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隠遁生活二日目、採取と偽装工作

 隠遁生活二日目。

 今日も天気が良くて気持ちがいいな。

 さて、今日は周囲の探索と素材採取をするつもりだ。

 このウーアシュプルング大樹海は、フライハイト大陸の中心にあってものすごく広い。

 また、外層、中層、深層、最深層に別れていて一つ層が変わるだけで魔物の強さが一気に上がり危険な場所になる。

 外層の一番外側であれば、低ランクの冒険者でも大丈夫だけど、中層からはBランク以上でないと無理らしい。


「となると、私は冒険者ならBランクレベルにはなってるのか」


 朝食を作りながらふと思った。

 ちなみに、今朝の朝食はベーコンエッグにチョップドサラダ、後はミキサーの魔道具を使って作ったコーンスープにパンを入れてパングラタンにした。

 朝からちょっと張り切りすぎたかな?

 でも急に、コーンスープのパングラタンが食べたくなっちゃったし、美味しいから良いよね。

 さて、昨日と同じようにアーテルを起こして、朝ごはんにする。


「姉さま、おはよう」

「アーテル、おはよう。朝ごはん出来てるよ」


 アーテルはテーブルを見た瞬間、目を輝かせる。


「やった! 姉さまのパングラタンだ!」

「あれ、そんなにもパングラタン好きだったの?」

「うん、大好き!」

「そっか、良かった。急に食べたくなって作っちゃったから心配してたんだよね」


 喜んで貰えたようで何より。


「それじゃあ、いただきます」

「いっただきます!」


 ふふ、挨拶に力入ってる。

 そこまで好きなら定期的に作ろっかな。

 そう考えながらパングラタンを一口すくって口に入れれば、パンの中から優しい甘みのコーンスープがじゅわぁ〜っと染み出てくる。

 そしてそこに、香ばしい溶けたチーズの塩気とパンの食感が合わさる。

 くぅー、おいしい!

