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闇ギルド捕縛作戦

 闇ギルド対策会議から三日。

 アスティさんの偵察や監視で情報が集まり、ついに作戦当日になった。

 昨日の内にごろつき達につきまとわれていたオレグさんの妹さんは保護出来たし、ごろつき達は拘束済み。

 そのごろつき達はエドゥアルドさん達を使っていたあの男が引き入れた連中なので、拘束しても闇ギルドの者達には気づかれない。

 懸念材料が一つ減ってみんな少しホッとしていた。

 現在の時刻は夕暮れ。

 雲の合間から西陽が射し込んでいる。

 アスティさんの偵察で今日の夜に闇ギルドの者達が集まるらしいので私達はそこを狙う。

 連中の拠点はオーアスの富裕層が住まう地区の外れにある豪邸だった。

 よくそんな物を買えたなと思ったけど不法侵入の不法滞在みたいだ。

 そりゃそうかと納得したよ。


「敵の数は二十人。闇ギルドの連中が十人でもう十人はごろつき。闇ギルドの奴で厄介そうな力を持っているのは二人ですねー」

「この辺りの住人は少ないので既に避難させています」

「準備は万端だな」


 周りの人に被害が出ないなら良かった。

 私の後ろにいるアーテルとリリーはやる気満々だ。

 うん、そこまで意気込んでるとは思わなかったよ。

 何がこの子達のやる気に火をつけたんだろう?

 仲良くなったエドゥアルドさん達やセシリオの事で思うところがあったのかな。

 なんて予想を立てつつ私自身も気合いを入れ直す。


「日が暮れたら突入だ。周りは今回連れて来た兵士に囲ませている。連中の中でも厄介な奴がいる部屋は地下にあるらしい。なので、一階、二階をダニエルとエドゥアルドのパーティーに担当してもらう」

「残りのバルツ様と私達、そしてリアさん達と何人かの兵士で地下に向かいます」

「了解です」

「了解した」

「分かりました」


 バルツさんとクラルテさんの言葉にそれぞれが返事を返す。

 その館の近くで少し待つとついに日が暮れた。


「行くぞ」


 バルツさんの言葉に全員が頷く。

 表の入口からはダニエルさん達とエドゥアルドさん達が、裏口からはアスティさんの案内で私達が入る。

 裏口を見張っていたごろつきの一人はとっくにアスティさんの手で眠らされて拘束されていた。

 館の中は暗く少し埃っぽい。

 表から入ったダニエルさんやエドゥアルドさん達の方は戦闘が始まっているみたいだ。

 アスティさんがとある部屋の本棚の前で止まる。


「この部屋から地下へ行けます」


 そう言って素早く隠し扉を開けてそこに入っていく。

 それに私達が続く。

 階段があってそこを下りると途中から洞窟みたいになっていた。

 

「思った以上に手が込んでいるな」

「そういえばこの家は違法な商いをしていた商人の別荘でしたね。このような地下があるのもやましい事を隠すために使っていたのでしょう」

「それにー、そういう奴って裏の世界と何かしら繋がりがあるんで、闇ギルドの連中もそれを知っててここを使ってるんだと思いますよー」


 アスティさんの言葉は経験談っぽくてめちゃくちゃ納得。

 どんどん進んでいくと広い空間に出た。

 そこには大きな机と椅子。まるで貴族の会議室みたいになっていた。


「お客人かな?」


 声のする方を向くと真っ黒なローブに身を包んだ人物が一人いた。

 声を聞く限り男の人だと思う。


「お前らにとっては招かれざる客だろうがな」

「そのようだ」


 その人物がそう言って手を叩くと奥から五人、同じように真っ黒なローブに身を包んだ人達が出てきた。


「殺せ」


 端的に最初からいた人物が命令する。

 出てきた人達はその言葉を聞いて直ぐに襲いかかって来た。


「気をつけろ」

「はい」


 バルツさん達はそれぞれ一人づつを相手していて、私達は三人で二人を相手にする。

 斬りかかってきた一人をアーテルは剣輪から出した剣で受け流した。


『アースショット!』


 リリーは地属性の魔法でアーテルの援護をしていた。

 私はもう一人を受け持つことにして、そちらを向く。

 もう一人は魔力を練っているので魔法を使うつもりみたいだ。


『ウォーターボール』


 敵は幾つもの水の球を私やアーテルの方に放つ。


『アイスショット』


 少し多めに魔力を込めた氷の弾で水の球を凍らせて落とす。

 今度はこちら側から攻めてもいいよね!


『アースバインド』


 地面が土なのでそれを動かして拘束する。

 何度か躱されてしまったけど、続けて攻めていると一つに足を取られる。


『サンダーショック』


 そこに雷魔法を撃ち込んで意識を刈りとる。

 後は素早くマジックバッグから足枷を取り出して敵に装着した。

 この足枷は魔力封じの効果が付いている魔道具だ。

 クラルテさんから渡された物で、隷属の首輪と同じ系統の魔道具だけど対象者の魔力を封じる効果のみでそれ以外の悪影響はない。

 私の方が終わったのでアーテル達の方を見ると、身体強化した状態で相手のお腹を剣の柄で打って気絶させていた。

 思った以上に色々と身につけてどんどん強くなってますねアーテルさん。

 流石、うちの子! 可愛い! サイコー!

 ごほん。すみません、取り乱しました。

 バルツさん達の方を見るとそちらもそれぞれ無力化して拘束していた。


「チッ」


 命令していた男は舌打ちをして奥に逃げていく。

 私達は頷きあって後を追った。

 それにしても、最初は強そうな感じだったのになんと言うか舌打ちして逃げるのはすごく三下感があるなー。

 でも、油断は禁物。

 進んでいくとまた広い空間に出る。

 私達は空間の中央にある物を見て驚き動きを止めた。

 そこには、大きな魔法陣とその上にこれまた大きくて透明な六角柱があった。

 そして、その六角柱の中に黒髪の少女が閉じ込められていたんだ。


「これは……」

「精霊ですね」


 直ぐに鑑定したのだろう、クラルテさんがバルツさんの呟きに答える。

 六角柱の中に閉じ込められた少女は苦悶の表情を浮かべていて、あの中にいるだけで傷ついている事が分かる。

 隣にいるアーテルに目を向けると険しい表情で敵を睨みつけていた。

 私でもあんな風に精霊を利用しているのを見れば腹立たしくて堪らないんだから、同族のアーテルはそれ以上だろう。


「ここまで来たことは褒めて差し上げよう。しかし、精霊の力を使う我らに勝てるはずはないのだよ!」


 そう言って男は腕を掲げそこに嵌められている腕輪に魔力を込め始めた。

 魔力が込められれば込められるほど苦しむ精霊。

 全員がその様子を見て臨戦態勢に入る。


『ダークネスバインド!』


 男の詠唱で私達の周りに闇属性の蔦のようなものが現れて、拘束しようと襲いかかってくる。

 闇属性なら光属性の魔法を使って打ち消せるはずだけど、何を使えばいいのか分からない。

 そういえば正式な詠唱無しでもウォーターボールと同じ水の玉は出せた。

 それなら闇属性の魔法を打ち消す事だって出来るはず。

 私は魔力を多めに練って光属性の魔力に変換しながらイメージする。


『打ち消して!』

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