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名付けと交流

 今のって念話だよね?

 男の人の声だったけど、この声の主は……。


〈今、私に話しかけたのはもしかしてあなた?〉

〈はい、そうです。主様〉


 ホーリーバジリスクに問いかけるとすぐに答えが返ってきた。

 やっぱり、この子だったんだ。


〈念話が使えるんだね〉

〈ええ、主様が望むのであれば人の姿になる事も可能ですよ〉


 あれま、人化スキルまで持っているとは……。

 予想通り新しい仲間は規格外でした。

 種族がバジリスクの亜種で新種って時点で規格外だから今更なんだけどね!


〈じゃあ、人の姿になってもらってもいいかな?〉

〈かしこまりました〉


 彼は返事した瞬間に人の姿になった。

 突然人化したホーリーバジリスクに私以外の全員が驚く。


「最初の時点で規格外だとは思ってたけどさー」

「まさか、ホーリーバジリスクも人化スキル持ちだとは……。流石、リアの従魔だと言うべきか」

「あはは……」


 私はアスティさんとバルツさんの言葉に苦笑しつつ、彼の姿をよく見てみる。

 綺麗な白い髪に緑の瞳をした優しげな顔の男性だ。

 魔物の卵から生まれた魔物は、生まれた時から成体だから人化した姿も大人なんだね。

 それにしても、人化した魔物は美形というルールでもあるんだろうか?

 リリーのお母さんの女王様もリリーも美形だし。

 そこまで重要な事じゃないんだけど少し気になっちゃうよね。


「主様、どうでしょうか? 私の姿は主様のお眼鏡に適いますか?」

「あのね、私は仲間になってもらった時からどの子も大切に思っているんだ。だから、お眼鏡に適うとか気にしなくていいんだよ。もし、どうしても気になるって言うのなら、元の姿も含めてとってもかっこいいと思ったよ」

「それは……。ふふ、ありがとうございます」


 私の答えが嬉しかったのか、ふんわりほわほわした笑顔でお礼を言われた。

 この子もええ子や。

 私は周囲の人や従魔に恵まれているとしみじみ思う。


「主様、私に名前をつけてくださいませんか?」

「あっ、そうだった。どんな名前がいい?」

「主様が考えてつけてくださるのであれば、どんな名前でも嬉しいです」


 また、ほわほわした笑顔でそう言った彼を見てとても可愛いなぁと思う。

 いつの間にか勝手に口が開いて彼に少し屈むよう言っていた。

 そして、屈んだ彼の頭を撫でる。


「ふふっ、かわいいねぇ」

「あの、主様?」


 撫でられて戸惑いつつも嬉しそうな彼。

 やっぱり、かわいい!

 その様子を見ていたアーテルとリリーもやって来て撫でる事をねだられた。

 うちの子達、愛らし過ぎませんか!

 もちろん喜んで全員を撫でた。

 ネーロの事もね!


「私の方がすごく歳上なんだけれど、仕方がないからリアが撫でる事だけは許すわ」


 ツンデレ! いや、クーデレ?

 どっちでもいい!

 ネーロがかわいいという事実は揺らがないのだから!

 うちの子達にデレつつも彼の名前を考える。

 彼の「名前をつけて欲しい」という言葉を聞いたアーテルもハッとした後、悩ましげな顔でうんうん唸っている。

 名前を考えつつも撫でるのをねだりに来るのは忘れないアーテルもめちゃくちゃ可愛いよね!

 うちの子達の可愛い話は尽きないのでこの辺りで置いておくとして。

 う〜ん、どんな名前が彼に似合うだろう?

 蛇の姿がすごく綺麗だったからね。

 あっ、輝くとか透明なって意味のあるルーセントが似合いそう!

