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誘拐の影響、周囲の人々(別視点)

 リエールside


 私の名前はリエール・アウイナイト。

 アウイナイト公爵家の当主だ。

 私は数年前に最愛の妻トゥイーディアを亡くしてから、子供たちとの接し方が分からず家の事は第二夫人ハイアシンスに任せて仕事に逃げている。

 そんな私が家の執務室で仕事をしていると、私と乳兄妹で元メイド長のマーサがノックもしないで部屋に飛び込んで来た。


「ノックをしないなんてマーサらしくもない。そんなに息を切らせてどうしたんだい?」

「お嬢様とお坊ちゃまがこんな時間なのに帰って来ていません」

「うん? どういうことかな?」


 さっきまでヴァイスの声は聞こえていたから帰って来ていないのはアーテルか?

 

「今日は学院にマグノリア様を迎えに行く馬車にアーテル様もお乗りになられていました。

 その馬車がもう帰ってきてもおかしくない時間なのに、帰ってきていないのです」

「それなら寄り道をしているんじゃないのかい? 別に禁じている訳でもないのだから」


 私がそう言うとマーサは眉を釣りあげて、反論してきた。


「リエール様はご存知ないようですが、お嬢様は寄り道をなさる時は必ず家を出る前にそれを伝えてくださっています。

 何より、今日は何故か御者を務めているカインドさんが来ていなくて、別の方に御者を頼みました。ですから、余計に何かあったのではないかと心配しているのです」

「分かった。まずは学院に連絡を頼む。私は王宮に連絡を入れておこう。

 そして、手の空いてる者で学院までの道を探して、後は残りの者でカインドの所にも行ってみてほしい」


 私も流石におかしいと思い始めたのでマーサに指示を出す。

 すぐさまマーサは動き、私はマーサの兄で私と乳兄弟で執事のテリオスを呼んだ。


「妹から事情は聞いています」

「最近家の中で何か変わった事は?」

「見知らぬ者の出入りが増えたという噂は聞きましたね」


 見知らぬ者の出入りか。

 一番考えたくない事だか誘拐の可能性が高くなってしまったな。

 だとすると計画的なもの。

 首謀者は予想できる気もするが、公爵家ともなれば敵も多く金目当ての可能性も否めない。

 それよりも今優先すべきは二人を無事に見つけ出す事だ。

 アウイナイト公爵家お抱えの者達に指示を出し、調べさせる。

 そして、少しでも情報がないかとレルス君たちにも通信魔法の魔道具で知らせておいた。

 私があの子達と距離を置いた後も、ここに来てあの子達に色々と教えてくれていたようだから。



 数時間後、入って来たのはとある領の森でアウイナイト公爵家の紋章入りの馬車が見つかったというもの。

 そして、カインドは自宅で何者かに襲われ魔法薬で眠らされていたという情報だった。


「カインドは無事かい?」

「はい。既に解毒薬を服用していますし、意識も回復しているそうです」


 カインドの命に別状がなくて良かった。

 だが、これで完全に誘拐されたという事が確定してしまったな。


「見つかった馬車の方は?」

「その馬車の周辺で、他の馬車か何かに乗り換えた痕跡が見つかりました」

「他に手がかりは?」

「ありません」


 その領は王都の北。という事はウーアシュプルング大樹海に向かっているのかもしれない。

 友好国のネフライト王国にはこの件を知らせて頼んでいるので、国境の警備は厳重になっている。

 であれば、馬鹿でない限りネフライト王国は避けるはず。

 その場合、ウーアシュプルング大樹海を通る可能性が高いだろう。

 誘拐犯の力量は分からないが外層ならまだしも、もし中層以降に入っていたら子供たちが無事でいる保証はない。

 どんどん時間だけが経ち焦りが募る。




 子供たちが誘拐されてから三日目、私は宰相としての仕事をこなしながら捜索の指示を出していた。

 あの馬車が見つかって以降、情報は殆どない。

 あったとしても、学院へ行く馬車を見かけたという程度のものだった。

