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お店の準備

 一通り料理をマジックバッグに入れ終わったところで、もう一つの目的を話す。


「明日は王都の春祭りでしょ?」

「はい」

「私達、お店を出すつもりなんだけどヴァイスにも来て欲しいんだ」

「すごい。僕行きたいです!」

「ふふ、それでね、そのお店ではくじ引きを売り物にするんだけどヴァイスの賞品は決まってるの」

「くじ引きですか? あと、決まってるって?」


 うん、一気に話し過ぎたね。

 私は、アーテル達の時と同じ様にくじと箱を出してヴァイスに引いてもらう。

 ヴァイスが引いたくじを開くとアタリと書いてあった。

 あら、ヴァイスも運が良いタイプなのか。

 うちの子達、すご過ぎでは?

 アタリの賞品としてキャラメルを渡してから続きを話す。


「実はね、ダンジョンに挑戦した時に魔物の卵を三つ持って帰れたんだ。それでね、その内の一つをヴァイスにプレゼントしようと思って」

「えっ、魔物の卵って従魔にできるダンジョン産の珍しい物ですよね? やったー! 嬉しいです!」

「うん。けど、ここで渡したらどうやって手に入れたのかってお父様達に聞かれるし不思議がられるでしょ?」

「あっ。そうですね」


 ヴァイスはそれを聞いてシュンとなる。


「だから、私達が春祭りでお店を出してそこの景品に魔物の卵を入れようと思うの。それをヴァイスが当てたら、ちゃんと理由がある上で魔物の卵をヴァイスの物に出来るからね」

「姉上、すごいです! それなら父上も納得しますね!」


 私は地図を取り出してお店を出す場所をヴァイスに教える。


「もしかして、私達のことがあったから春祭りに行くのは難しい?」

「いえ、大丈夫だと思います。一昨日の夜に父上が春祭りに行きたい? って聞いてくれていたので。その時は断ったけどやっぱり行きたいって言ったら連れて行ってくれるはずです」

「そっか。良かった」


 そこからは細かな打ち合わせをしていった。


「魔物の卵、楽しみだな!」

「ぼくも楽しみ!」

「契約はお父様に頼めばしてもらえると思うから安心して」

「父上に?」


 誘拐される少し前に知ったんだけど、お父様は契約魔法スキルを持っていたんだ。

 だから、私の契約魔法スキルはお父様から遺伝したものみたい。


「お父様は契約魔法スキルを持っているからね」

「知りませんでした」

「ぼくも知らなかった」

「二人はお父様とほとんど話せなかったから知らなくても無理はないよ。アーテル、色々と終わって家に帰れたらお父様に目一杯甘えようね」

「うん!」


 そこからリリーを含めた四人で雑談をして楽しい時間を過ごした。


「そろそろ、私達は行くね」

「明日、会えますよね?」

「うん、会えるよ。それに、これからはもっとここに来るつもりだから安心して」

「本当ですか?」

「うん」

「よかった」


 そう呟いたヴァイスを抱きしめる。

 そうすると、アーテルとリリーも加わってきた。

 うっ! 可愛い!


「大丈夫だよ。ぼくも姉さまと一緒に会いに来るから」

「だいじょうぶだよー」

「ふふっ、アーテル、リリーちゃん、ありがとう」


 いや、可愛すぎませんか?

 姉の欲目を引いても可愛いと思う。

 私達はヴァイスにさよならを言ってから、時空間魔法で転移してオーアスの宿に帰った。




 翌朝。

 私達は朝起きたところでバルツさんに声をかけられる。


「帰ってたんだな」

「はい。バルツさんのおかげでゆっくりベッドで眠れました」

「そうか、良かったな。今日も出掛けるのか?」

「ええ、これから出掛けます」

「どこに行くんだ?」


 うーん。そのままを答える訳にはいかないよね。

 セレスタイト王国の春祭りに行く事を言って何かに気づかれる可能性が無いとは言いきれないし。

 まぁ、私達が誰かバルツさんにバレても、今ならしっかり話を聞いてくれるだろうからそこまで困りはしないだろうけど。

 隠せるなら隠しておくべきだと思ってる。

 そう考えている間にアーテルが話し始めてしまった。


「王都の春祭りに行くんだよ!」

「王都の春祭り? ネフライト王国の事じゃないよな? この国の王都には春祭りなんて無いし」

「えっと……」

「どうした? 時空間魔法を使えるのは知っているから話しても困らないだろ?」

「……そうですね。セレスタイト王国の王都で行われる春祭りに行くつもりなんです」


 私がそう言うとそういう事かとバルツさんが頷く。


「ふっ、楽しそうだな」

「うん、とっても楽しみ! しかも、僕達でお店をするんだよ!」

「店を?」

「はい。色々な事に挑戦しようと思ってお店をする事にしたんです」


 それを聞いてバルツさんは考え込み始める。

 うん? 何か気になる事があったのかな?


「俺も一緒に行っていいか?」

「えっ」

「うん、いいよ! 姉さま、いいよね?」

「いや、その、お仕事の方は大丈夫なんですか?」

「ああ、そっちは気にしなくていい」


 そうですか。

 どうしようかな。


「私達はお店をするんですが、その間はどうしますか?」

「わざわざ連れて行ってもらうんだからな。それぐらいは手伝うぞ」

「分かりました。それじゃあ、一緒に行きましょうか」

「よっしゃ! 実はリア達がどんな店をやるのか気になり過ぎてな」


 ふふ、なんだかバルツさんが子どもに見えるよ。

 いつも余裕な大人なのにこんな一面もあるんだね。

 どんなお店をするのか気になるからついて行きたいって言われるとは思わなかった。

 私はバルツさんに色々あって自分達には偽装魔法をかける事を伝えた。

 もしかしたら、これで少し気づかれてしまうかもしれないけど仕方ないよね。

 ヴァイスには、私達だと分かるように小さくて隠しやすい魔道具を渡してある。

 準備が終わるとバルツさんを含めた四人で宿からセレスタイト王国王都の裏路地に転移した。

 ちなみに、バルツさんにも偽装魔法をかけてある。

 事前に知らせずに他国の辺境伯が王都にいるって問題になりそうだからね。


「何度か転移した事はあるがやっぱり便利だな」

「ですよね。私もそう思います」


 私達は商人ギルドへ向かいそこで出店を組み立てるセットを借りる。

 借りた後は、私達が出店するスペースに行ってバルツさんと一緒に出店を組み立て始めた。


「ありがとうございます」

「いや、俺がいなくても組み立てられただろ。まっ、少しでも役に立てて良かったわ」

「いえ、すごく助かりましたし、いてくれるだけで安心してお店をする事ができますから。ふふ、今日はよろしくお願いします」

「おう、よろしくな。俺に出来る事はなんでも言ってくれ」


 バルツさんのおかげであっという間に出店を組み立てる事が出来た。

 次はくじの箱と賞品を並べていく。

 一応、賞品の周りには結界魔法を張っておいた。

 よし、これで準備完了。

 後はヴァイスとお客さんが来るのを待つだけだね。

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