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ダンジョン都市へ行こう(道中飯テロ編)

 話に夢中になっているといつの間にかお昼ご飯の時間になっていた。

 街道にはところどころに休める場所があり、バルツさん達はそこに馬車を停めて休憩するらしい。


「リア、馬車は大丈夫だったか?」

「はい。アスティさんとお話できて楽しかったです」

「そうか。それなら良かった」


 ところで、お昼ご飯ってみんなどうするんだろう?

 周りを見るとそれぞれカバンから干し肉やパンを取り出していた。

 あー、マジか。

 そのお昼ご飯は味気ないなぁ。

 なので、近くにいたアスティさんに質問する。


「あのー」

「うん? どうしたの?」

「ここで料理を作ってもいいですか?」

「いいよ。でも材料とか大丈夫?」

「はい。マジックバッグもありますしアイテムボックス持ちなので」


 よし、言えた。

 もうね、アイテムボックスのスキルを持ってるって言う事にしたんだ。

 そうすれば、堂々と『マジックドロワー』を使えるでしょ。


「それなら沢山材料を持ち歩けるね」

「はい」


 さて、何を作ろうかな?

 一昨日に採取した山菜も、アク抜きとかの下処理を済ませてしまってるけどそれは夜ご飯に使いたいし。

 お昼ご飯となると、お肉が食べたいなー。

 そうだ! せっかくキラーカウのお肉があるし、牛丼を作ろう!

 魔コンロと大きな鍋、炊飯器の魔道具を出して研いだお米をセットする。

 玉ねぎを切って、お肉も食べやすいようにスライス。

 次は、水と醤油に砂糖、酒とみりんを鍋に入れる。

 そこに生姜の千切りと切った玉ねぎを入れて火にかける。

 煮立ってきたらキラーカウのお肉を入れて、火が通るのを待つ。

 よし、あとはご飯を丼に盛り付けて、その上から出来上がったこれをかければ牛丼の完成!

 アーテルとリリーを呼ぼうと周りを見たら、バルツさんをはじめとしたみんなに見つめられていた。

 なんだかデジャブ。これは、カツ丼の時と同じでは?


「なぁリア、それすごく美味そうだな」

「もしかして、食べたいですか?」

「ああ、ものすごく食べたい」



 ですよね! 知ってた!

 正直、この可能性を見越して大きなお鍋でたっぷりと作ったし、炊飯器も何台かあるのをフル稼働させてます。

 うん、わかってて飯テロした私が悪いのよ。


「皆さんの分もあるのでどうぞお召し上がりください」

「本当か!」

「はい」


 歓声をあげる男性陣。

 さっき、気がついたけど女って私とリリーの二人だけだった。

 特に何かあるわけじゃないけど、不思議な感じ。

 今世でこんなにも男性に囲まれた事ないからね。

 さて、私は自分達の分をよそって先に食べる事にした。

 あそこまで用意したら、あとは任せても大丈夫だろうし。


「それじゃあ、いただきます」

「いただきます!」

「ましゅ!」


 お肉と玉ねぎ、そしてつゆを吸ったご飯を一緒に食べる。

 お肉の旨みに玉ねぎの甘みと食感、そして甘辛いつゆが合わさって美味しい!

 あー、これは至福。

 お砂糖はもちろん、スイートアントの物を使っているので一味違う。

 なんていうか、甘みがまろやかでくどくないんだよね。

 それにキラーカウのお肉も美味しい!


「おいしいね!」

「あい!」


 二人にも満足して貰えたみたいで嬉しいな。

 気になってバルツさん達の方を見ると、一心不乱に牛丼をかき込んでいた。

 うん、みんなにも好評なようだ。

 行儀の悪さとか、よく噛んだ方がいいとか言いたいけどまぁいっかと思う事にする。

 早々に牛丼を食べ終わった、バルツさんが私の隣に来た。


「前のやつも美味かったが、今回もすげー美味いな」

「喜んでもらえて良かったです」

「夜は多分野営になるんだが、晩メシも頼んでいいか?」

「私の作るものでいいのなら、引き受けますよ」

「そうか! ありがとな。よろしく頼む」


 私が引き受けると、バルツさんは私の頭を撫でてからさっきの場所に戻っていった。

 知り合ってからよく撫でられるけど、あれはもう癖なのかな?