 執務室でテリオスと今後の方針について話していると、突然目の前で魔力が動くのを感じた。

 発動された魔法の気配にテリオスが身構える。

 そして、目の前に現れたのは二通の手紙だった。


「リエール様、私が確認致します」

「いや、大丈夫だ。これはマグノリアの字だから」


 そう言って手紙を手に取り開いた。

 もう一通は、テリオスに宛てたものだった。

 読み進めれば、自分の不甲斐なさに嫌気がさす。

 マグノリアは、自身の命を狙われている事に気がついていた。

 手紙にはその事と弟達を頼むという事が書かれている。

 そして「今のお父様も大好きなままだけれど、どうかお母様が生きていた頃の私達を愛してくれていたお父様に戻ってアーテルやヴァイスを愛して欲しい」とも書かれていた。

 どうしてもっとあの子達を気にかけられなかったのか。

 後悔ばかりが募る。

 マグノリアにとってアーテルまで誘拐された事は想定外だったのだろう。

 もちろん、二人のことは探し続けるがもっとヴァイスの事を気にかけると誓った。


「お嬢様は相変わらず優しいですね。私の方には、リエール様を今まで通り支えて欲しいと書いてありました。多分、この魔法で他にも何人かに手紙が届いているんでしょう」

「そうだろうね。自分が情けなさ過ぎるが心を入れ替えてあの子達を探しながら、今まで以上にヴァイスを愛そうと思う。だから、これからも協力して欲しい」

「もちろんです。誠心誠意お仕え致します」




 そして、次の日。

 朝一で、ネフライト王国のヴァルメリオ辺境領で誘拐犯達が捕まったという連絡があった。

 やはり、中層近くを通っていたせいで魔物に襲われたようだ。

 命からがら逃げた辺境領で保護を求め、気が動転していたのか誘拐の事を話したらしい。

 しかし、魔物に襲われた時にマグノリアとアーテルは誘拐犯達から逃げたようで一緒ではなかった。

 誘拐犯達の証言では、襲ってきたのはデスパンサーの群れでマグノリア達はそのデスパンサーがいた方に逃げたそうだ。


 そのため、私とテリオスはマグノリアとアーテルを探すため陛下に許可を頂いて、時空間魔法スキルを持っている宮廷魔導師の『ワールドワープ』でネフライト王国のヴァルメリオ辺境領に向かった。

 そこで、私の連絡で駆けつけてくれたレルス君達と合流する。

 また、辺境伯御自身とその部下達も捜索に加わってくれた。

 私達は誘拐犯達に道案内をさせて、その襲われた場所周辺を探す。

 すると、川の近くにあった大きな血溜まりでマグノリアの髪飾りを見つけた。

 そして、血溜まりの魔力を鑑定したところマグノリアの魔力も含まれていると判明したのだ。

 十三歳のマグノリアでさえ亡くなるのに、まだ六歳のアーテルが生きているわけが無い。

 泣き崩れる私の背をテリオスがそっとさすってくれた。


「マグノリア、アーテル、本当にすまない。トゥイーディア、僕は君の大切な子供達を死なせてしまった」


 私は尽きぬ後悔に打ちひしがれながら、手紙を読んだ時の誓いを思い出す。

 そうだ、私はトゥイーディアがいた頃の私に戻りヴァイスの事をこれまで以上に愛するんだ。

 せめて、マグノリアの願いだけは叶えなければ。

 そして、首謀者の事も調べ続けよう。

 誘拐犯達に首謀者が誰なのかと尋問をしたが、契約魔法で縛られているようで突き止めることは出来なかった。

 それでも首謀者を探して見つけ出す事が、あの子達に出来る唯一の償いなのだから。

 




 ミルフォイルside


 僕の名前はミルフォイル・セレスタイト。

 セレスタイト王国の第一王子だ。

 ソッレルティア魔法学院入学当初から仲良くしていたマグノリアに弟達の事を頼まれたあの日。

 王宮に帰った数時間後、僕の元に火急の知らせが入った。


「ミルフォイル様、アウイナイト公爵家のご令嬢とご子息が行方不明だそうです」

「えっ」

「学院へご令嬢を迎えに行った馬車に、ご子息も乗っていらしたらしくその馬車ごと行方が分からなくなったと」


 そんな。どうして?