 人化している彼と目を合わせて聞いてみる。


「ルーセントって名前はどうかな? 輝くとか透明なって意味があるんだけど」

「とても良いですね。美しい意味と響きがとても好みです」

「じゃあ、あなたの名前はルーセントに決まり。ルーセント、これからよろしくね」

「はい。よろしくお願いいたします」


 彼の名前がルーセントに決まったところで、アーテルも納得した表情を浮かべていた。


「姉さま、ぼくも決まったよ!」

「どんな名前にしたの?」

「あのね、トラスト! 昔読んだ絵本の主人公がすごく信頼してる相棒の名前がそうだったの!」

「いいお名前だね。その子に聞いてみたら?」


 私がそう言うとアーテルはシャドウレイヴンに近づいて問いかける。

 従魔と主は契約で繋がっているので、念話などで喋れない従魔でも感情が伝わってくる。

 なので相手が喜んでいるかどうかも分かるんだ。

 従魔契約って便利だね!


「トラストっていうお名前でいいかな?」

「カァ! カァー!」


 この感じだと喜んでいそうだ。

 私を含めバルツさんやアスティさん達も微笑ましそうに見守っている。


「姉さま、喜んでくれてる! これっていいよって事だよね?」

「そうだと思うよ。良かったね」

「うん!」

「カァ!」


 一大イベントである魔物の卵の孵化と契約、そして名付けが終わったので私達は客室に戻った。

 バルツさんはまたお仕事に戻るようだ。

 私が手を煩わせたんじゃないかと心配しているとアスティさんに「息抜きで来てたんだろうから気にしなくていいんだよー」と言われて安心した。

 でも、これも気遣ってフォローしてくれたんだよね。

 本当にここの人達は優しい。

 ところで、今気がついたけどルーセントはどっちの姿で寝るんだろう?

 人の姿で寝るのならベッドが足りないし、元の姿で寝るのならこの部屋は無理だよね。


「ねぇ、ルーセント」

「主様、どうしました?」

「ルーセントはどっちの姿で寝るの?」

「どちらの姿でも寝れます」


 どっちでも寝れるのか。

 だったら人の姿で一緒にいる方が良いよね。

 情報共有はしてくれるだろうけど、外で大きな蛇というかバジリスクが寝ていたら怖がる人も多いだろうし。

 そのぐらいバジリスクは強くて恐ろしい魔物だからなぁ。

 まぁ、ルーセントの場合はホーリーバジリスクで目を合わせても害はないんだけど。

 むしろ治癒効果がある。


「じゃあ、近くにいて欲しいし人の姿で寝てもらう方が良いよね。申し訳ないけどベッドがもう一つあるお部屋に変えてもらおうか」

「主様、お待ちください。元の姿でもお傍にいる事は出来ます」

「えっ、でもあの大きな姿じゃいくらこのお部屋が広くても入れないよ?」

「身体変化というスキルを持っていますので、身体の大きさを変えることが出来ます」

「マジか」


 マジか。

 いや、心の声が出ちゃったよ。

 ルーセントさん、すご過ぎでは?

 有能、とてもスキルが有能です。

 人化出来るし、身体の大きさも変えられると。

 わあ、私の従魔すごい子だ!


「じゃあ、お願いしてもいい?」

「かしこまりました」


 ルーセントが返事をした瞬間、体長一メートルぐらいの白い蛇に変わった。

 か、かわいい!

 大きな姿の時はかっこよかったけど、この大きさだとめちゃくちゃ可愛い!

 直ぐに抱き上げて撫でる。


〈主様、これならば大丈夫でしょうか?〉

「うん、大丈夫だよ! ありがとう」

〈主様の悩みを解決できたのなら嬉しいです〉

「バッチリ解決した! 撫でてもいいかな?」

〈はい、主様に撫でて頂けるのは嬉しいのでいくらでもどうぞ〉


 まぁ、聞く前から撫でていたんですけどね!

 私達のやり取りを見ていたアスティさんは「規格外なところは置いといて、うん大丈夫そうだね。じゃあ、俺は自分の部屋に戻るよ。またね」と言って部屋を出ていった。

 この後は夕食までルーセントやトラストと交流を深めようかな?

 私がそう提案すると全員が頷く。

 こうして私達は、お引越し当日から楽しい時間を過ごした。

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