 まぁそれは置いておいて、私としては料理を作るのは好きだし、みんなも干し肉とパンだけの食事よりはいいよね。

 多分、晩ご飯は何かしら作るつもりみたいだったけど、あの様子だと料理が得意な人はいないっぽいし。

 食事が終わり、まだ話した事のなかった人達にまで牛丼の感想とお礼を言われた。

 やっぱり、美味しいご飯は人を幸せにするよね。

 よし、夜も頑張ろう。


「リアちゃん」

「はい」

「お昼休憩がそろそろ終わるから、馬車に乗って待っててね」

「分かりました」


 アスティさんにそう言われたので、いつの間にかバルツさんに遊んでもらっていた二人を連れて馬車に乗る。

 少し経つとアスティさんがやって来てすぐに出発する。


「リアちゃんが作ってくれたお昼ご飯、めっちゃ美味しかった。前にバルツ様に自慢されててさ、ずっと気になってたんだ」

「自慢ですか?」

「そう、確か冒険者ギルドで振舞ったんだよね?」

「ええ、でもそこまですごい物でもないんですよ?」

「いやいや、あそこまで美味しいものが作れるんだから謙遜しちゃダメだよ。もっと誇って!」


 生姜焼き丼と牛丼でそこまで言われるのか。

 牛丼に関しては意図して飯テロしたけどさ、こんなにも喜ばれるとは思わなかったな。

 私もそう言ってもらえるのはすごく嬉しい。

 アスティさんは話が上手くて、ずっと飽きさせずに相手をしてくれた。

 そのおかげで長距離の道中も楽しく過ごせる。


「そろそろ、予定してた野営地だから着けば一休みできるよ」

「お気遣いありがとうございます。そうだ、その野営地の周りって、何か特殊なものとかありますか?」

「特殊なもの?」

「例えば、薬草とか、キノコや山菜みたいな食材とかです」


 私がそう言うと、アスティさんは考え込み始めた。

 考え事をしながらでも、馬車の操縦に支障がないんだからすごいよね。

 すると、アスティさんは急にハッと顔をあげる。


「思い出したよ! その野営地の横に川があって、魚とか取れたはず」

「ありがとうございます。そういう情報が欲しかったんです!」

「そんなに採取とかしたかったの?」

「はい。薬草も料理の材料もたくさんあるんですが、採取できる時に採取するのが習慣なんです」

「へぇ、でもそれはいい習慣だね。何かあった時に絶対役に立つよ」


 そうなんだよね。

 やっぱり、採取も慣れれば慣れるほど上達して、薬草を早く見分けれるようになったりするからさ。


「ふふ、褒めてもらえて嬉しいです。あと、アールやリリーも採取が好きなのでそれも理由の一つですね」

「ふはっ、本当にリアちゃんの中心はアールくんとリリーちゃんだよね。三人が楽しそうにしているのは見ているだけで癒されるよ」

「そ、そうですか?」

「うん。だから、バルツ様も三人の頭をよく撫でてるんじゃないかな?」


 そういう事だったのか。

 まぁ、悪い意味じゃないし、撫でられるのは照れるけど、正直に言えば結構嬉しいんだ。

 だから、このまま甘えておこうかな。


「はい、着いたよ」

「御者お疲れ様です。ずっと、お話してくださってありがとうございました」

「いや、俺の方こそ楽しかったから。ありがとね」

「この後って自由時間ですか?」

「うん、そうなるね」

「じゃあ、川とかその周辺で採取してきます」

「行ってらっしゃい。リアちゃん達なら大丈夫だと思うけど、気をつけてね」

「はい! 行ってきます!」


 私はアーテルとリリーを連れて野営地の周りで採取をすることにした。

 なんだかんだ、これが楽しいんだよね。

 薬草や山菜とかを見つけられたら嬉しいし。

 そして、あっという間に時間が経った。

 収穫出来たのは、この前と同じ山菜と川で何種類ものエビが獲れた。

 鑑定したらどれも美味しいエビって書いてあったから、今日の晩ご飯に使うつもり。

