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数日間の出来事と腕試しテスト

 お引越しした日から数日後。

 みんなと相談した結果、バルツさんにおすすめされた別館を借りる事に決めた。

 この数日間は、領都の冒険者ギルドに行ってルーセントとトラストの従魔登録をしたり、ヴァイスに会いに行ったり、領都周辺で出来る依頼をこなしたり、辺境伯邸の人達と仲良くなったして、楽しい日々を過ごしていた。

 冒険者ギルドに従魔登録をしに行ったらすぐさまギルドマスターの部屋に案内されて、アーメッドさんとオーアスの出来事を含めて色々と話したりとか。

 本題の従魔登録の話を切り出すと、人化してるルーセントとシャドウレイヴンのトラストを見たギルドマスターのアーメッドさんに「落ち着く時間をくれ」って言われるし。

 最終的には、


「このままだと俺は驚く事に慣れなきゃならん気がするぞ」


 とまで言われた。

 とても心外です。

 でも、もうね、そういうのを言われるの受け入れようと思うんだ。

 だって、仲間になってくれた子達は全員大切だもん!

 規格外って言われるとしても仲間にしないなんて選択肢は無いのさ!

 それに、もしかしたら私自身が規格外だからいい子達を仲間に出来てるのかもしれないし!

 だからいいの、規格外でも良い子で可愛い仲間に囲まれてるんだから幸せだもんね!

 従魔登録に関して、リリーの時は種族を本来のスイートクイーンアントじゃなくて、スイートアントに変えてもらったけどルーセントは本来のホーリーバジリスクのまま登録する事になった。

 アーメッドさん曰く、


「リリーの場合は、まだ幼いという事と有名で金になるスイートアントの女王種という事もあって偽った表記にした。

 だがルーセントの場合、新種のバジリスクだと断言出来る者はそういないだろうし、既に成体なため侮られるという心配もない。

 寧ろ人化出来るバジリスクとなれば、面倒な連中の抑止力に多少はなるんじゃないか? と思ってな。それなら、そのままの種族で登録しても支障はないだろう」


 だそうだ。

 色んな可能性をしっかりと考えてくれていてありがたいよね。

 従魔だと言う場面はそんなに無いと思うけど、誤魔化したり嘘をつく回数が減るに越したことはないんだから。


 他の日には、時空間魔法を使って初めましてのネーロやルーセント、トラストを連れてヴァイスに会うためにメラン様の秘密の部屋に行ったりもした。

 ヴァイスに会いに行くと前と同じく会えた事をすごく喜ばれる。

 色々とあったからオーアスなどで起きた出来事を話せる範囲で話したりして、楽しい時間を過ごせた。

 ヴァイスの魔物の卵も生まれていて、アイスイーグルという種族の子だった。

 連れてきてくれていたので鑑定させてもらう。


《アイスイーグル》

 白と水色の身体をした鷲型の魔物。

 氷属性を持ち多種多様な氷魔法を繰り出す。

 長距離の飛行も可能。

 Bランクだが個体差が大きく、個体によってはAランク相当。

 魔物の中でも生息地域が限られており、従魔にする事は難しい。

 また、従魔としても優秀なためとても人気な魔物。


 という鑑定結果が出た。

 うちの弟達の従魔、優秀な子が多い!

 Bランクの魔物でも十分強いのに、個体によってはAランクって文言どこかで見たような……。

 ええ、そうです。シャドウレイヴンの説明文にもそう書かれていましたね。

 なんですか? 弟達二人でお揃いですか?

 それ、可愛いな!

 ねぇ、うちの子めっちゃすごない? 説明文お揃いの強い魔物引き当てるとかめっちゃすごない?

 テンション上がりすぎて私の中のイマジナリー関西人が出てきてしまった。

 弟大好き精神は置いておいて、ヴァイスはネーロ達と会うのが初めてだったのでお互いの自己紹介とかをして交流を深めて過ごした。

 全員仲良くなれそうで安心したよ。


 ヴァイスと会った次の日からは、領都周辺の依頼をこなしたりした。

 領都の近くには森や山もあるし、ウーアシュプルング大樹海の外層もあるので常に依頼が沢山あるんだよね。

 その中で、あんまり冒険者に好まれないものとか、緊急性が高いけどまだ緊急依頼や強制依頼になってないものをマカレナさんに教えて貰ってそれを受けた。


「リアさん達がこういう依頼を受けてくれてとても助かるわ。ありがとね」

「いえ、いつも色々とお世話になっているのでお役に立ちたくて」

「本当にいい子達ねぇ。そこら辺の荒っぽくて短絡的な冒険者達に爪の垢を煎じて飲ませたいわ」


 なんて会話があったり。

 ちなみに受けた依頼は実入りの少ないゴブリンの大量討伐とか、前に受けたキラーカウの討伐依頼、後は面倒な事で有名なグラトングラスホッパーの駆除依頼など。

 グラトングラスホッパーは分かりやすく言うと大食いバッタだ。

 このバッタも魔物で大量発生すると農作物に被害が出る。

 大きさはネズミや猫ぐらいあるので、苦手な人が多い依頼だと思う。

 なかなか探しながら倒すのが面倒だし倒す数も多かったりするんだけど、私達は気配察知や魔力察知のスキルを持ってるし、私にはマップ機能もあるのでそこまで難しくなかった。

 マカレナさんとの会話で思ったけど、こっちにも「爪の垢を煎じて飲ませたい」って言葉があるんだね。

 日本で作られた乙女ゲームを元にした世界だからかな?


