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自己紹介と経緯

「その言葉はここにいるリアとその家族に言ってやってくれ」


 バルツさんがこう言ったことでエルフの彼が私を見る。


「この少女に?」

「そうだ。お前達の首輪を外したのも、お前達が追っていたパーティーを助けに行って、お前達を倒したのもこの子達がした事だからな。もしかして倒された事を覚えていないのか?」

「あっ、いや、それは覚えている。だが、首輪をされていると意識や記憶に曖昧な部分ができる事があるんだ。だから、まさか成人もしていない同族の少女のおかげだとは思わず」


 それは一理ある。

 私はまだ十三歳で人族の成人の十五歳でもない上に、エルフの成人の五十歳には程遠いし。


「ほう、そういう事か。そういえば今、気がついたんだが自己紹介がまだだったな」

「そうですね。私もすっかり忘れていました」

「まずは俺からか? この辺境領の領主で冒険者もしているシュバルツ・ヴァルメリオだ。冒険者の時はバルツ・メリオと名乗っているからそれで頼む」


 バルツさんの自己紹介を聞いてエルフの彼が驚いている。

 へぇ、他種族でも人族の階級は知ってるんだ。

 すると、アスティさんがバルツさんに近づいて囁く。


「バルツ様、大切な事を一つ忘れてません?」

「ん? ああ。ついでに種族は先祖返りのヴァンパイアだ」


 エルフの彼はこの言葉にも驚くと思っていたのに、普通に受け入れていた。

 もしかしてヴァルメリオ辺境領の領主がヴァンパイアって有名なのかな?

 後、前から思っていたけどバルツさんって種族の事をそこまで重要視してないよね。

 どの種族であろうと先祖返りは稀だし、その上バルツさんは種族の事で大変な思いをしてきているっぽいのに。


「じゃあ、次は俺たちかな? 俺はアスティ・ブエングスト。種族は元人族で今はヴァンパイア。バルツ様の部下ってとこかな」

「では、私も。私の名前はクラルテ・クリュスタッロス。種族はハーフスノーフェアリー。同じくバルツ様の部下をしています」

「えっ!」


 思わず声を出してしまう。

 クラルテさんの事は普通に人族だと思っていたんだ。

 鑑定魔法スキルは持ってるけど知り合った人全員を鑑定している訳じゃないから。

 というか、高レベルの鑑定魔法スキルを使って鑑定して色々知りすぎたらボロを出しそうで怖くて。

 だから、鑑定を使うのは魔物や植物、魔道具などの物に対してが主なんだよね。


「そういえば、リアさんには言っていませんでしたね。私の母はエレスチャル魔王国出身のスノーフェアリーで、一目惚れした人族の父を追いかけてネフライト王国に来てこの国で結婚したんです。そして、その間に生まれたのがこの私なのですよ」

「ついでに、元々クラルテの父親は俺の父親の部下で、クラルテもそのまま俺の幼なじみ兼側近になったって訳だ」

「そうだったんですね。あっ、話の腰を折ってすみません」


 私がそう言うとお伝えし忘れていた私も悪いですからとクラルテさんがフォローしてくれた。

 そっかぁ、という事はクラルテさんも五百歳越えなんだ。

 スノーフェアリーもヴァンパイアやエルフと同じように容姿が一定の年齢で止まる系なんだね。


「次はリアだな」

「あっ、はい。えっと、リアです。人族の弟アールと人化出来る妹兼従魔のリリーがいます。あとは、Bランク冒険者をしています」

「一つ質問をしてもいいだろうか?」


 エルフの彼にそう問われたので頷く。


「姓を名乗らないのには理由があるのか?」

「はい、色々と事情があって今はただのリアです」

「そうか。不躾な質問をしてすまない。同族の、しかも成人していない少女が親無しで冒険者をしていると知って気になってしまったんだ」


 彼のその言葉を聞いてそれはそうだと私も思う。

 なので、気にしないで欲しいと返した。


「では、私も自己紹介をしなければな。私の名前はエドゥアルド・フラーウム。エレスチャル魔王国とアンバー帝国の間にある小国群の生まれだ」


 エドゥアルドさんか。

 綺麗な金髪に緑の瞳だからザ・エルフって感じなんだよね。


「そして、そこにいるドワーフと犬系獣人も同じ小国群生まれで私とパーティーを組んでいた。ある日、依頼の為に向かった帝国で騙されて奴隷にされ、あの闇ギルドの連中の道具になったんだ」


 やっぱりダニエルさん達と同じように違法な手段で奴隷にされたのか……。


「じゃあ、エドゥアルド達と契約していた闇ギルドの男は帝国の者か」

「ああ。帝国では貴族が闇ギルドの者を子飼いにして他領や他国に行かせているんだ」

「そういう事か。それにしても、帝国からかなり遠いこの辺境領にわざわざ来るとはな」


 そう呟いたバルツさんの言葉にエドゥアルドさん以外の全員が頷く。


「あくまで噂の域を出ないが、あちらにいる時に帝国がネフライト王国とセレスタイト王国を狙っているという話は度々聞いていた」

「そのような噂が帝国内にあるのか。実際、あの国の動きは怪しいから何があってもおかしくないな」

「それに帝国でも複数のダンジョンを有するこの辺境領は有名だ。そして、人族の国で魔族のヴァンパイアが貴族で領主をしている事も。

 だから、ここに闇ギルドの連中が送り込まれても不思議ではないと私は思う」


 バルツさんが種族を言った時、エドゥアルドさんが驚かなかったのはこのヴァルメリオ辺境領の領主がヴァンパイアな事を知っていたからか。

 気になっていた事が分かって少しスッキリした。

 それにしても、複数のダンジョンがあるのってそんなにも凄い利点なんだね。

 まぁ、冒険者さえいれば色んな物を手に入れられるし。

 魔物を倒す事で入手出来る魔晶核、ダンジョンから採取出来る魔石や魔宝石等は庶民の生活にまで浸透している魔道具の動力源だし。

 魔物からドロップする素材は魔道具や武器など色んな物の素材になる。

 そう考えるとダンジョンが一つあるだけで経済効果はすごいのかもしれない。

 という事はダンジョンでの採取や討伐は一次産業になるのか。

 農業、漁業、鉱業、林業、狩猟業と同じな訳でそりゃあ重要視されるよね。

 私が一人で納得している間に、ドワーフの男性と犬系獣人の男性も目を覚ましていた。

 彼らも一瞬取り乱しかけたがエドゥアルドさんが声をかけた事で直ぐに落ち着く。

 その後、私達は先程同じように自己紹介をした。


「助けてくれてありがとだの。あの首輪のせいでずっと苦しめられていたんだの。わしの名前はボーダル・ドンペルト。よろしくなんだの」

「俺も礼を言う。ありがとな。俺はダレル・ブリンガス。よろしく頼む」


 語尾が特徴的で焦げ茶の髪に茶色の瞳のドワーフがボーダルさんで、少しぶっきらぼうな口調で灰色の髪と瞳をしているのが犬系獣人のダレルさん。

 二人にも今までの経緯を話し、お互いに情報を擦り合わせていく。

 それにしても、ハーフドラゴニュートの男性は目覚めないな。

 他の三人は気がついたのに起きないのはちょっと心配だ。

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