 今日会った時に弟達を頼むと言っていたのは、こういう事が起きると知っていたから?


「父上には?」

「既に他の者が知らせています」


 仮にも宰相の、古くから仕えてくれている公爵家の娘と息子だ。

 しかも父上と宰相は昔からの親友。

 すぐに何かしら対策をするだろう。


「悪いんだけど、アルディートを呼んでもらえるかな?」

「かしこまりました」


 アルディートは特級院に進学したら同級生兼側近となる。

 普段ならこんな時間に呼び出したりはしないけど、今回のような緊急事態なら大丈夫だろう。

 三十分程経つとアルディートがやって来た。


「ミル様、こんばんは。こんな時間に呼ぶなんて一体何があったんだ?」

「アル、マグノリアとアーテルが行方不明らしい」

「はっ? なんでそんな」


 アルが動揺するのも無理はない。

 僕は従者から知らされた内容を伝えた。


「今日マグノリアが意味深な事を言っていただろう」

「ああ。あれはこういう事が起きると知っていたからかもしれないな」

「うん。僕もそう思う」


 ねぇ、マグノリア。

 僕達には相談出来なかったのかい?

 婚約者という事を抜きにしても親友だと思っていたのに。

 僕は相談して欲しかった。


「ミル様、大丈夫か? マグノリアにもマグノリアの事情があったんだろう。

 俺も話して欲しかったけど、話して貰えなくても俺たちがマグノリアの親友な事は変わらない」

「うん、そうだね」

「これから俺たちなりに動いてマグノリアを助ければいい。ミル様と俺ならできるだろ?」


 アルが僕を励ましてくれている。

 アルの言う通り、マグノリアには話せない理由があったのだと思う。

 今出来るのは無事を願う事だけ。

 でも、もし僕に何か出来る事があるなら絶対に協力しよう。

 僕はこの日そう決意した。



 マグノリア達の誘拐から二日後。

 僕とアルの元に手紙が現れた。

 それは紛れもないマグノリアからの手紙で、中に命が狙われているだろう事や、あの日頼まれた弟達の事が書かれていたんだ。

 そして、二人が友達に、親友になってくれて嬉しかった事。

 また、何があってもずっと親友だと思っているとも書かれていた。

 僕はその手紙を抱きしめ祈る、どうかマグノリア達が無事であれと。



 手紙が届いたその日の夜。

 僕の自室に見知らぬ魔道具が置いてあった。

 調べるとマグノリアの魔力を感じる。

 そして、魔道具と一緒に置かれた紙に誘拐犯の位置を示しますと書かれていた。


「誘拐されながらこれを作ったの? ふふっ、はは、マグノリアらしい。よし、必ず捕まえて見せよう」


 魔道具に魔力を注ぎ、起動させるとこの大陸の地図が壁に投影される。

 そして、赤い点がネフライト王国のヴァルメリオ辺境領を指し示していた。

 すぐに辺境伯に連絡を取り、最近不審な者達が居なかったかを聞く。

 すると、少し前にウーアシュプルング大樹海から逃げてきた男達を保護したと答えが返ってきた。

 元々交流があり、訪れた事もあったので時空間魔法を使いヴァルメリオ辺境領に向かう。

 あちらには向かう事を伝えていたので、そのまま辺境伯邸を訪ねた。


「突然の訪問ですみません」

「まさか、ミルフォイル殿下自らお越しになるとは思ってもいなかったが。何があったのかお聞きしても?」


 僕は辺境伯に今までの事を伝える。

 マグノリアの名前が出た時に少しだけ驚いていたが、ほとんど冷静に聞いていた。


「では、その魔道具で先程捕まえた連中を調べれば分かるのか。

 よし、すぐに試すべきだな」

「はい、お願いします」


 男達が居る場所に向かい、部屋に入る直前で魔道具を起動させる。

 するとその時点で、魔道具から放たれる光が部屋を指し示し、部屋に入ると男達を光が照らした。


「やはり、この者たちのようです」

「そのようだ。捕縛しろ」


 辺境伯の部下達がすぐに男達を拘束し、牢に連行して行った。


「殿下がここに来たことは伏せますが、よろしいですね?」

「ええ、その方がありがたいです」

「この後はあの男達を尋問して、そちらに結果をお伝えしよう」


 僕は頷いて承諾する。

 そして、この魔道具の存在も伏せて欲しいと頼む。

 なので、どうして犯人が分かったかについては、犯人たちが自ら言った事にした。

 それからは細々とした事を打ち合わせて、僕は時空間魔法で王宮に帰った。



 翌朝。

 朝から王宮内は慌ただしかった。

 約束通り、辺境伯は僕や魔道具の事を伏せた上で犯人達を捕まえた事を知らせてくれていたから。

 すぐに、知らせを受けた宰相が王宮に来て、父上に時空間魔法スキルを持っている宮廷魔導師に『ワールドワープ』を使用させる許可を願い出たんだ。

 もちろん、父上はすぐに許可を出したので即座に宰相は辺境領へ向かった。



 そして、数時間後。

 帰ってきた宰相達からもたらされたのは、信じられない事実だった。

 捜索したところマグノリア達は魔物に襲われて、亡くなっている可能性が高いと。

 理由は血溜まりがあり、そこからマグノリアの髪飾りと魔力が見つかったため。

 けれど、どうしても疑問があるんだ。

 マグノリアなら時空間魔法を使って、魔物から逃げるのは簡単だ。

 というか、誘拐犯からも逃げられた筈。

 という事は、マグノリアは誘拐に気がつきながら逃げなかったという事になる。

 一体なんのために?