 やっぱり食べたい気持ちに従って良かったな。


「姉さま、今日はどうするの?」

「うん? 今日はね、この辺りの探検と薬や魔法薬に使う薬草とかの採取かな」

「ぼくもついて行っていい?」


 元々、そのつもりだった

 いくらこの家が安全でもアーテルを一人きりにするのは怖いしね。

 目の届く範囲にいてくれる方が安心。


「もちろん。でもちゃんと私の言う通りに出来る?」

「できるよ!」

「それなら大丈夫だね。一緒に探検しよっか?」

「うん!」


 元気のいい返事が聞けれた所で朝ごはんを食べ終わった。

 後片付けをしたら、探索をする為の準備を始める。

 アーテルにはテンションが上がるだろうと思って探検って言ったけど、私的には探索なんだよね。二つがどう違うのか明確に説明出来ないけど。

 後は、アーテルを呼んで綺麗で透明な魔宝石がペンダントトップな魔道具を首にかける。


「これはなあに?」

「ああ、攻撃を受ける前に結界魔法が展開される魔道具だよ。アーテルは魔法を使えるから弱くないし、私がいれば守れるとは思うけど一応ね」

「はーい。結界魔法ってどんなの?」


 おお、そこに興味を持ってくれるんだ。

 この魔道具には、結界魔法の丸い結界『スフィアバリア』と身体にぴったり展開される『プロテクター』が敵意を持った者の接近と同時に発動される仕組みになっている。

 という説明をアーテルにする。

 ちなみに、魔宝石はメラン様のあの部屋に加工前の物が魔石や魔晶核と一緒に沢山あった。

 なのでその中の一つ、小さめの魔宝石にさっき挙げた二種類の結界魔法を付与して作ったんだ。


「もしかして、姉さまが作ったの?」

「うん、そうだよ。あっ、もし何かおかしな所があったら教えてね」

「はーい。姉さまは料理も薬も作れるし、魔法も出来て魔道具まで作れてすごいね!」

「ふふ、褒めてくれてありがとう」


 目をキラキラさせながら、褒めてくれるアーテルは本当に可愛い。

 このままいい子に育ってね。

 さて、準備も出来たところで家を出る。

 まずは、精霊樹の周りを見てみようか。

 ウーアシュプルング大樹海は樹海と名につくだけあって木が密集している場所が多い。

 でも、この精霊樹の周りは開けていて日当たりも良いんだ。


「姉さま、これって明陽草?」

「正解! よく覚えてたね」


 アーテルが指さしていたのは、治癒ポーションだけでなく色んな中級ポーションに使われる明陽草だった。

 明陽草は中級ポーションの材料なだけあって、こんな簡単に見つかるものじゃないんだけどね。


「姉さま、もしかして明陽草は持ってたの?」

「うん、持ってる。でも、いくらあったって困らないから、見つけてくれてありがとう」


 お礼を言うと嬉しそうに笑うアーテル。

 よく見ると周りには明陽草が結構生えていた。

 そりゃ、ウーアシュプルング大樹海が薬草の宝庫って言われる訳だ。

 そういえば、精霊樹の葉も魔法薬に使えるけど取るのを少し躊躇うな。

 あっ、そうだ。精霊は精霊樹と意思疎通が出来るからアーテルに葉を貰ってもいいか聞いてもらおう。


「アーテル、精霊は精霊樹とお話出来るみたいだから試してもらってもいい?」

「えっ、お話出来るの? いいよ! お話したい!」

「お話出来たら、精霊樹の下をお借りしてます。ありがとうって事と何枚か葉っぱを貰ってもいいかを聞いてね」


 そう伝えると元気よくはーいと返事が返ってきたので、私は精霊樹と話すアーテルを見守る。

 すると、アーテルは精霊樹に手を当ててそっと魔力を注いでいた。

 そうして少し待つと、アーテルが振り返りこちらに戻ってくる。


「お話出来たよ。一人で寂しかったから私の下に住むのは大歓迎、こちらこそありがとうだって!

