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交流と想定外

 翌朝。

 昨日は話し合いが終わりセシリオと友達になった後、部屋に戻るとアーテルとリリーが私を待っていた。

 二人にエドゥアルドさん達が目覚めた事や、どういう人達なのかを話していたらあっという間に時間が過ぎていて、急いで夕食を取ったらみんなすぐに寝てしまった。

 私も二人も思った以上に疲れていたらしい。

 まだ寝ている二人を起こさないよう静かに朝の準備を済ませていく。

 すると、私達の部屋がノックされた。


「はい」

「……僕、セシリオ」


 訪ねてきたのがセシリオと分かったので直ぐに鍵を開けて彼を招き入れる。


「どうしたの?」

「……えっと、リアに会いたくて」

「そっか。おはよう」

「……おはよう」


 朝の挨拶をしたところでセシリオは黙り込んでしまった。

 話す事が少し不慣れみたいだし、色々と準備をしながら待っていればいいかな?

 そう考えて身嗜みやら何やらを整えていると、アーテルとリリーが目を覚ました。


「うーん、んん。あっ! 姉さま、おはよう!」

「おはよー!」

「ふふ、おはよう。顔とか洗っておいで」

「はーい!」


 声を揃えて元気な返事をする二人は本当に可愛い。


「……ねぇ」

「うん?」

「……あの子達がリアの家族?」

「そうだよ。弟のアールと妹で従魔のリリー。可愛いでしょう?」

「……うん、可愛い。……でも一つ気になった」


 自慢の弟と妹を可愛いって言って貰えるとすごく嬉しいね!

 気になったってなんだろう?


「何が気になったの?」

「……アールは本当に人族?」

「えっ」


 あからさまに動揺してしまった。

 ど、どうしよう。今から取り繕っても遅い気がする。

 まずはどうしてそう思ったのか聞かないと。


「どうしてそう思ったの?」

「……人族の魔力にしては純度が高くて、まるで精霊みたいだなって」

「そ、そう?」


 種族まで当てられてる……。

 どうやって誤魔化せばいいんだろう。


「……あと、偽装してあるような魔法も感じるし」

「そんな所まで分かるんだね」

「……僕は魔力に敏感らしいから、みんながみんな分かるわけじゃないと……思う」


 そうなんだ。

 ここまで知られたら話してもいいかな?

 正直、私はもうほとんど彼を、セシリオを信用している。

 顔を洗ったりしてきたアーテル達が戻ってきた所で、私達の今までをセシリオに話す。


「……そうだったんだ。……リアも頑張ったんだね」


 セシリオの言葉に驚く。

 そっか、私も頑張ってたのか。


「ありがとう。そう言って貰えるとすごく嬉しい」

「……ふふ、僕もリアにそう言って貰えて嬉しかったから」

「姉さまはずっと頑張っててすごいんだよ!」

「……そうだね。でも、アーテルも頑張ってるよ」


 セシリオの言葉にアーテルが不思議そうな顔をした。


「ぼくも?」

「……うん。……リアの言う事を聞いて、慣れない生活にも文句を言わないでいい子にしてるでしょ?」

「うーん? そうかな?」

「そうだよ。アーテルがいつもにこにこ笑って応援してくれるから、私はいつも頑張れてるんだよ。お父様やヴァイス、マーサ達に会いたいのを我慢してるのも知ってる」


 私の言葉を聞いてアーテルはにっこりと笑った。


「みんなには会いたいけど、ぼくは姉さまがいてくれるだけで嬉しいから大丈夫! それにリリーもいてくれるし!」


 本当に私には過ぎた弟だなと思いながらアーテルの頭を撫でた。


「リリーは?」


 小首を傾げて質問してくるリリーにも頑張ってるよと伝える。


「ふふーん!」


 嬉しそうに胸を張るリリーもすごく可愛い!


「……ふふっ。……リア達に会えて良かった」

「私もセシリオに会えて嬉しいよ」

「ぼくも!」

「リリーも!」


 四人で顔を見合せて笑う。

 話がひと段落したところで、セシリオに私達の素性や諸々は黙っていて欲しいと頼む。


「もちろん。……リア達が困る事はしない」

「ありがとう」


 時計を見ると良い時間だったので四人で食堂に向かう。

 食堂に着くとバルツさん達がいて、私達を見てホッとした顔をした。


「おはようございます。どうしたんですか?」

「おはよう。実はエドゥアルド達にセシリオがいないと言われて探そうとしていた所だったんだ」

「……ごめんなさい」

「いや、気にするな。仲良くなれたのはいい事だ。ただ、今度からはどこに行くか誰かに言っておいてくれ」

「……はい」


 返事をしたセシリオの頭を撫でながら「そこまで気にしなくていいぞ」とバルツさんが言う。

 私ももう少しそこら辺を気にしておけば良かったな。

 そんな事を考えていたら、エドゥアルドさんがアーテルをじっと見つめている事に気がつく。


「リア殿」

「はい」

「彼が君の弟なのか?」

「ええ、弟のアールです」

「人族だと言っていたように思うんだが」


 えっ、まさか。


「アールは人族ですよ」

「いや、その魔力は人族の物も感じるがそれ以上にせ……」


 精霊と言いかけたエドゥアルドさんの手を引いて私達の部屋の方に連れて行く。


「ど、どうしたんだ?」

「あの、色々と事情があるので皆さんがいる前でその話をするのはやめて頂けると」

「そうだったのか。それはすまない」

「いえ、隠している私達が悪いので気にしないでください」


 私とエドゥアルドさんの後をアーテル達が追ってきた。


「……大丈夫?」

「うん。大丈夫」

「気になったのだが、聞いてもいいだろうか?」


 まぁ、アーテルの種族がバレている時点で質問が来るのは仕方ないか。


「はい。全て答えられるとは限りませんが」

「リア殿とアール殿は本当の姉弟なのか?」

「ええ。種族は違いますが両親は同じです」


 私の言葉に考え込むエドゥアルドさん。

 そしてハッとした表情で言い放った。


「もしや、辺境伯殿と同じく先祖返りなのではないか?」

「よく分かりましたね。私はエルフの、アールは精霊の先祖返りです」

「やはりそうか。精霊の先祖返りがいるとはな。私は精霊魔法のスキルを持っているんだ。だから、彼の種族に気がついた。誰でも気がつく訳ではないからそこまで心配しなくていいと思うが」


 そうなのか。

 でも、この短時間で二人にもバレているのは由々しき事態な気がする。

 アールには偽装できる魔道具を持たせてるけど、溢れ出る純粋な魔力は分かる人には分かっちゃうんだね。

 まぁ、精霊を連れたパーティーはごくごく稀にいるらしいし、今のところ魔道具を持たせる以外の打つ手は無いから今後の課題にしておこう。

読んで下さってありがとうございます。

ブックマークや評価をして頂けるとものすごく嬉しいです。

拙作を今後もよろしくお願い致します。

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