 丼物ばかりなのもどうかと思うけど、山菜とエビってなるとやっぱり天丼だよね。

 よし、味はタレと天つゆと塩を用意する。

 これなら、それぞれが好きな味で食べられるだろうし。


「それじゃあ、晩ご飯を作ります!」

「はい!」

「あい!」

「今日は助手として、アールさんとリリーさんが来てくれました」


 少し調子に乗って料理番組風にしてたら、バルツさんとアスティさん、クラルテさんにバッチリ見られていた。

 私が二人の名前を言った後に、その三人から拍手を貰う。

 あちゃー、顔から火が出るぐらい恥ずかしい。

 でも、いいや。

 このままのノリでやってやるぜ!


「そして、特別ゲストのバルツさんとアスティさん、そしてクラルテさんです」

「おっ、おう」

「よろしく〜」

「よろしくお願い致します」


 うん、さすがノリがいいわ。

 おかげで少しだけ恥ずかしさが薄れた。

 ここからはテンポよく、作り方を説明しながら調理を進めていく。


「アールとリリーはこのボウルの中に、そこに用意してあるものを入れて混ぜ合わせてね。ダマは少し残るぐらいで」

「りょうかいです」

「でしゅ」


 二人には天ぷらの衣を作ってもらう。

 私はその間にエビの下処理をしたり、山菜や野菜を切る。

 エビは大きさで分けて、大きいやつはそのまま揚げて、小さいのは野菜と一緒にかき揚げにする。

 アーテル達の方を見れば、上手く連携して天ぷら衣を作っていた。

 私は油の用意をして、作ってもらった天ぷら衣に具材をくぐらせ揚げていく。


「美味そうな匂いだな」

「ふふ、揚がったら少し味見しますか?」

「おっ、いいのか?」

「良いですよ。特別ゲストの特権です」


 私は用意していたつゆやタレ、塩を並べて揚がった天ぷらをお皿の上に置く。


「お好きな味でどうぞ」


 アーテルとリリーにも少し冷ましたものを渡した。

 そして、私も小さめに作ったかき揚げを食べる。

 うん、サクサクで美味しい。

 天つゆもいい味の物が作れたし、これは満点な晩ご飯では!


「美味いな」

「うわ! うまっ」

「美味しいですね」


 三人の口にも合ったみたいで安心する。


「姉さま、おいしいよ!」

「おいちい!」


 うん、こちらも大丈夫みたい。

 確認できたところで、天ぷらやかき揚げをどんどん揚げる。

 そして、大きなお皿に並べて一人あたりの個数を伝えてセルフスタイルにした。

 アーテルとリリーにも先に食べていいよと言っておく。

 少し経つと食べ終わったバルツさん達が戻ってきて、揚げるだけなら俺達でもできるぞと言われる。


「リア、お前さんずっと揚げてて食べれてないだろ?」

「あっ、バレてました?」

「バレるに決まってる。後は俺達がやるから食べて来い」

「ふふ、ありがとうございます。それじゃあ、お願いしますね」


 揚げる作業を代わってくれた三人に注意事項を軽く説明して、自分の分の丼を取ってその場を離れる。

 こっそり様子を見てみたけど、支障は無さそう。

 まぁ、三人とも器用そうだからコツを掴めばそこまで大きな失敗はしないよね。

 私もゆっくりと出来上がった天丼を食べて、他の人達にまた褒められるという楽しい時間を過ごした。

 食事が終わると、それぞれのテントで寝る。

 私達は、メラン様の魔道具のテントを起動した。

 このテントは、魔力を注げば勝手に組み立てられて、しかも付与された時空間魔法のおかげで中が広いんだ。

 しかも耐久性に優れている上に、他に付与されている魔法のおかげで中の温度が一定に保たれる。

 私達はそのテントの中に入って、少しお喋りをしていたらいつの間にかぐっすり眠っていた。

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