ダンジョン「オーア」攻略編 三 (ダンジョンの魔道具)
そんな事を考えていると、全員が食べ終わっていた。
なので、そろそろ探索再開だ。
六階からは丁寧に調べると言っていた通り、階段に直行はしない。
依頼と共に渡された地図の情報が薄い通路を通ったり、何か気になる事があればそちらに向かったりする。
といっても十階までは、Bランク以下の冒険者も普通に行けるのでそう簡単に新しい発見は無いみたい。
「これで、六階は終わりか」
「ええ、特に地図との違いはありませんでしたね。ただ、やはり魔物の数は少なめです」
「それは俺も思いました。なーんか少ないですよね」
「ああ、それは後で報告しとくか」
やっぱり、魔物の数が少ないのか。
階段に直行しないで、丁寧に調査したのに戦闘回数は少なかったもんね。
私も気にしておこう。
そこから、七階、八階も調査したけど特に新しい発見も大きな異常も無かった。
九階への階段を降りて進むと、また複数のゴブリンに遭遇した。
「バルツさん、そろそろぼくも戦いたい!」
「そうだな。ずっと見学させて悪かった。ここからは戦ってもいいぞ!」
「やったー! 姉さま、いいよね?」
「うん、いいよ。ただし」
「ゆだんしない! むりしない! 約束は守るよ!」
「よろしい。怪我に気をつけてね」
「はーい!」
そう返事をしてアーテルは駆け出す。
自分のマジックバッグから、剣を出してゴブリンを倒していった。
うん、早いな。バルツさんほどは無理でも十分早い。
『アースショット』
剣での攻撃に魔法も混ぜて、あっという間に何体もいたゴブリンを倒し終わった。
「バルツ様から聞いてはいましたが、本当にアールくんも能力が高いのですね」
「ほんと、六歳とは思えないよね。ぶっちゃけBランクじゃなくてAランクでもいいと思いますよ」
クラルテさんとアスティさんが驚きつつ感心していた。
へぇ、Aランクでも通用するレベルなんだ。
「まぁ、流石に六歳の子をAランクにしたら目立つ。だから、案外Bランクぐらいでちょうどいいのかもしれん。Bランクでも一つ上のAランク依頼はギルマスの許可があれば受けられるしな」
「それはありますねー。リアちゃんは目立ちたくないらしいし、ギルマスならこの子達にできる依頼にちゃんと許可を出してくれるでしょうしね」
そんな会話をしている間に、一体のオークと数体のゴブリン、ケイヴスパイダーなどがこちらに近づいていた。
さっきは、アーテルが倒したから今度は私が倒してもいいよね。
私はマジックドロワーから弓を取り出して、まずケイヴスパイダーを射抜く。
「ギーギギ」
断末魔をあげながら二体が倒れ、ドロップアイテムを残して消える。
次は、オーク。今度は魔法で倒そう。
『アイスロック』
氷属性の魔法でオークを凍らせて、そこに身体強化を使った状態で蹴りを入れた。
すぐに氷は砕けてドロップアイテムだけが残る。
『サンダーアロー』
そのまま雷属性の魔法で、残りのゴブリンを倒して戦闘終了。
落ちているドロップアイテムを拾う。
えっと、ゴブリンは小さな魔晶核、オークは葉っぱに包まれたオーク肉。
あと、ケイヴスパイダーはケイヴスパイダーの糸と眼か。
糸は分かるけど眼って何に使うんだろう。
鑑定してみると、魔法薬や装備品の素材として使うと出た。
うわ、眼の入った魔法薬って飲みにくいなぁ。
考え込んでいたら、アスティさんに話しかけられた。
「リアちゃん、黙り込んでるけど大丈夫?」
「はい、大丈夫です。ドロップアイテムの事を考えてて」
「ドロップアイテム?」
「いや、ケイヴスパイダーの眼があったので何に使うのかなぁって」
「ああ、それは魔法薬などに使えますよ。ケイヴスパイダーの眼を使う魔法薬で有名な物は、一番効果の緩い視力強化薬ですね」
あー、だから眼を使うのか。
うん、飲みたくないね。
まぁ、私は視力がいいから飲む機会は無いはず。
ふぅー、良かった。安心したわ。
「そうだ、リア達が倒した魔物のドロップアイテムは自分の物にしていいからな。不要だと思うなら売ればいいし、好きに使って構わないぞ」
「調査に必要ないんですか?」
「俺達が倒したやつで十分だから、気にせず持って帰れ」
「分かりました」
そう言われたので、アーテルが倒したやつと自分が倒したやつのドロップアイテムをマジックドロワーにしまう。
九階もその後はいくつかの戦闘があったぐらいで、特に何も起きずに終わった。
「次は十階か」
「はい。十階には到達登録版がありますから、そこで一度昼休憩にしましょう」
「そうだな」
「あの、到達登録版ってなんですか?」
「俺が説明するよ。元々ね、俺達冒険者のギルドカードを作る魔道具ってダンジョンから出てきたものなんだよ。その、到達登録版は魔道具でキリのいい階のセーフティゾーンに埋め込まれている。で、そこにギルドカードをかざすの」
ギルドカードを作る魔道具ってダンジョン産なんだ!
知らなかった。
ギルドカードは身分証で魔力を注ぐと、ステータスと同じものが他の人にも見えるように表示されたりする魔道具って事は知ってたけど。
ちなみに、ステータスは隠したい部分を隠せる。
その隠した部分は、ギルド職員でも簡単には見れないし理由なく見てはいけない。
もし、見る場合はそれ専用の魔道具を使って見ないといけないし、その手続きはすごく大変らしい。
だから、安心して冒険者ギルドに登録できたんだけどね。
あと、名前は自分の認識で変わるから偽名も使えるんだ。
最悪、隠蔽スキルや偽装魔法を使わないといけないかなって思ってたからとっても助かった。
「それをすると、俺達が到達した事が到達登録版に記録されて、とある魔道具を使う時に役立つんだ」
「とある魔道具ですか?」
「うん、転移球って魔道具。登録した到達登録版の所まで転移できる魔道具だよ。これもダンジョン産で、宝箱とかドロップアイテムとかで入手出来るんだ」
おおー、便利。面白いな。
サージュさん達からダンジョンの話は聞いてたけど、このあたりは知らない事ばかりだ。
まぁ、座学はダンジョンの事ばかりじゃないから仕方ないよね。
学院で受けようと思ってたダンジョン学は、先生が不在だったから出来なかったし。
「あとは、転移球に似たやつで脱出球ってのもあってさ。これを、使うと一瞬でダンジョンから出られるんだ。脱出先はこのダンジョンだと、入り口の階段の近くだね」
「色々な魔道具があるんですね」
「うん。この二つは持ち帰ればそれなりの値段で売れるし、ダンジョンの中でしか使えないけど持っていて損はないよ。あと、管理されているダンジョンならだいたい入り口で売っているから、少し高めだけど買うのもありだと思う」
「アスティさん、教えてくれてありがとうございます!」
本当に重要で便利な情報だ。
とってもありがたいな。
私達はそんな会話をしながら十階に降りて、セーフティゾーンでお昼休憩になった。




