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ダンジョン「オーア」攻略編 八 (三十階、予想外のダンジョンボス)

 今回もアーテル達に開けさせてくれるらしい。

 わくわくしながらアーテルとリリーが宝箱を開けると、中に上級治癒ポーションが入っていた。


「おっ、上級治癒ポーションか。良かったな。持ってないんだろ?」

「えっと、そうですね」

「あれ? バルツさん、姉さまは前から上級治癒ポーションを持ってるよ」

「アール?!」


 バルツさん達、三人の視線が集まる。


「買ってたのか?」

「えーっと」

「買ったやつじゃないよ。姉さまが作ったの! すごいでしょ!」

「まさか、上級まで作れるのか?」

「……はい」


 私の返事を聞いて、三人ともすごく驚いていた。

 そうだよね。

 上級のポーションを作れる人は少ないらしいから。

 私は称号のおかげで調合スキルのレベルが上がっているし、元々素質があったみたいですぐに作れた。

 それに作るのが大変なのにはもう一つ理由があって、材料を手に入れるのが難しいんだ。

 けれどウーアシュプルング大樹海の中層で暮らしていたら、上級の材料は結構簡単に集まる。

 材料が揃うと作りたくなっちゃうよね!

 なので、マジックドロワーの中には上級までの治癒ポーションが揃っているんだ。


「能力が高くて色々と出来るのは知っていたが。まさか、薬、しかも魔法薬の上級まで作れるとはな」

「秘密にしてもらえますか?」

「頼まれなくても秘密にするぞ? その若さでこんなにも能力が高いなんて、色んな意味で狙ってくれって言っているようなもんだからな。誰にも言えねぇし言うつもりもない」


 やっぱり色んな意味で狙われるのね。

 アーテルが口を滑らせたのは、誰かに自慢したかったからかな。

 その理由だと嬉しくてあんまり怒れない。

 あと、バルツさん達のことを信用しているってのもあると思う。

 まぁ、それなら仕方ないか。


「まっ、何かあれば助けるから遠慮せずに言ってくれ」

「はい。ありがとうございます」

「自分で作った上級があるなら、それは売っていいかもな。金貨三枚ぐらいで売れるぞ」

「そんなに高いんですか?」

「ええ、作り手が限られている上に材料も入手が難しいものばかりですから。上級は効果も高く重体の人の傷を治せたり、切断された腕や足をくっつける事も出来ますからね。流石に四肢を生やす事までは出来ませんが」


 そういえば、そこまで治せるんだった。

 というか魔法薬ってすごいよね。

 そりゃ、高くなるわ。

 金貨三枚って事は三十万ペル、日本円だと三百万か。

 これはあくまで卸値で、お店に並ぶ時の値段は金貨五枚らしい。

 効果が効果だから仕方ないし分かるけど高いよね。


「そろそろ帰るか」

「そうですね。ボスにAランク相当のオークキングが出てくる事を早く知らせないといけませんから」

「ああ」

「そう考えると二十階入口の到達登録版に登録した所で、一度宿に帰るって決めておいて良かったですねー」

「そうだな。危うければボス部屋に入ってから脱出球を使う事も出来るが、その間に何が起きるか分からん。それに訓練でわざわざ無謀な事をする必要は無いからな」


 へぇ、そういう事を決めていたんだ。

 そりゃ、ダンジョンが変わるとボスも変わったりするから倒せないようなボスになっている可能性もある。

 そういう時に決めておけば、ボスが何かをバルツさん達が調べた後、誰かが挑んでしまう前にそれを教える事ができるもんね。

 考え事をしている間に全員の準備が終わったみたいなので、時空間魔法を使ってダンジョンを出る。


『エスケープ』


 入口に転移すると、すぐにバルツさんがトマスさんに二十階のボスとかの報告をし始めた。

 その間、私はアーテル達とお喋りをして待つ。

 少し経つと、バルツさん達の報告が終わったので宿に帰る。

 宿に着いてからは料理を作ったりして楽しく過ごした。




 朝、カーテンの隙間から差し込んで来た光で目が覚める。


「う〜ん! よく寝た」


 アーテル達を起こして食堂に行くと、バルツさん達が二十階のボスについて話していた。


「二十階のボスにオークキングいる事を確認した。なので、今回の訓練は二十階のボス前までとする。そこに到達したら地上に戻り、一階から再度入ってそこからは繰り返しだな」

