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移動手段の設置

 お屋敷の中を見て回った所でバルツさんに声をかけられた。


「どうだ? 使い勝手は良さそうか?」

「はい、とっても」

「そうか、それなら良かった。さて、移動の事なんだが地下室があるから、そこに転移陣を設置するのはどうだ?」

「転移陣って時空間魔法スキルを使って作る魔法陣でしたよね?」


 私が質問するとバルツさんが頷いた。

 転移陣とは、時空間魔法スキルを使って描く転移する事が出来る魔法陣。

 転移陣を設置した場所で設定したキーアイテムに魔力を注ぐと、同じ設定の転移陣に転移出来る。

 しかも、転移陣は設置された魔法陣と設定、そしてキーアイテムと魔力さえあれば誰でも使える、というとても便利な魔法。

 もちろんキーアイテムに魔力を登録しておけば、登録されていない人に悪用される事はない。

 バルツさんに案内されて地下室へ向かう。

 地下室は使われていない倉庫みたいな感じの部屋だった。


「出来そうか?」

「初めてなので断言は出来ませんが、大丈夫だと思います」

「そうか」


 バルツさん達に見守られながら石の床に魔法陣を描く。

 時空間魔法スキルを使えばどう描けばいいか分かるし、そんなに難しくはない。

 魔法陣を描く為に使うインクは、魔道具を作ったりする時に使っている物だ。

 私は調合スキル持ちなので自作しているけど、普通に魔法関係のお店で市販もされている。

 今回使っているのは、インクに魔宝石を砕いたものを混ぜたやつ。

 魔石でも作れるんだけど魔宝石の方が効果が高いし、時空間魔法などの特殊な魔法の場合はこちらを使う方が確実だと思ってこちらにした。

 描き終わった所で魔力を通してみる。


「よし、魔法陣全体にちゃんと魔力が通ってる」

「上手くいったのか?」

「はい」


 後は辺境伯邸の方にもう一つの魔法陣を設置すればいいんだけど。


「辺境伯邸の方は、リア達が使っている別館の地下室と本館の地下室にもに描いて欲しい」

「分かりました。あれ? 本館の方にも描くんですか?」

「俺達も使いたくてな。そうそう時空間魔法スキル持ちに頼める機会は無いし。手間だし大変かもしれんがいいか?」

「大丈夫です。むしろ、私達の方がお世話になっているので、お役に立てるのはすごく嬉しいですね」


 私がそう返すと笑顔のバルツさんに頭を撫でられた。

 もう習慣みたいになってるけど毎回喜んでいる自分がいる。

 少しドキドキするけど、純粋に撫でられるのが嬉しいんだよね。


「辺境伯邸の方はリアがいいなら今から行くか? 早めに設置しておく方が便利ではあるが、魔力の残りや疲れがあるなら無理はしなくていいからな。リアのワールドワープ頼みなんだし」

「全く疲れてないですし、魔力も残っているので大丈夫ですよ。それじゃあ、行きますか」


 ワールドワープは一度行ったことがある場所や、ビジョンワープなどで観た事がある場所なら行くことが出来る。

 バルツさん達三人と私達全員を魔法範囲に入れて、辺境伯邸を思い浮かべながら魔法を使う。


『ワールドワープ』


 浮遊感に包まれた後、回りを見るとちゃんと辺境伯邸の裏庭に転移していた。

 よし、成功。

 今までで一番、人数が多かったから緊張したけど上手くいって良かった。

 まずは、私達が借りている別館の地下室に向かう。

 地下室があるのは知っていたけど初めて入るな。

 入ってみるとさっきの地下室と変わらない感じの部屋だった。

 ここの石の床にも魔法陣を描いていく。

 二回目なのでさっきよりも要領良く描き終わった。


「出来ました」

「お疲れ様。本館の方は後回しでもいいからな。無理はするなよ」

「ふふ、大丈夫ですよ。まだ、魔力もたっぷり残ってますし、慣れてきたので今の内に終わらせたいです」

「そうか。それなら行くか」


 バルツさんに連れられて本館の方に向かう。

 中に入るとパトリックさんがやって来た。


「お早いお帰りですが、何かございましたか?」

「いや、リアにちょっと頼み事をな」


 そう言いながら私の方を見るバルツさん。

 うん? これはどういう意味だろう?

 ……ああ! 時空間魔法スキルがある事を話していいかって事か!

