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ダンジョン「オーア」攻略編 四 (隠し部屋と宝箱)

 セーフティゾーンに入るとバルツさんに話しかけられた。


「リア、昼メシも頼んでいいか?」

「いいですよ! 少し待っていてくださいねー」

「ああ、ありがとな」


 そう言って私の頭を撫でてから離れていった。

 うん、もうこれは癖なんだと思っておこう。


「さて、何にしようかな?」


 今までお肉ばかりでお魚を出したことないよね。

 あっ、でも天丼は海老だった。

 けど、私は海老は海鮮であってお魚じゃないしお魚を食べたいので、お魚にしまーす!

 お魚ー、おさかなー、おっさかなー、何があったかなー?

 そうだ、鰆の煮付けを作ってたな。

 マジックドロワーに入れてるから温かいままだし、ご飯やお味噌汁だってある。

 がっつり和食になるけど大丈夫だよね?

 ついでにちょっと面白いことを思いついたので実行する。

 私はマジックドロワーから鰆の煮付けやご飯、お味噌汁とほうれん草のおひたし、もう一つの料理を出して一人前づつに盛り付けていく。

 お昼ご飯の準備が終わったところで、みんなを呼んだ。


「おおー、美味そうー!」

「今回はお魚なのですね。リアさんありがとうございます」

「リアちゃんありがとねー」


 アスティさんとクラルテさんが先に来て、料理を見て美味しそうだと喜んでくれた。

 後から、バルツさんもこちらに来る。


「リア、ありがとな。それにしても、毎回見た目からして美味そうな料理を作るよな。しかも、ちゃんと美味いんだからすげぇわ」

「ふふ、ありがとうございます。けど、そんなに褒められても何も出ませんよ」



 と言いつつ、何か足せるおかずがあったかなと考える。

 そうだ、帆立の貝柱を味噌漬けにしたやつを作ってたな。

 お酒のアテになりそうなやつだけど、ご飯にも合うよね。

 私はマジックドロワーから帆立の貝柱の味噌漬けを出して、盛り付けみんなのところに置いていく。


「ん? 何も出ないって言ってたのに、これどうしたんだ?」

「何も出ないと思ってたんですが、出てきました」

「くくっ、リアは本当に面白くて可愛いな」


 バルツさんは笑いながら、また私の頭を撫でる。

 可愛いって言われた!

 バルツさんにそう言われるとすごく嬉しい。

 余裕があって優しくてかっこいい、しかも最初にあった時からタイプだと思った人だからすぐ好きになりそう。

 でも、隠遁生活中で恋をしてる場合じゃないから気をつけないと。


「それじゃあ、いただきます」

「いただきます」


 全員で声を合わせていただきますをする。

 そういえば、この世界にもいただきますを言う文化があったんだ。

 これは、原作でも言っていたからその影響なのかな?

 なんて事を考えながら、お味噌汁を一口。

 やっぱり、ほっとする味ですね。

 次は、煮付けを食べる。

 鰆の旨味に甘辛い味がよく合うなぁ。ご飯がススムね!

 箸休めにおひたしを食べて、帆立の貝柱の味噌漬けも食べる。

 う〜ん、これもご飯に合う。

 周りを見ると、みんな夢中で食べていた。

 あっ、バルツさん達もお箸が使えるんだよ。

 煮付けはお箸の方が食べやすいので、どうするか聞いてみたら翡翠国に一時期滞在してた事があるから使えるんだって。

 ついに、面白いと思いついて出した一品にバルツさんが手を伸ばした。


「うん? これはプリンか?」

「ふふ、食べてみてください」


 皆さんはお分かりでしょう。プリンに似た和食のおかずといえば?

 そう、茶碗蒸しです。


「おっ、プリンとは味が違うぞ。これはおかずだな?」

「はい、見た目は似ていますが別物です。プリンは甘いお菓子で、これは茶碗蒸しというおかずですね。今日プリンを出したばかりなので、面白いかなと思って出してみました」

「驚いたがこれも美味いな」


 アスティさんとクラルテさんも驚きつつ食べていた。


「茶碗蒸しもおいしいね!」

「おいちいね!」


 アーテルやリリーにも好評だし、また作ろうかな。

 茶碗蒸しって美味しいよね!

