょろと辺りを見回すとお父様を見つけたのでそちらに小走りで駆け寄った。


「お父様! お待たせしましたか?」

「いや、待っていないよ。ヴァルメリオ殿、お話を遮ってしまい申し訳ない」

「あっ、すみません、お話の最中に声をかけてしまって」

「いや、お嬢さんは気しなくていい。アウイナイト卿との仕事の話はもう終わっているんだ。今は少し雑談をしていただけだからな」


 お父様ばかり見ていて、他の方がいるのに気が付かなかった。

 お父様と一緒にいたのは、黒髪でルビーの瞳をしている三十代後半ぐらい男性だ。正直とても好みな容姿と雰囲気。

 それにしても、魅力的なキャラクターは沢山いたけどここまで格好良くて余裕のある雰囲気を持った素敵な人『薔薇騎士は愛を紡ぐ』にいなかったよね?


「マグノリア、こちらはネフライト王国のヴァルメリオ辺境伯殿。治めるのが大変な辺境領をずっと上手く治めてらっしゃるすごい方なんだよ」

「初めまして。お初にお目にかかります。マグノリア・アウイナイトと申します。お会いできて光栄です」

「アウイナイト卿のご令嬢にお会い出来るとは。ネフライト王国で辺境伯をしているシュバルツ・ヴァルメリオだ。私の方こそ可愛らしいマグノリア嬢にお会いできて光栄だよ」


 ああ。ネフライト王国の貴族の方って事は、この世界自身の歴史の中で生まれた人なのか。というかそういう人の方が大多数なんだけど、まるでゲームの登場人物並に格好良くてびっくりした。


「不躾な質問なんだが、もしかしてマグノリア嬢は先祖返りなのだろうか?」

「はい。エルフの先祖返りです」

「やはりそうか。いや、私も先祖返りなんだ」


 えっ、どの種族の先祖返りなんだろう。赤い瞳は特徴的だけどこの世界だと人族にいないわけじゃないし、分からないな。


「どの種族の先祖返りなのかお聞きしてもいいですか?」

「ふっ、エルフほど特徴がないから難しかったか。ヴァンパイアの先祖返りだ。ああ、お嬢さんからすると私は怖いかもしれないな」

「そんな事ありません。とっても格好良いです」


 うん、マジで格好良いです。格好良すぎて返事に力が入っちゃった。

 そっか、ヴァンパイアの先祖返りなんだ。じゃあ歳も見た目通りじゃないのかな?


「はは、五百歳を超えている爺さんな私に格好良いとは、嬉しい事を言ってくれる。お嬢さん、ありがとう。アウイナイト卿、ご令嬢はとても優しくて良いお子さんだな」

「ええ、自慢の娘です」

「ちょっと、お父様! 恥ずかしいのでやめてください」


 前々から思ってたけど、お父様たまにここで? ってところで親バカを発揮するよね。褒めてくれるのは嬉しいけど! 流石に恥ずかしいからやめて欲しい。

 まぁ、それはちょっと置いてくとして五百歳を超えてるのか。すごいな、一回り、二回りどころじゃない歳上だ。でも、私もエルフだし同じように長寿なんだよね。


「いや、恥ずかしがる事は無いさ。アウイナイト卿がお嬢さんの事をとても大切に思ってることがよくわかる。それはすごく良いことだ。さて、そろそろこのあたりで私はお暇しよう。また会えるといいな」

「はい! またお話したいのでその時はよろしくお願い致します」

「ああ、もちろん。それに私も先祖返りの苦労がよくわかるから、もし何かあれば相談に乗るよ」

「ありがとうございます」

「それではアウイナイト卿、マグノリア嬢、私はここで失礼する」


 ヴァルメリオ辺境伯は颯爽と中庭から去っていった。

 それにしてもとっても格好良い人だったな。

 ぶっちゃけ、乙女ゲームは主人公と攻略キャラクターとの恋愛を見るのが好きで、自己投影タイプではないからどの攻略キャラクターもそういう目で見てないんだよね。

 もちろん転生した今もミルフォイル様の事は良き友人、いや親友としてしか見てない。

 というか私、ミルフォイル・セレスタイトとローズ・モルガナイトのカップリングが一番好きなので自分がそこに割り込むのは解釈違いです。流石に無理やりくっつけようとは思ってないけど、くっついたら嬉しいなとは思ってる。

 だからこの世界に来て初めてそういう目で男性を見たかもしれない。あー、本当にかっこよかった。でも多分、相手は私をそういう目で見るはずないし、あんなに格好良い人なんだから絶対に奥様が居るよね。

 いや、今は恋とかしてる場合じゃない。それよりもこれからの対策をしないとね。

 そんな事を考えながら私はお父様と帰路についた。

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