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治癒魔法と教える条件

 練習場に着くとお父様が魔力を注いで、結界魔法の魔道具を起動させていた。


「これは素晴らしい品ですね」

「おっ、サージュ君分かるのかい?」

「ええ、治癒士と言いましたがこちらの方も嗜んでいまして」

「へぇ、多才だね。これはそれこそ御先祖様であるメラン公爵夫人が作った品なんだよ。ダンジョンから得られる魔道具にも劣らない能力がある。作ろうにも並の魔道具師では無理な品だと思うよ」

「ええ、ここまでの品は本当になかなか見られませんよ」


 お父様とサージュさんが魔道具の話で盛り上がっちゃってるや。

 それにしてもそんなにすごい魔道具なんだ。

 メラン公爵夫人ってアウイナイト公爵家初代様の奥様だよね。

 確かエレメンタルエルフっていう特殊で稀な種族でお父さんが闇の精霊、お母さんがエルフだったはず。

 今のところ先祖返りでエレメンタルエルフが生まれたことは無いから、今までいた先祖返りや私、これから生まれるであろうアーテルはメラン公爵夫人の両親とかの先祖返りなんだろう。

 ちなみにメラン公爵夫人はご存命。初代様が亡くなった後、アウイナイト公爵家の当主が何度代替わりしても留まって色々とその代の当主を助けたりしてくれてたけど、もう大丈夫だろうって所で旅に出たらしい。

 時々、今の当主にお手紙とお土産が届くんだって。


「じゃあ、そろそろ始めよっか?」

「はい!」


 レルスさんそう話しかけられた。

 よし! 大っぴらに魔法使えるのワクワクする!


「それじゃあまず使える属性を教えて欲しいな」

「基礎属性全てと特殊属性四つです」

「おー、流石先祖返り多いね。それにしても基礎属性全部はまだエルフでもいるけど、特殊属性四つはすごいな」

「ええ、本当に凄いですね。マグノリア様、他にスキルで魔法関係はありますか?」


 いつの間にかお父様との魔道具談義を終わらせていたサージュさんに質問される。

 うーん、どこまで言っていいのかな。本当は時空間魔法の事も教えて欲しいけど、第六感的な部分が伏せといた方が良いんじゃない? って訴えかけてくるんだよね。こういう時はその感覚に従うが吉って事で隠蔽してない精霊魔法と契約魔法、少し前に隠蔽から外した魔力操作を言っておこう。


「精霊魔法と契約魔法、それと魔力操作スキルがあります」

「うん? ちょっと待って欲しいな。マグノリア、いつから魔力操作スキルを持ったのかな?」

「最近です」

「じゃあ、スキルレベルは?」

「えっ! さ、最近だからまだ一ですよ」


 お父様、察しが良すぎでは?

 誤魔化したけど多分バレてる。


「嘘は良くないね。本当はいくつ?」

「六です」


 あー、バレちゃった。怒られるよね。


「やっぱり。私達に隠れて魔法を使っていたね。ふぅ、ダメとは言わないからこれからは私か誰か大人が居るところでしなさい」

「はい。お父様ごめんなさい。でも、魔法も使ったけれど、本に書いてあった魔法を使わない安全な方法で大部分のレベルを上げたんです。まぁ、言い訳なのだけれど一応その点は安心してください」


 これは事実だ。魔法も使ってたけどそれだけじゃ魔力操作のレベルは上がらなかった。元々レベル五だったからね。そこで本で読んだ身体の魔力を移動させる方法を使ったら一つレベルが上がって六になったんだよね。