「それぞれ自分のペースで構いません。無理は禁物。体調や怪我で厳しくなったらすぐに脱出球を使って戻りましょう」


 報告と注意が終わって食事も済ませたら、またダンジョンへ向かう。

 あっ、もちろん今日もお弁当を渡しておいた。

 昨日と変わらず、皆さんにものすごく喜ばれました。

 ダンジョンの一階に入ると、すぐに転移球を使って二十階ボス部屋奥の到達登録版に転移した。

 そこから、二十一階に降りて探索を始める。


「だんだんと遭遇率が上がったな」

「ええ、魔物の数も種類も増えましたね」

「それでも、前よりは少ない気がしますけどー」


 全員喋りながらどんどん倒して、採掘して、宝箱を開けながら進んでいく。

 十階以降は私達も戦闘に加わっているから、魔物を倒すスピードはすごく早い。

 私達がいなくても早かったけど、私達もそれなり戦えるのでもっと早くなっていた。

 二十五階のセーフティゾーンに着いたら早めのお昼休憩。

 お昼ご飯はアーテルのリクエストでパングラタンを作る。

 今回も上手く出来たので全員に好評だった。


「本当になんでも美味しく作るな」

「喜んでもらえて良かったです」


 そう返せば頭をわしゃわしゃと撫でられた。

 髪型が崩れるのに撫でられる事を嬉しく思う自分がいる。

 休憩が終わって探索再開。

 ペースは早いままなので、どんどん進んでいってついに三十階のボス部屋まで来た。

 アスティさんに聞いたら以前のボスはメタルゴーレムだったらしい。

 メタルゴーレムはAランクだけど、今回は何が出るんだろう?