 後は、依頼を受けてない日に借りている別館で料理を作ったり、それを見たメイドさん達に驚かれて料理長のダグラスさんにレシピを教えたりなんて事もあったな。

 ダグラスさんに教えたレシピは、商人ギルドに登録してないものもあったので追加で登録しておいた。

 ちなみに、使用料は商業利用のみに適応されるので家やお屋敷でその料理を出すぶんには掛からない。

 かと言って家庭で作るのと、お店で出されるのは色々と違うのでお店の方に支障はないらしい。

 この一件で私達に付いてくれているメイドのキアラさんとも仲良くなれたし、私と歳の近いフランカとも友達になった。

 フランカは天真爛漫って言葉の似合う可愛らしい子なんだけど、少しドジっ子っぽいんだよね。

 色々見ていた結果そう思った私がそれを言うと、キアラさんには深々と頷かれ、フランカには笑いながら否定された。


「そりゃたまーに失敗するけど、ドジっ子だなんてそんなことないよ〜」


 って感じにね。

 面白くて可愛い子と友達になれたと思う。

 アーテルとリリーは二人に懐いているし、ネーロやルーセントもキアラさんとは世間話や質問をしたり、ドジっ子なフランカの事は心配そうに見ていたりする。

 なんだかんだ、私を含めた全員が辺境伯邸に馴染めていて嬉しくなった。

 皆さんが優しいおかげで早く馴染めたんだよね。

 ありがたや、ありがたや。


 さて、ここ数日を振り返った所で今日の予定を確認する。

 今日はクラルテさんに呼ばれていて、アンビティオ魔法学院に編入する為の試験を受ける前に現在の能力を測りたいらしい。

 それによって、家庭教師をつけて教えるか、そのまま編入試験を受けるかを決めるそうだ。

 まさか、そこまで考えてくれているとは思ってなくてすごく驚いたし、気遣いに感謝しっぱなしだ。

 ただ、何故かついでと言われて私も受ける事になった。あっれー、なんでだ!?

 アンビティオ魔法学院はソッレルティア魔法学院の元になった学校なだけあって歴史が長い。

 ソッレルティア魔法学院が創設五百年ぐらいなのに対して、アンビティオ魔法学院は創設して千年に近いらしいんだ。

 また、ソッレルティア魔法学院は幼等部、中等部、高等部、特級院と分かれていたけど、アンビティオ魔法学院には幼等部がない。

 それに中等部と高等部という区切りもなく、必修科目と選択科目の単位が取れれば卒業する事が出来るし、そのまま学院内にある研究院に進むことも出来る。

 一応、学年やクラスはあるけれどそこまで意味は無く、通常は六年前後で卒業する人が多いらしい。

 研究院はソッレルティア魔法学院の特級院と同じ感じで、日本の大学の大学院みたいなもの。

 アンビティオ魔法学院に入学するのは十二歳以上の子が多いらしい。

 まぁ、アンビティオ魔法学院の一年生はソッレルティア魔法学院の中等部の一年生と同じようなものだろうからね。

 ただし、王族や貴族の優秀な子は早くから入学していたり、商人や庶民の子でも才能があれば貴族の支援を受けて早くから入学している子もいるそうだ。

 なので、アーテルが悪目立ちする事もないと思う。

 アンビティオ魔法学院の事を思い出している内に約束の時間になった。

 私達は全員で本館の一部屋に向かう。


「おはようございます。今日はよろしくお願いします」

「よろしくお願いします!」

「はい、よろしくお願いしますね。力を抜いて気楽に自分の力を出してください」

「はい」

「はい!」


 やる気満々のアーテルに安心しつつ、腕試しのテスト用紙を受け取る。

 この世界って魔法や魔道具が発達しているおかげか、紙の質がいいしそこまで高くないんだよね。

 あと、お砂糖とかも。

 個人的にはすごく助かる。

 なんて余所事を考えながら用紙に目を通し、問題を解いていく。

 うん、出来るね。

 まぁ、これでもソッレルティア魔法学院の高等部まで行ってるし、解けない方が困るというか。

 今回出されている問題は、基礎的な言語や計算、世界の歴史などに加え魔法の基礎関連が多い。

 困る事もなく解き終わって用紙をクラルテさんに渡した。

 アーテルも満足そうな顔をしているので、しっかり出来たみたいだね。

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