「ほう、それなら少しは安心したよ。それでも魔法をマグノリアの歳で保護者無しに使うのは危ない。だからきちんと約束は守りなさい」

「はい」

「中断させてすまないね。続けてもらえるかい?」

「はい。まぁ、魔法を使いたくなっちゃう気持ちは分かるよ! しかもこっそりってのが楽しいんだよなー」

「ごほん、レルス。今、リエール様が注意をなさったばかりなのに何を言っているのですか?」


 うわ、サージュさんの声と微笑みが怖い。この感じで怒られるのはめちゃくちゃ効きそうだ。


「あーあ、レルスのやつ素がすげぇ出始めたな」

「あいつはたまに思いっきり墓穴を掘る。ご当主が注意をしたばかりなのに何をやってるんだか」

「くくっ、仕方ないッスよ。それがレルスなんスから。まぁ、お嬢のご要望どうり砕けた感じになったんだからいいんじゃないっスか?」

「砕けてはいるがそれ以上にサージュに怒られる要因を作ってるぞ。これでは先生とは言えないだろう」

「まぁ、それがレルスらしさって事で俺達は巻き込まれないようにしようぜー」

「そうッスね」


 他のパーティーメンバーがコソコソと話している内容が酷い。けど、少し笑ってしまった。

 ふふ、こっちの姿が素に近いのか。サージュさんに怒られてるけどこの方がやっぱり話しやすくて良いね。あと、フォローはすごく嬉しかった。


「リエール様、申し訳ありません」

「いや、ふっ、構わないよ。君がレルス君に注意をしているし、正直に言えば私も分からなくはないから。ただ、親としてはそれを勧めることは出来ないだけでね」

「リエール様、すみません」

「サージュ君に怒られたようだし、私から怒ることはないよ。ただ、マグノリアにあまり悪い事を教えたりはしないように」

「は、はい。気をつけます」


 レルスさんシュンとしちゃった。

 大丈夫だよ、お父様はねちっこく怒ったりしないし、というかさほど怒ってないから!


「さて、まずは何からやりましょうか?

 リエール様は特にこれを教えて欲しいなどのご要望はありますか?」

「うーん。そうだね、何かあった時に必ず役に立つであろう治癒魔法は使えるようになって欲しいとは思うかな。ただ一番はマグノリアのやりたいもので良いと考えているけどね」

「分かりました。では、マグノリア様は何を覚えたいや使いたいと考えていらっしゃいますか?」


 難しいな。多分、精霊魔法や契約魔法は後回しでもいいと思うんだよね。だったらやっぱりお父様の言うように治癒魔法が使えた方が良さそう。

 これから起きる事を考えると怪我や病気を治せるのは助かるし大切だと思うからね。


「私も治癒魔法を教えて頂きたいです」

「リエール様と同意見という事ですね。分かりました。それならば治癒魔法から始めていきましょうか」

「じゃあ、俺は一旦見学だな」

「ええ、私に任せて頂きましょう」


 サージュさんの返事を聞いた後、レルスさんは他のパーティーメンバーの方に行った。そこでさっきの事をからかわれているようだ。

 もしかして結構ないじられキャラなのかな?


「ではまず、治癒魔法についての説明をしましょうか。

 治癒魔法とは身体の怪我や病気を治せる魔法です。ただし、病気は治せるものが限られておりこちらはポーションなどの魔法薬や普通の薬、または自己治癒能力で治すことのほうが主だったりします。また、その方が治癒魔法よりも効果的な事もあったりしますね。