 あと、葉っぱはこれから揺らして落とすからそれを拾ってねって精霊樹さん言ってた!」


 精霊樹さん優しい。葉っぱまで落としてくれるとは。

 見上げると枝が揺れ始め葉が落ち始めた。

 それを直ぐに風属性の魔法で集めて、マジックドロワーにしまう。


「精霊樹さん、ありがとう。大切に使いますね」

「ふふ、姉さま良かったね」


 精霊樹の周りで見つけた薬草やキノコは、取り尽くさない程度に採取出来た。

 なので、私達は精霊樹から離れた場所を探索する事する。


「ここからは魔物もいるから気をつけてね」

「はい」


 精霊樹から少し離れるだけで、木々が密集し鬱蒼とした場所になる。

 近くに倒木があり、よく見ると霊芝が生えていた。


「見つかるのはや。これも使えるな」


 霊芝は地球にもあるキノコだ。

 この世界には地球と同じ名前と見た目の薬草が結構ある。

 ただし、この世界の物は全て魔力を含んでいるし効能も違うらしい。


「癒凛草とヒペリカムとジンセンもあったよ!」


 近くを探していたアーテルが目的の薬草を見つけてくれた。

 癒凛草とヒペリカムはメラン様特製レシピで必要になる。

 私は持っていなかったので、この二つが見つかれば中級と上級のポーションが作れるんだ。


「アーテル、ありがとう! ジンセンも普通の上級ポーションに使えるから助かるよ」

「どういたしまして!」


 薬草の採取が終わった所で、ふと思い出した。

 そういえば、まだデスパンサーを解体してなかったな。

 よし、前にデスパンサーに襲われた所の近くに川があったからそこで解体しよう。

 それをアーテルに言ってから、二人で転移する。


『ワールドワープ』


 よし、ここならいいね。

 すぐにデスパンサーを取り出して、近くの木に吊るす。

 用意しておいた道具を使って、解体を進めればスキルのお陰かあっという間に終わった。

 トレランツさんに習い始めた頃は怖さや忌避感が少しだけあったけど、生命を頂く礼儀だと教えて貰ってからは大丈夫になったんだよね。

 ついでに鑑定魔法を使ってデスパンサーを調べる。


《デスパンサーの肉》

 Bランクのデスパンサーの肉。

 普通の料理には適さない。

 加工するなら干し肉がおすすめ。


 ふむふむ、干し肉がおすすめなのか。

 じゃあ、後で作っておこう。

 それにしても意識すれば、欲しい情報を詳しくくれる鑑定魔法って便利だよね。

 ほんと、女神様には感謝しかないや。

 もしお話出来たら、ちゃんとお礼を言おう。

 さて、解体し終わったので肉や毛皮、魔晶核に牙などを部位ごとに分けてマジックドロワーにしまう。

 辺りを見回すと思った以上に血だらけで、このままだと血の匂いに誘われた魔物が来そうだな。


「いや、もしかして使えるかも」


 少しいい考えが浮かんだので、その血だらけの場所に細工をする。

 魔法や魔道具によっては、自分の血を使う物もある。

 だから、前に採血しておいた自分の血液を周囲に振り撒き、昔からつけていた髪飾りを落としておいた。


「こうしておけば、誰かが捜索に来ても私達が魔物に殺されたと思ってくれるでしょ」


 そう、私達が死んだという偽装工作をしていたんだ。

 生きていると分かれば捜索隊が出されたり、第二夫人のハイアシンスに狙われたりするから。

 今、思いついた作戦だけどいい案でしょ!

 ついでに時空間魔法で、ミルフォイル様の部屋に誘拐されてる最中に作った犯人追跡の魔道具を送る。

 これで良しと。


「アーテル、そろそろ家に帰ろっか?」

「はーい」


 アーテルがそう返事をした所で、周りに魔物の気配が増えた。

 ありゃま、匂いに誘われてもう来ちゃったんだ。

 じゃあ、倒すしかないね。

 前と同じようにアーテルの周りに結界魔法の『バリア』を張っておく。


「バリアの中から出ちゃダメだよ」

「うん。姉さまも気をつけてね」

「了解」


 血の匂いに釣られて現れたのは、オーク三体とフォレストベア二体だった。


「ブヒッ、ブッブ」

「グオオォ」


 多分、人間がいなければこの魔物同士で争ってただろうに。

 まぁ、オークのお肉は美味しいしラッキーだと考えよう。

 まずは、追尾機能のあるアロー系の魔法を放つ。


『ウィンドアロー』


 放ったウィンドアロー五射うち、二射が一体のオークの額と首を貫く。

 残りの三射は、フォレストベアに当たったけどさほど効いてないみたい。

 そっか、フォレストベアは毛皮が厚いもんね。


「よっと、そんな遅い動きじゃ捉えられないよー」


 私の方に爪を振りかぶりながら近づいてきたフォレストベアを躱す。


「じゃあ次は『メタルアースランス』」


 金属性と地属性の合成魔法で、『アースランス』の先端を金属に変えた鋭い槍。それで、フォレストベア二体の心臓を貫く。


「おっ、効いたみたい」


 二体のフォレストベアが倒れた事で、残されたオーク二体は動揺している。


「ッブブ、ブヒッ」

「ブヒブヒッ」


 そして、逃げ出し始めた。


「残念、逃がさないよー」


 何を使おうか考えて、雷属性の魔法を使う事にした。


『サンダーボール』


 放たれた球は二体のオークに直撃する。

 直撃した衝撃ダメージと雷属性の特徴で感電して息絶えた。


「ふぅ、終わったね」

「姉さま、大丈夫?」

「大丈夫だよ。ありがと」


 こうして私達は今倒したオーク達の解体は諦めて、時空間魔法で家に帰った。

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