 この辺境伯邸で暮らしていればいつかはバレるだろうし、パトリックさん達が言い触らすとは思えないから知られてもいいよね。

 そう思ってバルツさんと目を合わせながら頷く。


「地下室で話すからパトリックも来てくれ」

「かしこまりました」


 地下室に入ったところでバルツさんはパトリックさんに説明し始めた。

 私はそれを聞きつつ魔法陣を描いていく。

 三回目だからあっという間に終わった。


「終わりました」

「お疲れ様。ありがとな。こっちも話し終わったぞ」

「リア様の事情は理解しました。他の使用人達が知った場合もきちんと対処しますので、ご安心ください」

「ありがとうございます。でも、そこまで深刻に考えなくて大丈夫ですからね。時空間魔法スキルの事が知られても、今はバルツさんがいてくれますし」


 私がそう言うとバルツさんも頷いた。

 ちなみにパトリックさんやメイド長のリンジーさん達は、私達の事を様付けで呼ぶ。

 私達は普通の冒険者なので、そこまでかしこまらなくてもいいと伝えたんだけど「皆様はお客様ですから」と言われてしまって変えることは出来なかった。


「それに転移陣を使って行き来していれば、いつかは知られると思ってますし」

「かしこまりました。もし、知った場合は口外しないよう注意をしておきます」

「お願いします。鍵になる物は何にしますか?」

「そういえばそういう物が必要だったな」


 どういう物をキーアイテムに出来るのか? と聞かれたので魔力がしっかり入って、魔法を付与できる物ならなんでも大丈夫だと伝える。

 それを聞いてバルツさんが考えている間に、マジックドロワーからバジリスクと戦った時に使った、状態異常を無効化出来るペンダントに似た物を出した。

 これはまだ魔法を付与してないから、これをキーアイテムにすればいいよね。

 魔法陣の上にペンダントを置いて魔力を注ぎ魔法陣と繋げる。


『ワールドワープ』


 転移して公爵領の領都の方のお屋敷に戻り、こちらの魔法陣ともペンダントを繋げた。

 これで、バルツさん達用のキーアイテムは出来たな。

 後は、こっちの魔法陣に繋げた私達用のペンダントを人数分作って辺境伯邸の別館の地下室に転移する。


『ワールドワープ』


 よし、また魔法陣の上にペンダントを置いて繋げれば私達用のキーアイテムも完成!

 こんなにワールドワープを使ったり、魔法陣描いたり、キーアイテムを設定したりしても魔力はしっかり残ってる。

 魔力レベル八は伊達じゃないんだな。

 全部終わったので本館の地下室に戻ってバルツさん達にキーアイテムを渡した。


「今の間に済ませてきたのか……」

「はい。バルツさんの方はこの部屋の魔法陣と、公爵領の別邸の魔法陣を繋げてあります。私達の方は別館の魔法陣と公爵領の別邸の魔法陣を繋げています。これで大丈夫ですか?」

「ああ、完璧だ。この魔宝石の代金は払うぞ」

「えっ、色々して頂いているのに貰えませんよ」


 なんてやり取りをしている間にパトリックさんがいなくなっていて、戻ってきた時には魔宝石の代金を持ってきていた。

 今回使った魔宝石は、メラン様の秘密の部屋から持ってきた水晶の魔宝石だからお金はかかってないんだよね。

 それに、オーアのダンジョンで魔石や魔宝石を採掘して手に入れているから沢山あるし、貰うつもり無かったのに。

 なんて事をメラン様や秘密の部屋の部分はぼやかしつつ伝えると「それでもこういう事はちゃんとするべきだ」と言われた。


「それに、元々余分に転移陣を作ってもらうんだからその代金は払うつもりだったんだ」

「私達の事情で転移陣を設置させてもらうのに、お金は受け取れませんよ」

「時空間魔法スキル持ちは少ないし、そう簡単に転移陣を作ってもらう事は出来ないんだ。リア達の事情で、転移陣を設置する代金みたいな物だとしても多すぎる。だから、正当な報酬として受け取ってくれ」


 と言われてしまった。

 ここまで言われると断れない。

 私はパトリックさんから代金の入った袋を受け取る。

 行儀が悪いと思いつつ、中を見ると小金貨が五十枚入っていた。

 小金貨一枚が一万ペルで日本円だと十万円ぐらいだから……。

 五十万ペルって事は、日本円で五百万!?

 多すぎませんか!?


「金貨だと使い勝手が悪いと思ってな。小金貨にしておいた。驚いた顔をしているがそれでも少ない方だからな」


 と苦笑しながら言うバルツさん。

 少ない方なの? これで?

 多少の贅沢をしたとしても普通に何年も暮らしていける金額なんですけど!


「それだけ時空間魔法スキルを持っている者が少ないって事だ。しかも、時空間魔法スキル持ちは大体、国か貴族に囲われているからな。そういう奴に頼んだりしたらそれよりずっと金がかかるぞ」


 そういう事なのか。

 これでも、あまり多くても私が嫌がるだろうと思って少なめにした方らしい。

 えっ、少なめとは?

 減らした分はこれから色々と手助けする事で補うと言われた。

 いや、十分手助けしてもらってます!

 これ以上ってどうなるんだろう?

 なんて動揺する時間を過ごした。

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