魔物の卵の孵化(リア編)
アーテルが名前を悩んでいる間に、私も自分の魔物の卵を手に取る。
さて、どうしようかな?
アスティさんに質問して、属性に変換した魔力を注ぐのがダメじゃないって分かったけどちょっと怖い気もする。
もし、何かあって生まれなくなったりしたらショックだしなー。
でも気になるんだよね。
「リアちゃん、どうしたの?」
「えっと、さっきアスティさんに質問した変換した魔力を注いだ場合どうなるのか? って事が気になってて。でも、やるかどうか悩んでるんです」
「ふむふむ。そういうことかー。うーん、普通に魔力を注いだのと変わらないと思うんだけど、俺も専門家じゃないからね。でも、おかしな事にはならないと思うよ」
「じゃあ、試してみても大丈夫ですか?」
私が聞くとアスティさんは頷いてくれた。
また、魔物の卵を手に入れれるとは限らないし、試したい事をするのもアリだよね。
魔物の卵を撫でながら悩む。
「属性に変換していても魔力には変わりないから、生まれないとかそういうことは起きないと思う。それに生まれるまでは魔物の卵に命は宿ってないから、失敗しても命を奪った事にはならないよ」
「えっ、そうなんですか?」
「うん。魔物も人族も魔族も精霊とかもみんな魂があるんだけど、そういうものを見れる人が魔物の卵を見た時に見えなかったんだって。だから、大丈夫だよ」
一番の懸念材料が消えた。
もし、生まれなくなって命を奪う事になるならやるつもりはなかったんだ。
でもこれなら、やっても大丈夫そうだな。
専門家じゃないと言いつつも色々と詳しいアスティさんのおかげだ!
「教えてくださってありがとうございます! やってみますね!」
「どういたしましてー。頑張って!」
「姉さま、がんばれー!」
「がんばれー!」
「リアは面白い事を思いつくわね。ふふ、頑張りなさい」
応援してくれるみんなにお礼を言う。
よし、やってみるか!
魔力を光属性に変換してから魔物の卵に注ぐ。
どのぐらい入るかなー? なんて考えながら注いでいると思った以上にドンドンと魔力が入っていった。
「おっ、リアちゃんの魔物の卵も容量が大きめっぽいね」
「みたいですね」
いくつかの上質な魔宝石を満タンに出来るぐらいの魔力を注いだところで、魔力が入らなくなった。
これは、アーテルの魔物の卵よりも多く魔力が入ったな。
後は契約魔法をかけるだけ。
『コントラクト』
契約魔法がかかると魔物の卵が輝き始める。
アーテルの時と同じく魔物の卵を地面に置いて離れた。
魔物の卵は輝きを放ちながら徐々に大きくなっていく。
「アール君の時より注いだ魔力が多そうだったから、すごい魔物が生まれそうだね。シャドウレイヴンも十分、珍しい魔物ですごいんだけどさ」
「どんな子が生まれても新しい仲間は嬉しいんですが、強い子は強い子で嬉しいですね」
「でも、リアちゃん達の場合はそこまで強い魔物じゃなくても、リアちゃん達と一緒にいるうちに規格外な子になりそうな気がするけどね」
アスティさん、それは良い意味なんでしょうか?
私、すごく気になります!
茶番は置いておいて、魔物の卵がドンドン大きくなってるんだけど、これはどんな子が生まれるんだろう?
既にシャドウレイヴンが生まれた魔物の卵よりも大きくなっている。
「ねぇ、リアちゃん」
「はい」
「今の時点で規格外な予感がビシバシするんだけど……」
「……私もです」
あのー、魔物の卵さん、まだ大きくなるの止まらないんですかね?
私、これはヤバい気がするの。
さっきも言った通り、どんな子が生まれても仲間として喜んで迎えるけど、すごく規格外な子が生まれる気がして少し怖くなってきた。
魔物の卵は既にアスティさんよりも大きくなっているし。
「ありゃー、俺よりも大きくなったね」
「ですね。どこまで大きくなるんでしょう?」
「見当がつかないな。それにそろそろ、誰か来ちゃうかもね……」
そりゃそうだ。
魔物の卵は光を放ちながら大きくなっているのでとても目立つ。
アーテルのシャドウレイヴンが生まれた時は卵がここまで大きくないので、光の届く範囲も限られていた。
けれど、私の魔物の卵はもうアスティさんよりも大きくなっているので、結構な範囲に光が届いている。
案の定、誰かが来る気配がした。
「リア、アスティ、これは何が起きてるんだ?」
「バルツ様、サボりですか?」
「質問に質問で返すな。する事は済ませてきている。で、どうなんだ?」
「えっと、私の魔物の卵が予想以上に大きくなっているんです」
私の答えを聞いてさっきよりもまじまじと魔物の卵を観察するバルツさん。
お仕事の邪魔をしたような気がする。
わざわざ来てくれたみたいだし申し訳ないな。
「何か特別なことでもしたのか?」
そう聞かれたので今までの経緯を話す。
「光属性の魔力か。魔物の卵の話は色々聞いた事があるが、属性に変換した魔力を注いだ話は無いな。くくっ、リアは相変わらず面白い事を考える」
「やっぱりそのせいでこんなにも大きくなっているんでしょうか?」
「いや、それだけじゃないだろう。それも要因の一つではあるだろうが元々この魔物の卵の容量が大きく、それに見合った魔物が生まれようとしているからだと思うぞ」
そう言って貰えて少し安心する。
要因の一つではあるみたいですけど。
どうしても気になって試したくなったんです!
自業自得でしたね!
まぁ、反省はしていても後悔はしていないので、それで良しってことでお願いします。
私は一体誰に釈明したりお願いしているんだろう。
バルツさんと話したり現実逃避している間に、魔物の卵はとんでもない大きさになっていた。
そして、ついに魔物の卵は一際大きな光を放つ。
光が消えたところで目を開けると、目の前に大きな白いバジリスクがいた。
「えっ、バジリスク?」
「白いバジリスクなんて初めて見たぞ」
「聞いた事も無いですね。リアちゃん、鑑定してみて」
「あっ、はい」
一応、全員がバジリスクと目を合わせないようにしている中で、私は直ぐに鑑定魔法を白いバジリスクにかけた。
《ホーリーバジリスク》
真っ白な身体に緑の瞳を持つ蛇型の魔物。
バジリスクの亜種で新種。
本来は使えない光属性を持ち、その視線には治癒効果がある。
戦闘能力も高く、ランクはバジリスクと同じくAランク。
鑑定結果をバルツさんとアスティさんに伝えると、二人ともものすごく驚いていた。
「まさかバジリスクの新種が生まれるとはな。流石リア、規格外だな!」
「リアちゃん、引きが強すぎじゃない? 鑑定の説明を聞く限り規格外ではあるけど、とっても心強い仲間で良かったね!」
再度規格外認定された。
いや、これは自業自得だから甘んじて受け入れよう。
でも、真っ白で大きなバジリスクはかっこいい!
私は蛇系を平気というか、むしろかっこいいと思うタイプなのでこの結果は大歓迎だ。
「姉さま、かっこいいね!」
「かっこいい!」
「まだ仲間になって間もないけど、リアはこんな風に面白い事を仕出かしてるのね」
アーテルとリリーの言葉に頷きつつ、ネーロの発言には苦笑いを返した。
否定できないからね。
よし、名前を考えよう。
〈聞こえますか? 私の主様〉
「はえっ?」
〈〉の中の口調を変えました。
拙作を読んでくださってありがとうございます。