 ちなみに怪我も魔法薬で治せるのでその時の状況に合わせて使い分けましょう」

「はい!」


 あっちでわちゃわちゃしてるのが面白そうで気になるけど、勉強に集中しないとね。

 それにしても、思ったほど治癒魔法って万能ではないんだ。


「次に、治癒魔法は光属性を持っていれば使えますが、治癒魔法というスキルもあります。

 治癒魔法スキルを持っている方は光属性を持っているので光属性がある事が治癒魔法を使うにあたって重要だと言えるでしょう」

「はい、質問です!」


 気になる事があったので手を挙げて質問をする。


「はい、マグノリア様どうなさいました?」

「光属性を持っていれば治癒魔法が使えるようですが、では治癒魔法スキルはどういう効果があるのですか?」

「いい質問ですね。では、属性と重複したスキルの効果をお教えしましょう。

 そこまで難しい話ではなく、簡単に言えば威力や効果の強化、また消費魔力の減少などですね。

 また、そのスキルが無ければ使えない魔法や能力もあったりしますから、そこが属性と重複したスキルの特化した部分だと言えるでしょう。

 後は、治癒魔法に限らず、例えば雷属性を持った上で雷魔法のスキルを持っている方もいらっしゃったりします」

「よく分かりました! ありがとうございます」


 じゃあここで治癒魔法を練習して、治癒魔法スキルを取得したらもっと良いんだ。称号の効果でスキル取得しやすいみたいだし頑張ろっと。


「それでは実践に移りましょうか」

「はい!」

「では、エルンストこちらに来て頂けますか?」

「おう、俺は何すりゃいいんだ?」


 あれ? なんでエルンストさんを呼んだんだろう?


「貴方、最近怪我した所を放置したままでしたよね? そこの治癒を私とマグノリア様でやりましょうか」

「おー、そういう事か。ちっちぇ傷だけどまだ治ってねぇな」

「本来なら私が早々に治しますが、本人がこのように気にしてない上に、小さな傷ならば身体本来の力で治すのもいい事なので今回は放置していたのです」

「そうだったんですね。しかし実践とお聞きしてましたがまさか最初から人に対してだとは思っていませんでした」


 私がやって大丈夫なのかな? とても不安なんだけど。

 不安な気持ちが表情に出ていたのか、エルンストさんから声をかけられた。


「嬢ちゃん、心配しなくていいぜ。この手の事にさほど詳しくはねぇが治癒魔法は失敗しても不発なだけで危なくはねぇはずだ」

「ええ、その通りです。失敗しても怪我が悪化したり、悪影響を及ぼすなどということは無いので安心してください」

「分かりました」


 私の返事を聞いた後、サージュさんはエルンストさんに声をかけて怪我をしている腕を見えやすくするように指示を出していた。


「それではまずお手本としていくつかある傷のうちの一つを私が治してみましょう。よく見ていてくださいね」

「はい」

「治す部分に集中して、身体の中で魔力を練り、後は呪文を唱えます。それでは『ヒール』」


 するとあっという間にエルンストさんの腕にあった傷の一つが治った。やっぱり魔法ってすごい!

 次は私の番か。緊張するなぁ。


「では、心の準備が出来たところでヒールを使ってみてください」

「分かりました。では『ヒール』」


 私が呪文を唱えるとエルンストさんの全身が光った。

 えっ、あれ、さっきサージュさんが使った時は傷のところしか光らなかったのになんで?


「おっ、腕の傷はもちろん治ってるし最近少しだけあった膝の違和感が消えてるぞ」

「まさか普通のヒールでこの広範囲を治すとは素晴らしいですね。マグノリア様は今何を考えながらヒールをお使いになられましたか?」


 えーと、悪い所治れ! って考えながら使ってたけどもしかしてそのせい?


「エルンストさんの傷や悪い所が治りますようにって考えながら使いました」

「ああ、そういう事ですか。

 魔法とは想像力です。なのでマグノリア様の考え方で魔法をかけると範囲が腕だけではなく全身になったのですね」

「すまない、少しいいかな? 私はさほど治癒魔法に詳しくないのだけれど、それは良い事なのかな?」


 お父様がサージュさんに問いかけた。

 私もそれを考えてたんだよね。うーん。一気に治るなら良いことな気もするけれど、どうなんだろう?