 全員が食べ終わったので、食休みを挟んでから探索再開。

 あっという間に十階の奥に着いた。

 ダンジョンの十階や二十階などの階には、次の階や層の前にボス部屋がある。

 このダンジョン「オーア」にもあるし、今回変わってからは十階のボスを誰も倒してないらしい。


「緊張するほど危ない可能性は低いが、注意はしておくように」

「はい」

「じゃあ、行くぞ」


 バルツさんがボス部屋の扉に触れると、ゆっくりと開いていく。

 全員が中に入ったところで、ボスが現れた。

 出てきたのは、ゴブリンソルジャーやゴブリンアーチャー、ゴブリンメイジを含むゴブリンの群れだった。


「おー、前より増えたか?」

「メイジやアーチャーの数が多いですね」

「ボスって言っても一体の強い魔物ってわけじゃないんですね」

「うん、まだ浅い所だと普通にダンジョン内で出てくる魔物の群れがボスってのはよくあるね」


 そうなんだ。

 今回、私達は初めてなので援護にまわる。

 主に戦うのは、アスティさんとクラルテさんだ。

 どちらも戦っているのを見るのは初めてだな。

 アスティさんは背中に背負っていた双剣を手にして、軽やかにゴブリンを斬り捨てて倒していく。

 クラルテさんは、氷属性の魔法で凍りつかせて砕く。

 一瞬で凍りつくのは圧巻だ。

 私とアーテルは弓や魔法で何体かを倒して、あっという間に戦闘が終わった。

 アスティさんとクラルテさんもかっこよかったな。


「アスティさんもクラルテさんもすごいね!」


 キラキラした瞳で二人に駆け寄り、褒め倒すアーテル。

 二人とも素直な感想で褒められて嬉しそうだ。


「アールくん、ありがとね」

「アールさん、ありがとうございます。こうも素直に褒められると照れてしまいますね」


 やっぱり、うちの弟は可愛い!

 私達が入って来た扉とは反対側の扉が開く。

 その奥に小部屋があり、そこにも到達登録版があった。

 小部屋には宝箱もあってアスティさんが罠などを確認してから開ける。

 中に入っていたのは下級治癒ポーション。

 道中の宝箱にも入っていたから、ボスを倒した後の宝箱にしては期待はずれに思えちゃうな。


「ボス部屋後の宝箱にしてはしけてますねー。まぁ、そんな事もあるか」


 アスティさんはそう呟きながら、マジックバッグにポーションをしまう。

 やっぱりそう思いますよね。

 アーテルとリリーは小部屋の中を探検していて、何かを見つけたのか私の手を引っ張る。


「姉さま、ここ変だよ。闇属性の魔法でかくれんぼしてる」

「へんだよー」


 二人に指摘されたところを探してみると、言う通り闇属性の魔法で偽装されていた。なので、光属性の魔法でそれを打ち消す。

 偽装が解けると、そこに魔宝石が現れた。

 すぐにバルツさん達を呼んで、成り行きを話す。


「また、面白いもんを見つけたな」

「こういう仕掛けってよくあるんですか?」

「いえ、珍しいです。全くないとは言えませんが、十階ボスの後に出てくる仕掛けとしてはほぼ無いですね」


 魔宝石に魔力を注いでいいか聞くと三人に頷かれたので実行する。

 すると、魔宝石が光ってその魔宝石が埋め込まれた壁が動き始めた。


「隠し部屋か。前回は無かった。リア、アール、リリー、お手柄だぞ!」


 バルツさんに褒められて嬉しそうな二人。

 うん、私も嬉しい。

 壁の動きが止まったので中に入る。

 その部屋の中央に宝箱が二つあった。


「おー、さっきはしけてたけどこれは期待できそうですねー」

「隠し部屋の中にある宝箱まで期待はずれって事はないだろうからな」

「そうですね。アスティお願いします」

「はーい、よっと」


 アスティさんが一つ目の宝箱に罠などが無いかを確認する。


「異常なし。開けても大丈夫ですよー。そうだ! この隠し部屋はリアちゃん達が見つけたから、リアちゃん達で宝箱を開けてみる?」

「いいんですか?」

「おー、いいぞ、開けてみろ。宝箱の中身の権利もリアやアール達のものだ」


 おおー、それは嬉しい。

 道中の宝箱はほとんどをアスティさんが見つけていて、残念ながら私達は一度も見つけられなかったんだ。

 だから、初宝箱だし初めて自分達で開けれる。

 これは楽しみだよね。


「姉さま、開けよー!」

「あけよー!」

「うん、開けてみようか」


 二人と一緒に一つ目の宝箱を開けると、そこには大きな卵が三つ入っていた。


「これは、魔物の卵ですね。十階で見つかる事はまず無い珍しい物なのに、それが三つもあるなんて驚きました」

「リアは契約魔法を使えるって言ってたから、魔物の卵なら従魔にできるな」

「本当に貰ってもいいんですか?」

「ああ、俺達じゃギルドに売るしか使い道がない。さっきも言ったが、この部屋を見つけたのはお前さん達だから、気にせず貰っていいぞ」

「はい! ありがとうございます!」

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― 新着の感想 ―
[一言] いつも楽しく拝読しています。 個人的にはひとり残されたヴァイスの事が心配だったので、リア達の新生活が早く落ち着いて、ヴァイスの様子見に行けるようになるといいな、と思ってました。 そこにきて…
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