 Aランクのオークキングが二十階で出たから、それよりも強い魔物かもしれない。


「さー、この部屋のやつを倒したら終わりだな」

「はい」

「今回、思った以上に魔物の数が少ねぇし、二十階にはオークキングがいたからどんな風になっているかわからん。なので、気を引き締めて行くぞ!」

「はい!」


 アーテルの元気な返事が響き渡ったところで、バルツさんがボス部屋の扉を開く。

 全員が中に入るといつも通り入ってきた方の扉が閉まった。

 私達の目の前に現れたのはすごく大きな蛇。


「シュールルル!」

「ちっ、バジリスクか! 厄介だな。リア、アール、リリー、そいつと目を合わせるなよ」

「はい」


 バジリスクってあのバジリスクか。

 バジリスクの眼と合えば即死の呪いで殺されるし、牙には猛毒がある。Aランク以上の冒険者が何人も必要な魔物。

 けど多分、私やアーテル、リリーには効かないと思うんだよね。

 私達が装備しているペンダント型の魔道具は、毒や麻痺、呪いなどを弾く効果があるから。

 実は隠遁生活が始まってから、寝る前とかに治癒魔法を無駄撃ちして属性やスキルのレベルを上げてたんだ。

 なので、光属性と治癒魔法スキルは上限の十レベルにすることができた。

 だから誘拐された時、アーテルに装備させてたやつ以上の魔道具を作れるようになっていて、もしもに備えて予備含めいくつかその魔道具を作ってある。

 私はマジックドロワーから、その作っておいた状態異常を無効化するペンダントを三つ出してバルツさん達に渡した。


「これは?」

「状態異常を無効化出来る魔道具です。多分、バジリスクの呪いや毒も効かなくなります。もし良かったら使ってください」


 私はそれを伝えた後、バジリスクを見つめてみる。

 私の視線に気がついたバジリスクは敵意丸出しでこちらを見てきた。その瞬間、私とバジリスクの目が合うけど死にもしなければ石化もしなかった。


「今、バジリスクの眼を見たんですが、一切効いてないので大丈夫みたいです!」

「リア! お前しれっと危ない事をするな!」


 あっ、思いっきり心配させてしまった。

 いや、色々調べて大丈夫って自信があったんですよ。

 はい、完全に言い訳ですね。


「まぁ、リアのおかげで気にせず戦えるようになったのはありがたい。よし、やるぞ」

「了解でーす。リアちゃんありがとね」

「助かりました。リアさんありがとうございます」

「いえ、お役に立てて良かったです」


 それぞれ得物を取り出して戦闘準備をする。

 整ったところで攻撃開始。

 アーテルに毒を持っているバジリスクと接近戦をさせるのは怖かったので、魔法を使うように言っておいた。


「はーい」

「じゃあ、皆さんのお手伝いを頑張ろっか?」

「うん、頑張る!」

「がんばる!」


 バルツさんやアスティさんが斬りつけていく間を縫って、クラウトさんと一緒に魔法を放つ。

 やっぱり、防御力が高いのかバジリスクはまだまだ元気だ。

 私はオパールの弓輪から弓を出して、バジリスクの眼を狙う。

 動きが激しいから思った以上に難しかったけど、どうにか片眼に矢が刺さった。

 痛みのせいで暴れ出すバジリスク。


「リアちゃんナイス! 効かないって分かっててもあの眼は怖いからさ」

「無理はするなよ」

「はい」


 動きが散漫になってきたバジリスクにいくつもの攻撃が当たっていく。

 徐々に弱ってきたけどまだ時間がかかりそうだな。

 私は一つ試してみたい魔法があったので、バルツさん達に離れて欲しいと伝えた。

 バジリスクの属性は毒と闇。

 闇属性には光属性が有効なんだ。

 なので。


『ホーリーエッジ』


 光属性の刃でバジリスクの首を狙う。

 私の思った通りに魔法は当たって、バジリスクの首を落とした。


「やった!」

「姉さますごい!」

「すごい!」


 可愛い二人に褒められてにやにやしてしまう。

 すると、バルツさん達も近くに来て褒めてくれた。


「あそこまでの威力の魔法をそう簡単に使う事はできないんだが。本当にリアは規格外だな。でも、良くやった!」

「リアちゃん、お疲れ様。すごかったよ。というかリアちゃんはもう完全にAランク以上の実力ですよね」

「そうですね。アスティの言う通り、リアさんはどう考えてもAランク以上でしょう。ふふ、本当にお疲れ様でした」

「皆さんもお疲れ様です。今回は一緒に連れてきてくださってありがとうございました。とっても楽しかったです!」


 お礼を伝えると、こちらこそ色々と助かったと言われた。

 私達が話している間にアーテルとリリーがドロップアイテムを集めてくれていた。

 内容は大量のバジリスクの皮に牙、瓶に入った毒が二つ。

 後はとっても大きな魔晶核が一つあった。

 バジリスクの皮や牙は武器や防具の素材として高値で売れるらしい。

 毒の方は魔法薬や薬の素材として使えるらしいし、売るのはなんだか怖いのでマジックドロワーにしまっておこう。

 ドロップアイテムの回収が終わると、全員で次の部屋に行く。

 この部屋にある到達登録版に魔力を注ぐと、脱出球無しでもダンジョンから出られるみたい。

 さて、残すはこの部屋の真ん中にある宝箱。

 ダンジョン最後のボスを倒した後に出てくる宝箱には、何が入っているんだろう?

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― 新着の感想 ―
[一言] およそ300万円で仕入れたものを500万円で売るって考えるとぼったくり感があるけど盗難対策とかの維持費でそれくらいしますよね
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