 まぁ、それはいつか会った時に聞けばいい。

 一つだけ言えるのは、絶対にマグノリア達は生きている。

 マグノリアは時空間魔法スキルを所持している事を周囲に隠していた。

 そして、報告にあった血溜まりはマグノリアが自分で偽装工作をしていたのでは? と思う。

 なので、僕はこの事実をアルディートと数人の信頼のおける人達のみに伝えて、こっそりとマグノリアを探す事にした。




 レルスside


 俺はエルフの冒険者、レルス・ウィリディス。

 セレスタイト王国とネフライト王国に拠点を持ち、この二つの国を中心に冒険者活動をしている。

 実は少し前に、俺達の弟子であるアウイナイト公爵家令嬢のマグノリアちゃんと弟のアーテル君が誘拐されたと、公爵家当主のリエール様から知らされていたんだ。

 ちょうど長期の依頼を終わらせた後だったので、またリエール様に連絡を取り今どうなっているのかを聞く。

 すると、ちょうど俺達が滞在している辺境領で犯人が捕まったらしい。

 リエール様も向かうみたいなので、俺達も行く事にした。


「あー、犯人達を殴りてぇ」

「同感。俺は魔法でなぶるわ」


 俺と獣人でこのパーティーのタンクをしているエルンストがそう話していると、そこにいい笑顔を浮かべる治癒士サージュが加わった。


「であれば、私はその犯人を治しましょう」

「なぜ治すんだ?」


 剣士のトレランツがそう聞けば、俺達の背筋がゾワッとなるような笑顔でサージュが答えた。


「そうすれば何度でも殴れますし、痛ぶれるでしょう?」

「おおー、これは相当サージュ怒ってるッスね。まぁ、分からなくもないッス」


 シーフのアビルがサージュの発言に少し引きつつも同意する。

 まぁ、結局俺達は大切な教え子を誘拐されて思いっきりキレてるって事だ。



 辺境伯邸に着くとそこにはもうリエール様がいた。

 辺境伯とリエール様が犯人達の尋問で分かった事を話している。


「という事でこれから私と私の部下も連れて、犯人達に道案内をさせながら捜索しようと考えている。

 アウイナイト卿、それでよろしいかな?」

「辺境伯自らのご協力感謝致します。私と執事のテリオスも連れて行って頂けますか?」

「構いませんよ。そちらの冒険者達はついてくるのか?」


 辺境伯に話をふられたので、一も二もなく頷く。


「はい。一緒に行かせて頂きたいです」

「ご令嬢とは知り合いなのか?」

「教え子です。俺達が彼女に魔法等を教えていました」

「そうか。了解した。アウイナイト卿の護衛はいるようだが、君達にも卿の事を気にかけてもらいたい」

「もちろんです」


 正直、奥様を亡くされてからのリエール様に思うところはあるけど、仕方がなかった事も分かっている。

 こうして俺達はウーアシュプルング大樹海に向かい、捜索を始めた。


「どの辺なんだ?」

「えっと、その、もう少し奥だったような?」

「はっきり答えろ!」

「ひぃ! もっと奥です」


 犯人達の案内で進めば、そこはほとんど中層に近い場所だった。


「中層に入れるような力も無いのに、ここまで来るとは相当馬鹿な連中だな」

「目先の欲に囚われてそこまで考えていなかったんでしょう」


 トレランツとサージュが話しているのを聞きながら、周囲を探す。

 何か少しでも手がかりがないかと。

 するとエルンストが急に周りを嗅ぎ始めた。