「そうですね。一概には良い事だとも言い難いと思います。もちろん悪い事とも言えないのですが。メリットは分かりやすくヒールで治せる程度の怪我ならその全てを治せる所。デメリットは普通のヒールを使うよりも消費する魔力量が多い事。また、総魔力量が少ない方には不向きな方法だという事ぐらいでしょうか?」

「ふむ、マグノリアの場合はさほどデメリット要素を気にしなくてもよさそうだね」

「そうですね。私は総魔力量が多い方ですし、先程魔法を使った時も多くの魔力を消費した様には感じませんでした」


 私がそう言うとサージュさんは考え込み始めた。

 正直なところ、本当に多くの魔力を消費した様には感じなかった。他にも色々な魔法を隠れて使ったけれど、その時と同じかほんの少しだけ多かったぐらいにしか思えないんだよね。


「マグノリア様、属性レベルまでお聞きしていいのか分かりませんが、もしお答え頂けるなら光属性のレベルはお幾つですか?」

「えっと、ステータスを初めて見た時から今でもレベル七です」

「やはり、そういう事ですか。思ったよりも魔力を消費なさらなかったのは、属性レベルが高い事と魔力操作スキルのレベルも高いからでしょう」


 そっか。属性レベルが高ければ効果は上がるし消費魔力は減るんだった。その上、魔力操作も同じように魔法の効果を上げるし余計な魔力を使わないで済むんだよね。

 何だかんだで実践授業は進み、次にサージュさんはとある魔道具を取り出した。


「こちらは魔法が正確に発動されているかを試す魔道具です。主に先程実践した治癒魔法やバフ、デバフなどの魔法を練習する時に使います」

「えっ、な、なぜそれがあるのに最初から人に対しての実践だったのですか?」

「マグノリア様であれば成功するだろうと考えた事と、依頼を受ける時に条件としてつけた教えられるかどうかの判断材料にする為にそうさせて頂きました」


 あー、そういう事だったんだ。教えられるかどうかの判断としてって事はここで躊躇ったり、嫌がったら教えて貰えなかったんだね。頑張ってよかった。


「そういう事だったのですね。では、私は今後も教えて頂けるのでしょうか?」

「ええ、もちろんです。やはり私達は冒険者ですのでいざという時の度胸を重視してしまうのです。それは貴族の方も同じなのではと考えあの様な条件にさせて頂きました。試すような事をしてしまい申し訳ありません」

「いえ、構いません。たとえ治癒魔法が使えてもいざ怪我人を前にした時に使えなければ意味が無いですものね。

 それにその様子だとお父様もグルでしょう? 最初にお父様が治癒魔法を勧めた時点で仕組まれていたのでは?」


 多分、この予想は当たってる。だって今私がそう言ったらお父様笑ってるもん。私ならお父様が勧める通りに治癒魔法を選ぶって思われてて、実際その通りだったって訳だ。ちょっと悔しいぞ!


「ふふ、ごめんね。まぁ、私達にもいざという時があるから、今それを出来るかどうか試しても悪くは無いと考えたんだよ」

「ええ、分かっています」

「何より、マグノリアなら出来ると考えていたからね。予想通り出来たんだから良かった。流石はトゥイーディアの娘だ」


 ここでお母様の名前を出すところがお父様らしいよね。普通そこは「流石は俺の娘だ」って言うところじゃない? 前提としてお父様は俺って言わないけど。


「それでは、こちらの魔道具でキュアの魔法の練習をしましょうか。キュア系は治癒魔法の中で状態異常などを治す魔法です。一番簡単なキュアでは軽度の毒や麻痺を治せます。では『キュア』」


 サージュさんがキュアを発動させると、人型をした人形みたいな魔道具の全体が青白く光った。これはお手本な訳だし成功だよね。


「このように青白く光れば成功、赤く光ると失敗です。それではマグノリア様、キュアをこの魔道具に向かって使ってみてください」

「はい」


 さっき人相手に使ったからか今度は殆ど緊張しないね。でも気を抜かずに頑張ろ。


「それでは『キュア』」


 私が呪文を唱えると、サージュさんと同じように魔道具が青白く光った。よし! 成功だ。


「一回でヒールもキュアも成功とは素晴らしいですね。それでは今日はこの二つを繰り返し練習してみましょうか?」

「はい! よろしくお願い致します」


 この日はヒールとキュアの練習で一日が終わった。

 レルスさん達のパーティーは私が条件を満たしていたので、学院に入学するか教える事が無くなるまで我が家に滞在していてくれるらしい。

 だから明日も頑張るぞ!

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