ダンジョン「オーア」攻略編 六 (採掘をしよう!)
翌朝。
昨日は楽しかったな。
バルツさん達とダンジョンから帰った後、私は宿で色々と作業をしていた。
魔法薬を作ったり、料理の作り置きをしたりとかね。
クラルテさんに教えて貰ったんだけど、魔物の卵は魔力を注いで契約をしてからじゃないと生まれないらしい。
アーテル達はすぐに新しい仲間を迎えたいみたいだったけど、少し待ってもらう事にした。
色々と考えている事もあるからさ。
なので、魔物の卵は鍵をかけれる箱の中に入れて宿の部屋に置いておく。
私達は夕方より前に宿に帰っていたけど、他の人達は夕方かそれを少し過ぎたぐらいに帰って来てた。
その人達の会話で、お昼ご飯が味気なかったと聞いたので料理の作り置きを作るついでに、皆さんのお弁当を作ったんだ。
お弁当箱はクラルテさんに相談したら用意してくれたのでそれを使った。
せっかく作ったし出かける前に渡さないとね。
食堂に行くともうみんな起きて集まっていた。
ダンジョンには私達が最初に行くから、今のうちに渡した方がいいよね。
「荷物になるかもしれないんですが、もし良かったらお弁当を作ったのでお昼ご飯にどうぞ」
「えっ、いいの?! ありがとう!」
「マジか! 嬉しいー!」
全員にすごく喜ばれて少しびっくり。
そんなにも干し肉とパンだけの食事は味気ないのか。
一度もそういう食事をした事ないから、わかんないんだよね。
一回ぐらいは試してみようかな?
あっ、そうだ! 干し肉もデスパンサーのお肉を使って作った物がある。
調味料も工夫したし、醤油やスイートアントの砂糖を手に入れてから作ったバージョンもあるからそれなら喜ばれるかな?
そう考えて、その干し肉も配っていく。
デスパンサーのお肉、結構な量があったから作り過ぎてるんだよね。
「朝から、リアは何やってるんだ?」
「お弁当を配っているみたいですよ」
「弁当? もしかして、リアが作ったやつか?」
「ええ、誰かがダンジョン探索中の食事が味気ないと言っているのを聞いて、作ってくれたそうです」
やって来たバルツさんにクラルテさんが説明している。
それを聞いて、感心したような呆れたような表情を浮かべるバルツさん。
「リア、それも訓練の一環だからそこまで気にしなくていいんだぞ」
「あっ、もしかして、訓練の邪魔をしてますか?」
「いや、それは大丈夫だ。本人達も喜んでるし、士気も上がるからな。ただ、無理をしてないか心配してるんだ」
「好きでしているので大丈夫ですよ」
そう答えると「そうか」とバルツさんは頷きながら私の頭を撫でた。
やっぱり、バルツさんって優しいよね。
時々、ドキドキしたりときめいてる自分がいる。
「バルツ様、リアちゃんに余計な事言わないでくださいよー」
「そうですよ! せっかくリアちゃんの美味しい弁当を貰えたのに、貰えなくなったらどうするんですか!」
「そうだ、そうだー!」
バルツさんの言ったことを聞いて、皆さんが苦情を言い始めた。
「うるせぇ。お前ら、今までは干し肉とパンで我慢してただろうが! あんまりリアに迷惑をかけんな!」
「昨日のお昼ご飯、リアちゃんの料理を食べた人に言われたくねぇー!」
「そうだ、そうだー!」
し、収拾がつかない。
これはどうしたらいいんだろう?
そう考えて周りを見回せば、クラルテさんと目が合った。
「あれ、止めなくてもいいんですか?」
「ほっといて大丈夫ですよ。うちの上司は威厳がほとんど無いので、あんな風によく部下とじゃれ合っているんです」
い、威厳がほとんどないって……。
そんなことないと思うけど。
あれだね、部下と気心知れた仲って事だと思えばいいか。
うん、掘り下げないぞ。
食堂で朝ごはんを食べ終わったら、すぐにバルツさん達とダンジョンへ向かった。
入場料を払い一階に降りてから、転移球を使って十階の到達登録版の前に転移する。
「ここからは、誰も入ってないから気をつけろよ」
「はい」
「はーい!」
十一階に降りて探索を始める。
魔物の数は十階やその前と変わらない気がするな。
時々見つかる宝箱や採掘ポイントで採掘をしながら進んでいく。
一階から十階は早く進む為に、採掘ポイントがあってもほとんど採掘はしなかった。
けれど、ここからは何が出るかも調査の一環なので採掘も積極的にしていく。
私達にもピッケルとかの採掘道具を、クラルテさんが渡してくれたので一緒にやってみることにした。
「これは、魔石ですか?」
「ええ、魔石ですね。以前も十一階より下では貴重な鉱石や宝石がよく出るようになるので、楽しいと思いますよ」
「そうなんですね。今のところ、初めてなので何が出ても楽しいです」
「ふふ、それは良かった」
本当に採掘が楽しい。
初めてはワクワクするよね。
宝箱を見つけたり、開けるのも楽しかったし!
「姉さま、クラルテさん、これはなーに?」
アーテルが持ってきたのは、黄色の結晶が見える塊だった。
「これは……魔宝石ですね。しかも高価な物です」
「そうなんですか?」
「ええ、魔宝石とは宝石の中でも魔力を多く含んでいたり、多くの魔力を入れることが出来る物を指します」
「はい」
だから、魔宝石は身分の高い人の身を守る装飾品兼魔道具に使われたりするんだよね。
「魔宝石の価値は、魔宝石の元になっている宝石で変わります。この魔宝石はトパーズが元になっているので高価な部類に入るんですよ」
「アール、すごいのを掘り当てたね」
「ふふ〜ん! 姉さまは嬉しい?」
そこで私に聞くのか!
可愛すぎでは?!
「もちろん嬉しいよ!」
「そっかー! 良かった!」
「よかった!」
アーテルとリリーの頭を撫でまくる。
なんでうちの子はこんなにも可愛いんですかね!
元からですね!
ちなみに、魔石は魔宝石と違って不透明だから分かりやすい。
ただ、不透明な種類の宝石を元にした魔宝石もあるから、一応鑑定したり調べたりするけどね。
気になって鑑定記録を調べたら、メラン様の映像を映した魔道具やマジックハウスの宝玉型の魔宝石の元になった宝石は水晶だった。
うん、あの大きさの宝石はそうだよね。
ダイヤモンドやエメラルド、サファイアにルビーとかの宝石があの大きさだったら嬉しいより怖い。
って、思ったんだけどダンジョンとかから稀に、ごくごく稀にそのサイズの宝石や魔宝石が出ることもあるらしい。
流石、異世界。そして、流石、ダンジョン。
前世だと余裕でニュースになる国宝レベルだよね。
まぁ、こっちの世界でも国宝レベルなのは変わりないけど。
バルツさん達と採掘をしたり、宝箱を見つけたりしながらどんどん進んでいく。
今のところ宝箱の中身は普通だ。
下級の治癒ポーションとか、魔法武器とかじゃない普通の武器とかだった。
十五階のセーフティゾーンに着くと、そこでお昼休憩になった。