「なぁ、薄らなんだけどよ。血の匂いがする」

「どっちの方向だ?」

「あーっと、ここから西の奥ぐらいだな。水の匂いもするぜ」


 辺境伯の問いにいつも通りの調子で答えるエルンスト。

 いや、この人も偉い人なんだけどな?

 サージュまでとは言わないから、せめてもう少しどうにかならないのか。

 まぁいいや。今はそれどころじゃない。

 エルンストからもたらされた情報により、捜索隊はそちらに進む事になった。


「少し先に川がある。もしかしたらそこに手がかりがあるのかもしれないな」


 そして川に着くと、そこには大きな血溜まりがあった。


「……すごい血だ。よし、この辺りを探そう」

「はい」


 辺境伯の号令でこの辺りを探していると、リエール様が血溜まりの中から何かを拾っていた。


「これは……。マグノリアの髪飾りだ」

「えっ」


 リエール様の言う通り、その髪飾りからマグノリアちゃんの魔力を感じた。

 そして、血溜まりの魔力を調べるとそこにもマグノリアちゃんの魔力が含まれていた。


「この血溜まりは変色している。ここで襲われてから数十時間は経っているな」

「……ええ、正直マグノリアの生存は絶望的でしょう」


 震える声でそう言ったリエール様はその場に崩れ落ちた。

 そして、ずっと泣いている。

 俺は信じたくないし信じられない。

 失意のまま捜索隊は辺境領に帰り、俺達はネフライト王国にある拠点に帰った。


「しかし、少しおかしい気がするのです」

「サージュ、どうした?」


 ずっと黙っていたサージュが急に疑問を口にした。


「私達がマグノリアさんに教えた技術は膨大です。そしてその殆どを身につけておられた」

「そういやそうだな」


 エルンストが相槌を打つ。

 確かにマグノリアちゃんの吸収率は凄かった。


「正直、マグノリアさんが冒険者だとしたらBランクには余裕で達していると思うのです」

「一理ある」


 トレランツもサージュの言葉に同意する。

 そうだ、スキルもほとんど取得してたしBランクは余裕で超えてる。


「それなのに、デスパンサーの群れに負けたりするのでしょうか?」

「そうっスね。ちょっとおかしい気もするっス」


 サージュの言葉にアビルも頷く。

 あんなに魔法も使えて、スキルも多かったマグノリアちゃんがデスパンサーに負ける?

 ありえないな。


「もし他に魔物がいたとしても、彼女なら逃げるなりなんなり出来たでしょう。

 これらを総合して考えるとマグノリアさんは生きている可能性が高いと思うのです」

「俺もそう思うよ。マグノリアちゃん、何か隠し玉を持っているっぽかったし、そんなあの子がそう簡単にやられるはずがない」


 しかも、大好きで大切な弟を残してなんてありえない。


「どうしますか?」

「そりゃ、探す一択でしょ!」


 俺の言葉に全員が同意する。


「それなら辺境領に滞在しますか。多分彼女が隠れ住むなら辺境領かその近辺でしょうから」

「そうだな。辺境領に拠点作ってウーアシュプルング大樹海も探しつつ、周りの領も見回ればいい」


 幸いエルフなマグノリアちゃんや精霊であるアーテルくんは目立つだろう。

 俺達はたどり着いた事実を俺達だけの秘密にして、マグノリアちゃん達を探す事にした。

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